読者からの質問と回答 01071 〜 01080
不等式 s + t > a と (∃m ∈ R)(s > m かつ t > a - m) が同値であることを教えて下さい?
学校の宿題ででたのですが,どうしてもわかりません. ちなみに,定義が与えられていて,それについていくつかの問題があってその1つです. よろしくお願いします.
問題.X を位相空間,f, g を X から R への写像,a ∈ R とする.
このとき,次の (a), (b) は同値であることを証明せよ.
(a) f(x) + g(x) > a,
(b) ある m ∈ R に対し,f(x) > m かつ g(x) > a - m.
お答えします:
宿題の答えをそのまま教えるのは抵抗がありますので, 答えに近いヒントを与えたいと思います.
f(x) = s, g(x) = t とおくと,次の (a), (b) が同値であることを示す問題になる.
(a) s + t > a,
(b) ある m ∈ R に対し,s > m かつ t > a - m.
(a), (b) の同値を示すためには,(a) => (b) と (b) => (a) の両方を示すことが必要.
(a) => (b) のヒント:
いま s + t > a であると仮定すると,s > a - t.
そこで,s > m > a -t をみたす m をとってみよう.
(b) => (a) は簡単!
以上で答えになったでしょうか.
N.S.さんの問題が解決することを祈っています.
Sorgenfrey 直線 S の部分集合 A に対して,等式 cl(A) = S - i(S - A) は成り立ちますか?
以前に質問しました Sorgenfrey 直線 S の問題なのですが,S の部分集合 A に対して,
cl(A) = S - i(S - A)
ということになるのでしょうか?
ここで,cl(A) は A の閉包,i(A) は A の内部です.
お答えします:
Sorgenfrey 直線 S に限らず,
任意の位相空間 S の任意の部分集合 A に対して,等式
cl(A) = S - i(S - A)
が成立します.
証明は,
『解いてみよう位相空間』の問題 8.16(161ページ)をご覧下さい.
Sorgenfrey 直線と Michael 直線の部分集合の内部と閉包の求め方について教えて下さい.
次の問題の解説をよろしくお願いします.ずっと自力で考えていたのですが,どうも理解できません.
i(A) は A の内部,cl(A) は A の閉包を表します.
問題1. Sorgenfrey 直線の部分集合 A = (a, b) について,i(A), cl(A) を求めて,その理由を説明せよ.
問題2.
Michael 直線において i(Q), i(P), cl(Q), cl(
問題3. Sorgenfrey 直線において,cl(A ∩ B) ≠ cl(A) ∩ cl(B) となるような部分集合 A, B の例を挙げ, その理由を説明せよ.
お答えします:
Sorgenfrey 直線と Michael 直線の部分集合の内部の求め方のヒントを与えます.
ヒント2で説明するように,内部が求められるようになれば閉包も求められますので,
ご質問の問題が解けるのではないかと思います.
次の命題を使います.
命題.
位相空間 X の位相が集合族 B から生成される(すなわち,B は X の基底である)とする.
このとき,部分集合 A ⊂ X と点 p ∈ X に対して,次の条件 (1), (2) は同値である.
(1) p ∈ i(A),
(2) p ∈ U ⊂ A をみたす U ∈ B が存在する.
ヒント1.
Sorgenfrey 直線の位相は右半開区間全体の集合
B = {[s, t) : s, t ∈ R, s < t}
から生成される位相である.
Sorgenfrey 直線において i(A) を求めるためには,
この B に関して上の命題の条件 (2) をみたす点全体の集合を求めればよい.
問題1の集合 A = (a, b) について,i(A) = A が成り立つことを示してみよう.
i(A) ⊂ A であることは明らか.
A ⊂ i(A) であることを示す.そのためには,x ∈ A => x ∈ i(A) を示せばよい.
任意の点 x ∈ A をとると,a < x < b.
したがって,x ∈ [x, b) ⊂ A.
[x, b) ∈ B だから,命題の条件 (2) が成立する.ゆえに,x ∈ i(A).
結果として,A ⊂ i(A).
以上によって,i(A) = A が示された.
ヒント2.
位相空間 X の部分集合 A の閉包を求めるためには,次の等式を使う.
cl(A) = X - i(X - A).
参考書
『解いてみよう位相空間』 問題8.16(161ページ)参照.
すなわち,A の補集合 X - A の内部 i(X - A) を求めると,その補集合が A の閉包 cl(A) になる.
ヒント3.
Michael 直線の位相は,集合
B = {(s, t) : s, t ∈ R, s < t} ∪ {{x} : x ∈ P}
から生成される位相である.
Michael 直線において i(A) を求めるためには,
この B に関して上の命題の条件 (2) をみたす点全体の集合を求めればよい.
以上のヒントを参考にして,お考え下さい.
なお,位相空間の部分集合の閉包と内部の求め方については,
参考書
『解いてみよう位相空間』の第8章にも例題と詳解があります.
M さんの問題が解決することを祈っています.
写像 f: X ---> (Y, S) が与えられたとき, T = {f^{-1}(U): U ∈ S} が X 上の位相であることを教えて下さい.
次の問題の解き方がわかりません.解説よろしくお願いします.
問題.
f を集合 X から位相空間 (Y, S) への全射とするとき,次の (1), (2) を証明せよ.
(1) T = {f^{-1}(U) : U ∈ S} とおくとき,T は X 上の位相である.
(2) T は写像 f: X ---> (Y, S) を連続写像とする X 上の最も弱い位相である.
お答えします:
(1) T が X の位相であるためには,T が次の3条件 (O1), (O2), (O3) をみたす ことを示します.
(O1) φ ∈ T かつ X ∈ T.ただし,φ は空集合.
(O2) T に属する有限個の集合の共通部分はまた T に属する.
(O3) T に属する任意個の集合の和集合はまた T に属する.
T が (O1) をみたすこと:
S は Y の位相だから,φ ∈ S.f^{-1}(φ) = φ だから,φ ∈ T.
S は Y の位相だから,Y ∈ S.f^{-1}(Y) = X だから,X ∈ T.
ゆえに,T は (O1) をみたす.
T が (O2), (O3) をみたすことは,同様にして考えてみて下さい.
『はじめよう位相空間』 定理 A.6(p. 215, 216)の数式 (3), (4) を使うことがヒントです.
(2) T* を写像 f: X ---> (Y, S) を連続するような X の任意の位相とする.
このとき,T ⊂ T* が成り立つことを示します.
任意の V ∈ T をとると,T の定義から,ある U ∈ S が存在して
V = f^{-1}(U) と表される.
いま,写像 f: (X, T*) ---> (Y, S) は連続だから,f^{-1}(U) ∈ T*.
すばわち,V ∈ T*.
ゆえに,T ⊂ T* が成立する.
以上で答えになったでしょうか.
M さんの勉強が進むことを祈っています.
集合 X = {1, 2, 3} 上の位相の中で,正則,正規,T_1 であるものについて教えて下さい.
もうすぐテストなので、自分なりに理解しようと頑張っています.
出来れば力を貸していただけないでしょうか.
教えていただきたいことは次の問題です.
問題.
集合 X = {1,2,3} の上の位相で,次の条件を満足するものを全て求めよ.
(1) 正規かつ正則であるが T_1 位相でないもの,
(2) 正規であるが正則でなくかつ T_1 位相でないもの.
分からないことばかりですが,数学が好きなので頑張りたいです.
よろしくお願いいたします.
お答えします:
集合 X = {1, 2, 3} 上には29通りの位相があります.
それらの1つ1つについて,上の条件 (1), (2) をみたすかどうかを調べる必要があります.
例として1つだけ調べますので,後はKさんが自分でチェックをして下さい.
最初に,T_1, 正則,正規の定義を確認しておきます.
以下,「x notin A」は「x が A の点でない」ことを,φ は空集合を表します.
位相空間が,T_1,正則,正規 であるとは,それぞれ,
次の条件 (T_1), (T_3), (T_4) が満たされることを言う.
(T_1) 任意の「異なる2点 x, y」に対して,
x ∈ U, y notin U, y ∈ V, x notin V をみたす開集合 U, V が存在する.
(T_3) 任意の「x notin A である点 x と閉集合 A」に対して,
x ∈ U, A ⊂ V, U ∩ V = φ をみたす開集合 U, V が存在する.
(T_4) 任意の「A ∩ B = φ である閉集合 A, B」に対して,
A ⊂ U, B ⊂ V, U ∩ V = φ をみたす開集合 U, V が存在する.
例.位相 T = {φ, {1}, X} の場合:
位相空間 (X, T) の開集合は:φ, {1}, X の3つ.
位相空間 (X, T) の閉集合は:X, {2, 3}, φ の3つ.
○ 位相空間 (X, T) は T_1 か?
「異なる2点 x, y」として,x = 1, y = 2 をとると,
x ∈ U, y notin U, y ∈ V, x notin V をみたす開集合 U, V は存在しない.
実際,上の3つの開集合の中で y = 2 を含む開集合は X だけだが,それは x = 1 を含んでしまう.
ゆえに,(X, T) は T_1 でない.
○ 位相空間 (X, T) は正則か?
「x notin A である点 x と閉集合 A」として,x = 1, A = {2, 3} をとると,
x ∈ U, A ⊂ V, U ∩ V = φ をみたす開集合 U, V は存在しない.
ゆえに,(X, T) は正則でない.
○ 位相空間 (X, T) は正規か?
「A ∩ B = φ である閉集合 A, B」の組は全部で次の5通り.
(1) A = φ, B = φ,
(2) A = φ, B = {2, 3},
(3) A = {2, 3}, B = φ,
(4) A = φ, B = X,
(5) A = X, B = φ
(1), (2), (4) の場合は,U = φ, V = X とおくと,U, V は開集合で,
A ⊂ U, B ⊂ V, U ∩ V = φ が成り立つ.
(3), (5) の場合は,U = X, V = φ とおくと,U, V は開集合で,
A ⊂ U, B ⊂ V, U ∩ V = φ が成り立つ.
ゆえに,(X, T) は条件 (T_4) をみたすから正規である.
以上によって,この位相空間 (X, T) は,正規であるが,正則でなくかつT_1でないことがわかる.
なお,3点からなる集合上の29通りの位相は下記の参考書に載っています.
『はじめよう位相空間』,
『解いてみよう位相空間』.
数学は毎日の積み重ねが大切です.
数学が好きだということですので,テストの前だけでなく,日頃の勉強をしっかり続けられることをお勧めします.
2つの一様連続関数 f, g の和 f+g と積 fg の一様連続性について教えて下さい.
私は教育系の大学に通う1回生です.
連続と一様連続についてしっかり整理できていないので,次の問題が解けません.
教えてください.お願いします!
問題.
D ⊂ R とする.関数 f, g について,次の (1), (2) の真偽を調べよ.
(1) f, g: D → R が一様連続ならば,和 f + g: D → R は一様連続である.
(2) f, g: D → R が一様連続ならば,積 fg: D → R は一様連続である.
お答えします:
自覚しておられるようですが,
問題を解く前に,連続と一様連続の概念を十分理解することが必要と思います.
それらの定義を復習しておきましょう.
(1) 関数 f: D --> R が D のすべての点 x で連続のとき,f は連続であるという.
(2) 関数 f: D --> R が点 x で連続であるとは,
任意の正数 ε > 0 に対して,正数 δ > 0 が存在して,条件
(*) |x - y| < δ ならば |f(x) - f(y)| < ε
が任意の点 y に対して成立することを言う.
例として,次の事実を図に描いて確かめて下さい.
1次関数 f(x) = 2x の場合は,ε > 0 に対して,0 < δ < ε/2 である δ をとると,
条件 (*) が成立する.
1次関数 f(x) = 3x の場合は,ε > 0 に対して,0 < δ < ε/3 である δ をとると,
条件 (*) が成立する.
1次関数 f(x) = 4x の場合は,ε > 0 に対して,0 < δ < ε/4 である δ をとると,
条件 (*) が成立する.
上の例から分かることは,点 x での f のグラフの傾きが大きければ大きいほど,小さい δ を選ぶ必要があるということです.
したがって,与えられた ε > 0 に対して,グラフの傾きが大きい点 x では小さい δ を選ぶ必要があります.
すなわち,δ の選び方は,ε の値と点 x の位置とに依存する(ここが大切!).
次に,ε > 0 に対する δ > 0 の選び方が,ε だけに依存して(x の位置には無関係に)決まるとき, f は一様連続であると言います.すなわち,
(3) 関数 f: D --> R が一様連続であるとは,任意の正数 ε > 0 に対して,正数 δ > 0 が存在して,条件
(*) |x - y| < δ ならば |f(x) - f(y)| < ε
が任意の点 x, y 対して成立することを言う.
例えは,1次関数 f(x) = 2x の場合は,f のグラフの傾きはつねに 2 なので,
ε > 0 に対して,0 < δ < ε/2 である δ を選ぶと,条件 (*) が任意の x, y に対して成立します.
したがって,f(x) = 2x は一様連続です.
同様に,任意の1次関数やグラフの傾きの絶対値がある一定値以上に大きくならない
連続関数は一様連続です.
一方,2次関数 f(x) = x^2 は,x の値が大きくなれば,f のグラフの点 x での傾きは大きくなります.したがって,同じ ε > 0 に対しても,大きな x に対しては小さな δ > 0 を選ぶ必要があります.
すなわち,δ の選び方が ε だけでなく x にも依存するので,一様連続でありません.
連続性は数学全般におけるもっとも基本的で重要な概念の1つです. 一様連続性は,その(簡単な)特別な場合だと考えるとよいと思います.
以上を理解した上で,問題 (1), (2) をもう一度考えてみてはいかがでしょうか.
連続性については,
『はじめよう位相空間』 の第4章に詳しい説明がありますので,参考にして下さい.
d_p(x, y) = Σ |x_i - y_i|^{1/p} は R^n 上の距離関数でしょうか?
R^n の2点 x = (x_1, x_2,・・・, x_n), y = (y_1, y_2,・・・, y_n) に対して,
d_p(x, y) = Σ |x_i - y_i|^{1/p}
と定義します.
ただし,Σ は i = 1 から i = n までの和を表します.
d_p が距離関数であるか否かの証明がわかりません.教えてください.
お答えします:
正解は次の通りです.
(1) p ≧ 1 のとき,d_p は距離関数である.
(2) 0 < p < 1 のとき,d_p は距離関数でない.
p = 1 のとき,d_p が距離関数であることの証明は,
『解いてみよう位相空間』の問題4.3(70ページ)にあります.
p = 2, n = 2 のとき,d_p が距離関数であることの証明は,
『解いてみよう位相空間』の問題2.3 (2)(20ページ)にあります.
p = 1/2, n = 2 のとき,d_p が距離関数でないことの証明は,
『解いてみよう位相空間』の問題2.3 (1)(20ページ)にあります.
上記を参考にして,他の場合を考えてみて下さい.
正解 (1), (2) の証明が
『解いてみよう位相空間・改訂版』の問題5.26, 5.29 にあります.
2017/3/8 追記.
離散距離空間が完備であることの証明を教えて下さい.
質問と解答コーナーの質問 #01048
「完備で点列コンパクトでなければ,無限大に発散する点列が存在しますか? <続き>」
に対する回答の中に,次のように書かれています,
例えば,無限集合 A に離散距離関数 d を定義します.すなわち,
x = y のとき,d(x, y) = 0,
x ≠ y のとき,d(x, y) = 1.
このとき,距離空間 (A, d) は完備ですが・・・
このことの証明はどうしたらできるのでしょうか.教えてください.
お答えします:
離散距離空間 (A, d) が完備であることを証明します. その前に,完備性の定義を復習しておきましょう.
距離空間 (A, d) の任意のコーシー列が収束するとき,(A, d) は完備であるという.
ここで,(A, d) の点列 {x_n} がコーシー列であるとは,{x_n} が次の条件 (*) を満たすことをいう.
(*) 任意の ε > 0 に対して,それに応じて自然数 k が定まり,
m > k, n > k ならば d(x_m, x_n) < ε
が成り立つ.
さて,離散距離空間 (A, d) が完備であることを示します.
離散距離空間 (A, d) の任意のコーシー列 {x_n} をとる.
{x_n} が収束することを示す(これが目標).
{x_n} はコーシー列だから上の条件 (*) をみたす.
(*) において ε = 1 とおくと,この ε に対してある自然数 k が定まり,
m > k, n > k ならば d(x_m, x_n) < ε= 1
が成立する.
離散距離関数の定義から,d(x_m, x_n) < 1 ならば d(x_m, x_n) = 0.
距離関数の定義をから,d(x_m, x_n) = 0 ならば x_m = x_n.
以上をあわせると,
m > k, n > k ならば x_m = x_n.
これは,点列 {x_n} の第 k 項から先はすべて同じ点であることを意味する.
すなわち,
x_{k+1} = x_{k+2}= x_{k+3} = ・・・.
ゆえに,点列 {x_n} は収束する.
Y.S.さんの疑問が解決することを祈っています.
一般の距離空間でべき級数や微分の議論をすることは可能でしょうか?
先日べき級数から e^x を定義してさらに複素数に拡張することを勉強しました。 そこではべき級数が複素数でも収束を考えられることを学びましたが, 一般に距離空間でべき級数の議論が成り立つのでしょうか. また,距離空間で収束や連続の議論をしましたが,微分のような概念を導入することができるのでしょうか. また以上のようなことの本を探したのですがどの本を探せばいいかわからず,なかなか見つかりません. もしそのようなことに詳しい本があれば教えていただけると嬉しいです.
お答えします:
一般の距離空間でべき級数を考えたり,また距離空間で定義された関数に対して微分のような概念を導入することが可能かというご質問だと思います.
まず,一般の距離空間の点に対しては和やべきが定義されていませんので,
距離空間の点のべき級数を考えることは出来ません.
すなわち,級数の議論をするためには距離と同時に何らかの代数構造を持つことが必要になります.
一般に付値体と呼ばれる距離を備えた体では,通常の微積分に相当する議論が出来て,
複素数体はその一例であることが知られています.
一方,微分の方は,距離を使って無理矢理に微分係数にあたるものを定義をすることは可能のように思われますが,私はそのような研究を見たことがありません.
たぶん,微分の定義が意味を持つためには,空間が局所的に均質であることが必要なのだと思います.
したがって,一般の距離空間であるだけでは不十分で,局所的に座標構造が与えられている空間や,或いは,ノルム空間のような線形構造を兼ね備えている空間でなければ,意味のある議論が展開できないのではないでしょうか.
最後に適当な本ですが,一般的な「微分」について総合的に書かれた本は,私は思い当たりません.
岩波『数学事典』の索引から「微分」を逆引きされるとある程度の様子が分かるかも知れません.
以上で回答になったでしょうか.
関連する質問がここにあります.
2017/3/8 追記.
一般の位相空間上の写像について,x --> a のときの f(x) の極限を定義してみました.
関数 f に関する極限
lim_{x-->a}f(x),lim_{x--> +∞}f(x),lim_{x--> -∞}f(x)
などのより一般的な定義をを知りたく思っております.
位相空間では大小関係(順序関係)がないので,+∞ と -∞ の区別が無く ∞ のみだと推測しますので
lim_{x→a}f(x),lim_{x→∞}f(x)
の2パターンしかないと思います.それでそれぞれの収束・発散の定義は:
2つの位相空間 (X, T), (Y, S) と 写像 f : X ---> Y を考える.
定義1.
点 a ∈ X に対し,
L = {b ∈ Y : ∀U ∈ nbhd(b), ∃V ∈ nbhd(a) such that f(V) ⊂ U} とおき,
L ≠ φ のとき,f(x) は L に収束するといい,lim_{x→a}f(x) = L と表記する.
L = φ のとき,f(x) は発散すると言う.
定義2.
L = {b ∈ Y : ∀U ∈ nbhd(b), ∃V ∈ T such that f(X - V) ⊂ U} とおき,
L ≠ φのとき,f(x) は L に収束するといい,lim_{x→∞}f(x) = L と表記する.
L = φのとき,f(x) は発散すると言う.
定義1が写像 f(x) の x を a に近づけたときの極限値の定義,
定義2が写像 f(x) の x を大きく?したときの極限値の定義だと思います.
これらの定義で正しいでしょうか?
お答えします:
定義1については,正しいかどうかという表現は不適切ですが,
矛盾なく定義されているように思います.
厳密には,L は極限ではなく極限点の集合ですので,集合 L の各点 y に対して,
lim_{x→a}f(x) = y
と書くようにした方が適当かと思います.
また,「L = φ のとき,f(x) は発散すると言う」ことにも矛盾はないと思います.
定義2の L の定め方は,V = X とおくと f(X - V) ⊂ U はつねに成立することになってしまい無意味です.
位相空間 (X, T) がコンパクトでないと仮定して,
V としてコンパクト閉包を持つ開集合だけをとるようにすれば,上の定義は意味を持ちます.
ただし,一般の位相空間において「x を大きくしたときの極限」にあたる概念を定義する場合は,
通常は与えられた位相空間のコンパクト化や完備化を考えます.
そして「x を大きくする」の代わりに「点 x をコンパクト化(完備化)の点 a に近づける」と
考えるのが普通の方法です.
そうすると,最初の x --> a の場合に帰結することが出来るので,定義1だけでよいことになります.
なお,位相空間 X のコンパクト化とは X を稠密に含むコンパクト空間のことです.
これで答えになったでしょうか.
****** MA さんからの質問・続き #01071a
これでよいでしょうか.
詳細なご説明大変有難うございました. 下記のように,定義してみたのですがいかがでしょうか?
定義.
2つの位相空間 (X, T), (Y, S) と写像 f: X --> Y があり,
位相空間 (X*, T*) が (X, T) のコンパクト化であるとき,
L = {b ∈ Y : ∀U ∈ nbhd(b, (Y, S)), ∃V ∈ nbhd(a, (X, T)) such that f(V) ⊂ U} (a ∈ X*) において,
L ≠ φ のとき,f(x) は L に収束するといい lim_{x→∞}f(x) = L と表記し,
L = φ のとき,f(x) は発散すると言う.
お答えします:
大体よいのですが,少し修正の必要があります. どこが違っているか見較べて下さい.
L = {b ∈ Y : ∀U ∈ nbhd(b, (Y, S)), ∃V ∈ nbhd(a, (X*, T*)) such that f(V ∩ X) ⊂ U} (a ∈ X*) において,
L ≠ φ のとき,f(x) は L の点に収束するといい,y ∈ L に対して lim_{x→a}f(x) = y と表記し,
L = φ ののとき,f(x) は発散すると言う.
上の定義で,a ∈ X* - X の場合が "x→∞" の一般化であると考えられます.
例えば,X が実数直線の場合,X に2点 +∞, -∞ を加えてコンパクト化 X* を作ることができます.
このとき,a = +∞ の場合が "x→+∞" に対応し,a = -∞ の場合が "x→-∞" に対応します.
また,f(V) を f(V ∩ X) に変えました.
ただし,以下のような問題があることに注意して下さい.
1.任意の位相空間 X に対してそのコンパクト化が存在するが,よい性質を持つコンパクト化が存在するためには,X に一定の条件が必要.
2.一般には,1つの位相空間に対して多くの異なるコンパクト化が存在する.
したがって,目的に応じてコンパクト化を選ぶ必要がある.
3.位相空間 X のコンパクト化 X* に対して,X* - X には無限個の点が存在する場合がある.
これらの問題に対しては,位相空間論の少し進んだ議論が必要となります.