読者からの質問と回答 01241 〜 01250

M. T. さんからの質問 #01250

X = [0,2) の部分集合 A = [0,1) の外部はなぜ [1,2) でなく開区間 (1,2) なのですか.

『解いてみよう位相空間 [改訂版]』の第8章の問題 8.18 の (5) で, E^1 の部分空間 X = [0,2) の部分集合 A = [0,1) の外部を求めていますが, A の外部が [1,2) ではなく,なぜ (1,2) になるのか理由を教えて頂きたいです.

お答えします:

一般に,位相空間 X の部分集合 A が与えられたとき, X の点は A の内点または外点または境界点になります. 外点全体の集合が A の外部です. 以上については,定義8.1をご覧下さい.

さて,ご質問の場合ですが,A の外部が [1,2) でなく (1,2) であるのは, 点 x = 1 が A の外点でなく境界点だからです.
点 x = 1 の任意の ε近傍は A と X - A の両方と交わるので,x = 1 は A の境界点になります.
したがって,点 x = 1 は A の外部には属しません.

以上で答えになったでしょうか.
最後になりましたが, 『解いてみよう位相空間 [改訂版]』のご購読に御礼申し上げます.


H. O. さんからの質問 #01249

弧状連結空間の2点を結ぶ弧は位相同型写像にとることができますか.

弧状連結空間 X の2点 x, y は弧 f: [0, 1] ---> X で結ばれますが, 弧 f を [0, 1] から f([0,1]) への位相同型写像になるようにとることができますか. 弧状連結空間の勉強していて疑問に思いましたので,質問しました.

お答えします:

ご質問ですが,弧 f を [0, 1] から f([0, 1]) への位相同型写像になるようにとることができます.
閉区間の連続写像による像である空間は,連結かつ弧状連結なコンパクト距離化可能空間として特徴付けられることが知られています (Hahn-Mazurkiewicz の定理). また,そのような空間はペアノ連続体とよばれます. そして,ペアノ連続体の任意の2点は埋蔵 f: [0, 1] ---> X で結ばれることが知られています (Mazurkiewicz-Moore の定理). ここで,f が埋蔵であるとは f の終域を f([0, 1]) に変えた写像が位相同型写像であることを意味します.
ご質問の弧状連結空間 X の2点 x, y に対しては,x と y を結ぶ弧 f: [0, 1] ---> X が存在しますが, f([0, 1]) はペアノ連続体になるので,その2点は埋蔵 g で結ばれることになります. このとき,g の終域を g([0, 1]) に変えると,位相同型写像になります.
上で引用した定理が書かれている参考書を紹介しておきます.

John G. Hocking and Gail S. Young, Topology, Dover Publications 1961.


S. S. さんからの質問 #01248

Zorn の補題の証明について教えて下さい.

現在数学を独学しております.集合と位相は現代数学の基本とのことから,松坂和夫先生の『集合・位相入門』を読んでいます.なんとか一通り読み終え,現在二周目ですが,相変わらずわからない箇所も少なくありません.とくに「直ちに」,「明らかに」といった記述が私にとってはまったく明らかではなく,この一行で半日を潰してもなお解決しないこともあり,そういった箇所に出会うたびに心が折れそうになります.途方に暮れながらもネットで調べていると質問#01236で『集合・位相入門』への回答があったため,私も質問させていただこうと思い,メールした次第です.

『集合・位相入門』の Zorn の補題の証明についての質問です.

P110 の 8~11行目「実際,もし a notin W_0 ならば,W_0 ∪ {a} = W'_0 もまた条件 (i)-(iv) を満足することが(中略)直ちにみられる」とあります.(i) と (ii) は確認できたのですが,(iii) が確認できません.以下,私が途中まで考えたことです.

W'_0 の元 x が W'_0 の中に直前の元 x* を持つとする.
W'_0 = W_0 ∪ {a} なので, x ∈ W_0 または x ∈ {a} である.
x ∈ W_0 とすれば,同ページ5行目の「検証」と同様.
x ∈ {a} とする.
示したいことは W'_0 の元 a が W'_0 の中に直前の元 x* をもつならば, a = φ(x*) であるが,・・・(早速詰まりました).

お答えします:

(iii) を満たすことを示すために, W'_0 の元 x が W'_0 の中に直前の元 x* をもつとします.
このとき,x ∈ W_0 または x ∈ {a}. 
問題は後者の場合ですが,x = a ならば,直前の元 x* は W_0 の最大元になります.
したがって,x* = sup W_0 = a となり,x* が a の直前の元であることに矛盾します.
つまり,ご心配の x ∈ {a} の場合は考えなくてよいということです.
これで回答になったでしょうか.


K. T. さんからの質問 #01247

明後日,テストです.

明後日テストがあるので, 解けるところまででいいので明日のいつでも構わないので解答を送ってくれたらありがたいです. 特にやってほしい問題は大問1と大問4です. この2問はなるべく早く送っていただきたいです.お願いします.

添付書類「オンライン授業の期末試験問題」(略)

5日後に,下記のようにお答えしました:

ご質問,拝見しました.
前期末試験は無事に終わったでしょうか.
数学科の試験は,終了後が大切です.
幸い,いまから夏休みですので,もし不明な点があれば, この機会にゆっくり考えられてはいかがでしょうか.
その上で,なお疑問点があれば,2ヶ月後に再度ご質問下さい.

なお,位相空間質問箱では, 添付書類や画像を貼り付けてのご質問を遠慮していただいております.
質問はメール本文に直接書いていただくように,お願いいたします.
K. T. さんの勉強が進むことを祈っています.


T. Y. さんからの質問 #01246

第6章,Bernstein-Schroder の定理 6.23 の証明について教えて下さい.

数学を独学中の者です. 『はじめての集合と位相』で楽しく勉強させていただいており,感謝しています.

P76の6行目 :

D = ∪D ⊆ D*

がどのようにして導かれたかわかりません.
D = ∪D は定義なので,つまり,∪D ⊆ D* がわかりません.
この導き方についてご回答いただければ幸いです.どうぞよろしくお願いします.

お答えします:

D ⊂ D* を証明するために, 左辺の任意の要素が右辺の要素であることを示します.
任意の要素 x ∈ ∪D をとると,和集合の定義 4.7 (44ページ) より,
x ∈ A を満たす A ∈ D が存在する.
このとき,
A ∈ D だから,A ⊆ ∪D = D.
(6.8)より,A* ⊆ D*.
D の定義より,A ⊆ A*.
以上により,x ∈ A ⊆ A* ⊆ D*.
結果として, 左辺の任意の要素は右辺の要素である.

いかがでしょうか.
最後になりましたが,『はじめての集合と位相』のご購読に御礼申し上げます.


D.I.さんからの質問 #01245

複素平面上で集合 D_r = {z ∊ D : d(z; ∂D) > r} が開集合である理由を教えて下さい.

複素関数論の中で位相的なお話が出てきて, そこがわからなかったので質問させていただきます.
中略 
集合 D_r = {z ∊ D : d(z; ∂D) > r} は開集合である.
・・・
ここで,D_r が開集合であることが d(z; ∂D) > 0 からいえるということが書かれてありますがどうしてかわかりません.
どうぞよろしくお願いします.

お答えします:

集合 D_r がなぜ開集合かというご質問ですが, 理由は関数 f(z) = d(z; ∂D) が連続だからです.
このとき,D_r は R の開集合 {x ∊ R : x > r} の f による逆像ですので開集合になります.

複素平面に限らず,一般に距離空間 (X, d) の部分集合 A に対して,
D(x, A) = inf{d(x, y) : y ∊ A}
と定義すると,関数 f(x) = d(x, A) はリプシッツ関数になり,連続になります.
証明は難しくはありませんが,下記の参考書の250ページに書かれています.
松坂和夫著『集合・位相入門』岩波書店.
ご参考になれば幸いです.


R.M.さんからの質問 #01244

位相同型かどうかを判定するアルゴリズムは存在するでしょうか.

今まで何度か質問させていただいた M と申します. この度は,位相空間に関する質問をさせていただきます.

「任意の位相空間 X, Y が与えられたとき, X と Y は位相同型かどうかを有限回の手続きで判定するアルゴリズムは存在しない」という話を聞いたことがあります.
しかし,その根拠となる文献を見つけることができていません. したがって,上の主張が正しいかどうか私は理解できていません. もしご存知であれば,証明または反例が記載されている文献を紹介してほしいです.

また,似た主張ではありますが,「任意の集合 X, Y が与えられたとき, X と Y が集合として同型かどうかを有限回の手続きで判定するアルゴリズムは存在するか?」 ということに関しても同様に,文献を紹介していただけたらと思います.
お忙しいところ恐縮ですが,返答をいただけたら幸いです.

お答えします:

ご質問の命題ですが,私は聞いたことがありません. 従いまして,文献も存じておりません.
悪しからず,ご了解ください.

後の主張について,集合 X と Y が集合として同型の意味は, X と Y の濃度が等しいという意味だと思います. このとき,X と Y に離散位相を与えると,X と Y の濃度が等しいことは, X と Y が位相同型であることと同値になります.
しかし,2つの集合の濃度が等しいかどうかは, 通常の集合論の公理系からは決定できない場合があります. たとえば,X を可算順序数全体の集合とし,Y を実数全体の集合とすると, X の濃度は最小の非可算濃度,Y の濃度は連続体の濃度です. したがって,連続体仮説の独立性から,通常の集合論の公理系からは, X の濃度と Y の濃度が等しいことも等しくないことも証明できません.

つまり,アルゴリズムの存在以前の問題があるように思いますが, いかがでしょうか.
以上,ご参考になれば幸いです.


R.S.さんからの質問 #01243

まったくわかりません.

S が無限集合のとき,補有限位相 O に対し (S,O) は可分であることを示せ.
全くわかりません・・・お願いします.
iPhoneから送信.

お答えします:

まったくわからないとのことですが, 本当に何もわからないのでしょうか.
もし位相空間についてまったくわからないということでしたら,位相空間の最初から, また,数学がまったくわからないということでしたら,数学の最初から 勉強される必要があります.
たぶん,そういうことではなく,ある程度の所までは理解しておられるのではないでしょうか.

ご質問の問題について, どこまでは理解していて,何がわからないかを, 具体的に書いて頂けるとお答えしやすく思います.
取り急ぎ,お返事まで.


Y.F.さんからの質問 #01242

第13章,問題16が解けなく,苦しんでおります.

『はじめての集合と位相』, の演習問題を解いているものです. 演習問題がこの本のメインでは無いと理解してはいるのですが,どうしても13章の問題16が解けなく,苦しんでおります. 非空とコンパクト集合は示すことが出来ましたが,連結集合であることがどうしても示せません.ヒントだけでも頂けませんでしょうか.

お答えします:

共通部分が空でないコンパクト集合であることは証明できたとのことです.
ここまでは,連結性を使用しないので,次の主張が証明できたことになります.

主張:
ハウスドルフ空間の空でないコンパクト集合の単調減少列の共通部分は空でないコンパクト集合である.

そこで,問題16の C_n 共通部分を C とおき,C が連結であることを示します.
もし C が連結でないならば,C は2つの交わらない閉集合 K と L の和として書ける.
上の主張より C はコンパクトだから,K と L もコンパクト.
したがって,演習問題12の問題9の条件を満たす X の開集合 U と V が存在する.

注意:
演習問題12の問題9の2行目の左端の K は L の誤植です. なお,第6刷以後では修正されています.

このとき,各 C_n は連結だから,C_n は和集合 U ∪ V に含まれない.
したがって,D_n = C_n - (U ∪ V) とおくと,D_n は空でないコンパクト集合である.
ところが,D_n の共通部分は空だから,上の主張に矛盾する.

いかがでしょうか.
最後になりましたが, 『はじめての集合と位相』のご購読に御礼申し上げます.


R.M.さんからの質問 #01241

第6章,例6.9 の証明について教えて下さい.

『はじめよう位相空間』, 82ページの例6.9に関して質問があります.
(6.2)式なのですが,なぜ
|φ(x_0) - φ(x)| < ε/2
とするのでしょうか?
φ の連続性から ε-δ 論法を採用することで任意の ε > 0 を取れるのはわかりますが, ε/2 としている理由がわかりません. ε ではダメなのでしょうか?
解答していただけると幸いです.

お答えします:

例6.9では,関数 φ がある点 x_0 で正の値をとることから, Φ の定積分が正になることを導いています.
このことを,次の (1), (2), (3) の順に示しました.
(1) φ はある点 x_0 で正の値をとる.
(2) φ はある区間の上で ε/2 以上の値をとる.
(3) φ の定積分は正である.

そこで,ご質問に対する答ですが, (6.2)式において,ε/2 とした理由は, 次の(6.3)式において,φ(x) > ε/2 を導くためです.

もし(6.2)式において,ε とおくと, 次の(6.3)式では,φ(x) > 0 となります.
φ(x) > 0 を使って,上の (3) を示してみて下さい.
証明はできますが,ひと手間余計にかかることがわかると思います.

つまり,後の議論を簡単にするために,(6.2)式において ε/2 としました.
以上で回答になったでしょうか.
最後になりましたが, 『はじめよう位相空間』のご購読に御礼申し上げます.


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