有 機 金 属


                                                           更新日:2011年11月20日


 植物栽培用として使われる金属にはエチレン・ジアミン4酢酸2ナトリウム(E・D・T・A)と化合させた 有機(キレート)の金属があります。

キレート鉄,キレート銅,キレート亜鉛,キレートマンガンを使用したものです。これについては昭和48年秋、 カーネーションの礫耕栽培で半年間培養液を更新しないでキレート金属塩を使用していると、 必ず萎凋しはじめ障害が発生する事が判明しましたので、培養液を分析したところ

金属と化合していない余分のエチレン,ジアミン4酢酸2ナトリウム が検出されました。これは10-6の微量でも植物の生育過程でピルビン酸脱水素酵素→ クレブス回路→呼吸作用を阻害するために、障害をもたらしたものと思われます。

 また、平成17年冬期、長野県においてNFTシステムのトマト水耕栽培で、 キレート(EDTA) を主体とした微量要素と補助的に有機酸微量要素(週一回規定量)を使用したところ、やはり成長点が萎縮してきました。これは有機酸微量要素に含まれているクエン酸が強烈なキレート効果の要因となった為、今まで不溶となっていたEDTAが急激に植物体内に取り込まれた為と思われます。 有機酸微量要素だけに変更したところ、 問題も無く品質・収量ともに大変良い結果を得る事ができました。


             <<参考資料>>

EDTAがピルビン酸脱水素酵素を阻害するという事を記述した生化学辞典と酵素ハンドブック

      資料−@        
東京化学同人発行の生化学辞典第1版1984年
      資料−A        
EDTAがピルビン酸脱水素酵素を阻害するという事を記述した内容の部分
    東京化学同人発行の生化学辞典第1版1984年 EDTAがピルビン酸脱水素酵素を阻害するという事
を記述した内容の部分


      資料−B        
朝倉書店発行の酵素ハンドブック第4版1986年
      資料−C        
 EDTAがピルビン酸脱水素酵素を阻害するという事を記述した内容の部
     朝倉書店発行の酵素ハンドブック第4版1986年 “Mn2+,EDTA,Cd2+,CMBで強く阻害される”
と記述ある。(画面をクリックすれば拡大できます)


              <<参考写真>> EDTA−Feと有機酸鉄の吸収差異

  EDTA−Feでは
   写真−@        
吸収されずに沈殿したEDTA−Fe
   写真−A        
Fe検定紙にてFe反応試験
吸収されずに固形化した沈殿物の特定試験。
砂のように、次第に沈殿量が増えてくると言う。何だろうと常々考えていたが・・・??これを取り出してクエン酸で溶解して・・・Feの反応があるかどうか検定紙で確認してみると・・・、
この通り、陽性反応。 つまり、不溶となった微量要素である。
特に、培養液のpH修正(アップ作業)をしなかったとの事なので、不溶となったEDTAは時間経過と共に解離し、 キレートから離れた 微量要素はpHが低いままの培養液の中で、リン酸と化合し、沈殿したのではないか?と言う推測が出来る。


  有機酸鉄では
   写真−B        
このように根が未発達でも・・・
   写真−C        
7分程度でほぼ0ppm
一方、有機酸微量要素では、このように根が未発達なものでも・・・・(苗を定植した直後の写真。混入した濃度は3ppm。) 7分程度でほぼ0ppmとなっている。これだけ吸収力が強い。逆に、与えすぎたり、濃度を間違えば極端な過剰症害となるのは必至となる。

写真−D              撮影日:2011年8月7日
Fe吸収のテスト。3分で0ppm
写真−E              撮影日:2011年8月7日
Fe吸収のテストはこのベットの作物を抜き取り移植した。手前の抜き取った部分がその場所とその生育状況の全景
養分吸収を確認する為の俄(にわか)作りの簡易プラント。
これなら少々荒っぽいテストをしても大丈夫、新しい試みをする場合はここで濃度などの投与テストを行い、害が出ないかどうか確認をし、 1日遅れて本ベットに投与する。

このミニプラント(水量16g・32穴)は、写真−Eの手前の左部分に植えてあった作物をここに移植した。 この吸収テストでは3分で0ppmとなった(混入時の濃度は3ppm)。残念!検出した際の写真がない。 初めてのEDTAから有機酸への切り替えには、面倒でもこのように手の込んだ安全策が必要。

生育全景写真。更に、ここに3ppmを流し込んで10m下流域で計測すると、ほぼ0ppmとなっていた。 これが有機酸の吸収力であるが、この急激な吸収の為、全長45mの片流れのこのベットでは末端域まで届かない。

それでは微量要素欠乏を来してしまう域が出てしまうので、その投与作業は4〜5ヶ所に分割して流し込まなければならない事となった。




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