放浪歌 (さすらいうた)
「豊漫」創刊記念特別寄稿小説  昭和六十一年(1986年)
目次
横書き(一)湯煙の温泉 縦書き(一)湯煙の温泉
横書き(二)花ぐもり、浅草 縦書き(二)花ぐもり、浅草
横書き(三)雪が舞う、すすきの 縦書き(三)雪が舞う、すすきの

 六十四歳。

晋三君
 今年還暦を迎えた色の白いぽっちゃり肥った男。何時もは威勢のいい事ばかり云い、ざっくばらんな性格。
 謡曲の先生で一週間に二度、女子高にお茶とお花を教えに行っている。奥さんが六歳も年下の男と浮気して離婚した過去を持つ。若い頃は時々年寄りに入れたこともあったが、近頃はウケ一本槍。

工藤八郎
 六十歳、162cm、86kg。温泉場の浴場係。年配の肥満体好きで、徹底したタチ役。
 頭髪をバリカンで刈り、坊主頭にして鉢巻を額の上で結んでいる。目が小さいのに眉が太く丸顔である。浴場にいる時は一年を通じて六尺褌だけの丸裸である。全体に胸や太鼓腹や尻の肉が厚いのだが、曲線的な丸みがあるのではなく、体が角張って見える。

松さん
 工藤さんと同じく、温泉場の浴場係。浅草から工藤さんを慕ってついてきた男。私より五歳ほど年下。無類のお人好しで、小太りで優しそうな童顔。

轟木実蔵
 七十五歳。九十キロはある肥満体で、布袋さんのような顔をしている。工藤さんが二十五年間思い続けているお爺さん。

忠さん
 工藤さんより、3歳年上。労働で鍛えた肥満体で、股間のものは子供の腕ぐらいあった。