植物栽培用として使われる金属にはエチレン・ジアミン4酢酸2ナトリウム(E・D・T・A)と化合させた 有機(キレート)の金属があります。
キレート鉄,キレート銅,キレート亜鉛,キレートマンガンを使用したものです。これについては昭和48年秋、 カーネーションの礫耕栽培で半年間培養液を更新しないでキレート金属塩を使用していると、 必ず萎凋しはじめ障害が発生する事が判明しましたので、培養液を分析したところ
また、平成17年冬期、長野県においてNFTシステムのトマト水耕栽培で、 キレート(EDTA) を主体とした微量要素と補助的に有機酸微量要素(週一回規定量)を使用したところ、やはり成長点が萎縮してきました。これは有機酸微量要素に含まれているクエン酸が強烈なキレート効果の要因となった為、今まで不溶となっていたEDTAが急激に植物体内に取り込まれた為と思われます。 有機酸微量要素だけに変更したところ、 問題も無く品質・収量ともに大変良い結果を得る事ができました。
<<参考資料>>
資料−@ |
資料−A |
東京化学同人発行の生化学辞典第1版1984年 |
EDTAがピルビン酸脱水素酵素を阻害するという事 を記述した内容の部分 |
資料−B |
資料−C |
朝倉書店発行の酵素ハンドブック第4版1986年 |
“Mn2+,EDTA,Cd2+,CMBで強く阻害される” と記述ある。(画面をクリックすれば拡大できます) |
■ <<参考写真>> EDTA−Feと有機酸鉄の吸収差異
写真−@ |
写真−A |
吸収されずに固形化した沈殿物の特定試験。 砂のように、次第に沈殿量が増えてくると言う。何だろうと常々考えていたが・・・??これを取り出してクエン酸で溶解して・・・Feの反応があるかどうか検定紙で確認してみると・・・、 |
この通り、陽性反応。
つまり、不溶となった微量要素である。 特に、培養液のpH修正(アップ作業)をしなかったとの事なので、不溶となったEDTAは時間経過と共に解離し、 キレートから離れた 微量要素はpHが低いままの培養液の中で、リン酸と化合し、沈殿したのではないか?と言う推測が出来る。 |
写真−B |
写真−C |
一方、有機酸微量要素では、このように根が未発達なものでも・・・・(苗を定植した直後の写真。混入した濃度は3ppm。) | 7分程度でほぼ0ppmとなっている。これだけ吸収力が強い。逆に、与えすぎたり、濃度を間違えば極端な過剰症害となるのは必至となる。 |
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養分吸収を確認する為の俄(にわか)作りの簡易プラント。 これなら少々荒っぽいテストをしても大丈夫、新しい試みをする場合はここで濃度などの投与テストを行い、害が出ないかどうか確認をし、 1日遅れて本ベットに投与する。 このミニプラント(水量16g・32穴)は、写真−Eの手前の左部分に植えてあった作物をここに移植した。 この吸収テストでは3分で0ppmとなった(混入時の濃度は3ppm)。残念!検出した際の写真がない。 初めてのEDTAから有機酸への切り替えには、面倒でもこのように手の込んだ安全策が必要。 |
生育全景写真。更に、ここに3ppmを流し込んで10m下流域で計測すると、ほぼ0ppmとなっていた。
これが有機酸の吸収力であるが、この急激な吸収の為、全長45mの片流れのこのベットでは末端域まで届かない。 それでは微量要素欠乏を来してしまう域が出てしまうので、その投与作業は4〜5ヶ所に分割して流し込まなければならない事となった。 |