読者からの質問と回答 01171 〜 01180
『はじめての集合と位相』を勉強し終えました.『はじめよう位相空間』も読む必要があるでしょうか?
先生の
『はじめての集合と位相』で勉強をし,
終えましたが,先生の著書にはまだ
『はじめよう位相空間』と
『解いてみよう位相空間』があります.
その2つも勉強した方がよいでしょうか?
お答えします:
『はじめての集合と位相』は『はじめよう』と『解いてみよう』の内容の大部分を含んでいます.
したがって,前者の中身を十分に理解されたのであれば,
後の2冊を読まれる必要はないのではないかと思います.
『はじめての集合と位相』で身につけられた基礎知識に基づいて,
数学のいろいろな分野の勉強に進んで行かれてはどうでしょうか.
最後になりましたが,『はじめての集合と位相』のご購読に御礼申し上げます.
第1章,演習問題 3, 4 について教えて下さい.
『はじめての集合と位相』
第1章,演習問題 3 について(間違っていないでしょうか).
(1) 答え:[1, ∞).
考え方:(∀ε > 0)(x > 1 - ε) => x ≧ 1 を背理法で示す.
もし x < 1 と仮定する.
このとき,ε = (1 - x)/2 とおくと,
x > 1 - ε = 1 - (1 - x)/2 = (1 + x)/2 > 1.
これは仮定 x < 1 と矛盾する.
ゆえに,x ≧ 1.
(2) 答え:(1, ∞).
考え方:(∃ε > 0)(x ≧ 1 + ε) => x > 1 を示す.
対偶をとると,x ≦ 1 => (∀ε > 0)(x < 1 + ε).
これは正しい.なぜなら,(1 + ε) - x = (1 - x) + ε > 0.
ゆえに,x > 1.
演習問題 4 について.
(1) 答え:(0, 3).
大小関係を考えただけでできました.
(2) 答え:(0,3).
演習問題 3 (2) と同様に対偶をとって考えましたが,x < 3 のところがうまく説明できません.
アドバイスをお願いします.
最近,線形代数学や解析入門を再学習しています. そのなかで先生のHPを見つけました. とてもありがたく思っています. なるべく自分の頭で考え抜きたいと思っていますが,演習問題の解答やヒントをHP上で公開していただくことも検討してください. 学習を続けるためにも,ぜひよろしくお願いします.
お答えします:
演習問題 3 (1):正解です.
ただし,理由を厳密に述べるならば,ほとんど自明なことですが,逆
x ≧ 1 => (∀ε > 0)(x > 1 - ε)
が成り立つことも言っておくべきだと思います,
演習問題 3 (2):正解です.
理由については,上と同様のことが言えます.
練習問題 4 (1):正解は A = (1, 2] です.
なぜか考えてみて下さい.
演習問題 4 (2):正解です.
理由としては,任意の x に対して,
(∃a ∈ A)(∃b ∈ B)(a < x < b) <=> 0 < x < 3
が成立することを示す必要があります.
=> : (∃a ∈ A)(∃b ∈ B)(a < x < b) が成り立つとする.
このとき,区間 A と B の定義より,0 ≦ a < x < b < 3 だから,0 < x < 3 が成り立つ.
<= : 0 < x < 3 が成り立つとする.
このとき,a = 0, b = (max{2, x} + 3)/2 とおくと,
a ∈ A かつ b ∈ B かつ a < x < b.
ゆえに,(∃a ∈ A)(∃b ∈ B)(a < x < b) が成り立つ.
誠に申し上げ難いことですが,「位相空間・質問箱」では,解答を見てほしいというメールはなるべくご遠慮頂くようにお願いしております. ポイントを絞ったご質問には,いつでも可能な限りお答えしますので, 事情をご賢察の上,ご理解頂きたく,お願いいたします.
最後になりましたが,
『はじめての集合と位相』のご購読に御礼申し上げます.
T.O.さんの再学習が進むことを祈っています.
共終数 (cofinality) ついて教えて下さい.
集合論の教科書を読み始めました.
本来ならば著者に直接お伺いすべきところ,
大変失礼かとも思うのですが,疑問点に関して教えて頂けると幸いです.
同書では,(無限)基数 α に対して,
cf(α) = min{|A| : A は α で非有界}
ここで,非有界は sup A = α で定義しています.
この際,cf(α) の定義における部分集合 A は強単調増加な超限列のみを考えてよい.
実際,
(1) τ_ν = max{f(ν), sup{τ_{ξ+1} : ξ<ν}}
(但し,A は |A| = cf(α) を満たし,f は cf(α) から A へ全単射)
と定めると,
{τ_ν : ν< cf(α)} が α で非有界な強単調増加列になるとあり,
そのことは確認できたのですが,さらに,以下を満たすという記述があります.
(2) α = sup{τ_ν : ν< cf(α)} and τ_ν = sup{τ_γ : γ<ν} if ν is limit.
前半の条件は問題ないのですが,後半が示せません.
(1) を眺めると,ν が極限数であっても仮に
(3) f(ν) > sup{τ_{ξ+1} : ξ<ν}
であれば跳躍が発生するので,(2) の後半の条件が成り立つとは,必ずしも言えないように思うのですが・・・
それとも,極限の場合には (3) は成立することはない,と言えるのでしょうか.
あるいは,(1) の定義を若干修正するとか,
(1) で得られた超限列から (2) を満たすように再構成することが明らかに,または,容易に可能なのでしょうか.
よろしく,お願いします.
お答えします:
ご指摘の通りと思います.
(1) を以下のように修正すると,解決するのではないでしょうか.
ν が孤立順序数のときは,
τ_ν = max{f(ν - 1), sup{τ_ξ+1 : ξ<ν}}
とおく.ただし,ν - 1 は ν の直前の順序数.
ν が極限順序数のときは,
τ_ν = sup{τ_ξ+1 : ξ<ν}
とおく.
いかがでしょうか.
取り急ぎ,回答まで.
第7章,定理7.18の証明に関する問6の解答について教えて下さい.
『はじめての集合と位相』第7章,問6の解答例(231ページ,下から6行目)についてお教えください.
以下,筆記体の A, B をそれぞれ太字 A, B で表します.
このとき、任意の B ∈ Φ に対して,B ∈ B だから f(B) ∈ B.
ゆえに、f(B) ∈ B_0.
f(B) ∈ B から,f(B) ∈ B_0 が導かれる行間がわかりません.
B_0 ⊆ B なので,B_0 が何であるかがわかっていないのだと思います.
よろしくお願い申し上げます.
お答えします:
定理 7.18 の証明では,有限特性をもつ空でない集合族 A に対して,
A の帰納的な部分族全体の共通部分を B_0 とおきました.
このとき,問6の解答のように,
A の帰納的な部分族全体からなる集合族を Φ とおくと,
B_0 = ∩ {B> : B ∈ Φ}
と表されます.
大切なことは,この定義から,任意の集合 X に対して,
(1) X ∈ B_0 <==> 任意の B ∈ Φ に対して,X ∈ B
が成立することです.
さて,ご質問の箇所では,B_0 が帰納的であることの定義の条件
(2) 任意の B ∈ B_0 に対して,f(B) ∈ B_0
を満たすことを示そうとしています.
以下のように考えます.
任意の B ∈ B_0 をとる(目標は f(B) ∈ B_0).
このとき,(1) より,任意の B ∈ Φ に対して,B ∈ B.
B は帰納的だから,f(B) ∈ B.
以上により,
任意の B ∈ Φ に対して,f(B) ∈ B が成立することが示された.
ゆえに (1) より,f(B) ∈ B_0.
いかがでしょうか.
最後になりましたが,
『はじめての集合と位相』のご購読に御礼申し上げます.
取り急ぎ,回答まで.
部分空間の開核について,答えはこれで正しいでしょうか.
大学生の R です.
{(0, y) ∈ R^2 : y ∈ R} での {(0, y) ∈ R^2 : -1 ≦ y ≦ 1} の開核は,
{(0, y) ∈ R^2 : -1 < y < 1} で正しいでしょうか?
お答えします:
この種の問題は,直観に頼らず,定義に基づいて答えを求めることが大切です.
「部分空間」と「開核」の定義をもう一度復習してから,考えられてはどうでしょうか.
そうすれば,きっとご自分で確信が持てる解答が得られると思います.
冬休みの間に考えて,もしそれでも疑問があれば,
年が明けてから,どこがわからないかを再度ご質問下さい.
R さんの勉強が進むことを祈っています.
取り急ぎ,お返事まで.
第7章,定理7.18(Tukey の補題)の証明について教えて下さい.
『はじめての集合と位相』の定理 7.18(Tukeyの補題)の証明についてですが,
(7.4) (∀A ∈ A)(A ⊆∧≠ f(A) ∈ A)
というところが,わかりません(上の (7.4) の式で,真部分集合であることを「⊆∧≠」としました).
(7.4) では,本書の (7.4) より上の f(A) の定め方から,f(A) のfは A> の選択関数だと思いますが,
もしそうだとすると,(7.4) は,
(7.4) (∀A ∈ A)(A ⊆∧≠ f(A) ∈ A)
ではないかと思います.
どこで,おかしな推論をしているのでしょうか.
よろしくお願いします.
お答えします:
(7.4) の1行上からですが,f(A) をどのように定めたのかを,考えてみて下さい.
任意の A ∈ A をとると,A は順序集合 (A, ⊆) の極大元でないので,
A ⊆∧≠ A' を満たす A' ∈ A が存在します.
そのような A' の1つを選んで,f(A) とおきました.
すなわち,そのような A' は A の要素なので,その1つである f(A) も A の要素です.
選択公理は空気のようなものなので,もしこれで納得されれば,
それで十分と思います.
一般に,選択公理を前面に出して書くと,かえってわかり難くなる場合が多いからです.
参考のために,選択公理を使い方を明記した f(A) の定義を書いておきます.
各 A ∈ A に対して,集合族 B_A を
B_A = {A' ∈ A : A ⊆∧≠ A' }
によって定義する.
このとき,B_A ⊆ A. ・・・(1)
また,A は順序集合 (A, ⊆) の極大元でないので,B_A は空集合でない.
次に,集合族の集合
[A] = {B_A : A ∈ A}
を定義して,[B] に対して,選択公理を適用します.
すなわち,[B] の選択関数
h: [B] ---> ∪[B]
をとる.
78ページの選択関数の定義にしたがうと,h の定義域は [B] - {空集合} であるべきだが, [B] の要素はすべて空集合でないことがわかっているので,空集合を引く必要がないことに注意.
このとき,選択関数の定義より,
(∀B_A ∈ [B])(h(B_A) ∈ B_A) ・・・(2)
が成立する.
ここで,[B] は A を添え字の集合とする集合族だから,(2) は,
(∀A ∈ A)(h(B_A) ∈ B_A)
と表してもよい.
最後に,各 A ∈ A に対して,
f(A) = h(B_A)
と定義する.
以上で,f(A) が定義されました.
このとき,(1), (2) より,
f(A) = h(B_A) ∈ B_A ⊆ A
だから,f(A) は A の要素です.
以上で答えになったでしょうか.
取り急ぎ,回答まで.
距離空間の開集合系は距離空間の唯一の位相構造ですか.
距離空間の位相構造のとり方についてですが, 位相構造として開集合系が距離空間の唯一の位相構造なのでしょうか? 問題としては,距離空間の位相構造として,開集合系が最小かつ最大のものなのかということだと思います. 開集合系が、唯一の位相構造であるような気がしますが,どうでしょうか. よろしくお願いします.
お答えします:
ご質問の中の「距離空間の位相構造」という意味が不明瞭なのですが, お答えしてみます.
距離空間において,距離位相(=開集合系)は定義より一意的に定まります.
距離空間上には他の位相構造も定義できますが,
それらは距離位相とはよびません.
例えば,E^1 においては,距離位相の他にも,離散位相や密着位相をはじめとして,
無限に多くの他の位相構造を定義することができます.
ただし,それらは距離位相とはよばないということです.
実際の研究の場面でも,Banach 空間 X における弱位相など,
X の距離位相と同時に,距離位相とは別の位相構造が使われることがあります.
以上,答えになったでしょうか.
第13章,問7の解答について教えて下さい.
『はじめての集合と位相』の p. 244 の問7の解答例の6行目:
(A.10) より,C ⊆ G_n ∪ H_n
の部分がうまく導けません.
(A. 10) の条件 (Y ∩ A) ∪ (∪_{i>n}B_i) ⊆ G_n (∪_{i≦n}B_i) ⊆ H_n
から導かれるのは分かりますが,具体的に,どうすれば目的の式が導かれるのでしょうか.
お答えします:
C ⊆ Y かつ X = A ∪ B だから,以下のように導かれます.
C ⊆ Y
= Y ∩ (A ∪ B)
= Y ∩ (A ∪ (∪_{n ∈ N}B_n))
= Y ∩ (A ∪ (∪_{i > n}B_i) ∪ (∪_{i ≦ n}B_i))
= (Y ∩ A) ∪ (Y ∩ (∪_{i > n}B_i)) ∪ (Y ∩ (∪_{i ≦ n}B_i)) 分配法則
⊆ (Y ∩ A) ∪ (∪_{i > n}B_i) ∪ (∪_{i ≦ n}B_i)
⊆ G_n ∪ H_n.
取り急ぎ,回答まで.
境界点と集積点の関係について教えて下さい.
はじめまして,H.F.と申します.
数学科は何年も前に卒業しましたが,数学に対する憧憬深く学習中です.
多変数の微分積分に関するテキストの中の1節です.
「点 P_0 に収束する集合 S の点で,P_0 ではない点からなる点列 {P_n} があるとき,P_0 を S の集積点という.」
以上から判断しまして,集合 S の集積点 P_0 と言うのは,P_0 に収束するような点列が存在しなければならないと考えます. そこで,集合 S の集積点とは,S の内点と,後は S の境界点だと自分は考えました. ところが、続く1節で,
「S の境界点は S に含まれなければ集積点である.」
境界点ならば,それに収束する点列が S の中に取れるのではないかと思ったのですが,
「S に含まれなければ」と言う意味がわりません.
これが第1の質問です.
再び続く1節で,
「集合の集積点はその集合に含まれることも含まれないこともある.」
確かに,境界点は,集合 S に含まれることも含まれないこともあると,その定義上理解できますが,
集合 S に含まれない,例えば S の外点はどう頑張っても S の中に収束する点列が取れません.
これがが第2の質問です.
以上2点,疑問にお答え願えれば幸いです.
お答えします:
ご質問にお答えする前に,集積点の定義について確認しておきます. 最初に書かれた定義の中で大切なことは,点列 {P_n} の各項 P_n は S の点であって,さらに,P_0 とは異なる点だということです. このことに注意した上で,ご質問に移ります。
第1の質問ですが,具体例を考えてみるとよいのではないでしょうか.
実数直線 R の部分集合 S = (0, 1] U {2} について考えます.
すなわち,S は半開区間 (0, 1] と1点集合 {2} の和集合です.
このとき,S の境界点 x は,x = 0, 1, 2 の3点です.
この中で,x = 0 と x = 1 は S の集積点ですが,x = 2 は S の集積点ではありません.
したがって,S の境界点であっても,S の集積点であるとは限りません.
第2点「集合の集積点はその集合に含まれることも含まれないこともある。」について,もう一度,上の例を考えます. 上の例では,x = 0 は S に含まれない S の集積点,x = 1 は S に含まれる S の集積点です. 上の文章は,この現象について述べているのであって, 「S に含まれない点がすべて S の集積点である」とは言っていません. H.F.さんが書かれたように,S の外点は S の集積点ではありません.
以上,答えになったでしょうか.
集積点は位相の中では,理解が難しい概念の1つと思います.
H.F.さんの理解が進むことを祈っています.
無限個の閉区間の直積空間のコンパクト性と点列コンパクト性について教えて下さい.
Tychonoff の定理によると,どんなコンパクト空間の直積空間もまたコンパクトになるとあります.
コンパクト空間の個数は,有限,無限関係なしです.
一方,無限次元ユークリッド空間の 1 辺の長さが 1 の立方体には,収束する部分列を持たない数列を作れるので,
点列コンパクトではない,よってコンパクトではありません.
しかし,閉区間はコンパクトなので,Tychonoff の定理に戻ると,
その直積である立方体はコンパクトになるように思えます.
上記のTychonoff の定理と立方体の議論で,何が誤っているか教えて頂けないでしょうか.
お答えします:
問題点は「点列コンパクトでない,よってコンパクトでない」と結論づけた所にあります.
一般に,コンパクトと点列コンパクトは独立した概念です.
すなわち,「コンパクトならば点列コンパクト」とは言えないし,その逆も成立しません.
ただし,距離空間(または距離付け可能空間)に対しては,両者は同値であることがよく知られています.
さて,無限個の単位閉区間 I の直積空間ですが,Tychonoff の定理から,それはいつでもコンパクトです.
特に可算無限個の I の直積空間は距離付け可能ですので,上で述べたことから,点列コンパクトにもなっています.
一方,連続体濃度以上の個数の I の直積空間は点列コンパクトでないことが証明できます.
すなわち,それは点列コンパクトでないコンパクト空間の例になります.
たぶん,ご質問の中で言及しておられることは,この事実だと思います.
コンパクト性と点列コンパクト性,および関連する性質の間の関係については,
岩波『数学辞典』第4版の項目「位相空間」の中の図 1(40ページ)にまとめられています.
もし興味をお持ちでしたらご覧下さい.
以上,答えになったでしょうか.
取り急ぎ,回答まで.