第二回 

2001.01.26

ロケハンするアニメはいい!!

「ロケハン」とは、ロケーションハンティングの略、通常の映画では、撮影のための場所を探すことをいうが、アニメでは、スタッフが舞台設定となる街や地方を訪れ、空気や雰囲気をつかみ美術や演出に生かすというもの。つい先日買った「Spirit of Wonder 少年科学倶楽部・前編」(脚本・監督・絵コンテ・演出 安濃高志)の封入ブックレットに、この作品が、イギリスのブリストルを訪れロケハンしたことが紹介されていた。実際、その成果が作品に反映されており、「空気感」を持たせることに成功している。

私の記憶が正しければ、アニメでロケハンを最初に行ったのは、高畑勲監督の「アルプスの少女ハイジ」で、宮崎駿も、この作品にレイアウト・場面設計(注釈)で参加している。知ってのとおり「ハイジ」は雄大なアルプスの自然を見事に描き、海外で放送された時、誰もこれが日本人によって作られたと、信じなかったそうだ(都市伝説くさいはなしだけど)

これを機に高畑勲、宮崎駿監督は作品を作る時、多くの作品でロケハンを行っている。また押井守監督も、「劇場版パトレイバー」で東京の風景をロケハンし、「攻殻機動隊」では香港をロケハンしている。

第一回で紹介した「劇場版デジモンアドベンチャー」第一作、第ニ作とも、お台場、島根にロケハンし、実景を元に美術をおこしている。

アニメでは、架空の世界を描くが、そのイメージ自体は、現実の世界を写し取ったものになる。描かれたものが結果として実在しない架空の風景であったとしても、ただの記憶だけで描いた世界と、実在のモデルをもとに描かれた世界では、空気感、実在感が違う。そういう意味でスタッフが実在する風景を肌で感じ、それを作品に反映させることのできるロケハンは、作品の質を向上させる上で、大きな意味を持つといえる。

しかし、現実問題としては、作品の性格や、予算の都合から、これを行う作品は多くはない(ことさらにロケハンしたことを強調する作品が多くないだけかもしれないが)

そんな中で「Spirit of Wonder」はOVAでは珍しくロケハンを行っており、スタッフの意気込みと意識の高さを感じさせるものがある。

さて、全くの余談だが、「果てしなく青いこの空の下で」というマイフェイバリットなエロゲーがあるのだが、この作品も、スタッフの故郷や田舎をロケハンして作られている。そのこと自体は後々に知ったのだが、我ながらロケハンした作品にハマリやすい体質なのだなあと実感した次第。

要するにロケハンする作品にはいいものが多い、作品の格があがる!と私は思うのだ

注釈

レイアウト:カメラ、キャラ、背景の配置等、原画を描く上での設計図

場面設計:作品の舞台となる村や町の配置、家の間取りなどの設計、「Spirit of Wonder」でも関根昌之氏が担当、地味ながら演出上重要な役職。この役職がある作品は珍しい、ジブリなどの劇場作品以外、最近では「Niea_7」で採用されていた。


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