液 肥 の 自 家 調 製 

<翻訳>
更新日:2008年 8月28日   .


 INDEX
1. 原則
2. 硝酸態窒素を主体とした液肥の一例
3. アンモニア態窒素を主体とした液肥の一例


1. 原則

(1)液肥の濃度は使用時の浸透圧を0.5〜1.5気圧(0℃・1気圧)の範囲内とし最高濃度は2.2気圧までとして調製をする。(29.根と浸透圧 を参照 )
(2)分析による追肥以外はN:P:Kの比率は、下記に基づき調製をする。

表−@ 礫耕栽培試験による植物1株当りの肥料塩吸収量(単位:g)
米澤農業研究所 .
品    目 NH4-N NO3-N P2O5 K2O 摘    要
カーネーション 0.50 2.66 2.47 4.46  コーラル・フィッシャ・ペパーミントシムの混植
キ      ク 0.44 2.59 2.22 4.31  天ヶ原(黄・白)
キウリ(久落H) 3.11 24.25 10.77 42.21  12/17〜7/末 (収穫量 13トン)
トマト(福寿2) 2.04 12.51 6.12 19.55  8/16〜1/中旬 (収穫量 10.5トン)
肥料塩の吸収量は窒素全量を10とすると
カーネーション= 10 : 7.8 : 14.1
キ  ク   = 10 : 7.3 : 14.2
  ------ 花卉類は概ね 10 : 8 : 14 という結果。

キ ウ リ = 10 : 3.9 : 15.4
ト マ ト = 10 : 4.2 : 13.4
  ------ 果菜類は概ね 10 : 4 : 14 という結果が判明した。

注)花卉類は、果菜類に比べリン酸の吸収が多いということがいわれているが、実際の吸収テストでもその謂れが正しいことが裏付けられた。

(3)混合しても良い単肥

 硝酸塩系肥料
 リン酸塩系肥料
 硫酸塩系肥料
 ★各項目別の内容は45.肥料一覧表を参照)

(4)混合してはならない単肥

(イ)塩素酸塩系の肥料とリン酸塩肥料は混合してはならない。
 例えば、一般家庭で風呂で使うカビ取り剤(塩素系)と洗浄剤(酸性・アルコール等)は同時使用しない。化学反応して有毒ガスが発生する。
(ロ)リン酸塩系肥料と石灰及び苦土を含有した肥料は、各々の濃厚原液を混合することは出来ない。(反応して凝固する)

(5) 液肥の濃厚液は−5℃で24時間保存した後も沈殿や結晶が生じてはならない。

(6) 肥料として市販されている硫酸加里、塩化加里は完全に溶解しないので、工業用若しくは化学用を使用する。

(7) 全窒素中、NH2−Nを含めたNH4−N系の肥料は30%迄とし、70%以上はNO3−Nとすること。
  (アンモニア態窒素 : 硝酸態窒素 = 3 : 7 とする) ・・・・果菜・花卉類は好硝酸性窒素作物である。


2.硝酸態窒素を主体とした液肥の一例

(1)礫耕・水耕用の培養液−@( 水量1000g当り )

重要!!
『この培養液は園試処方と呼ばれています。育苗用に、また緊急用に調製をして使うと効果が大です。この時、使う寸前にグリーンアップを200cc/1トン当りを加えてください。(これで成長に必要な多量要素と微量要素のすべての元素がバランス良く補給されたことになります)

 表−A
以上を熱湯にて別々に溶解し、1トンの水に加える(N : P2O5 : K2O = 243 : 96 : 377 ≒ 10 : 3.9 : 15.5)
肥料名 肥 料 成 分 率   肥料量
(g)
肥 料 成 分 量 (g)
NO3-N
(NH4-N)
P2O5 K2O CaO MgO NO3-N
(NH4-N)
P2O5 K2O CaO MgO
硝酸加里
硝酸石灰
硫酸苦土
リン酸1アンモン
0.139
0.118

(0.122)



0.617
0.466




0.236



0.164
810
950
500
155
112
112

(18.9)



96
377




224




82

            243 96 377 224 82

(特徴)
(イ)N・P2O5・K2O以外にCaO・MgOを含有している。
(ロ)単肥を使用する為、不必要と思える成分を除いて調製することが出来る。
(ハ)濃厚原液どうしの調製は避ける(リン酸が石灰・苦土と反応して沈殿するため)。
(ニ)一般の肥料と比べると高価になるので、緊急的(バックアップ的)に使うことをすすめる。

 浸透圧(0℃/1気圧)
硝 酸 加 里 0.44気圧 (1Kg/1トン)  × 0.810Kg 0.356 気圧
硝 酸 石 灰 0.28気圧 (  〃  )  × 0.950Kg 0.266 気圧
硫 酸 苦 土 0.18気圧 (  〃  )  × 0.500Kg 0.090 気圧
リン酸1アンモン 0.38気圧 (  〃  )  × 0.155Kg +) 0.058 気圧
          合 計 0.770 気圧


(2)礫耕・水耕用の培養液−A( 水量1000g当り )

 表−B
以上を熱湯にて別々に溶解し、1トンの水に加える(N : P2O5 : K2O = 220 : 110 : 377 ≒ 10 : 5.0 : 17.1)
肥料名 肥 料 成 分 率   肥料量
(g)
肥 料 成 分 量 (g)
NO3-N
(NH4-N)
P2O5 K2O CaO MgO NO3-N
(NH4-N)
P2O5 K2O CaO MgO
硝酸加里
硝   安

硫酸苦土
過燐酸石灰
0.139
0.170
(0.170)






0.190
0.466








0.280


0.164
810
320

500
580
112
54
(54)






110
377








162


82
            220 110 377 162 82


(特徴)
(イ)N・P2O5・K2O以外にCaO・MgOを含有している。
(ロ)過リン酸石灰を使用しているためリン酸と石灰の調製がし難い。
(ハ)濃厚原液どうしの調製は避ける(リン酸が石灰・苦土と化合するため)。
(ニ)(1)より安価である。

 浸透圧(0℃/1気圧)
硝 酸 加 里 0.44気圧 (1Kg/1トン)  × 0.810Kg 0.356 気圧
硝   安 0.55気圧 (  〃  )  × 0.320Kg 0.176 気圧
硫 酸 苦 土 0.18気圧 (  〃  )  × 0.500Kg 0.090 気圧
過燐酸石灰 0.25気圧 (  〃  )  × 0.580Kg +) 0.145 気圧
          合 計 0.767 気圧


(3)米沢農研液肥 NO.9(果菜用)

 表−C
以上を別々に熱湯で溶解して20gとして、使用時に75倍(1.5トン)とする。(N : P2O5 : K2O = 306 : 139 : 513 ≒ 10 : 4.5 : 16.7)
肥 料 名 肥 料 成 分 率   肥料量
(g)
肥 料 成 分 量 (g)
NO3-N NH4-N NH2-N P2O5 K2O NO3-N NH4-N NH2-N P2O5 K2O
硝酸加里
尿  素
硫酸アンモン
リン酸1アンモン
0.139

0.212
0.122

0.467



0.617
0.466 1100
165
230
225
153

49
27

77



139
513
            153 76 77 139 513


(特徴)
(イ)安価である。
(ロ)石灰・苦土を含まない。濃厚液を調製することができる。
(ハ)硫酸苦土を用いないため硫酸根の補給に硫安を使用した。
硫酸根(SO4)はアミノ酸の形成に重要な役割をしている。
主な含硫アミノ酸:
@L−システイン(C3H7NO3S
AL−システイン塩酸塩ー水和物(C3H7NO2S・HCl・H2O)
BL−シスチン(C6H12N2O4S2
工業的には自然界の人毛や動物の爪から抽出されている。工業的な合成製法は確立されていない。また、“動物の爪や蹄や毛を土に混ぜたら生育が良かった”と言うのはこの様な根元があると思われる。
CL−メチオニン(C5H1NO2S

 浸透圧(0℃/1気圧)
硝 酸 加 里 0.44気圧 (1Kg/1トン)  × 1.100Kg × 1トン/1.5トン. 0.322 気圧
尿   素 1.11気圧 (  〃  )  × 0.165Kg × (   〃   ) 0.122 気圧
硫酸アンモン 0.50気圧 (  〃  )  × 0.230Kg × (   〃   ) 0.076 気圧
リン酸1アンモン 0.38気圧 (  〃  )  × 0.225Kg × (   〃   ) +) 0.057 気圧
          合 計 0.577 気圧


(4)米沢農研液肥 NO.10(花卉用)

 表−D
以上を別々に熱湯で溶解して20gとして、使用時に75倍(1.5トン)とする。(N : P2O5 : K2O = 328 : 247 : 513 ≒ 10 : 7.5 : 15.6)
肥 料 名 肥 料 成 分 率   肥料量
(g)
肥 料 成 分 量 (g)
NO3-N NH4-N NH2-N P2O5 K2O NO3-N NH4-N NH2-N P2O5 K2O
硝酸加里
尿  素
硫酸アンモン
リン酸1アンモン
0.139

0.212
0.122

0.467



0.617
0.466 1100
165
230
400
153

49
49

77



247
513
            153 98 77 247 513


(特徴)
(イ)、(ロ)、(ハ)は(3)に同じ

 浸透圧(0℃/1気圧)
硝 酸 加 里 0.44気圧 (1Kg/1トン)  × 1.100Kg × 1トン/1.5トン. 0.322 気圧
尿   素 1.11気圧 (  〃  )  × 0.165Kg × (   〃   ) 0.122 気圧
硫酸アンモン 0.50気圧 (  〃  )  × 0.230Kg × (   〃   ) 0.076 気圧
リン酸1アンモン 0.38気圧 (  〃  )  × 0.400Kg × (   〃   ) +) 0.101 気圧
          合 計 0.621 気圧


3.アンモニア態窒素を主体とした液肥の一例

アンモニア態窒素が土壌中で硝酸態窒素となるためには硝酸化成菌の活性化が必要で、そのためには堆肥などの有機物が大量に必要となる。
そのような条件下で、、、

アンモニア態窒素 →→→→→→→ 硝酸態窒素 →→→→→→→ 亜硝酸態窒素
硝酸化成菌 亜硝酸化成菌
(pH6.8〜7.3) (pH6.7〜7.9)

のように変化をしていく。従って、アンモニア態窒素を主体とした肥料を畑作に施す場合は土壌のpHは少なくとも6.0以上でなければならない。


(1)米沢農研液肥 NO.11(果菜用)

 表−E
以上を別々に熱湯で溶解して20gとして、使用時に500倍(10トン)とする。(N : P2O5 : K2O = 2.309 : 806 : 3.223 ≒ 10 : 3.5 : 14.0)
肥 料 名 肥 料 成 分 率   肥料量
(g)
肥 料 成 分 量 (g)
NH4-N P2O5 K2O NH4-N P2O5 K2O
塩化アンモン
リン酸2アンモン
塩化加里
0.262
0.212

0.537


0.632
7600
1500
5100
1991
318

806


3223
        2.309 806 3.223


 浸透圧(0℃/1気圧)
塩化アンモン 0.83気圧 (1Kg/1トン)  × 7.6Kg × 1/10 . 0.630 気圧
リン酸2アンモン 0.50気圧 (  〃  )  × 1.5Kg × 1/10 . 0.075 気圧
塩化加里 0.60気圧 (  〃  )  × 5.1Kg × 1/10 . +)0.306 気圧
          合 計 1.011 気圧


(2)米沢農研液肥 NO.12(花卉用)

 表−F
以上を別々に熱湯で溶解して20gとして、使用時に500倍(10トン)とする。(N : P2O5 : K2O = 1777 : 1450 : 2528 ≒ 10 : 8.2 : 14.2
肥 料 名 肥 料 成 分 率   肥料量
(g)
肥 料 成 分 量 (g)
NH4-N P2O5 K2O NH4-N P2O5 K2O
塩化アンモン
リン酸2アンモン
塩化加里
0.262
0.212

0.537


0.632
4600
2700
4000
1205
572

1450


2528
        1777 1450 2528


 浸透圧(0℃/1気圧)
塩化アンモン 0.83気圧 (1Kg/1トン)  × 4.6Kg × 1/10 . 0.382 気圧
リン酸2アンモン 0.50気圧 (  〃  )  × 2.7Kg × 1/10 . 0.135 気圧
塩化加里 0.60気圧 (  〃  )  × 4.0Kg × 1/10 . +)0.240 気圧
          合 計 0.757 気圧


= 完 =




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