読者からの質問と回答 01231 〜 01240
位相群の表現の定義に関する写像の連続性について教えて下さい.
位相群の表現の定義について疑問があり質問させていただきます.
G を位相群,ρ:G → Aut_k(V) を群 G の表現とします.
ここで,k は体,V は kベクトル空間かつ位相空間です.
Map(V,V) はコンパクト開位相により位相空間となり,
その部分集合 Aut_k(V) に相対位相を入れます.
これにより ρ は位相空間の間の写像となります.
このとき,次の (a), (b) は同値になるのでしょうか?
(a) ρ は連続写像である.
(b) G × V → V; (g,x) ↦ ρ(g)(x) は連続写像である.
解説や文献を紹介していただけるとうれしいです.
お願いいたします.
お答えします:
私は位相群の表現についてまったく知識がありませんので正確な回答はできませんが, ご質問は,次の一般的な定理の特別な場合だと思います.
定理.
X, Y, Z を位相空間とし,Map(Y, Z) にコンパクト開位相を与える.
写像 f: X → Map(Y, Z) に対して,次の2条件 (a), (b) を考える.
(a) f は連続写像である.
(b) X x Y → Z; (x, y) ↦ f(x)(y) は連続写像である.
このとき,(b) ならば (a) は成り立つ.
また,Y が局所コンパクト Hausdorff 空間のときは,(a) ならば (b) も成立する.
M さんのご質問は,上の定理で,X = G, Y = Z = V, f = ρ の場合です.
したがって,(b) ならば (a) は常に成り立ち,
V が局所コンパクトのときは,(a) と (b) は同値になります.
ご質問の場合は,ρ が群の表現であるという特殊事情から,
V が局所コンパクトでなくても,(a) ならば (b) が成立する可能性があるかも知れません.
その辺りのことは,ご自身でお調べ下さい.
上の定理の証明は難しくありませんが,下記の本の16ページに与えられています.
川久保勝夫著『変換群論』岩波書店,1987.
取り急ぎ,回答まで.
距離化可能空間の部分空間に関する質問です.
位相空間 X が距離化可能であるとは,ある距離関数 d をとったとき,
d が定める距離位相が X の位相と一致するという定義だったと思います.
ここで,X が距離化可能のとき,
A がその部分空間ならば A も距離化可能であるということです.
これを考えるとき,もとの距離化可能な X の距離関数を d として
それを A に制限した距離関数 d_A を考えればよいとのことでした.
たしかに,V が X の開集合のとき,V ∩ A は (A, d_A) 開集合となります.
しかし,逆に U が (A, d_A) の開集合のとき,
U は X のある開集合 V を用いて
U = V ∩ A
という形にかけるのでしょうか?
以上,よろしくお願いします.
お答えします:
距離空間 (X, d) の部分空間 (A, d_A) が与えられたとき,
(A, d_A) の開集合 U に対して,
U = V ∩ A
を満たす (X, d) の開集合 V の存在を示す質問と思います.
つまり,距離空間 X の部分距離空間は位相空間としても X の部分空間であるかという質問です.
『はじめよう位相空間』の定理 8.15,
または,
『はじめての集合と位相』の
定理 10.20 に証明がありますので,ご覧下さい.
松坂先生の『集合・位相入門』では,第6章の演習問題になっています.
もしさらにご不明の点がありましたら,再度ご質問下さい.
他大学の先生のセミナーに参加させてもらうことは可能でしょうか.
数学的な質問ではないのですが,この場をかりてお尋ねしたいと思います.
お時間をおかけし申し訳ありませんが,意見を頂けると幸いです.
大学の学生が,他大学の先生が行っているゼミに参加させてもらうことは可能でしょうか?
可能かどうかは,その先生の意見によると思いますが,どのように思われますか?
もし,先生の立場であった場合,どのような対応をされますか?
また,この質問に関連する話を聞いたり,体験されたりしたことはありますか?
お忙しいところ恐縮ですが,ご回答をいただければと思います. お願いいたします.
お答えします:
他大学の先生のゼミに参加することが可能かというご質問ですが, ゼミの単位をとるのではなく,単にゼミに参加させてもらうことだと解釈しました.
ケース・バイ・ケースだと思います.
他大学の学生や卒業生など,本来のゼミ生以外の者が多数参加しているゼミもありますので,
お願いに行かれたら,承諾して頂ける可能性はあると思います.
一方で,いろいろな理由で,断られる場合もあると思います.
例えば,外部からの参加者がいると緊張する性格の学生がいるような場合です.
私の場合は外部からの参加を認めていました.
実際に他大学の学生が聴きに来たこともありましたが,長続きしませんでした.
ご質問の学生がすでに自分の所属する大学でゼミを行なっている場合は,
ゼミの指導教員の意向も考えておく必要があります.
自分のゼミ生が他のゼミに参加することを奨励する先生もおられますが,
そのことを嫌う先生がいることも事実だからです.
一般には,他のゼミに参加して知識を吸収することは有意義なことだと思います.
ただし,人間関係の問題も介在するということではないでしょうか.
以上で回答になったでしょうか.
2つの実数空間 R の対称積は平面 R^2 と位相同型でしょうか. また,複素平面 C の場合はどうでしょうか.
大学の数学科の学生です.
2つの位相空間が同相かどうかを判定する問題がわかりません.
K を実数体 R または複素数体 C として,
直積 K^2 上に次のような同値関係〜を入れ,その同値関係による商空間 K^2/〜 を考えます.
(x, y)〜(y, x) (x, y ∈ K).
このとき,R^2/〜 は平面 R^2 と同相でしょうか.
また,C^2/〜 は直積空間 C^2 と同相でしょうか.
よろしくお願いします.
お答えします:
ご質問の商空間 K^2/〜 は2つの K の対称積 (symmetric product) とよばれます.
対称積 R^2/〜 は上半平面 H = {(x, y) ∈ R^2 : y ≧ 0 } と同相ですが,H と平面 R^2 は同相ではありません.
したがって,R^2/〜 は平面 R^2 と同相ではありません.
複素平面 C の場合について,専門家に尋ねてみました.
結果は,予想に反して,対称積 C^2/〜 は直積空間 C^2 と同相なのだそうです.
証明が書かれてある参考文献を教えてもらいましたので,ご紹介します.
N. Chinen,
Symmetric products of the Euclidean spaces and spheres,
Comment. Math. Univ. Carolinae, vol.56 (2015), 209-221.
上記の参考文献は,
Czech Digital Mathematics Library から無料でダウンロードすることができます.
以上,参考になれば幸いです.
Zorn の補題の証明について教えて下さい.
趣味で物理をやっていて,集合の本を読んでみようと思い,
2か月前位に,松坂和夫著『集合・位相入門』を読み始めたものです.
このツォルンの補題のあたりが全然わからなくて,色々本を買ってみたのですが,やはりよくわからず困っています.
質問したいのは,108-110ページにあることですが,ここに補題2とあります.
中略
110ページの4行目に,「このことに注意すれば,W_0 も条件 (ii), (iii), (iv) を満たすことが容易に検証される.(読者はくわしく考えよ)」と書いてあります.
しかしこれが分かりません.
本に書いてなくてどう考えてもわかりませんでした.
(ii) はともかくなぜ W_0 が (iii) と (iv) を満たすことが分かるのでしょうか?
実はネットでこの本の解答や解説が売っていたので買ってみましたが,説明を見てもよくわかりませんでした.
どうか教えていただけないでしょうか?
よろしくお願いします.
また,ツォルンの補題や,整列可能定理,順序数などが,基本的なとこから分かりやすい本も探しているのですが,
先生の本にも,そういうところが載っているものはあるのでしょうか?
お答えします:
松坂先生の本のご質問の箇所を見ました.
下に,W_0 が (ii), (iii), (iv) を満たすことの証明を書きましたのでご覧下さい.
参考になれば幸いです.
他の本をということですが,松坂先生の本の証明は見通しがよい証明だと思います.
最初はむつかしいと感じられるかも知れませんが,
まずは,この本でしっかり理解されてはいかがでしょうか.
いずれにしても,位相の少し先を学ぶためには,Zorn の補題と順序数は不可欠です.
J. K. さんの勉強が進むことを祈っています.
命題「局所同相写像 => 連続開写像」の逆は正しいでしょうか.
局所同相写像は開写像で連続であることは理解できたのですが,逆は言えるのでしょうか?
つまり、開写像で連続 ⇒ 局所同相写像とは言えるのでしょうか?
ご教示願います.
お答えします:
「開写像で連続 ⇒ 局所同相写像」は成立しません.
たとえば,平面 R^2 から R への射影は連続,開写像ですが,
局所同相写像ではありません.
R^2 の任意の点に近傍は 2次元ですが,R の点の近傍は 1次元だからです.
以上で回答になったでしょうか.
第11章,例11.6の位相空間 (S, T_1) の閉集合はこれで正しいでしょうか.
はじめまして,
『はじめての集合と位相』(第2刷)により勉強している者です.
定義11.8 の直後の記述で,
例11.6 の位相空間 (S, T_1) の閉集合が開集合とまったく同じになっていますが,
これで正しいでしょうか?
よろしくお願いいたします.
お答えします:
ご指摘の箇所ですが,間違いではありません.
例11.6 の位相空間 (S, T_1) の開集合は,
emptyset, {a, b}, {c}, S.
閉集合は開集合の補集合ですので,
位相空間 (S, T_1) の閉集合は,次の4つの集合です.
S - emptyset = S,
S - {a, b} = {c},
S - {c} = {a, b},
S - S = emptyset.
位相空間 (S, T_1) は,
部分集合が開集合であることと閉集合であることが同値であるような位相空間の例になっています.
最後になりましたが,
『はじめての集合と位相』のご購読に御礼申し上げます.
平面の部分集合から直線への(中心)射影の連続性はどのように示せばよいでしょうか.
現在,わたしは以下の問題で頭を悩ませています.
R × [1,∞) の部分集合 K の点(x, y)に対して, (x,y)と原点 O を結ぶ直線と直線 R × {1} との交点を (f(x. y), 1) とするとき, 写像 f: K ---> R は連続であるであることを示せ.
写像fが f(x. y) = x/y で表されることはわかりました.
連続であるためには,任意の点 (a, b)∈K に対して,
(∀ε>0)(∃δ>0)(∀(x, y)∈K)(d((x, y), (a, b))<δ ならば |f(x, y)- f(a, b)|<ε)
が成り立てばよいと思うのですが,どのように示せばよいでしょうか.
お答えします:
写像 f の連続性を示すためには,定義に戻るよりも以下のように考えるのがよいと思います.
指摘されたように,f による点の対応は,
(*) f((x,y)) = x/y
で与えられます.
いま,平面 R^2 から第1座標への射影の K への制限を p_1 とし,
R^2 から第2座標への射影の K への制限を p_2 とします.
すなわち,
p_1: K ---> R; (x,y) |---> x,
p_2: K ---> R; (x,y) |---> y.
射影は連続だから,p_1 と p_2 はどちらも K 上の実数値連続関数である.
このとき,(*) より,
f = p_1/p_2
と表されるから,f も連続である.
一般に,2つの実数値連続関数 g, h (h not= 0) に対して, g/h が連続であることの証明はいろいろな参考書に書かれています. たとえば, 『解いてみよう位相空間-改訂版』問題10.26 をご覧下さい.
直積空間からの射影の稠密部分空間への制限は開写像でしょうか.
一般に,直積空間からの射影 pr は開写像ですが, 直積空間の稠密部分空間 Y が与えられたとき, pr の Y への制限写像も開写像でしょうか.
お答えします:
開写像であるとは限りません.反例があります.
直積空間 R × {0, 1} の稠密部分空間
Y = (R × {0, 1}) - {(1/n, 0) : n ∈ N}
を考える.
このとき,Y の開集合
U = (R × {0}) ∩ Y
の R への射影は R の開集合でない.
距離空間の連結性と ε 鎖についての質問です.
はじめまして. 私は工学部の学生ですが,大学数学の厳密で抽象な論理にどっぷりとハマってしまい, 現在は数学専攻の大学院進学を目指しています. そこで,以下の問題を考えているのですが,どうしてもわかりません.
距離空間 (X, d) において次の条件 (*) を考える.
(*) 任意の ε >0 と任意の2点 x, y ∈ X に対して, (X, d) の有限点列 {x_1, x_2, ・・・, x_n} で,
x_1 = x, x_n = y, d(x_i, x_{i+1})< ε (i = 1, 2,・・・, n-1)
を満たすものが存在する.
(1) (X, d) が連結ならば, (X, d) は条件 (*) を満たすことを示せ.
(2) (X, d) がコンパクトかつ条件 (*) を満たすならば, (X, d) は連結であることを示せ.
(1) は背理法で示そうとしたのですが,条件 (*) の否定がよくわかりません・・・.
お答えします:
細部の証明までは書けませんので,証明の方針を示します.
2点 x, y ∈ X に対して,条件 (*) で述べられた有限点列 {x_1, x_2,・・・, x_n} は x と y を結ぶ ε 鎖とよばれます.
(1) は次のように証明することができます.
X の2点間の関係 R を,
2点 x, y ∈ X に対して,x と y を結ぶ ε 鎖が存在するとき,xRy として定める.
このとき,次の (a), (b) が成立する.
(a) R は X の同値関係である.
(b) R による同値類は (X, d) の開集合である.
(X, d) が連結ならば,(b)より,2つ以上の異なる同値類は存在しない.
すなわち,(X, d) 全体が1つの同値類になるので,
任意の2点 x, y ∈ X に対して,xRy が成り立つ.
ゆえに,任意の2点 x, y ∈ X は ε 鎖で結ばれる.
(2) は背理法で示すのがよいと思います.
もし (X, d) が連結でないとすると,(X, d) は2つの空でない閉集合 A と B に分割される.
仮定より,A と B はコンパクトだから,次の条件 (c) を満たす正数 ε が存在する.
(c) 任意の点 x ∈ A と y ∈ B に対して,d(x, y) > ε.
このとき,A の点と B の点を結ぶ ε 鎖は存在しない.
(a), (b) の証明と,(c) を満たす正数 ε が存在することの証明は, Y.G.さんに残します.
なお,条件 (*) の否定は,
「ある正数 ε と (X, d) の2点 x, y が存在して,x と y は ε 鎖で結ばれない」
です.
無事に大学院に合格されることを祈っています.