ブラウマイスターは1993年発売のキリンのプレミアムビールである。「ブラウマイスター」というのはビール職人の称号で、職人が原料と製造とにこだわって責任醸造したビールとして登場した。黄金色を基調としたデザインは多分にヱビスを意識したつくりで、副原料に米を使ってはいるものの、味はさすがにキリンらしいしっかりとツボを押さえた味わいだった。
その後このビールはオールモルトとなって「ブラウマイスター責任醸造 ビール職人」と名を変えて発売されていたが、やがては店頭からその姿を消した(業務用としては製造していたようだが)。
そのブラウマイスターがここにきて店頭に復活した。
専用のサーバーで飲むキリンの「樽生クール配送」シリーズに、期間限定でラインナップされたのである。
懐かしさもあって、専用サーバーもないのに買い求めた。サーバーがないので当然専用の炭酸ガスボンベは無駄になるし、注ぐのも手で注ぐしかないが、まあ仕方ない。
一口飲むと、ホップの鮮烈な苦味が舌を刺激する。「うん、さすがキリンのプレミアムビールだわい」と感心してぐいぐい飲んでいったらだんだん様子が異なってきた。なんとも物足りなく感じてきたのである。昔飲んだ印象とどうも異なる。クール配送なので鮮度が落ちているとは考えられない。もしやオレの体調が悪くてビールが美味しく感じられないのか? と不安にさえなってくる。
飲んでて思ったのだが、どうも、麦汁のコクと甘みに乏しいのだ。かつての「ブラウマイスター」も「ビール職人」ももう少しボディがあったはずで、それがためにホップの苦味をしっかり受け止めていたのように思うのだが、それがない。
結局、最近の「スッキリ志向」に合わせた味にシフトしたのかもしれない。しかしプレミアムビールまでサッパリさせてしまってどうするんだろう? こうなるともうメーカーのスッキリ志向は病理としか思えない。
まあ、「ホップの利いた一番搾り」だと思って飲めば腹も立たないのであろうが、昔のブラウマイスターの味を知っている人間には、正直、美味しいと思えるビールではなかった。
《追記》
その後8月3日から、セブンイレブン、イトーヨーカドーグループで缶のブラウマイスターが限定発売された。しまった。早まった。もう少し待ってからレポートすれば良かったか。
買って改めて飲んでみたのだが、確かに普通のビールだと思って一缶飲むくらいだと不満は感じない。まずまずの味のビールに感じる。
ただ、これを「プレミアムビール」だと思って飲むと、やはり不満が残る。
だってそうでしょ? すでに「一番搾り」も「クラシックラガー」も「ハートランド」もあるのに、何故そこにわざわざ「ブラウマイスター」を新たなラインナップとして加えるのか。そこにはっきりと差を感じさせるだけのものがなかったら、存在意義がないじゃないか。