I n d e x
1. 塩とは何か . 2. 中性塩 . 3. 酸性塩 . |
4. 塩積障害と塩害の違い . 5. 塩積障害発生の原因 . 6. 塩害発生の原因 . |
7. 予防と脱塩処理 . 8. 塩害の土壌 . |
(1) 食塩(NaCl)としての塩
(2) 金属またはアンモニウムと酸が化合して生じた肥料塩
硝酸塩系肥料 HNO3 リン酸塩系肥料 H3PO4 塩素酸塩系肥料 HCl
硫酸塩系肥料 H2SO4
上記の酸の水素原子(H+)が金属(加里:K、石灰:Ca、苦土:Mg)または金属性基
(アンモニア:NH4)で置き換えられ
たものを塩という。
水素原子Hの全部が金属または金属性基で置き換えられ、水素原子H(PHでは酸性を示す)が残っていないもの。
(1) 硝酸塩系 HNO3
硝酸加里 : KNO3 硝酸石灰 : Ca(NO3)2 硝安 : NH4NO3
(2) 塩素酸系 HCl
塩化加里 : KCl 塩化カルシウム : CaCl2 塩安 : NH4Cl
(3) 硫酸塩系 H2SO4
硫安 : (NH4)2SO4 硫酸加里 : K2SO4 硫酸苦土 : MgSO4
硫酸石灰(石膏) : CaSO4 ・・・ 難溶
水素原子Hの一部だけが金属または金属性基で置き換えられ、まだ水素原子H (PHでは酸性を示す)が残っているもの。
(1) リン酸塩系 H3PO4
リン酸1加里 : KH2PO4 リン酸1アンモン : NH4H2PO4 リン酸2アンモン : (NH4)2HPO4
塩積障害とは肥料塩積算障害(肥料を施し過ぎて高濃度となったために生じる生育障害)であり
浸透圧に関係する物理的
な現象である。
塩積障害と電気電導度(EC)の関係
自分の圃場の施肥設計の基準にECの値を基準にする人も多いと思う。
有機物を多量に使用した圃場のEC値は上昇
するのでその基準にしてはならない。(参考:電気伝導度と施肥)
また、養液栽培の標準培養液のECは2.2 〜 2.4である。
塩積障害の症状
畝の土壌表面は毛細管現象によって土壌中のアンモニア態窒素、硝酸態窒素、
リン酸塩などが浸出して白色の結晶を生
じ、表土付近の浸透圧は高くなる。その結果、
昼間の植物は盛んな蒸散作用はあるものの根は水分を吸収出来なくなり
萎れたようになる。
やがて、夕刻になると蒸散が少なくなる為、植物は再び元気を取り戻したようになる。
このような事を繰り返しながら次第
に青い状態で枯死する。
植物の緑色が濃いのが特徴。
写真−@ 撮影:’07. 4. 26 |
写真−A 撮影:’07. 4. 26 |
最近のハウス栽培は農薬が使えない為、換気の開口部 分に防虫ネットを張って虫の侵入を防御している。そのた め換気の効率が悪く、生育にも不都合を来たしている。 |
このような場合の対策として10時と14時頃、葉の表裏に 充分かかるように葉面散布を行う。その場合、グリーンアップ を2000倍に溶き3日に一度加えると更によい。様子を見て 多量要素も加える必要がある。 |
塩害とは塩(NaCl)の害であり、目安として土壌中の塩素(Cl)
を検定して塩素として15mg/100g乾土以上あると害を生じ
る。また塩素も害を及ぼしている一方で食卓塩でもあるNaClのナトリウム(Na)
も害を生じ生理的現象により葉の周縁が約
1cm程度変色し、酷くなると褐変し、この時必ず鉄欠乏の症状を発生して枯れ死する。
ナトリウム Na → 加里(K)の拮抗作用
塩 素 Cl → リン酸(P) 〃 を来たす。
故に、塩積障害と塩害とでは全く異にする事柄なので区別して考える。
5. 塩積障害発生の原因
土壌分析を参考にせずに経験や勘に頼った施肥を行った結果生じる。
土壌中の肥料要素の欠乏限界量、過剰限界量を認識して土壌分析を定期的に行っていれば、障害が発生することは無い。
尚、分析は簡易分析では無く、必ず公定分析法で行う。
固液分離していない牛糞、豚糞またはラワン材などの外材を使用した堆肥。海砂の客土などにより発生する。
また、最近は海洋深海水や塩などを添加する農法が報じられているようであるが、この指導方針には疑問を感じる。
写真−B 塩害 |
塩(NaCl)によるアルカリ障害。 海砂を塩抜きしないで大量に客土をした圃場のトマトの根。 根は白くなって毛根は全く無い。 海砂はPHが8.3である。PHが7.5以上になるとFe、Cu、 Zn、Mnなどの微量要素が溶け難い状態となる。 (Truogの原図を参照) |
(1) 塩積障害の予防と脱塩処理
予防 ・・・・・・・・ 土壌分析をしてデーターを重要視する。
脱塩処理 ・・・・ 大量の灌水を必要とする。
有機物を大量に使用した場合や重粘土質の土壌などでは如何に大量の灌水を行っても脱塩が
不可能の場合がある。
灌水・・・・・・・・・ 必ず夜間実施する。
下表−4は大量の水をかけたらどれ位成分が減るかというテスト、灌水と肥料成分の流亡量である。
カーネーションのベンチ栽培で水の抜けが大変良い条件で3.3cu当たり5トンの水をかけ流してみて、その流亡状態
を分析したものである。
単位mg/乾土100g(≒Kg/10a) | |||||||
分 析 日 | PH (KCl) |
アンモニア (NH4-N) |
硝酸 (NO3-N) |
全リン酸 (P2O5) |
加里 (K2O) |
石灰 (CaO) |
苦土 (MgO) |
53.01.07 A | 5.78 | 9.41 | 47.36 | 721.02 | 63.58 | 462.99 | 49.39 |
53.02.23 B | 5.14 | 8.09 | 20.55 | 531.90 | 57.66 | 329.71 | 45.36 |
流亡率(%) | 14.02 | 56.61 | 26.23 | 9.31 | 28.79 | 8.16 |
(2) 塩害の予防と脱塩処理
(イ) 灌水に使う用水の分析 ・・・NaClを含んでいないか確認する。
(果菜栽培テキストVOL.1 V−4のケースを参照)
(ロ) 固液分離した牛糞を使う。
(ハ) 固液分離していない牛糞、豚糞は使用しない。(尿を加えたものも含む)
(二) ラワン材使用の牛糞、豚糞、鶏糞堆肥
(ホ) 脱塩処理
@ ラワン材などの外材を使用した、注)大鋸屑堆肥は一年間屋外で雨にさらし完全に脱塩すること。その場合堆
肥はできるだけ広い範囲に広げる。それが不可能な場合は積み上げた堆肥の山の頂天は噴火口のように窪み
を作って水が溜まるようにしておく。(ポイントは梅雨の長雨にさらす事)
注) 堆肥は条例などで野積みできない場合があるので良く確認すること。
A 脱塩の出来ていない堆肥を既に投入した場合は、水はけの良い圃場では約50トン/10aを5〜6日続ける。
このような灌水を夜間にすることで脱塩は可能、しかしこのような作業は地下水位が低い圃場か、または暗渠設
備の完備した圃場に限る。
単位mg/乾土100g(≒Kg/10a) | |||||||||
分 析 日 | PH (KCl) |
アンモニア (NH4-N) |
硝酸 (NO3-N) |
全リン酸 (P2O5) |
加里 (K2O) |
石灰 (CaO) |
苦土 (MgO) |
可給態鉄 (Fe) |
塩素 (Cl) |
52.04.12@ | 6.78 | 2.28 | 1.67 | 96.33 | 11.73 | 195.02 | 28.22 | 0.252 | 28.72 |
52.01.19A | 5.52 | 8.09 | 1.87 | 39.60 | 23.62 | 312.87 | 37.30 | 0.526 | |
52.02.16B | 5.72 | 4.41 | 0.67 | 106.38 | 65.69 | 340.93 | 61.49 | 0.194 | 33.32 |
53.10.01C | 6.62 | 8.61 | 285.45 | 68.71 | 395.65 | 94.75 | 0.064 | 113.45 | |
53.01.15D | 6.97 | 3.46 | 0.67 | 36.64 | 44.57 | 766.04 | 134.06 | 0.338 | 203.45 |
標準 | 6.0〜6.2 | 2〜3 | 30 | 50 | 50 | 320 | 30 | 2.7 |
(注)@ 福岡市 人糞+塵芥処理 栽培物=プリンスメロン(塩素の害)
A 人吉市 前作終了後の分析
B 〃 Aに生豚糞8トン/10a施肥後に分析 キウリ(塩素の害)
C 島原市 生牛糞8トン/10a トマト枯れ死寸前(塩素の害)
D 福岡市 ラワン材の堆肥 ラワン・・・港湾に貯木