“ 日 本 茶 の 栽 培 ”  

                                                            更新日: 2009 年  6 月 25 日(部)

       I n d e x
1. 日本茶の系譜 .
2. 茶種別のアミノ酸含有量.
3. 茶の器官別 種類別 カフェイン含有量.
4. 茶期別のアミノ酸量.
5. 茶品種および摘採期とタンニンの含有量.
 6. 園芸作物の葉と茶葉の要素含有量.
 7. テアニンについて.
 8. 施肥の窒素形態と茶葉成分.
 9. 低温貯蔵.
10. 茶栽培の施肥量の検討
1) 花卉・果菜類の肥料の吸収量
2) 花卉専用配合肥料の調製
3) 果菜専用配合肥料の調製
4) 茶栽培の春肥設計
5) 春肥調製の注意点


 1. 日本茶の系譜 (

          

   紅茶 ・・・・・・・・・ 蒸さずに醗酵。

   緑茶 ・・・・・・・・・ 茶葉を蒸熟して酸化酵素の作用を停止させた為、自然の緑色がそのまま残る。

   玉露 ・抹茶 ・・・・ 遮光(日覆)して栽培をする。その際、タンニンは減少してテアニンが増加をする。

   ( 烏龍茶 ・・・・・・・ 茶葉を醗酵途中で加熱して醗酵を止め、半醗酵させた茶である )


 2. 茶種別のアミノ酸含有量 ( 乾物 mg% )

  表−1
  玉露上 玉露並 煎茶上 煎茶並 番茶 ほうじ茶
 テアニン 注)−1
2466.1 2007.7 1496.6  652.5  416.7   21.7
 グルタミン酸  449.4  383.5  217.4  214.3  184.5   16.7
 アスパラギン  432.5  333.0  245.8  172.9  124.9   27.2
 アルギニン  497.5  329.6  198.1   64.2   38.9   14.6
 セリン  352.8  277.9  202.0  114.3   82.4   10.3
 スレオニン  128.8   98.3   48.0   29.1   23.0    3.2
 アラニン   54,8   40.8   28.3   24.7   20.2    3.9
 バリン   25.2   21.5   18.9   14.2    8.2    1.1
 リジン   39.1   32.7   28.7   14.0   10.1    1.4
 フェニールアラニン   37.7   41.2   31.4   24.8   14.2    1.1
 ヒスチジン   28.2   22.1   10.3    7.6    6.6    0.9
 アンモニア    9.3    9.1    9.2    7.0    7.1    9.4
 グリシン    4.8    4.3    5.0    3.8    3.0    1.0
 イソロイシン   36.1   28.6   14.4   11.7    7.5    0.9
 ロイシン   32.6   26.6   15.5   10.7    3.2    0.6
 チロシン   29.6   30.9   25.7   16.3    8.5    1.1
             
 合   計 4624.5 3687.8 2595.3 1382.1  958.6  115.1

   注)−1 テアニンは、アミノ酸の1種で別名はグルタミン酸エチルアミドとも言う。
         同じような旨みの元で、グルタミン酸ナトリウムがあるが、これは通称“味の素”の事である。


旨みの形成過程

 お茶はコクと香りがその品質の高さを決定付ける。また、日本料理ではその旨みを引き出すのに、昆布とかつお節を用いて、 その深みのあるコクを出す。この昆布からは植物性タンパク質としてのグルタミン酸、 かつお節やいりこなどの乾燥魚からは動物性タンパク質としてのイノシン酸が旨みの成分を醸し出している。 この双方のコクと香りの成分は何れもアミノ酸である。

  @ タンパク質 ( 多数のアミノ酸が重合して出来た高分子化合物 )

   国際名:プロテイン=ギリシャ語の第一人者,もっとも重要なという意味から由来している。“タンパク質のないところに生命はない”と言
        われるほど重要な生理作用物質である。

     一般式

    

分子内にアミノ基−NHとカルボキシル基−COOHとを持つ化合物。 微生物や植物ではタンパク質合成に必要なアミノ酸のすべてを生合成する系を持っているが、 動物の約半数は食餌によって摂取する必要がある。

天然から見出されたアミノ酸は700種以上、タンパク質の構成々分と認められているのは20種である。 つまり、生体内に存在する主要アミノ酸20種のうち必須アミノ酸は9種、イソロイシン・ロイシン・リジン・メチオニン・フェニルアラニン・スレオニン ・トリプトファン・バリン・ヒスチジンであり、これらは生体内では合成されず、食事から摂取する必要がある。

    グルタミン酸  CNO  式量 : 140.13

             C H C O O H
            |
            C H
            |
      N H ― C H ― C O O H

   昆布、チーズ、緑茶などに大量に含まれ、その他椎茸、とまと、魚介類に比較的多く含まれている。

   << 参考 >>  グルタミン酸ナトリウム(味の素)  CNNaO  式量 : 169.11

   

植物が窒素を吸収してアミノ酸から蛋白質を合成していく過程、そしてその過程がお茶そのもののコクや風味を醸し出している。

     (HNO)      (HNO)      (NOH)        (NHOH)         (NH)    (NHR・COOH)
硝酸態窒素→→→→亜硝酸→→→→次亜硝酸→→→→ヒドロキシルアミン→→→→アンモニア→→→→アミノ酸
          ↑          ↑            ↑                 ↑           ↑    ↓
       モリブデン     亜硝酸       次亜硝酸           ヒドロキシル      各種酵素  ↓
      フラビン酵素    還元酵素       還元酵素          アミン還元酵素             ↓
必須金属   (Mo)      (Fe・Cu)        (Fe・Cu)             (Mn)                ↓
                                                                  蛋白質

 植物が吸収した硝酸態窒素は、モリブデンフラビン酵素の働きによって酸素を1個取られて亜硝酸となり、順次蛋白質になっていく。 この時、このような各還元過程には特定の金属が必要で、その必須金属によって酵素は活性化する。 従って、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、などのいずれが欠乏しても蛋白質は植物体内では形成されない。

特に、最入り口のMoが欠乏した場合、窒素として吸収された硝酸は植物の体内にそのまま残留する。 この場合、この植物を食したら苦く、えぐみもあり、ひどい場合には翌朝目を覚ますと目ヤニが出るようになる。これが今話題の残留硝酸塩である。 日本ではこの硝酸塩は硝酸塩中毒及び発がん性の要因であるという理由で農業・食品流通分野では店頭に並べられる野菜の硝酸成分を少なくしょうとする方向である。

その為に現在取っている手段は、果菜栽培の際の窒素投与量を減らしてその量を減じようとしている。しかしながら、この窒素成分は植物生命の基本であり、蛋白質の重要因子である。また、上述にあるような酵素も蛋白質そのものでもある。

このように窒素が変化したタンパク質は“タンパク質のないところに生命はない”と言われるほど重要な生理作用物質でもある。 その様に重要な蛋白質の必須成分である窒素分は少なく施すのではなく、この還元過程を促すような手法を採るべきである。 また果菜が健全に育つにはどの位の窒素量を施すのが適量なのか、更に研究する必要がある。


 3. 茶の器官別 種類別 カフェイン含有量 ( % )

  表−2
 器官  カフェイン    器官  カフェイン
 1葉  4.2  抹茶  4.6
 2葉  3.5  玉露  3.7
 5,6葉  1.5  煎茶  2.8
 茎  1.4  番茶  2.0


 4. 茶期別のアミノ酸量 ( mg % )

  表−3
    一番茶  二番茶
 テアニン  1727   456
 グルタミン酸   668   195
 アルギン   142    24
 アスパラギン酸   136    79
 セリオ    81    26
 スレオニン    61    22
 アスパラギン    44    35
 アラニン    25     7
 リジン     7    13
 バリン     6    13


 5. 茶品種および摘採期とタンニンの含有量 ( 乾物 % )

  表−4
  一  番  茶 ニ  番  茶
初  期 中  期 末  期 初  期 中  期 末  期
 やぶきた  14.82  12.34  11.86  21.16  18.53  15.70
 あさぎり  16.02  13.50  11.36  20.92  18.18  14.50
 いずみ  17.03  15.74  14.66  23.00  20.94  18.51
 たまみどり  16.62  13.52  11.09  23.92  20.36  16.82
 はつもみじ  20.36  19.29  17.60  25.93  23.00  19.96
 べにほまれ  20.65  19.96  17.89  27.09  24.20  22.37


 6. 園芸作物の葉と茶葉の要素含有量 ( 乾物 % )

  表−5
要 素 名 園芸作物葉中 茶 葉   要 素 名 園芸作物葉中 茶 葉
窒素 2.5 3.5〜5.8 0.01 0.01〜0.02
リン酸  0.16 0.4〜0.9 硫黄 0.12 0.6〜1.2
加里  1.06 2.7〜3.7 アルミニウム 0.01 0.1〜0.2
石灰 2.5 0.2〜0.8      
苦土  0.32 0.2〜0.5 亜鉛 100ppm 45〜65ppm
ナトリウム 0.2 0.05〜0.2   5ppm 15〜20ppm
塩素 0.2 0.2〜0.6 モリブデン   1ppm 0.4〜0.7ppm
マンガン   0.015 0.05〜0.3 硼素  50ppm 20〜30ppm

    注) 茶は園芸作物に比して、窒素・リン酸・加里・マンガン・硫黄・銅の含有量が著しく多い。


 7. テアニンについて

    茶のほかには、マッシュルームの一種にしか発見されていない。
   このテアニンは緑茶の旨みの主構成成分であり、根で合成されて葉に転流蓄積をし、光によってカテキンに転換される。
   その結果、旨みが増して渋み(カテキン)が減じる。つまり遮光栽培をする事によってテアニンは増加し、タンニンが減少する。
   この事は霧深い山間傾斜地は自然の遮光という天然条件によって、良質の茶を産する事ができる要因である。また、テアニンは
   吸収したNH−Nを取り込んでアンモニアの解毒をする作用がある。


 8. 施肥の窒素形態と茶葉成分

  表−6
窒素の形態 生育量
 全枝延長m
茶  葉  成  分  ( % )
葉緑素 全窒素 リン酸 加里
NH−N 3.32 0.17 4.02 0.67 2.59
NO−N 2.19 0.11 3.72 0.67 2.41
硝安 4.28 0.20 5.60 0.71 2.88


 9. 低温貯蔵

   湿度RH70%  温度7〜8℃にて茶箱に格納して貯蔵をする。


10. 
茶栽培の施肥量の検討

    1) 花卉・果菜類の肥料の吸収量

     @ 1株当りの肥料吸収量(g)

   表−7                                                <礫耕栽培:米澤農業研究所>
作 物 名 アンモニア態窒素
(NH−N)
硝酸態窒素
(NO−N)
全リン酸
(P5)
加 里
(KO)
備   考
カーネーション 0.5  2.66  2.47  4.66 大輪混植
 0.44  2.59  2.22  4.31 天原(黄・白)
きゅうり(久落H)  3.11 24.25 10.77 42.21 12/中〜7/末13トン
とまと(福寿2号)  2.04 12.51  6.12 19.55 8/中〜1/中10.5トン 

    全窒素量を10とした場合の N : P : KO の比率は
 カーネーション 10 7.8 14.2
 菊 10 7.3 14.2
花卉類では概ね 10  14

 きゅうり 10 3.9 15.4
 とまと 10 4.2 13.4
果菜類では概ね 10  14

                           と考えても良いのではないか。


    2) 花卉専用配合肥料

  表−8
  施肥量 成  分  量
アンモニア態窒素 硝酸態窒素 全リン酸 加 里
硝安 10.0 Kg    1.7 Kg   1.7 Kg     
過燐酸石灰 14.2 Kg        2.7 Kg   
硫酸加里  8.8 Kg          4.8 Kg
           
N : P : K    3.4 Kg
10
   2.7 Kg
   4.8 Kg
14


    3) 果菜専用配合肥料

  表−9
  施肥量 成  分  量
アンモニア態窒素 硝酸態窒素 全リン酸 加 里
硝安 10.0 Kg    1.7 Kg   1.7 Kg     
過燐酸石灰  7.2 Kg        1.36 Kg   
硫酸加里  8.8 Kg          4.8 Kg
           
N : P : K    3.4 Kg
10
   1.36 Kg
   4.8 Kg
14


    4) 茶栽培春肥の設計

      @ 茶は好アンモニア態窒素作物と言われるので、窒素成分は硫安にて組成設計をする。
     また、組成の構成は果菜用の配合法を参考にする。
  表−10
  施肥量 成  分  量
アンモニア態窒素 硝酸態窒素 全リン酸 加 里
硫安 10.0 Kg    2.1 Kg      
過燐酸石灰  4.5 Kg        0.84 Kg   
硫酸加里  5.5 Kg          2.97 Kg
           
N : P : K    2.1 Kg
10
   0.84 Kg
   2.97 Kg
14

      A 表−6 の窒素の施肥形態では硝安にて施した方が好結果であるとの事なので、果菜専用配合(表−9)にて
        施すことも検討すべきである。


    5) 春肥調製の注意点

      2)3) 4) 項、 共に各割合にして総量を20Kgとすれば、市販の配合肥料と同じ仕様になる。
      茶の収穫直前の春肥は4項のように調製をする。但し、茶の施肥基準(特に窒素)は各県ごとにかなりの差があるので、
      春肥の施肥については、その示された基準の窒素量が、
         @ 20Kgまでの場合は、4項に準じて比例する。
         A 20 〜 30Kgでは、過燐酸石灰・硫酸加里の2種は4項の70%となるよう調製をする事。


= 完 =




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