読者からの質問と回答 01221 〜 01230

K.K.さんからの質問 #01230

第15章,定義15.1の A^ の定義中で「B は有限」とあるのは, B は有限集合という意味ですね ?

『はじめての集合と位相』の第15章,定義15.1では, 集合 X の 部分集合族 A に対して,

A^ = {∩B : BA, B は有限}

と定義しています.
ここで,「B は有限」とあるのは, B は有限集合という意味ですね ?

お答えします:

定義 15.1 における「B は有限」は「B は有限集合」の意味ですが, BA ですので, それは「BA に属する有限個の集合からなる集合族」という意味であることに注意して下さい。 ここで,「有限個」には「0 個」も含まれます. したがって,B として空集合をとると,∩B = X となり, X ∈ A^ が導かれます.

以上で,いかがでしょうか.
K.K.さんの勉強が進むことを祈っています.


T.T.さんからの質問 #01229

演習問題の解答 (略解でもいい) を公開していただけませんか.

独学で数学を勉強しています.
『はじめての集合と位相』という本を購入して,集合と位相を勉強しているのですが,そこにある演習問題は解答が載ってなく,解いてはみるものの正しいかどうかがわからず,結局意味がないのではと思ってしまいます. 演習問題の解答(略解でもいい)を載せてくれた方が嬉しかったです. よろしければ略解をインターネットに載せていただいてもよろしいですか?

お答えします:

『はじめての集合と位相』のご購読に御礼申し上げます.
本書のまえがきにも書きましたが,この本は授業で用いる教科書として書かれています. レポート等の課題として使うために,演習問題に解答を与えていません. 実際,解答がないところがよいという声も届いています.
ご期待に添えず申し訳ありませんが,事情をご賢察下さい.

独学で数学を勉強中とのことですが, 必ずしも演習問題を解かれる必要はないのではないでしょうか. 高校までの数学は,受験という目的がありますので,問題を解けるようになることが大切ですが, 数学の勉強としては,内容をしっかり理解されればそれで十分と思います.
実際,演習問題がまったくない数学書も多くあります.
また,内容を十分に理解されれば,もし演習問題を解く機会があったとしても, 解答の有無は気にならなくなると思います.

もし解答を確認しながら演習問題を解きたいということであれば, 解答が与えられている他書の演習問題を解くという方法もあります. 参考までに,『はじめての集合と位相』の第8章から第13章までの内容は, 『はじめよう位相空間』の内容と平行しています. 後者の演習問題の解答は,姉妹書『解いてみよう位相空間(改訂版)』の中にすべて与えられています.

T.T.さんの勉強が進むことを祈っています.
お返事まで.


I.さんからの質問 #01228

連結開集合から離散空間への連続写像について疑問があります.

前回ご質問しましたIですが,定数層に関連して疑問があります.
X を位相空間,A をアーベル群として離散位相を入れたもの, さらに,X の開部分集合 U に対して,Γ(U) を U から A への連続写像の群とします.
U が連結開集合のときは,なぜ Γ(U) = A になるのでしょうか?
Γ(U) と A の両方ともアーベル群になることはわかるのですが・・・.

お答えします:

一般に,連結空間から離散空間への連続写像は定数関数になります.
したがって,Γ(U) の要素は A の要素と1対1に対応するということではないでしょうか.

後日,Iさんから,証明できたという御礼のメールを受け取りました.


K.Y.さんからの質問 #01227

合成写像 h o g と h が局所同相写像のとき,g も局所同相写像でしょうか.

工学(電気系)を専攻している大学院生ですが,趣味のひとつとして,数学全般の興味を持った内容を独学で勉強しております. 位相空間論の問題について教えていただきたく,メールを送らせていただきました. 次の問題で自分の中で引っかかりを感じている次第です.

定義. 位相空間 X から位相空間 Y への写像 f が局所同相写像であるとは, X の任意の点 x に対して,ある開近傍 U が存在し, f(U) は Y の開集合となり, f の始域および終域をそれぞれ部分空間 U と f(U) に制限した写像 f|U : U → f(U) が同相写像となることをいう.

問題. X, Y, Z を位相空間とし,2つの写像 f : X → Z と h : Y → Z はともに局所同相写像であるとする. このとき,写像 g : X → Y が f = h o g を満たすならば,g も局所同相写像であるか?

この問題に対し,自分なりに下記のような肯定的な解答の証明を与えました.
その上で出来れば文献の裏付けがほしいと思い書籍やインターネット上の文献をあたったのですが, 局所同相写像を扱った文献を十分に見つけられず,本当に正しいのか確信が持てなくなった次第です. そもそも問題の主張が正しいのかわからず,また自分の証明の誤りを見つけることはできませんでした. もし誤りであればその箇所と, 可能であれば反例を教えていただきたいです. よろしくお願いいたします.証明は略.

お答えします:

K.Y.さんの証明は大変よく考えられていますが,最後の部分にギャップがあります. そのことは,問題の答が否定的であることを示す次の例からわかると思います.

反例. R を実数直線とし,S を原点を中心とする半径 1 の円周とする.
ただし,これらは通常の位相をもつものとする.
写像 f : RS
f(x) = (cos 2π x, sin 2π x)
によって定義すると,f は局所同相写像.
次に,R の部分空間 {x : -1< x <1} を Y とする.
写像 h : Y → S を f の Y への制限写像とすると,h も局所同相写像.
ところが,写像 g : R → Y を
g(x) = x - [x](ただし,[x] は x を越えない最大の整数)
によって定義すると,h o g = f が成り立つが,g は局所同相写像でない.
実際,g は整数の点で連続でない.

ご質問の問題は,写像 g に連続性を仮定すると肯定解をもちます.
そのことは,K.Y.さんの証明を少し修正することによって示されると思います.

後日,K.Y.さんから,写像 g が連続のとき,g は局所同相写像であることが証明できたこと, また,この問題に関する疑問がすべて解決したというメールを受け取りました. お役に立てたこと,嬉しく思っています.


D.I.さんからの質問 #01226

ハウスドルフ空間における集積点について教えて下さい.

位相の復習をしようと思って入門書を読んでいたら,ひっかかりました.

ハウスドルフ空間 X において, p が A ⊂ X の集積点であることと p の任意の近傍 U において U ∩ A が無限集合であることが同値であるという証明があったのですが,最後の部分がわかりませんでした.
どうぞご教示お願いします.

証明: U ∩ A が無限集合ならもちろん U ∩ A は空でないので p が集積点であることは明らか.
逆を対偶で示す.
U ∩ A が有限集合なら1点集合はハウスドルフ空間では閉集合なのでその有限の和は閉集合である. よって,U ∩ A の補集合は開集合となる. すると p は集積点であることはあり得ない.(証終)

証明の4行目までは理解できます.
最後の一行がどうしてかわかりません.
p を含む近傍 V で V ∩ A が空になるのを見つければいいと思うのですが・・・.

お答えします:

最初に,集積点の定義を確認しておきます.
点 p が A の集積点であるとは, p の任意の近傍 V に対して,V ∩ (A - {p}) が空でないことを意味する.

証明の 3 行目以後を,次のように直すとよいのではないでしょうか.

U ∩ A が有限集合ならば,U ∩ (A - {p}) も有限集合.
ハウスドルフ空間の有限集合は閉集合だから,U ∩ (A - {p}) は閉集合.
そこで,U における U ∩ (A - {p}) の補集合を V とおく,
すなわち, V = U - (U ∩ (A - {p})) = U - (A - {p}) とおく.
一般に,開集合から閉集合を引いた差集合は開集合だから,V は開集合. さらに,V は p を含むから,V は p の近傍である.
このとき,V ∩ (A - {p}) は空集合だから,p は A の集積点でない.

いかがでしょうか.


I さんからの質問 #01225

N 次直交群の位相について教えて下さい.

はじめまして.
来年大学生になるものですが,以下の2つの質問があります.

1. SO(N) の次元は N(N-1)/2 らしいのですがどれを基準に組み合わせを考えればよいですか? 直交条件を使うのだろうとは考えましたがわかりませんでした.
2. 非連結空間 SO(N) は det A = ±1 で2つの部分にわけられるのですが, この2つの部分はそれぞれ非連結成分ですか?
また,非連結成分の定義は,位相空間 X の点 x が属する X の非連結部分集合全体の交叉でよろしいでしょうか.

お答えします:

最初に,記号 SO(N) を N 次直交群の意味で使っておられるようですが, 通常は,N 次直交群は O(N) で表し,SO(N) は行列式が正である O(n) の要素の集合を表すために使います.

質問1について: 次の参考書に答があるのではないかと思います.
横田一郎著『群と位相』裳華房,1971.
横田一郎著『群と表現』裳華房,1973.
伊藤さんが入学される大学の図書館にあると思いますので,調べてみられてはいかがですか. あるいは,もっと新しいよい本があるかも知れません.

質問2について: 私は「非連結成分」という用語を聞いたことがありません. たぶん「連結成分」の間違いではないでしょうか.
位相空間 X の点 x を含む連結成分は,x を含むすべての連結集合の和集合として定義されます.
このとき,直交群 O(N) の連結成分は SO(N) とその補集合 O(N)-SO(N) の2つです.
位相空間・質問箱の「これまでの質問と回答」の #01065 に関連する質問があります.
また,上で紹介した参考書にも証明があると思いますので,参考にされることをお勧めします.

I さんの大学生活が充実したものであることを祈っています.
以上,回答まで.


H.S.さんからの質問 #01224

Dyadic 空間 の tightness と weight が等しいことの証明を教えて下さい.

現在,位相群の勉強中です.
次の命題がどうしても証明できません.

命題. 任意の dyadic 空間 X に対して,t(X) = w(X) が成立する.

証明の概略だけでも教えていただけないでしょうか? よろしくお願いいたします.

お答えします:

ご質問の命題は,Arhangelskii-Ponomarev の定理として知られています.

A. Arhangelskii, An approximation of the theory of dyadic bicompacta, Soviet Math. Dokl. 10 (1969), 151-154.

上の論文に証明が与えられていますが,すでにご覧になったでしょうか.

R. Engelking, General Topology, Revised and completed edition, Heldermann 1989

また,上のテキストの 231 ページの Problem 1.12.12 (h) にもヒントが与えられています. もし可能なようでしたら,まずはこれらの証明を読まれてはいかがでしょうか. その上で,ご不明な点がありましたら,遠慮なくご質問下さい.

その後,質問者からは上記の Arhangelskii の論文を読むとのお返事を受け取りました.
原典にあたることは大切と思います.


H.S.さんからの質問 #01223

命題「実コンパクト位相群の濃度は可測でない」は正しいでしょうか.

命題「realcompact 位相群の濃度は可測 (= Ulam measurable) でない」は正しいでしょうか?

お答えします:

可測濃度の存在を仮定した上でのことですが,正しくありません.
任意の可測濃度 m をとると, m 個の離散剰余群 Z_2={0, 1} の積 (Z_2)^m は可測濃度をもつコンパクト位相群になるからです. いかがでしょうか.


G−B さんからの質問 #01222

数学が嫌いになりました.

こんにちは.先生の『はじめての集合と位相』を利用している者です.
添付しました写真は,『はじめての集合と位相』における「第 8 章、距離空間」と「第 9 章、距離空間の間の連続写像」に関連した演習問題です.
これらの章を一通り学習してみましたが,私にとってとても複雑であり,全く理解することができませんでした. 正直,これらの章を学習したことにより,数学が嫌いになりました.
しかし,数学をもう一度好きになってみたいと思い,著者である先生のお力を貸していただけないだろうかと考え,メールをお送りしました.

添付しました写真の演習問題を解いていただけませんか.
解いていただいた解答をもとに,解答からこの分野を理解できないだろうかと考えました. 分野の複雑さに思考は止まってしまったので,たとえヒントをいただいたとしても解けないだろうと思います.解答からこれらの分野を理解することが,数学を好きになる最後の希望の光です.
問題数は多いですが,ご検討の程お願いします.

お答えします:

ご質問の問題を拝見しました. どれもよく考えられている良問と思います.
メールに書かれたように,これらの問題を解くことができれば, たしかに数学を好きになる可能性があります.

G−B さんがこれらの問題を解けない理由は, すべての問題を一度に解こうとしているからではないでしょうか.
先ずは,問題1だけに目標を絞って,考えてみられてはいかがですか.
ちょうどこれから冬休みに入ります. 第 8 章をもう一度よく復習されて,特にその章のすべての問に解答された上で, 再度,問題1を考えることをお勧めします.
それでもまだ問題1が解けなかったら,1ヶ月後にどのように考えたかを書いてメールを下さい.

お送り頂いた問題は授業で配布された演習問題でしょうか. もしそうなら,担当の先生が作られたものですから, 投稿したり,他者に送られることは慎重にされるべきだと思います.
また「位相空間・質問箱」では,添付書類によるご質問は遠慮して頂いております. 質問内容は直接メールに書いて頂くよう,お願いいたします.

G−B さんの勉強が進むことを祈っています.
最後になりましたが,『はじめての集合と位相』のご購読に御礼申し上げます.


J さんからの質問 #01221

有理数を無理数にうつし,無理数を有理数にうつす連続関数は存在しますか.

f : RR 連続,
f(Q) ⊂ R - Q,
f(R - Q) ⊂ Q.

そのような f が存在するかどうかお願いします.

お答えします:

そのような連続関数 f は存在しません.
質問者は学生さんでしょうか. ヒントを与えますので,理由を考えて下さい.

ヒント
実数空間 R の連結性と連続関数が連結性を保存する事実を使う.
または,
実数空間 R の完備性とベールの定理を使う.

うまく問題解決できるように祈っています.


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