1) 根と浸透圧 (土壌中の肥料濃度)
液体肥料はその肥料メーカーで希釈倍率を指示しています。然しながら、追肥や潅水の際に固形の肥料を水に溶く場合があります。 この場合、皆さんは倍率を考えて溶いていますか?。意外と勘に頼ってやっていませんか?。こういう場合は、 必ず浸透圧の計算をして、1000g当りに溶く肥料の量(Kg)を決定するようにします。 (各肥料の浸透圧は肥料一覧の右端へ)
そうしないと溶く量が多かった場合、肥料に当って葉を傷めたり、昼間萎れたりするのです。 この萎れる症状は肥料濃度が濃かった為に植物体内の水分が奪われたり、 植物(細胞液)の浸透圧と土壌(溶液)の浸透圧の差(根圧)が少ない為、植物が蒸散した分の水分を体内に吸収できないからです。 青枯れの原因の殆どはこのような状態から始まります。
一つの例として、たとえば50メートルの大木が水分をてっぺん迄ポンプの力も借りずに上げれるのは、 根や細胞の浸透圧によって生じる根圧流と毛管現象によって成せる現象なのです。 ついでながら、揚程50m(くみ上げる高さが50mという意味)のポンプは口径にも因りますが、何10Kwの動力が必要です。
第1図 ヒマワリに於ける細胞浸透圧の分布 |
T.浸透圧 ( 植物細胞と浸透圧の実験 )
半透膜を隔てた濃度の異なる溶液中で水が移動をしようとする圧力。 浸透膜
@不透膜(膜に穴が無い)・・・・溶媒も溶質の分子も通さない。 <膀胱膜の実験>(豚の膀胱にて実験) 膀胱の中にショ糖を満たして水中に浸すと、膀胱膜はショ糖は通過させないが水は自由に通過するので、 膀胱内に水が浸入し始める、この侵入時の圧力(濃度差による圧力)を浸透圧という。やがて膀胱は膨張した状態になり、 圧力は平衡状態となる。 <ファントーホッフ(Vanthoff)溶液論> 1mol/L 液が0℃、1気圧のとき22.4気圧の浸透圧を示す。 |
第2図 根の横断面模式図 |
<細胞膜とカスパリー線> ・ 細胞膜 半透性膜(上記の浸透膜=Bを参照) ・ カスバリー線 根(根毛)の最も内側の皮層(内皮)にはカスバリー線があり、そのカスバリー線を持つ内皮が根の生理的な性質、 とりわけ根が吸収したものを体内に移動させる機能(浸透圧)に重要な働きをしていると考えられている。 |
第3図 根の縦断面模式図 |
第1図での根の浸透圧は概ね約5〜6気圧である。
この根の周辺の土壌中に含有されている肥料濃度の浸透圧が5〜6気圧となれば圧力の差がなくなり、
根に浸透する圧力はなくなる。根に最も良く浸透する為には、根の周辺の浸透圧は0.5〜1.5気圧といわれている。 |
1mol・・・1グラム分子量 → 22.4気圧
1mm mol(1ミリ.モル)・・・1molの1/1000に当る。1ミリグラム分子量
故に、1mmは0℃・1気圧の時0.0224気圧を示す。
2.浸透圧の計算
(1)硫安(NH4)2SO4
分子量 N=14、H=1、S=32、O=16
(14+1×4)2+32+16×4=132
132g中 Nは14×2=28g 2mol (Nとして28/132 =21.21%含有)
Sは32×1=32g 1mol (S 〃 S/(NH4)2SO4=24.24% 〃 )
硫安1g中Nは2mol×(1g÷132g)=0.0150mol=15mmol
〃 Sは1mol×0.0075=0.0075mol=7.5mmol
0.0224気圧×(15mmol+7.5mmol)=0.0224×22.5mmol
=0.504気圧(0℃ 1気圧の時)
注)20℃の時は、20/273(絶対温度)=0.0732≒7%増となる。
第4図 Beckmannの温度計による 浸透圧の測定 |
氷点降下法 水は0℃、1気圧で氷となるが、水に溶質が溶解していると0℃以下でないと氷結しない。 この氷点降下度をBeckmann測定器で測る。
・氷点降下度凾ヘその溶液の浸透圧と比例する。
イ) 血圧の凾ェ−0.57℃であったとすると、0℃の時の浸透圧は
ロ) 0℃・1気圧の時の浸透圧が0.504気圧の硫安は、 (答え) 0.504気圧×(1+20/273)≒0.5409気圧 |
4.根の浸透圧図 (NHK高校講座|生物|植物と水 〜大地と空をつなぐ植物〜)
2.2気圧以上となると濃度障害を来し、0.5気圧以下となると肥料としての機能を果たさない。
(参考)水耕栽培及び礫耕栽培では0.8気圧として設計されている。
浸透圧−1)
左図のように、半透膜(小さい分子は通すが大きい分子は通さない)を仕切りにして入れた水に、
左側は濃度を付けた溶液を、右はそのままの水として放置したまま時間を経ると、右図のように水面に差が生じる。
浸透圧−2)
浸透圧ー1)図のように高くなろうとする水面に圧力をかけてやると液面の均衡が保てる。 その均衡状態のときの圧力をその溶媒濃度に対する浸透圧という。
植物は蒸散をして体液濃度を高め水分と栄養を吸収する。そして、満足な水分が細胞内にあるとき、 その細胞には膨圧がかかり正常な細胞の形を保つことが出来る。つまり、直立をすることが出来る。 逆に、正常な形を保てないとき植物は必然的に萎れる事となる。炭酸ガスや酸素の出入りする気孔も原理は同じで、 膨圧が加わっているとき気孔は開き、水分が減って膨圧が降下すると気孔は閉まり、蒸散が出来なくなる。
ついでながら、高くなった液面に圧力を掛けて、半透膜を介して水分子を押し出すことも出来る。
この原理を利用して工業用に応用したのが海水から真水を造る海水淡水化プラントである。
飲料水の不足している中近東諸国や離島などなくてはならないプラントである。
これは逆浸透膜と呼ばれ、英語ではReverse Osmosis Membraneといい、
その頭文字をとってRo膜とも呼ばれる。
(参考)逆浸透膜