読者からの質問と回答 01211 〜 01220

S.K.さんからの質問 #01220

ノルム空間からその商空間への線形連続関数のノルムが 1 になることを証明しようとしています.

N をノルム空間,M を N の閉部分空間とする.
このとき,任意のεに対し,そのノルムの大きさが 1 であり, ||x+M|| ≧ 1-ε を満たすような x が存在する.

上記の証明がわかりません.
背理法で示すとして,あるεが存在し,任意の x に対して, そのノルムの大きさが 1 ならば,||x+M||<1-ε となることが矛盾を導くことを考えました. 下限の性質からある m が存在し,||x+M|| ≦ ||x+m||<1-ε. この x+m を上手く使えば示せそうなのですが.
ご回答,よろしくお願いいたします.

お答えします:

最初に,商空間 N/M のノルムの定義から,次の事実が成立します.

事実:
任意のスカラー α と任意の x∈N に対して,||(αx)+M||=|α|・||x+M||.

この事実を使って,ご質問の命題を証明します.
ただし,M ≠ N であることを仮定する必要があります.

証明:
任意の ε>0 をとる.
最初に,M ≠ N であることから,N/M は自明な空間ではないので,
ある x_0 ∈ N が存在して,||x_0+M|| = 1.
商空間 N/M のノルムの定義から,
ある m ∈ M が存在して,||x_0+m||<1+ε.
次に,x_1 = x_0+m とおくと,x_1+M = x_0+M だから,
||x_1+M|| = 1.
最後に,x = (1/||x_1||)x_1 とおくと,||x|| = 1.
このとき,上で注意した事実より,
||x+M|| = (1/||x_1||)||x_1+M|| = 1/||x_1||>1/(1+ε)>1-ε.
(証明終)

以上でよいのではないでしょうか.


K.U.さんからの質問 #01219

距離空間の非連結集合が全体空間の交わらない開集合で分離できることの証明を教えて下さい.

初めまして, 『はじめよう位相空間』などで位相空間を勉強しております. 今回メールさせて頂いたのは,距離空間における連結性について質問があるからです.
距離空間 X の部分集合 A において
「ある開集合 U, V が存在して A ⊂ U ∪ V, A ∩ U ∩ V = Φ, A ∩ U ≠ Φ, A ∩ V ≠ Φ となる」
ならば
「ある開集合 S, W が存在して A ⊂ S ∪ W, S ∩ W = Φ, A ∩ S ≠ Φ, A ∩ W ≠ Φ となる」
ということについて証明方法を教えて頂けませんか.
また,このことが成り立つのは距離空間(距離化可能空間)よりも弱い仮定の空間でも成立するでしょうか?
ご回答,よろしくお願いいたします.

お答えします:

証明: 点 x ∈ X の X における ε-近傍を,U(x,ε) で表します.
任意の点 x ∈ A に対して,仮定より,x は U または V の一方の点である.
U と V は X の開集合だから,
x ∈ U ならば,ある ε(x)>0 が存在して,U(x,ε(x)) ⊂ U が成り立ち,
x ∈ V ならば,ある ε(x)>0 が存在して,U(x,ε(x)) ⊂ V が成り立つ.
すべての点 x ∈ A に対して,このような ε(x)>0 をとり,
S = ∪{U(x,ε(x)/2) : x ∈ A ∩ U},
W= ∪{U(x,ε(x)/2) : x ∈ A ∩ V}
とおくと,S と W は求める条件を満たす.(証明終)

ご質問の事実は,少なくとも一般の位相空間では成立しません. 一方,少し専門的になりますが, 下記の論文の中で定義された K_1-空間では成立します.

E. K. van Douwen, Simultaneous linear extension of continuous functions, General Topology and its Applications, vol. 5 (1975), 297-319.

距離空間だけでなく, 距離空間と順序位相空間の一般化である単調正規空間は, K_1-空間であることが知られています. したがって,これらの空間では,ご質問の事実が成立します.

最後になりましたが,『はじめよう位相空間』のご購読に御礼申し上げます.


Y.O.さんからの質問 #01218

球面の裏どうしを貼り合わせると射影平面ができると思うのですが.

本日,書店で 『楽しもう射影空間』を購入し,読んでみました. 私のような非専門外の者にもよく分かる内容で楽しめました.
数学には小学生の頃からたいへん興味を持っていました.

いきなり質問で申し訳ないのですが,私の数学力ではいかんともしがたい問題に直面し, 先生のお力をなんとかお借りしたいと考えました.
補題 1.10 (8 ページ) に関して,表が白で裏が黒のリボンを用意し,半ひねりして接続すると, 接続部で白と黒の境界が出来ますが,そのまま延長して黒どうしを貼り合わせて行くと 2 周目で, 外からは白しか見えない状態になります.
ここで糊を外すと,出て来るのは裏表がある図形で,10 ページの図 1.6 の図形です. このような貼り合わせで裏表が無くなるようにするのは,連続写像と言えるのか, というのが最初の疑問.
普通の 3 次元ユークリッド空間で,閉曲面は数式で表現できて,パラメータを適当に調整すると, なめらかに表裏が無くなってしまうような貼り合わせが可能と思えます.

この,裏どうしを貼り合わせる操作をすると,次の観察が得られます.
球面の裏どうしを貼り合わせると,55 ページの図 2.24 にある射影平面になるようです.
同様に,トーラスの裏どうしを貼り合わせると,53 ページの図 2.22 にあるクラインの壺が得られるようです. つまり,ハンドルが n 個の閉曲面の裏どうしを貼り合わせると, n+1 個のクロスキャップの閉曲面が得られると思いました.
少なくとも,多面体の展開図から貼り合わせ操作をすると,このようになります.
しかし,岩波の『数学事典』をはじめ,類書を見てもこのような指摘は見られないようです.

私の数学の力では,上述のような表現しかできません.
私のイメージでは,球面もトーラスも体積を持ち, 空気を抜いて行くとぺちゃんこになった所で表裏の無い図形が得られる感じです.
そのときに,上述の対応があるというような定理等があるのかどうか,ご示唆をいただければ幸いです.

お答えします:

ご質問を次のように考えてみました.

いま表面が白,裏面が黒の紙を 2 枚用意して, それらの裏面どうしを貼り合わせて,表裏ともに白の 1 枚の紙を作ります. ただし,シール用紙のように,必要なときには 2 枚にはがせるものとします. はがしたときには,黒の面が現れます.

この紙でメビウスの帯を作り,その後で 2 枚にはがすと, 白と黒の面をもつアニュラス(=図1.6の曲面)ができます. 逆に,このアニュラスから,はがしたところを元通りに貼り合わせると, 最初に作ったメビウスの帯に戻ります.
このとき,アニュラスからメビウスの帯に戻す変形は連続写像として表現されます.
ただし,2 : 1 写像ですので,位相同型写像ではありません.
これで,最初のご質問に対する答になったでしょうか.

次に第2の質問に移ります.
ご質問の「球面の裏どうしを貼り合わせる」という表現がわかりにくいので,次のように考えました.
上記の紙で射影平面を作り,その後でそれを 2 枚にはがします. このとき,表裏の区別ができる閉曲面ができますが,それは確かに球面になります.
これは,ご質問の中の「裏どうしの貼り合わせ」を逆の操作で表現していると思います.
同様に,上記の紙で n+1 個のクロスキャップをもつ閉曲面を作り, その後でそれを2枚にはがすと,Y.O.さんが言われる通り, n 個のハンドルをもつ閉曲面になることが類推されます.

数学的な背景ですが, トポロジーに「被覆空間」という概念があり, 任意の向き付け不可能な閉曲面は向き付け可能な閉曲面で 2 重に被覆されること, 特に,射影平面は球面によって 2 重に被覆されること, n+1 個のクロスキャップをもつ閉曲面は n 個のハンドルをもつ閉曲面で 2 重に被覆されることが知られています.
ご指摘の事実は,これらの結果を具体的な言葉で表現されたものと思います.
被覆空間については,
松本幸夫著『トポロジー入門』岩波書店,1985.
等をご覧下さい.

最後になりましたが, 『楽しもう射影空間 - 目で見る組合せトポロジーと射影幾何学』 のご購読に,心より御礼申し上げます.


N さんからの質問 #01217

直積位相または箱位相をもつ直積空間の開集合について教えて下さい.

過日,集積点,極限点,完備性などについて質問をさせていただいた者です.
お陰様で,学びが幾ばくか前進し,位相への興味,関心をより深めることができるようになりました.
さて,誠に恐縮ですが,どうしても解決に至らない疑問が立ちはだかってしまいました. 改めて先生のご指導仰ぎたくお願い申し上げます.

質問は,直積位相と箱位相に関するものです.
私は,直積空間の位相,基底,部分基底を下記のように表記できるものと理解しました.
(略)
私の理解には,誤認、誤謬が少なからぬと思います. ご指摘,訂正のご指導ご教示をお願い致します.

お答えします:

直積位相と箱位相の違いを含めて, 位相空間の直積について,3つの例を通して説明します.

頂いたメールでは,箱位相と直積位相を記述しようとしておられるようですが, 直積空間の開集合の一般形を記述することは困難です. そのため,それらを基底を使って表現します.

例 1(平面の位相) 座標平面 R^2 は,通常の位相をもつ2本の実数直線 R の直積空間ですが, R^2 の場合でさえ,その開集合の一般形を記述することは簡単ではありません. そこで,基底として,2つの開区間の直積集合, すなわち,次の (1) の形の集合全体からなる集合族をとります.

(1) (a, b) x (c, d),  ただし,a<b, c<d.

このとき,基底の定義より,
「平面 R^2 の開集合は (1) の形の集合の和集合として表される集合である」
と表現されます.

例 2(箱位相) 位相空間の族 X_λ (λ∈Λ) に対して,それらの直積集合を X とします.
すなわち,X = Π{X_λ : λ∈Λ}.
このとき,次の (2) の形の集合全体からなる集合族を基底する X の位相構造を X の箱位相とよびます.

(2) Π{U_λ : λ∈Λ},  ただし,各 λ について,U_λ は X_λ の開集合.

つまり,箱位相をもつ X の開集合は,(2) の形の集合の和集合として表される集合です.

例 3(直積位相) 位相空間の族 X_λ (λ∈Λ) に対して,それらの直積集合を X とします.
このとき,次の (3) の形の集合全体からなる集合族を基底する X の位相構造を X の直積位相とよびます.

(3) Π{U_λ : λ∈Λ},
  ただし,各 λ について,U_λ は X_λ の開集合,
  さらに,高々有限個の λ を除いて,U_λ = X_λ.

つまり,直積位相をもつ X の開集合は,(3) の形の集合の和集合として表される集合です.
位相空間の族 X_λ の直積空間とは,この位相構造をもつ X のことを意味します.

上のご質問の中の(略)の箇所で, Nさんは直積集合に箱位相や直積位相を与えた位相空間の開集合の一般形を, 座標空間の開集合を使って直接記述しようと試みられました.
しかし,それは非常に複雑になるだけで,よい考えであるとはいえません.
それが困難であるために,基底(または,部分基底)を使って, 開集合を間接的に表現するのだと考えられてはいかがでしょうか.
以上で,回答になっていればよいのですが.


H さんからの質問 #01216

なぜ逆極限や帰納的極限を極限とよぶのですか?

以前質問させていただきましたHです.
位相に関係する質問があります.

一般の位相空間において、点列の極限の概念を定義することができます.
一方,圏論においても逆極限や帰納的極限と呼ばれる概念が定義されることを知りました. それらの定義自体はわかるのですが,なぜ「極限」とよぶのでしょうか? 名称の由来が呑み込めません.
お願いいたします.

お答えします:

圏論における逆極限(=射影的極限)や帰納的極限は, もともと,位相空間や群に対して逆極限や帰納的極限とよばれる概念があり, それらを一般化したものです.
位相空間や群の逆極限および帰納的極限の定義については, 岩波『数学辞典』などをご覧下さい.

位相空間の逆極限をなぜ「極限」とよぶのか?ということですが, 一般に.極限という用語は,点列や数列だけでなく, 有向集合で順序付けられた集合族に対しても使われます. 位相空間の逆極限は,直積空間における有向集合で順序付けられた部分空間の族の共通部分として表現されるので,後者の場合にあたっています.
一方,位相空間の帰納的極限はあまり極限という感じがしませんが, 逆極限と双対的に定義されるので,極限という用語が使われるようになったのだと推測しています.

以上,簡単ですが,答えになったでしょうか.


S さんからの質問 #01215

べき集合がなぜ位相構造であるのかがわかりません.

I在住のSと申します.このところ数学,情報学などを勉強しております.
私も 『はじめよう位相空間』について質問させていただきます. よろしくお願い致します.
第 10 章の例 10.7 に,

「X を任意の空でない集合とする. 両極端な場合として,X の部分集合族 {Φ, X} と X のべき集合 P(X) はともに X の位相構造である.」

との記述がありますが,X のべき集合 P(X) がなぜ位相構造であるのかがわかりません.
123 ページでは,距離空間においてですが, 「X の部分集合全体からなる集合族をべき集合とよび P(X) で表す.」 と書かれていて,つまり P(X) には開集合だけでなく,閉集合,あるいは,開集合でも閉集合でもない集合が含まれているのものと理解したからです.

一方で,距離空間での場合ですが,
命題「任意の空でない集合 X に対して,任意の距離関数 d を定めると, 距離空間 (X, d) において, べき集合 P(X) は定理 8.13 の3条件 (O1), (O2), (O3) を満たすとは限らない」は正しいでしょうか?

距離 d をいれた場合とそうでない場合で,べき集合の性質が変わっているのかどうかが気になっています.

お答えします:

『はじめよう位相空間』では,距離空間の章で「べき集合」の定義を与えましたが,集合 X のべき集合 P(X) は,距離空間に限らず,任意の集合 X に対して定義される概念です.

ご質問の例 10.7 では,距離空間から離れて,任意の空でない集合 X が与えられたとき, X のべき集合 P(X) が X の1つの位相構造になると書きました.
理由は,べき集合 P(X) を T とおくと,T は X のすべての部分集合を要素として含むので, T が定義10.1の3条件 (O1), (O2), (O3) を満たすからです. 結果として,(X, P(X)) は位相空間になります.

距離空間 (X, d) に対しては,(X, d) の開集合系 T(d) が定義されます.
同時に,距離関数 d とは無関係に,X のべき集合 P(X) も定義されます.
このとき,包含関係 T(d) ⊆ P(X) が成り立っています.
また, T(d) の要素(すなわち,(X, d) の開集合)に対しては,定理8.13が成立し,
一方,P(X) は定義10.1の3性質 (O1), (O2), (O3) を満たします.

そこで, ご質問の「P(X) は定理8.13の3条件を満たすとは限らないと考えてよいか」ですが, その意味を計りかねています. 定理8.13は (X, d) の開集合に関する命題ですが, T(d)=P(X) が成立する場合を除いて,P(X) は (X, d) の開集合でない集合を要素として含むからです.

以上,ご質問に対する答えになっていればよいのですが.
最後になりましたが, 『はじめよう位相空間』のご購読に心より御礼申し上げます.

後日,Sさんから「よく理解できた」というていねいなメールを頂きました.
Sさんの勉強が進むことを祈っています.


H さんからの質問 #01214

一般の位相空間に対して,微分にあたる概念を定義することはできますか?

微分?に関して質問があります.
位相空間が与えられたとき,微分にあたる概念を定義することはできますか?
このような疑問を持った理由としては次のようなことがあります.
集合 X が与えられたとき, 積分については,測度(部分集合族)を与えて積分にあたる概念を定義できます. では、微分に対してもある部分集合族(何らかの条件を課して)を与えて微分にあたる概念を定義できるのか? と疑問に思ったからです. お願いします.

お答えします:

多様体のような構造を何ももたない位相空間上で微分にあたる概念を定義することは可能かというご質問ですが, 少なくとも私はそのような研究を見たことがありません.
ただし, 一般の距離空間から距離空間への写像に対して, 微分のあたる概念を定義する研究をしている人はいるようです. もし興味があれば,下記の論文をご覧下さい.

W. J. Charatonik and M. Insall, Absolute differentiation in metric spaces, Houston Journal of Mathematics, Vol. 33, No.4 (2012) 1313-1328.

ただし,意味のある研究であるかどうかは不明です.
以上,回答になったでしょうか.


H さんからの質問 #01213

ユークリッド空間 E^n の開集合と位相同型であるが, E^n の部分空間でない例を教えて下さい.

位相空間について学んでいます.質問をお願いします.
E^n を n 次元ユークリッド空間(標準位相を入れる)とするとき, 次の2条件 (1), (2) を満たす位相空間 X の例を教えてください.

(1) X は E^n の空でない部分空間と位相同型である.
(2) X は E^n とその部分空間でない.

お答えします:

条件 (2) に複数の意味のとり方がありますので,2つの例を与えます.

可算無限集合 X に離散距離 d を与えた距離空間 (X, d) を考える. すなわち,X の同じ点どうしの距離を 0 とし,異なる2点間の距離を 1 とする.
(X, d) は離散位相をもつので,たとえば,1次元ユークリッド空間 E^1 の自然数全体から部分空間と位相同型.
ところが,(X, d) は有界であるが全有界でないので,E^n の任意の部分空間 Y に対して,(X, d) と Y の間の等距離写像は存在しない.
この例では, E^n の任意の有界集合は全有界であるという事実を用いました.
有界および全有界については 『はじめての集合・位相』をご覧下さい.

単に E^n の部分空間でないということであれば, E^n の要素でないもの,たとえば,複素数 i をとり, 1点 i だけからなる位相空間 X = {i} を考えると, X は E^n の任意の1点からなる部分空間と位相同型ですが, X は E^n の部分空間でありません.
Hさんが求める答えは前者だと思いましたが,念のため,後者も記しました.

質問のつづき:

後日,Hさんから,次の質問を受け取りました.
上の条件 (1) を次の条件 (1*) に変えたとき, (1*) と (2) を満たす位相空間 X の例を教えて下さい.

(1*) X は E^n の空でない開集合と位相同型である.

お答えします:

最初の回答の可算無限部分集合 X を,可算無限個の交わらない開区間の和集合に変えて, X に通常の位相を変えないように,有界かつ全有界でない距離関数を定義すればよいのではないでしょうか.
具体的には,N を自然数の集合とするとき,

X = ∪{(n-1/4, n+1/4):n ∈ N}

とおき,X 上に次のように距離関数 d を定義する.

任意の 2点 x, y ∈ X に対して,
|x - y| < 1/2 ならば,d(x, y) = |x - y|,
|x - y| ≧ 1/2 ならば,d(x, y) = 1.

このとき,距離空間 (X, d) は E^1 の部分空間 X と位相同型.
ところが,(X, d) は有界であるが全有界でないから,E^n の任意の部分空間 Y に対して,(X, d) と Y の間の等距離写像は存在しない.

この例の他にも, 『はじめての集合・位相』の例 8.9 で与えた距離空間
(R^n, d_1) や (R^n, d_∞)
は,E^n と位相同型ですが, E^n の任意の部分空間 Y に対して,(X, d) と Y の間の等距離写像は存在しないと思います.


Y さんからの質問 #01212

「含まれる」の意味について教えて下さい.

次の問題について,M が円で N が山型お椀型が重なった図形だとわかるのですが.「含まれる」とはその重なった部分に入っているということでしょうか?

問題. (y - x^2 + 1)(y + x^2 + 1)<0 を N,x^2 + y^2<r^2 (r>0) を M としたとき,M が N に含まれる r の最大値を求めなさい.

お答えします:

「M が N に含まれる」とは,「M が N の部分集合である」ことを意味すると思います.


H.S.さんからの質問 #01211

共終数 (cofinality) ついて教えて下さい.

現在,位相群の勉強をしていまして,そのなかの自由可換位相群のある定理の証明の中で, 次の記述があるのですが,その理由がわかりません.

順序数位相空間 W(α) の共終数 W(β) は,W(α) の閉部分空間に埋め込める.

β = ω のときは明らかですから,超限帰納法ででも示すのですか?
お時間のあるときで結構ですので,よろしくお願いいたします.

お答えします:

共終数の定義より,写像 f : W(β) --> W(α) で
sup(f(W(β))) = α
を満たすものが存在する.
超限帰納法により,以下のように f を g に作りかえる.

g(0) = f(0) とおく.
任意の順序数 γ < β をとり, すべての ξ < γ に対して,g(ξ) < α が定義されたとする.
このとき,
γ が孤立順序数のときは,
g(γ) = max{f(γ - 1), g(γ - 1) + 1}
とおく.ただし,γ-1 は γ の直前の順序数とする.
γ が極限順序数のときは,
g(γ) = sup{g(ξ) + 1:ξ < γ}
とおく.
このとき,g によって, W(β) は W(α) の閉部分空間に埋め込まれる.

いかがでしょうか.


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