キレート化合物
図−@の模式図のように、中心にあるFeやCu・Mnなどのような金属イオンが1つの配位子注)−1からなる複数の配位座注)−2の基に形成された化合物のことをいます。また、キレートとは蟹のような甲殻類のはさみのことを意味し、これをギリシヤ語でchelaと呼ぶようにしました。このchelaがFeなどの金属イオンを挟んでいるようすがイオンの結合(これを配位結合注)−3といいます)のようすに良く似ていることから、このように呼ぶようになりました。
注)−1 配位子・・・・・配位結合できる能力を持つ電子供与体
注)−2 配位座・・・・・図−Bを参照
注)−3 配位結合・・・1つの原子を中心として、その原子について方向性をもった結合を考えたとき、結合に関与している電子が形式的に一方の原子からだけ提供されている場合をいう。
何故、キレート化合させないといけないのか!!
金属イオンをそのまま、つまり、無機の状態で土壌に与えた場合、その金属は土壌や水の中の酸素やリン酸そして水酸基と反応して化合してしまう。それでは肥料の効果は得られない。そこで、予めキレート剤なるものと化合させておいてキレート塩(エンと読む)を作り施肥することで土壌中のリン酸などと化合するのを防ぐことができ、肥効を期待できる。
難溶、または不溶の塩
肥料としての無機の金属をそのまま圃場や養液に与えた場合、土壌などが酸性のときはそこに存在するリン酸(P-)と化合してしまい、難溶又は不溶の塩となる。
(養液の場合は沈殿する)
例えば、
鉄では ・・・・・・・・・リン酸鉄 ・・・・・・・・・FePO4 ・・・・・・・・・・・・・・・不溶(pH6.0以下)
銅では ・・・・・・・・・リン酸銅 ・・・・・・・・・Cu3(PO4)2 ・・・・・・・・・・・・不溶
マンガンでは ・・・・リン酸マンガン ・・・・MnHPO4 ・・・・・・・・・・・・・・難溶
モリブデンでは ・・・リンモリブデン酸 ・・・P2O5・24MoO3 ・・・・・・・・・微溶
亜鉛では ・・・・・・・リン酸亜鉛 ・・・・・・・Zn3(PO4)2 ・・・・・・・・・・・・不溶
土壌などがアルカリ性のときにはそこに存在するリン酸(P-)とは化合せず、アルカリ性となる原因の水酸基(OH-)と化合して難溶又は不溶の塩となる。
(養液の場合は沈殿する)
例えば、
鉄では ・・・・・・・・・水酸化鉄 ・・・・・・・・・Fe(OH)2,Fe(OH)3 ・・・・微溶
銅では ・・・・・・・・・水酸化銅 ・・・・・・・・・Cu(OH)2 ・・・・・・・・・・・・不溶
マンガンでは ・・・・水酸化マンガン ・・・・Mn(OH)2 ・・・・・・・・・・・・不溶
モリブデンでは ・・・水酸化モリブデン ・・・MoO(OH)3 ・・・・・・・・・・・微溶
亜鉛では ・・・・・・・水酸化亜鉛 ・・・・・・・Zn(OH)2 ・・・・・・・・・・・・・微溶
硼酸では ・・・・・・・硼酸石灰 ・・・・・・・・・CaB4O7 ・・・・・・・・・・・・・・難溶
以上のように、
無機の金属として土壌や養液に与えても水には難溶又は不溶となり、肥料の効果はほとんど期待できません。そこで土壌中や養液中においてもリン酸や水酸基と化合しない金属が要求されるわけで、そのようなときには予め施用前に化合させた金属が必要なことになる。
それがEDTA注)−4や蟻酸注)−5・クエン酸注)−6などと化合した 有機の金属つまりキレ−ト化合物である。
注)−4 Ethylene Diamine Tetraacetic Acid(エチレンジアミン四酢酸) 分子式:C10H16N2O8 分子量:292.25
注)−5 蟻酸(Formic Acid) 蟻酸カルシウムの場合の分子式:Ca(HCOOH)2
注)−6 クエン酸(Citric Acid) 分子式:C3H4(OH)(COOH)3・H2O 又は、C6H8O7・H2O
■EDTAとは
無色の結晶性粉末で水に難溶であるが、Naなどの塩は易溶となる。2価金属イオンとキレート型化合物を作る。
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