酵素は生命のすべてだ!!

更新日:2012年 1月 6日

前書き

我々は食品を保存するのに、冷蔵庫・冷凍庫を利用する。これは酵素の至適温度という特徴を利用したものである。低い温度に設定することで酵素や細菌の働きを制御しているのである。逆に、化学の実験などで反応を早くする(温度を10℃上昇させると反応速度は2倍になるといわれる)ために温度を上昇させる。このように我々は、身近なところで知らず知らずのまま、この酵素の特徴の一つである至適温度(酵素は特定の温度範囲で活性化する)という反応作用をうまく利用している。

また、除草剤などの農薬への利用では、ある種の植物が正常に成長して行くためには、各々の生長過程で、例えば、根から吸収された物質が分解したり合成されたりすることが必要である。そして、その物質の変換過程には各々に特有の酵素が作用している。逆に、その植物を枯れ死させるには必須とされる酵素を阻害すれば正常に生長しなくなるわけである。例えば、今栽培している果菜類とその圃場で邪魔になっている雑草の植物を比較し、その雑草のみに必須となる酵素を探し出し、その酵素を阻害すれば良いということになる。その様な阻害剤を散布すれば、その雑草は枯れ死してしまうが、一方の栽培作物はその酵素を持ち合わせていないので枯れることはない。これが農薬の仕組みである。

この原理は、一般の医薬品でも同じである。****阻害剤とある薬は、このような酵素の働きを抑えるための薬である。そうすることで、その病気特有の症状を和らげているのである。そのために、正常な働きをしなければいけない臓器までもが阻害・抑制されることがある。それが副作用といわれるものである。
 このように、酵素は
『 生命現象が多種多様であるように、それに伴う物質代謝の経路も複雑多岐にわたっている。それらおのおのの物質代謝は、何れもその反応に対して特異的に働く酵素の存在によって促進され、あるいは可能にされているのである。従って酵素は、いわば生命を担っている物質ということもできるもので、その研究は生化学の最も重要な部分を占めている 』 酵素ハンドブック= 朝倉書店から =

  1. 主成分はタンパク質。
  2. 反応を促進する触媒として働く。(生体触媒)
  3. 特有の至適pHを有し、それ以外のpHでは活性を失う。(至適pH)
  4. 特有の物質のみに働き、それ以外の物質には全く活性化しない。(基質特異性)
    例えば、尿素分解酵素(ウレアーゼ)は尿素だけに働きアンモニア化することができるが、他の窒素分の硝酸態窒素には全く働かない。
  5. 金属を構成分子に持つが、金属を補助構成分子としているものもあり、この場合、この特有の金属がないとその酵素は活性を全く失う。
  6. 酵素は特定の温度範囲でその機能を活性化する。(至適温度)
    ※人が風邪をひき、体温が40℃になれば急激に体力がなくなるのは、その酵素が働き難くなるのが要因。(人に存する酵素は36〜40℃が至適温度)
    (NHK『高校講座』のページ |生物|恒常性〜体温がほぼ一定な訳〜

ピルビン酸脱水素酵素(pyruvate dehydrogenase)
糖質をクエン酸回路に誘導する際、最初に働く酵素である。この酵素はMg2+,Ca2+の電子を必要とする。至適pHはMg2+,Ca2+存在下で共に6.5〜7.0である。
注−1) 36μMのエチレンジアミン四酢酸(EDTA)で40%阻害、360μMで完全阻害されるが、過剰のMg2+,Ca2+により賦活化する。
注−2) EDTAは金属イオン捕集剤としての利用される。また、生物学や分子生物学において、酵素の不活性化剤として広く用いられている他、微生物には分解できないため、環境への影響からヨーロッパでは使用が規制されている。 < Wikipedia の使用例から >
*賦活(フカツ)・・・・『医学』活力を与えること。


T.生体内における化学反応を促進する生体触媒

過酸化水素水(オキシドール)の分解反応    化学式2H2O2 → @・A・B → 2H2O + O2
@ 触媒なし → ゆっくり分解
A 酸化鉄(FeO)を加える → 急激に分解

過酸化水素水に鉄を加えると気泡が発生する。この気泡は酸素ガスである。過酸化水素水は酸素ガスを出して、遂には水だけになるが、鉄そのものは少しも変化をしない。またこの反応は発熱を伴わず常温で行われる。怪我をして、傷口をオキシドールで消毒すると血液と反応して勢いよく泡が出る反応。血液の赤色は赤血球、その中には鉄分が多く含まれているのは周知の通り。

B レバー(肝臓片)を加える → 急激に分解
 レバーにはカタラーゼという酵素が多く含まれている。酸素ガスが勢いよく発生する。< /p>

カタラーゼ( Catalase )
過酸化水素の分解反応を触媒する酵素。嫌気的に生育する細菌を除き、ほとんどすべての生物に存在する。哺乳動物では肝臓・腎臓・赤血球、高等植物では葉緑体などに多量含まれている。牛の肝臓1Kgから約0.2gの収量がある。

Fe3+を作用基とするたんぱく質である。植物体内では葉緑素の生成、光合成、呼吸、根からの陰イオン吸収に関与しているといわれ、植物には大変重要な働きをしていると考えられている。


U.植物体内における化学反応

光合成によって作られたC6H12O6はグルコースといわれる果糖または、ブドウ糖である。もし、このようなグルコースを分解して炭酸ガス(CO2)と水(H2O)にする為に、この反応を人為的に試験管で行うとすれば加熱して溶解するなどの作業が必要である。そして、この ような過程の為には約600℃の熱を必要とする。もしも、このような高温を植物に与えたとするならば、結論は言うまでもない。燃え尽きて灰になるまでである。ではどうして植物は、このような酸化・還元作用を常温で行えるのか。常温で多大なエネルギーを必要としないで、化学変化を行うことができるのか。

 その答えが酵素の触媒作用である。 (詳しくは植物の営みのページへ)


V.植物代謝クエン酸回路)に関与している主な酵素と作用する金属

植物が生きるべく呼吸をする回路(クレブス又はTCA回路ともいう)

注)-@ 鉄キレート剤・シアン化合物・亜硫酸塩の阻害を受ける。
注)-A Mn存在下25℃に加温すると賦活化する。
   酵     素     名   作    用  必要金属と電子
 @  ピルビン酸デヒドロゲナーゼ(脱水素酵素)
 (pyruvate dehydrogenase)
 ピルビン酸  →  アセチルCoA   Mg2+・ Ca2+
 キレート剤で阻害 
 A  クエン酸シンターゼ(合成酵素)
 (citrate synthetase)
 アセチルCoA  → クエン酸    
 B-1  アコニット酸ヒドラターゼ(水和酵素)
 (aconitate hydratase) 注-@
 クエン酸  ⇔  シスアコニット酸  鉄キレート剤で阻害
 fe2+で回復
 B-2        〃     
       〃
 シスアコニット酸  ⇔  イソクエン酸  
 C-1  イソクエン酸デヒドロゲナーゼ
 (isocitrate dehydrogenase)
 イソクエン酸  ⇔  オキザロコハク酸   Mn2+  注-A
 Mg2+
 C-2        〃     
       〃
 オキザロコハク酸  ⇔  α-ケトグルタル酸   
 D  α-ケトグルタル酸デヒドロゲナーゼ
 (α-ketoglutarate dehydrogenase)
 α-ケトグルタル酸  ⇔  スクシニル-CoA   Mn2+
 E  スクシニル-CoAシンテターゼ
 (succinyl CoA synthetase)
 スクシニル-CoA ⇔ コハク酸   Mg2+
 Mn2+
 F  コハク酸デヒドロゲナーゼ
 (succinate dehydrogenase)
 コハク酸 ⇔ フマル酸   Feを8原子と
 Sを含む
 G  フマル酸ヒドラターゼ
 (fumarate hydratase)
 フマル酸 ⇔ リンゴ酸   尿素にて失活
 P3-
 H  リンゴ酸デヒドロゲナーゼ
 (malate dehydrogenase)
 リンゴ酸 ⇔ オキザロ酢酸  Zn2+
 P3-
 I  クエン酸シンターゼ
 (citrate synthase)
 オキザロ酢酸  ⇔ クエン酸   


W.硝酸→アンモニアの還元(窒素をアミノ酸からタンパク質に変化させる過程)

果物や野菜を食べて、おいしいと感じる物質(アミノ酸)を作る過程

   酵     素     名 還  元  作  用 必要金属と電子
 @  硝酸還元酵素(モリブデンフラビン酵素)
 (nitrate reductase) 
 硝酸 → 亜硝酸
 (HNO3)  (HNO2)
 Mo
 A  亜硝酸還元酵素  亜硝酸  → 次亜硝酸
 (HNO2)     (NOH)2  
 Cu・Fe
 B-1  次亜硝酸還元酵素  次亜硝酸  → ヒドロキシルアミン
 (NOH)2      (NH2OH)
 Cu・Fe
 B-2  ヒドロキシルアミン還元酵素  ヒドロキシルアミン → アンモニア
 (NH2OH)          (NH3
 Mn


X.他にもいろいろ酵素と無機金属は植物の代謝に関与します。

@ カルビン回路・・・・光合成の暗反応
A 炭水化物代謝系(アルコール醗酵と筋肉の解糖)
B 尿素回路
C 光合成の明反応
                等々




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