左は土産物のインディアンの太鼓、右は回すと音程が変わるロートタム
環境への対応により獲得された形質は遺伝しないとしても、環境が直接遺伝子に影響を与え、形質を変化させることがあるでしょうか? 放射線や毒物が遺伝子に影響を与えるように?
カンブリア紀の突然の変異の増加は、その時に光が突然増えたため、光の刺激によって感光細胞が発達し、眼が誕生した、という説があります。眼が複雑化していったのは、優れた機能を持つ眼が生き残っただけではなく、光が直接眼の構造変化をもたらしたのかもしれません。
自然の形態には確かに環境への適応の結果生じたものがあります。他方、自然の形態の多くが、淘汰の直接の結果ではないことは誰もが認めています。ダーウィンが進化論で示したのは、環境への適応の結果の部分だけでしょう。
ダーウィンは「種の起源」とタイトルを付けていますが、説明しているのは種の変化だけであり、「起源」については何も言及していません。枯葉チョウとタテハチョウ、ウマとサイを最初に分けたものは何でしょう。淘汰はそれを推進はしましたが、発端は淘汰ではなかったでしょう。これが小進化と大進化(注)の謎なのでしょう。
ダーウィニズム原理主義者は、淘汰による小進化の積み重ねが大進化を生むと考え、ナチュラリストはそれだけでは複雑な種と生物の構造は説明できないと考えます。どちらが正しいのかは、未だ結論が出ていないのでしょう。
エルドリッジは「ウルトラダーウィニストたちへ」の中で、自分を含めたグールド派対ドーキンス派の論争は、外部から見れば「群盲象を撫でる」の状態だろうと言っています。
(注)環境への適応や放射線などにより数世代の内に形質が変化してゆくことを「小進化」、
新しい種が生まれたり種が分岐したりする変化を「大進化」と呼びます。小進化は品種改良や自然の中で実際に観察出来ますが、
大進化は化石や現在の生物の遺伝子情報から推察するしかありません。
これは進化の速度と停滞の問題にも繋がります。クジラ
やコウモリは、
5500万年前にはもうほぼ今の姿になっていました。
コウモリは超音波定位を完成し、クジラは手足をなくして泳いでいたのです。しかし、
その祖先の有胎盤類は1億年前に誕生しました。
5500万年の間の「小進化」と、
それ以前の4500万年の「大進化」は、
同じ速度ではあり得ません。トンボは太古の昔からトンボだった!
こちらのように、変化の速度は非常に早いのですが、同時に安定している時期も長いのです。 もし種の分岐を生むのが環境の変化なら、生物の種の数だけ環境が変化し、かつそれぞれがその後は安定していた、ということになるでしょう。それは信じ難い!
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