1.pHとは 2.土の酸度 3.作物に適した土壌のpH値 |
4.菌類とその至適pH 5.土壌のpHと肥料要素の溶解と利用度 6.pHの修正(中和) |
7.有機物の施肥" 8.有機物について 9.豆知識 |
1.pHとは
Hydrogen ion(水素イオン)exponent(指数)
pHの定義 水素イオン濃度を[H+]=10-n( mol/L )と表したとき、n値をpHという。
[ H+]=10-3( mol/L )の時 pH=3
[ H+]=10-12( mol/L )の時 pH=12
純粋な水は中性である( pH=7 )
pH=log1/[ H+]=-log[ H+]
pH7とは
H+=1×10-7 pH=-log-7=7(水素イオンの逆対数値)
1.0×10-0(mol/L) | 1.0×10-1(mol/L) | 1.0×10-2(mol/L) | 1.0×10-3(mol/L) | ||||
pH0 | ⇒⇒⇒⇒⇒⇒⇒⇒ | pH1 | ⇒⇒⇒⇒⇒⇒⇒⇒ | pH2 | ⇒⇒⇒⇒⇒⇒⇒⇒ | pH3 | |
10倍に希釈(1/10) | 10倍に希釈(1/100) | 10倍に希釈(1/1000) | |||||
『解説』[H+]が1/10になるごとにpHは1ずつ大きくなる(中性に近づく)。 |
[H+]水素イオンの濃度 | pH | [OH-]水酸化物イオンの濃度 | |
極端な酸性 | 1 = 10 -0 | 0 | 10 -14 = 0.00000000000001 |
非常に強い酸性 | 0.1 = 10 -1 | 1 | 10 -13 = 0.0000000000001 |
非常に強い酸性 | 0.01 = 10 -2 | 2 | 10 -12 = 0.000000000001 |
強い酸性 | 0.001 = 10 -3 | 3 | 10 -11 = 0.00000000001 |
強い酸性 | 0.0001 = 10 -4 | 4 | 10 -10 = 0.0000000001 |
中程度の酸性 | 0.00001 = 10 -5 | 5 | 10 -9 = 0.000000001 |
弱い酸性 | 0.000001 = 10 -6 | 6 | 10 -8 = 0.00000001 |
中性 | 0.0000001 = 10 -7 | 7 | 10 -7 = 0.0000001 |
弱いアルカリ性 | 0.00000001 = 10 -8 | 8 | 10 -6 = 0.000001 |
中程度のアルカリ性 | 0.000000001 = 10 -9 | 9 | 10 -5 = 0.00001 |
強いアルカリ性 | 0.0000000001 = 10 -10 | 10 | 10 -4 = 0.0001 |
強いアルカリ性 | 0.00000000001 = 10 -11 | 11 | 10 -3 = 0.001 |
非常に強いアルカリ性 | 0.000000000001 = 10 -12 | 12 | 10 -2 = 0.01 |
非常に強いアルカリ性 | 0.0000000000001 = 10 -13 | 13 | 10 -1 = 0.1 |
極端なアルカリ性 | 0.00000000000001 = 10 -14 | 14 | 10 -0 = 1 |
2.土の酸度
pHの表示にはH2OとKclがある。 H2O(活性酸度)にて測定する場合は抽出液に純水、又は蒸留水を使用する。リトマス試験紙で測定するように、被測定溶液に直接試薬を入れ数値を読み取ることが出来る。 Kcl(置換性酸度)は抽出液に塩化加里液を使用する。pHとはH(水素)のPower(力とか冪の意味)。Kcl規定液を用いて水素(H+)原子と加里(K+)原子を交換させ、その(K+)を検出する。このことを 置換性とか交換性酸度 という。 注) |
土壌分析表のpHの項を見る際、注意しなければならないのは、、、、、
活性酸度pH(H2O)>置換性酸度pH(Kcl)の差が1ポイント近い差で表示されるケースがある。この差は有機物の多少で変動はあるものの、通常は0.3〜0.5位くらいである。その差が大きいケースでは念のため、機器を調整チェックして再検定すべき。
さらにチェックをするポイント
@ 土壌の前処理工程に於いて、振とう器にて120回/分×30分=3600回振とう処理したか?
A pHメーターの電極に使用する過飽和塩化加里液をチェックし、不足している場合は60℃に加温して補充する。
作 物 | p H | 作 物 | p H |
エンドウ | 5.5〜6.1 | ナ ス | 6.8〜7.3 |
ソラマメ | スイカ | 6.2〜6.9 | |
カンショ | 6.0〜6.5 | ダイコン | 6.1〜7.8 |
バレイショ | タマネギ | 6.2〜6.9 | |
トマト | 6.5 | キャベツ | 6.0〜7.5 |
キウリ | 5.5〜7.0 | ホウレンソウ | 7.0 |
イチゴ | 6.0〜6.5 |
菌 類 | p H | 菌 類 | p H |
硝酸菌 | 6.8〜7.3 | 根粒菌 | 6.5〜7.5 |
糸状菌 | 5.0〜6.0 | 亜硝酸菌 | 6.7〜7.9 |
細菌・放線菌 | 6.5〜7.5 |
(1)酸性土壌の中和剤(肥料)
・消石灰(使用しないこと)・・・生石灰に水を加えて作る。その化学反応で高熱を発しながら、、、CaO+H2O=Ca(OH)2 ⇒ 消石灰となる
※使用してはいけない理由・・・土が固くなる。消石灰を加えた土壌の化学反応は、、、、
白壁(漆喰)を作る | → | 消石灰+麻糸くず+布海苔+赤土 | ⇒ | 圃場では →(消石灰+切藁+粘土)で同じ状態 |
モルタルを作る | → | 消石灰+砂+空気中のCO2 | ||
圃場では | → | 消石灰+硫安=硫酸カルシウムとアンモニアの肥料としての効果を期待。 しかし、そのような圃場では、消石灰+有機物(切藁など)+土壌(粘土質)の漆喰壁と同じ工程となり、そのため地下50cm位の処に沈殿した石灰質が岩盤層となっていることが多い。 |
■ メモ 姫路城の漆喰(2011年現在改修中) 消石灰に煮立てて解した銀杏藻(海藻の一種)を加え、そこに麻スサ(麻の繊維)を混ぜ合わせる。更に、姫路城の仕様ではその乾燥を促すために漆喰の目を粗くする技法が採用されている、これには貝灰(牡蠣殻灰)を加えるという。最後に砂を含ませ、良く練り合わせて塗っていく。 |
・珪酸苦土石灰(水田用)
・炭酸苦土石灰(畑作用)
・鉱滓苦土石灰
・炭酸石灰
(2)アルカリ土壌の中和
その必要性・・・アルカリ障害の防止(鉄Fe・マンガンMn・硼素Bなどの肥効が低下する為に病気(欠乏症)が多発する。
その主原因・・・主に@石灰質肥料の多施肥Aアンモニア態窒素の施肥B有機物を使用していない等。
※土壌のpHは硝酸態窒素(陰イオン)の量と石灰・加里(陽イオン)成分比でほぼ決まる。
その対策・・・・・有機物は一作ごとに乾物で3.000Kg/10a、湿物で6.000Kg/10aを投入する。(完熟した物を使用すること)
窒素肥料は、必ず硝酸態窒素を用いる。(ex.硝酸カルシウムなど)
(3)アルカリ水(潅水用)の中和
その必要性・・・土壌のpHが6.5であっても、潅水のpHが7.0以上の場合にはアルカリ障害が部分的に発生する。7.2とか7.4近くになると壊滅的な原因となる。
pHが高くなる原因
@地殻が石灰質の土壌である。
Aナトリウム(Na)を含有した土質である。逆に、硫黄成分(この場合酸性)の地殻もあるので注意する。
<参考>
・近くに温泉がある場合には、その泉質のpHなどを調べると参考になる。
・近くにセメント工場がある場合には、その地域は石灰質の地殻ではないか?と疑う。
・上流に養鶏場・養豚場などがある場合にも要チェック。(アンモニアの尿などが流れ込んでいないか?アンモニアの害)
・水路がセメントで新しくつくられた場合。pH値の高いセメント成分が溶出していないか?(ダムなども同様)
その対策・ ・・・硫酸か硝酸を用いpHを下げて使用する。
@土壌pHが7.0付近では潅水pHは5.5にて潅水する。A土壌pHが6.5〜6.8では、潅水pHは6.0にて潅水する。
※逆に潅水のpHが低い場合 → pHを上げる。
7.有機物の施肥
土壌有機物を施肥すると →→→ 炭酸ガスを放出し →→→土壌中の Pも水溶性となる
↓ CO2
↓ ↑
↓ 根
↓
有機酸 →→→→→→ 有機酸+Fe・Al・Mn・Cu・Znと結合して →→→→ く溶性になっているリン酸を遊離する。
(く溶性になったリン酸塩=FePO4・AlPO4・MnPO4・CaPO4などが遊離しPO4となる。)
8.有機物について
おが屑(敷量)を用いた牛糞・豚糞の注意点
おが屑には国内材を用いた物と外材(輸入材)を用いた物がある。外材は港湾の貯木場に長期保管をするので、その海水の塩分(NaCl)が多く含まれることが考えられる。
(必ず確認をする。) ⇒ 塩積障害と塩害のページを参照
9.豆知識
置換性塩基とは
土壌コロイドには加里K+、石灰Ca+、苦土Mg+、水素H+等の陽イオンが吸着しているが、これらは容易に他の陽イオン、例えばNH4+などと置換される。これらの中で、水素H+を除き、加里、石灰、苦土、ナトリウムを置換性塩基という。この置換性塩基の量が多い程、土壌は肥沃で物理性も良い事になる。土壌100g当り置換吸着される塩基のmgを塩基置換容量と呼ぶ。現在では加里、石灰、苦土を分析し、その総量を塩基性置換容量としており、グラム当量(me)であらわしている。