形態空間の定義

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生物の変異の落ち込む谷として「形態可能性空間」というものを考えましたが、 それを現実の全世界に対し前もって定義しておくことは不可能のようです。

以前こちらで、 二つの形態要因について全ての変異程度の組合わせを考え、それぞれに安定し易さを割り当て、 立体地図のようなものを想定しました。これを生物界全体に適用し、全ての変異要因を考えた多次元空間について、それぞれの変異形態に安定度を考えたものが「形態可能性空間」であり、これが起こり易さ、すなはち進化の方向を決めている、と考えました。
これは素晴らしいアイデアだと思ったのですが・・・


実際に全ての変異の可能性を想定し、それぞれに起こり易さの数値を当てはめようとすると、 その可能性空間は現在の宇宙の全ての素粒子の数よりはるかに大きな要素を持つものとなります。 起こり得る全ての変異を前もって考えておくことは出来ず、それぞれに事前に適応度を決めておくことは、現実には不可能です。

生物の全ての可能な変異に対しそれぞれの起こり易さを前もって決めておくプログラムは、 この宇宙内には存在出来ない、ということでしょう。ある変異が起こった場合、 その変異の環境に対する適応性を決めるルールは、変異が起こってから自律的に定まるものでなければならない、ということになります。


進化論では、進化の方向を示すのは「自然選択」であるとしてきましたが、 突然変異がランダムに発生しどんな形態でも生ずる可能性があるのなら、 それらの変異全てを取り扱う「自然選択」のルールを事前に設定しておくことは出来ないでしょう。

しかし実際に進化は存在し、多種多様な生物が出来ています。従って、変異の発生はランダムではなく、 「進化のルール」は自律的なものだったはずだと言えるでしょう。つまり、ある変異が生存するか否かは、 その変異と環境により、後から自然に決まらねばならないということです。

あたりまえじゃないか、と考えられるかもしれませんが、これは全くランダムな変異を否定する根拠の一つだと思います。 詭弁めいてきましたが、これは次でもう一度考えます。

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