読者からの質問と回答 01141 〜 01150

K.M.さんからの質問 #01150

『はじめての集合と位相』第1章,演習問題 2 について教えて下さい.

はじめまして.K.M.と申します. 趣味で数学の勉強をしている23歳です. 他書を途中まで読んでいたんですが,演習問題が自力で解けず, 自分にとって内容が難しすぎたので 『はじめての集合と位相』を読み始めました.
第1章の演習問題で解けない問題があります.

問題2. 集合 A = {4, 6, 8, 12, 20} を説明法で示せ.

4, 6, 8, 12, 20, 52, 308,・・・ のような数列と考えて,
A = { x = a_n : a_1 = 4, b_1 = 2, b_2 = 2, a_n = a_{n-1} + b_{n-1} (2 ≦ n ≦ 5), b_n = b_{n-1}・b_{n-2} (3 ≦ n ≦ 5) }

と考えましたが,模範解答のように思えないので,シンプルな解答例を教えてください.

お答えします:

K.M.さんの答えも間違いではないありませんが,もっと簡単な解答があります.
例えば,
A = {x : x = 4 または x = 6 または x = 8 または x = 12 または x = 20},
A = {n : 正 n 面体が存在する}
などです.

最後になりましたが,『はじめての集合と位相』のご購読に,御礼申し上げます.


T.W.さんからの質問 #01149

『はじめよう位相空間』演習問題 5 - 5:逆写像の求め方を教えて下さい.

初めてメールを差し上げます. 数学を独学中の30歳です.
解析学を勉強する前に,位相空間の理解が助けになると思っています. 特に,様々な距離が定義できる所は,とても興味深く読みました. お忙しい所,申し訳有りませんが,以下の問題について教えて下さい.

『はじめよう位相空間』75 ページの第 5 章,演習問題 5 についてです.
位相同型写像であることを示すために,
(1) 定義から全射を,f(x_1, y_1) と f(x_2, y_2) との距離を計算して,単射を示す.
(2) f が連続である事を示す.
(3) f の逆写像が連続である事を示す.
の3つで同相写像であることを証明しようとしています.

(3) のためには写像 (x, y) |---> (xcos πy, xsin πy) の逆写像を求めるべきと思いますが, どのように求めれば良いのか分かりません. 逆写像の求め方を教えて下さい.

お答えします:

ご質問の演習問題 5 の正解は「位相同型写像でない」です.
なぜなら,問題の写像 f は,x 座標が 0 である点をすべて原点にうつすので, 単射でないからです. したがって,f の逆写像は存在しません.

もし写像 f が全単射ならば,T.W.さんの解答方針は間違っていないのですが, 一般に,逆写像を求めることは簡単ではありません.
しかし,少し先のことを言えば,この問題のように,定義域が周囲を含む図形(すなわち,コンパクト空間)の場合は,全単射,連続写像は自動的に位相同型写像になることが証明できます(定理11.13). したがって,多くの場合は,逆写像の連続性を調べる必要はありません.

最後になりましたが,『はじめよう位相空間』のご購読に,御礼申し上げます.


A.I.さんからの質問 #01148

『はじめての集合と位相』第9章,補題9.2の証明に疑問点があります.

『はじめての集合と位相』第9章,補題9.2の証明について教えてください.
114ページの下から2行目と1行目に,(9.5) の前半の不等式より,

d_X(x, x_n) = 1/n →0

とありますが,(9.5) の前半の不等式とは,「d_X(x, x_n) < 1/n」ですから,

d_X(x, x_n) < 1/n →0

とすればいいように思うのですが,何か意味があるのでしょうか. 教えてください.

お答えします:

ありがとうございます.
ご指摘の通り,114ページ,最下行の数式は,

d_X(x, x_n) < 1/n →0

のミスプリントです.
間違いを知らせて頂きまして,ありがとうございました.
今後,正誤表にて訂正します.
最後になりましたが,本書のご購読に御礼申し上げます.
A.I.さんの勉強が進むことを祈っています.


S. C. T. さんからの質問 #01147

『はじめよう位相空間』演習問題 12 - 15:解決のヒントをお願いします.

こんにちは.
『はじめよう位相空間』を使って位相の勉強をしている大学生です.
第 12 章の演習問題 12.15 についてですが,これは何らかの写像を用いて中間値の定理を適用すればよいのでしょうか?
解決のヒントをお願いします.

ヒントを与えます:

解決のヒントをとのことでしたので,とりあえず,ヒントだけお答えします.

「これは何らかの写像を用いて中間値の定理を適用すればよいのでしょうか?」

その通りです.中間値の定理を使います.
「何らかの写像」を定義するヒントは,例題 7.10(93ページ)です.
いかがでしょうか.
首尾よく解決できることを祈っています.


A.I.さんからの質問 #01146

『はじめての集合と位相』第6章,Bernstein-Schroder の定理 6.23 について教えて下さい.

はじめまして.
『はじめての集合と位相』を購入した者ですが, 76 ページの下から 13 行目の記述について詳しく教えてください.

「D* ⊆ (D*)* が成り立つからD* ∈ D.」

と記載されている部分についてですが,どうして当然に D* ∈ D と言えるのかもう少しご説明ください. D は X の部分集合 A 全体からなる集合族ではありますが,A ⊆ A* の条件がついています. この条件がなければ、D* ∈ D はわかるのですが・・・・.

お答えします:

D* = A とおいてみると,D* ⊆ (D*)* は A ⊆ A* を意味します.
したがって,D* = A ∈ D が成立します.
いかがでしょうか.

質問つづき:

お忙しいところ,早速ご回答くださいまして感謝申し上げます.
上記のとおりご回答いただきましたが,「D* = Aとおく」ところがよくわかりません.
76 ページの下から 15 行目では,A ⊆ A* ⊆ D* となっておりますので,D* = Aかもしれませんが, D* ≠ Aの場合もあるのではと考えてしまいます. そうすると単に,「D* = Aとおく」ことがどういうことなのか,今ひとつ理解できません. 恐れ入りますが,今一度詳しく教えてください.

お答えします:

「D* を,D の定義における A だと考えてみよう」という意味です.

もう少し詳しく,ご説明します. ご質問は,D* ∈ D が成立する理由を問うものでした.
75 ページの最後の行で,集合族 D は,次のように定義されました.
D = {A ⊆ X : A ⊆ A*}.
したがって,一般に,集合 A が D の要素であるためには,A が2条件
(1) A ⊆ X,
(2) A ⊆ A*
を満たすことが必要十分です.

いま,問題になっている集合 D* は,
D* ⊆ X,
D* ⊆ (D*)*
を満たしています. したがって,D* は上の2条件 (1), (2) を満たしているので,D* は D の要素であると言えます. ゆえに,D* ∈ D が成立します. いかがでしょうか.

質問者のわかるまでしっかり考える姿勢は大切と思います.
なお,この証明は,本書の中では難しい箇所だと思います. Bernstein-Schroder の定理にはいくつかの証明が知られていますが,本証明は簡潔な上に, 私の知る限り,日本語の他書に書かれていないので,本書で紹介しました.

質問者から:

お忙しいところ,懇切丁寧にご説明いただきまして本当にありがとうございました. 今回,先生からご指導をいただき,何とか理解できたように思います. 今後も『はじめての集合と位相』を読み進めていきたいと思っております. また,何か自分で解決のできない疑問が生じた際には,ご指導くださいますようお願い申し上げます.


MI さんからの質問 #01145

集合 ∪{{1/n} : n ∈ N} の閉包に関する質問です.

閉包についてどうしても分からない問題があります. 解説していただけないでしょうか.
自然数を添字の集合とする R の部分集合族 {A_n:n ∈ N} を考える.

(1) A_n = {1/n} ⊂ R とおくとき,∪{cl(A_n) : n ∈ N} と cl(∪{A_n : n ∈ N} は等しいかどうかを述べ,証明せよ.
(2) 一般に,∪{cl(A_n) : n∈N} ⊂ cl(∪{A_n : n∈N}) が成り立つことを証明せよ.

という問題なのですが,よく似た例題が載っている参考書も見つかりません. 解き方、論の進め方を解説していただけないでしょうか.

お答えします:

夏期休暇のため,回答が遅れまして,失礼しました.
ご質問を拝見して,閉包についての理解が不足しておられるのではないかと感じました. 問題を考える前に,先ずは「閉集合」や「閉包」について,確実な知識を身につけられることが必要ではないでしょうか. そうすれば,自然に解決できる問題と思います.

問題 (1) は,次のように考えるとよいと思います.
(a) 各 A_n の閉包 cl(A_n) は何か.
(b) 和集合 ∪{cl(A_n):n ∈ N} はどんな集合か.
(c) 和集合 ∪{A_n : n ∈ N} はどんな集合か.
(d) 和集合 ∪{A_n : n ∈ N} の閉包は何か.

問題 (2) については,閉包の性質:
A ⊂ B ならば cl(A) ⊂ cl(B) 
が鍵となります.

あわせて,『解いてみよう位相空間』問題 6.3(118 ページ)が参考になると思います.
数学では,時間をかけて確実な理解を積み重ねていくことが大切です. MI さんの勉強がそのようなものであることを願っています.


MI さんからの質問 #01144

集合 A_n = {x ∈ R : |x| > n} の共通部分について質問いたします.

突然のメールで失礼いたします. インターネットで学習中,先生のホームページを発見し,メールさせて頂きました.

集合 A_n = {х ∈ R : |x| > n} とおく. 共通部分 ∩{A_n : n ∈ N} を求めよ.

という問題ですが,n はいくらでも大きくなるので,その共通部分が φ のように思えたり, また A_n が共通部分のように思えたりします. どちらが正しいのでしょうか.
また,考え方としては,数直線を書いて図示するのは,試験での解答と認められるのでしょうか? お伺い致します.

お答えします:

求める集合は, すべての n ∈ N について,A_n に属するような実数の集合,言いかえると, すべての n ∈ N について,|x| > n を満たす実数 x の集合です. 絶対値がすべての自然数より大きい実数は存在しないので,答えは空集合 φ です.
なお,「絶対値がすべての自然数より大きい実数は存在しない」という事実は, アルキメデスの公理とよばれる公理を根拠としています.

数直線を書いて図示するのは、試験での解答と認められるのでしょうかとのご質問ですが, この場合,解答としては空集合 φ がもっとも明快です. 他の場合も,集合の正しい記法を使って答えられるのがよいと思います.


M さんからの質問 #01143

商位相と商集合(同値類・直和分割)との関連がわかりません.

退職して趣味で数学を勉強していますが,不明点がででてきましたので教えて下さい.
商位相と商集合(同値類・直和分割)との関連がわかりません.
(インターネットを調べていますと,各同値類を1つの元と見なすとか書いていましたがよく分かりません?) 何か具体例で説明可能であればありがたいのですが?

お答えします:

ご質問を拝見しました.
ご質問があまりにも広範囲で,私にはメールでお答えすることができません.
メールによる回答には限度があることを,どうかご理解下さい.

インターネットで調べておられるとのこと, それも1つの方法とは思いますが,ネットによる知識は断片的になりがちです.
数学は何と言っても積み重ねの学問ですので, 良書を選ばれて,1冊をしっかり読まれることが大切と思います. そうすれば,自然にご自分の中に,具体的イメージが構築されるのではないでしょうか.

商集合のごく簡単な具体例を1つ書いておきます.
X = {a, b, c, d, e, f} を6人の学生の集合とする.
6人の年齢は,
a が 18才,b が 19才,c が 18才,d が18才,e が20才,f が 19才.
このとき,X における同値関係 R を,

xRy <=> x と y は同年齢 

によって定めると,6人それぞれの R に関する同値類は,
[a] = {a, c, d},
[b] = {b, f},
[c] = {a, c, d},
[d] = {a, c, d},
[e] = {e},
[f] = {b, f}.
集合 X の R による商集合 X/R は,同じ要素を重複して書かないので,

X/R = {{a, c, d}, {b, f}, {e}}.

すなわち,3個の要素 {a, c, d}, {b, f}, {e} からなる集合です.
これは同年齢の学生を1つの元と見なして,新しい集合を作ったことになります.
このような具体的で簡単な例を,自分でいろいろ作って考えてみることが, 具体的イメージをつかむこつではないかと思います.

取り急ぎ,ご回答まで.


T.H.さんからの質問 #01142

第10章,問4: 位相空間 (S, T_2) の閉集合がよくわかりません.

129 ページの問 4 の (S, T_2) の閉集合がよくわかりませんでした.
答えを見ると,もともとの (S, T_2) の開集合と一致している気がします. (S, T_1) の方は補集合をとると言うことでしたが,求め方が違うのでしょうか?

お答えします:

T.H.さんの考え方で正しいです.
求め方は (S, T_1) と同じです.
位相空間 (S, T_2) では,開集合と閉集合が一致します.

位相空間 (S, T_2) の開集合は,
φ, {a}, {b,c}, S. 
これら4つの集合の S における補集合をとると,
S, {b,c}, {a}, φ. 
後者の4つの集合が,(S, T_2) の閉集合です.
結果として,位相空間 (S, T_2) では,開集合全体と閉集合全体が一致することが分かります.

最後になりましたが, 『はじめよう位相空間』のご購読に御礼申し上げます.


K.E.さんからの質問 #01141

局所弧状連結距離空間の任意の開被覆は,弧状連結集合からなる局所有限細分を持つでしょうか.

局所弧状連結性に関してつぎの質問があります.
距離空間のとき,与えられた開被覆に対して,局所有限で各々が弧状連結である細分があるか? という問題です.

お答えします:

う〜ん,難問です.
本質的には,「局所連結距離空間の任意の開被覆は,連結開集合からなる局所有限細分を持つか?」 という問題だと思います.
しばらくお時間を下さい.


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