ビール注ぎ達人の技
現在のビールサーバーの多くは、誰でも簡単に7対3ビールが注げるように、レバーを手前に倒すとビールの液体が静かに流れ出て、奥に倒すと泡だけが出るような構造に最初から作られている。だがその注ぎ方では美味しいビールとならないことは既に述べたとおりである。
美味しいビールを注ぐためには上手に泡を立たせなければならない。そのため、ビール注ぎの達人の中には、わざわざコックを開くとビールが勢いよく出る旧式のバルブコックのサーバーを用いる人もいる。もちろん高度なテクニックが必要となるのだが、うまく使いこなせばより美味しいビールを注ぐことが出来るのだ。
さて、プロの美味しいビール注ぎのテクニックはいくつか流派(?)があるようだが、大別すると次の3種類にまとめられると思う。
A.消えぬなら、消えるまで待とうホトトギス
ビールはある程度勢いよく注いだ方が美味しいことは既に述べたが、そうすると盛大に泡が立ってしまい、そのままでは売り物にならない。そこで問題はこの処理方法だが、一番簡単かつ確実なのは消えるのを待つことだ。
注がれた直後はグラス一杯にある泡も、時間とともに上の方のきめの粗い泡から自然と消えていき、きめ細かい泡だけを残して液体の比率が増えていく。
ただしこのままだと全体の分量が少なくなってしまうため、頃合を見てもう一回そこに注ぎ足す訳である。そうするときめ細かい泡の部分がグラスの上にまで持ち上がり、見た目も味も美味しいビールの完成、と言うわけだ。
@ビールを勢いよく注ぐ。
A少し待つ。
B泡が消えてくる。
C注ぎ足す。
D完成。
B.消えぬなら、こぼしてしまえホトトギス
Aの方法は比較的簡単に出来るため、チェーン店などでも採用しているやり方だ。
ただ難点は客にビールを供給するまでに、少々の時間がかかってしまうというところにある。
ビールを注ぐ時に発生する泡は、きめの粗い泡は気泡が大きいので上の方に集まり、下の方が決めの細かい泡になる。つまり、そのままビールを注ぎ続ければ上の方のきめの粗い泡からこぼれていくことになる。
この原理を応用したのが、わざときめの粗い部分をこぼして注ぐというテクニックなのだ。
この方法だと一気に注げるため、スピーディーにビールを供給することができる。もちろん、相当に熟練した技が必要になるわけだが。
@ビールを勢いよく注ぐ。
A注ぎつつ上部の泡をこぼしてしまう。
B完成。
C.消えぬなら、消してみせようホトトギス
Bの方法は素早くビールを注ぎ終えることが出来るものの、わざとこぼす分、どうしてもロスが多くなる。
そこで、不要な泡をなくしつつもロスを出来るだけ抑えるために、きめの粗い泡の部分だけを専用のナイフでカットする、というテクニックがある。
まず勢いよくビールを注いだら、その時点できめの粗い泡をカット。その後、少し間を置いてからビールを注ぎ足し、全体の量を調整して完成。
この方法だとカットする不要な泡の部分をナイフで調整できるし、二回目に注ぐまでの時間はBよりも短くてすむ。もちろんこれも熟練の技が必要なことは言うまでもない。
@ビールを勢いよく注ぐ。
A専用ナイフで上部の泡をカット。
B少し落ち着かせる。
C注ぎ足す。
D完成。
ところで、これらプロの熟練の技は皆「サーバー」を使うことから磨かれてきた技術なのであるが、家庭で缶やビンから普通にビールを注ぐ際に美味しく注ぐにはどうしたらいいのだろうか。
以下は次項で。