■そう悪くはない
このアルバムがそう悪くはないという意味ではありません。すごくいいです。スライド・ギターの名手ライ・クーダーが、それまでキューバ国外にはほとんど知られていなかった老ミュージシャンたちと作ったアルバムです。実はアルバムを元にしたドキュメンタリー映画の方を先に観たのですが、まずメンバーそれぞれのキャラクターに魅了されます。彼等は心底音楽を楽しんでいるというか、うまく言えませんが、音楽を演奏せずにはいられないのでしょう。歩くのもおぼつかない爺さんがピアノの前に座ったとたん、ものすごくすばらしい演奏をするのですから。90歳を越えたギタリストもジミー・ペイジよりよっぽどしっかり指が動いています。
しかし音楽っていったいなんなんでしょうね。いうたら音程が高くなったり低くなったりして音が連なっているだけでしょ?なんでそんなものに僕らはここまで魅了されるのででしょうか?しかも同じ曲であっても演奏家がかわるだけで聴く方の感じ方がまるで違ってきます。いや〜、なんかわからんけど音楽ってすばらしいです。
今日も地球上であらゆる音楽が演奏され多くの人がそれを聴いているはずです。僕が今まで聴いたことのない音楽もいっぱいあるし、これからも聴くことができない音楽もいっぱいあるんでしょう。僕はこれから死ぬまでにどれだけの音楽を聴くことができるでしょうね?とにかくキューバのすばらしい音楽を紹介してくれたライ・クーダーと、音楽を感じる心を人間に持たせてくれた神様に感謝します。
話は最初に戻りますが、「そう悪くはない」というのは年をとるのもそう悪くはないなということです。今までロックばかり聴いていた僕は、年をとることに何か不安感を持っていました。じじいになったセックスピストルズなんて観たくないでしょう?ストーンズも昔のほうが良かったなぁと思ってしまいますし。でもブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブの演奏を聴いてると、年をとることなんてそんなたいしたことではないと思えてきます。年をとるにつれ肉体は衰えていくけれど、魂はいつまでも若くいられると気付かされます。いえ逆にますます磨かれていくのが魂だと思えます。
音楽は演奏されるやいなや空気を震わせて消えていきます。そしてまた誰かによって演奏されます。肉体を離れた魂はいつかまた新しい肉体の中に宿ります。なんか似てますよね?
(2号)
Buena Vista Social Club
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リリース
1997年
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Chan Chan