インテリジェントデザイン

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インテリジェントデザインは、創造科学より若干宗教色を少なくしたもので、万物の成り立ちには突然変異や進化では説明しきれない、 未知の設計意図があるとするものです。

問題は、ではその意図とは誰のものか、ということでしょう。確かに生物の進化と限らず、この世界の超複雑な構造は、 ンダムな突然変異と自然選択だけでは説明出来ません。それ以外に何らかのルールが必要でしょう。

そのルールとして、グールドは「自然淘汰プラス偶然」、ドーキンスは「遺伝子の淘汰」、シェルドレイクは「空間が持つ特性」、 カウフマンは「自己組織化を産む熱力学第四法則」をあげました。環境の刺激が直接変異を生むのではないか、と示唆する説もジンマー他があります。


空間自体に何らかの特性が含まれている、という考え方は科学的でないとは言えません。膨張する宇宙の説明として、 空間には継続的に物質を生み出してくる特性があるという理論がありましたし、現在でも宇宙空間自体には「暗黒エネルギー」という反発力があるとされています。

「空間」は現在の宇宙全体を産み出した源であり、全ての物質の基は最初から「無」の状態中に含まれていたのですから、 進化を生む特性も最初からあったとしてもいいでしょう。

こちらで示したように酸素と水素の分子は、 美しい雪の結晶を作り出す特性を最初から持っているのですから、より複雑な有機高分子は、 複雑な生命体を進化させる特性を自然に持つようになると考えることも出来そうです。


その特性を「神の意思」として棚上げにするか、それとも遠い将来解明が可能な物理現象だと考えますか?  物理学者ホーキングは「神のみぞ知る」という表現を使います。それは全能の神を信ずるというのではなく、 「まだそこまで人間の理解が及んでいない」ということでしょう。

未知の神秘なるものを「神」と呼ぶことは出来ます。「生物は何故進化するか」のウィリアムスは、 「無神論というのは存在しないと定義するのが好きだ」と言っています。自然の姿の中に神を見、大いなる未知のものに対して己を律する日本の神道は、 その意味では宗教本来の姿であり、最も科学に近いのかもしれません。

宗教によっては、理解を深めようとする人間の欲望や努力が邪魔になる場合もあります。 多くのイスラム諸国では進化論の授業は禁止されています。しかし宗教戦争の例を見るように、 現在の宗教はどれも完全なものではないでしょう。宗教も進化するべきです。そのためには科学、哲学との協調が不可欠だと思います。


上右は、女性ティンパニ奏者の指導で、くるみ割り人形の「トレパック」を練習してみるバイオリニスト。 この曲は左右のティンパニを同時に叩きます。
迷惑ばかりかけていたオーケストラ時代の、インテリジェントな美しい想い出です。

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