| |
T.当面の問題点(何故、次のような症状が発生するのか?)
1.キュウリ
(1) 先が細くなり曲げても折れない・・・・・・・・(加里欠乏)
(2) 先は細いが、元が太くなる・・・・・・・・・・・(アンモニア過剰による加里欠乏)
(3) 暖冬では、先が太くなる・・・・・・・・・・・・・(石灰欠乏)
(4) 曲がる・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(石灰欠乏)
(5) 下葉から枯れ上がってくる・・・・・・・・・・(苦土欠乏)
(6) 葉は、虫害でもないのに微少な白い斑点が出る・・・・(銅欠乏)
(7) 葉の先端が黄化し、その後褐色化する・・・・・・・・・・・(加里欠乏)
(8) 成長点の葉が簪(かんざし)状になる・・・・・・・・・・・・・(硼素欠乏)
(9) 根際は全く軟化もしていないのに昼間急激に萎凋し枯死する・・・(硼素欠乏)
2.メロン・西瓜
(1) 果の下(尻)側が裂果する・・・・・・・・・・・・・・・・(石灰欠乏)
(2) 果の肩側が裂果する・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(硼素)
(3) 西瓜の果肉の中央の白い筋は太くなり、その周辺はピンク色になる・・・(鉄・銅欠乏)
(4) 収穫後果肉は軟らかくなり、腐敗し易い・・・・・・・・・・(微量要素の総合欠乏)
3.里芋
(1) 白芽がなくなる・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(石灰又は硼素欠乏)
(2) 葉のつやがなくなる・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(リン脂質・イオウ脂質欠乏)
(3) 石芋となる・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(加里と微量要素欠乏、特に硼素欠と石灰欠が加わると更に悪化する)
4.かぼちゃ
(1) 接木した株のうどん粉病・・・・・・・・・・・・・・(硼素と鉄欠乏)
U.果菜の病気と考えられていたものは果たして本当に病気だったのか
イチゴの萎黄病 | 萎黄病といわれているこの病気は実は、モリブデン(Mo)という金属が欠乏すると、このように葉が縮れた状態になる。山崎伝博士著の“微量要素と多量要素”博友社編(p294)によると、同博士はこの桑の萎縮病はMoの欠乏に酷似しているので、この桑にMoを施用したところ立派に回復をしたと記述されている。 また、奈良県、香川県でいちご萎黄病の発生した圃場に立ち会った際、潅水に使用していた水のpHは7.0〜7.2を示していた。この水を6.5まで下げて潅水を励行したところ完全に回復をして発病しなくなった。このように潅水のアルカリ性による障害も多いようだ。また、同時にチップバーンという症状も併発する。 (事例 )
|
1.土壌分析結果と追肥の方法
安定した土壌を作るには大変な苦労と知識 ・経験と月日が必要である。我々の経験では、土壌分析をして養分の調整をしながら始めた更地の圃場のハウス栽培でも、安定した土壌にするには約4年くらいの月日がかかっている。逆に、土壌分析結果に基づかないで配合肥料などを目安で使用し無計画に元肥 ・追肥など行えば4年くらいで厄介な土壌になる。それでは折角、分析した報告書をうまく活用したことにはならない。そこで、その施肥法と計算の手法を示す。
例として、下記のような土壌がある。
単位 mg/乾土100g(≒kg/10a) | |||||||||
分析日 昭和61年10月2日 |
酸 度 (pH) |
アンモニア (NH4-N) |
硝酸 (NO3-N) |
全リン酸 (P2O5) |
加里 (K2O) |
石灰 (CaO) |
苦土 (MgO) |
可給態鉄 (Fe) |
追 肥 |
標 準 土 壌 | 約6.2 | 2〜3 | 30 | 50 | 50 | 320 | 30 | 2.7 | |
K-1農園(葡萄) | 3.91 | 1.22 | 0.80 | 120.47 | 17.59 | 95.40 | 20.16 | 0.07 |
この土壌は、関西地区でも有名なデラウェアー産地の圃場の土壌である。さすがに長年、肥料などは使ったことが無いというほどの圃場であって、分析の結果にもその事実が如実に現れている。栽培で苦労をしていることは、@収量が上がらない。A雨が降ると果実が裂果してどうにもならないなど多くの問題点があった。収量が上がらないのは果肉となる石灰が不足していること。果実が裂けるのも石灰に起因するものである。
とりあえずの手法として、標準土壌と比較して過剰なものはそのまま放置し自然減を待つ。ここではリン酸が過剰になっているので、リン酸肥料は期間にして1〜2年は使用しない、というところから始めた。
<< 注意 >> このような場合、N・P・Kの三要素入りの配合肥料は使わない。
1) << 窒素 >>
標準値 ・・・ 35Kg ( アンモニア態窒素 : 2〜3Kg 硝酸態窒素 : 30Kg )
分析値 ・・・ 1.22 + 0.80 = 2.02 Kg
*)窒素は大欠乏であり、特に硝酸態窒素が不足している。
これは有機物を全く使用していないことを示していることであり、これではアミノ酸や蛋白質の基軸になるものが全く存在しないことになる。
35 − 2.02 = 32.98 ≒ 33 → 硝酸アンモニア ( アンモニア態17%:硝酸態17% ) 計34% を使用する
33 ÷ 34% = 97.05 ≒ 100Kg/10a ・・・ 窒素分の元肥量
窒素分を普通に使った場合でも、植物体内に硝酸態窒素が残留するという話を良く耳する。 この事を専門の研究家が発表するので、最近では社会的な一大関心事になっている。私たちはこの窒素を一作に付き、成分にして40〜60Kg/10a、多い時でも100Kgを超える量を施すことがある。それでも微量要素の使い方を考え、また、微量要素の効果が最大限になるよう例えば、潅水に使う水でもpHの調整をしながら使うなど、土壌条件と生育環境を考えているから大きな問題は生じていない。 このようにして育てた作物はその植物体内の窒素分がどんどんアミノ酸から蛋白質へ変化していく為、寧ろ非常に風味のある、規格としても一級品に仕上げることができる。 |
2) << 加里 >>
標準値 ・・・50Kg
分析値 ・・・17.59Kg → ここでは、安価な硫酸加里を使用する。硫加は加里の含有量が54.1%(理論値)
50 − 17.59 = 32.41
32.41 ÷ 54.1% = 59.90 ≒ 60Kg/10a ・・・加里分の元肥量
硫酸加里の硫酸根 ( SO4のS=硫黄 ) は蛋白質の合成には必須の金属である。だからといって、硫酸根ばかり使うのも問題である。例えば、加里分と苦土分を同時に補給する時、硫酸加里と硫酸苦土と言うのが通常だが、それでは硫酸根が重複してしまう。このようなケースでは苦土分は塩化マグネシウムを使うという選択肢もある。また、塩化加里を使って硫酸苦土というケースも考えられる。このときどの肥料を使うかは各々の品目の価格を参考に決定すると良い。 |
3) << 石灰 >>
標準値 ・・・320Kg
分析値 ・・・95.4 → 炭酸カルシウム ( 石灰分53% ) を使用。
但し、苦土分の補給として炭酸苦土石灰100Kgを使用するので、100 × 53% = 53Kg が先に投入されることを考慮しておく。
320 − ( 95.4 + 53 ) = 171.6
171.6 ÷ 53% = 323.77 ≒ 325Kg/10a ・・・石灰分の元肥量
( 参照 )石灰・苦土肥料と追肥と注意点
★逸話:仲間4人がこれだけの肥料を一度に投与したものだから、各々の圃場は真っ白になりました。そのうち、それを見た他の仲間連から、異口同音に”おまえ達4人は気でも狂ったのか〜!”といわれたと語っていました。結果、収穫のときはこの4人の成績が良かったとの事で、それ以後は他の仲間も肥料を施すようにしているといっていました。 |
4) << 苦土 >>
標準値 ・・・30Kg
分析値 ・・・20.16 → ここでは炭酸苦土石灰を使用する。炭酸苦土石灰 ( 石灰分 53% : 苦土分 5 〜 15% は 10% にて計算 )
30 − 20.16 = 9.84
9.84 ÷ 10% = 98.4 ≒ 100Kg/10a ・・・苦土分の元肥量
2.肥料成分の欠乏・標準・過剰・極限量
単位 mg/乾土100g(≒kg/10a) | |||||||||
酸 度 (pH) |
アンモニア (NH4-N) |
硝酸 (NO3-N) |
全リン酸 (P2O5) |
加里 (K2O) |
石灰 (CaO) |
苦土 (MgO) |
可給態鉄 (Fe) |
塩素 (Cl) |
|
欠乏 A | 1.0 | 30 | 5.0 | 280 | 20 | ||||
標準 B | 6.0〜6.2 | 2〜3 | 30 | 50 | 50 | 320 | 30 | 2.7 | |
過剰 C | 4.2 | 35 | 58.2 | 75.1 | 380.8 | 36 | 15 | ||
極 限 量 | 2〜3 | 40 | 60 | 400 | 40 |
わが国において、一部の人たちでは鉄(Fe)等の微量要素は土壌中に存分にあると言われて来た。そのうえ、堆肥などの投入によっても補給されいるという。だから、慣習として微量要素を使用することは少なかった。確かに地球上の土壌中には約10%の鉄分が色々な形態で存在すると考えられている。然しながら、金属単体(ここでは鉄)では植物の体内には取り込むことはできず、それは必ず有機としての金属でなければならない。
土壌中に存在する無機の鉄は殆どが水酸化鉄や酸化鉄となり、そのうち僅かではあるものの圃場の有機物と化合して有機態の鉄に変化して存在している。然しながら、この有機態として鉄は栽培期間中に作物が必要とされる量を満たすことはできない。栽培期間中は必ず植物が吸収できる形の鉄として供給する必要があり、そうしないと植物には鉄の欠乏状態が生じて通常の代謝を保てないこととなる。
可給態鉄とは、そのように植物が吸収できる鉄のことを意味する。
1) NaCl ( 食塩 )
海水35 ‰,at 20 ℃中に
Na+ 10,550mg/g (10,550ppm) 原子量 : 22,991
Cl - 19,000mg/g (10,000ppm) 原子量 : 19,353 を含有している。
<< 参考 >>
大阪府堺市K農園は堺市南部 ( 泉北ニュータウン )に位置し、この地区は地形的に和泉砂岩という地質地帯である。この地質 ( 大阪南部から和歌山県の紀ノ川以北を含み香川県東讃岐地区まで位置する )の特長はその大昔、太古の時代には海底であったとされている。今でも、その山には貝殻など多くの化石が出土され、その地区の井戸水には多量の塩水が含まれている。
この地区の温泉は塩化ナトリウム炭酸塩が主成分であることからもその事実が分かる。また、この地質の湧出水が流込む川(穴伏川)が和泉山脈から和歌山紀ノ川に注いでいる。その穴伏川の水のpHは、雨が少ない冬場に測定してみると濃縮されているのか7.2(H2O)を示している。
<< K農園のNa+の含有量 >>
井戸水原水中の塩分濃度は24,9ppm ( 当量換算して1,083me )。
では、、、、みつばの水耕栽培で、減水分だけその水を加え続けて、この培養液を1ヶ月毎に分析チェックしてみると、そのNa濃度はどうなるか・・・
<< その結果 >>
分 析 日 | Na濃度 |
昭和62年6月10日 | 34,0ppm(1.47me) |
昭和62年7月10日 | 44,8ppm(1,94me) |
昭和62年9月10日 | 53,0ppm(2,30me) |
注−1) S衛生研究所 ( 昭和61年5月20日付)の分析によるK農園の井戸水に含まれるNaとClの量は、、、
Na 24,9ppm (1,083me) Cl 34,1ppm(0,962me)が含有されている。
注−2)水耕栽培に於いて養液中に食塩が50ppm以上含有すると最良の生育は望めないとされている。(野菜の水耕栽培 養賢堂p58記述)
2) Naの害 ・・・ その量は定かでない。
過剰症状 | ・・・・ | 葉の周縁が変色し、褐変する。 |
鉄や加里の欠乏が発生する(拮抗作用による)。 |
@ 海岸に近い圃場は強風の時 | ・・・・ | 海水が飛沫となって飛散し作物に塩(Na)害を及ぼす。 |
A 大鋸屑入りの有機堆肥を使用する場合 | ・・・・ | 畜舎の敷料に使用する大鋸屑は輸入外材が国内消費の大半を占める。この外材は国内到着と同時に港湾の貯木場に浸水されるため、その海水を含みNa濃度が高くなっている。従って、国内材か輸入材かを良く確かめ、外材を使用した堆肥の場合は脱塩処理をする必要がある。 |
3) 塩素15mg/乾土100g以上となると害が発生する。
過剰症状 | ・・・・ | 葉の周縁が白化する。 |
リン酸の欠乏症状(拮抗作用による)。 | ||
欠乏症状 | ・・・・ | 花などの首曲がり。 |
4) 塩害とは
@ NaClつまり塩化ナトリウム(食塩)の害のことで、この害は塩素( Cl- )の害よりも、寧ろナトリウム( Na+ )過剰が影響している。
A Naは特殊成分元素として必要であると言う説もある。
W.有機物と窒素
1. 動物排泄物と窒素の形態
哺乳類 | ・・・・ | 尿素:CO(NH2)2 ⇒ 人・牛・蛙 |
鳥 類 | ・・・・ | 尿酸:C5H4O3N4 ⇒ 他に蛇などの爬虫類 |
魚 類 | ・・・・ | アンモニア:NH4−N |
2.分解
3.鶏糞の分解
月 日 | pH値 | 状 況 確 認 | 予想される症状 キュウリでは |
予想される症状 トマトでは |
昭和49年11月 3日 | 8.83 | 根傷み開始 | 根傷み開始 | |
〃 4日 | 8.30 | 〃 | 〃 | |
〃 20日 | 6.74 | 発 臭 ・ 根 に 障 害 を 確 認 | 元気なく葉カビ発生 | 元気なく葉カビ発生 |
〃 23日 | 6.55 | 〃 〃 | 改善方法の手立てなし | 改善方法の手立てなし |
〃 27日 | 6.57 | 〃 〃 | 葉カビ・べと病蔓延 | 葉カビ蔓延 |
〃 12月17日 | 6.88 | 悪 臭 ・ 根 に 障 害 を 確 認 | 〃 | 〃 |
昭和50年 2月16日 | 8.32 | アンモニア臭がひどい→キノコ発生、病気(アンモニア害)多発 | 元太り果が大発生 | かび病・ボト病大発生 |
〃 3月25日 | 8.79 | 臭気消えて完全分解する | 元太り自然消滅 | 同上自然消滅 |
4. 鶏糞の処理
1) 鶏糞のみの場合
・堆肥置き場では、
菌を加えるために約10%(重量比)の無消毒土壌を加え、発酵を促すため時々耕転し空気を混入さす → 発酵 → アンモニア臭(キノコ発生) → 施肥
・果樹園などでは、冬期に散布して春期に浅く耕す。
2) 大鋸屑鶏糞の場合
堆肥置き場にて、重量比にして約10%の無消毒の自圃場の土壌を加え、時々耕転して空気を混入する → 分解 → キノコ発生 → 施肥しても良い
X.油粕について
1.微紛 ・・・・・・・・ 高温と高圧により搾油 ・・・・・ 速効性
*注)近年の油粕は機械的に最大限まで絞られているので、昔からある手絞りの油粕と比較して肥効は劣ると思われる。
2.圧片(原形を残している) ・・・・・ 低温と低圧による手絞りに近い搾油 ・・・・ 遅効性
Y.pHと植物について
土壌pHの決定原因は主に石灰の欠乏(酸性側)か、又は過剰(アルカリ側)に起因している。
(−)の要因・・・・硝酸態窒素・リン酸・硫酸根 が主となる。
(+)の要因・・・・石灰・アンモニア態窒素・苦土 〃
Z.土壌環境
1.酸性土壌
酸 度 (pH) |
アンモニア (NH4-N) |
硝酸 (NO3-N) |
全リン酸 (P2O5) |
加里 (K2O) |
石灰 (CaO) |
苦土 (MgO) |
可給態鉄 (Fe) |
分析日 | |
標 準 土 壌 | 約6.2 | 2〜3 | 30 | 50 | 50 | 320 | 30 | 2.7 | |
S 農園(葡萄) | 3.43 | 1.80 | 0.66 | 34.49 | 18.76 | 40.68 | 26.20 | 0.80 | S61年10月2日 |
K-1農園(葡萄) | 3.91 | 1.22 | 0.80 | 120.47 | 17.59 | 95.40 | 20.16 | 0.07 | S61年10月2日 |
K-2農園(葡萄) | 4.10 | 6.61 | 2.00 | 76.8 | 22.28 | 115.04 | 20.16 | 0.15 | S63年9月14日 |
M-1農園(みかん) | 4.96 | 3.96 | 16.00 | 358.67 | 84.45 | 199.22 | 32.25 | 0 | S61年8月8日 |
M-2農園(いちご) | 5.23 | 3.16 | 6.67 | 319.14 | 25.22 | 230.09 | 52.42 | 0.29 | S55年3月5日 |
2.アルカリ性土壌
単位 mg/乾土100g(≒kg/10a) | |||||||||
酸 度 (pH) |
アンモニア (NH4-N) |
硝酸 (NO3-N) |
全リン酸 (P2O5) |
加里 (K2O) |
石灰 (CaO) |
苦土 (MgO) |
可給態鉄 (Fe) |
分析日 | |
標 準 土 壌 | 約6.2 | 2〜3 | 30 | 50 | 50 | 320 | 30 | 2.7 | |
T農園(いちご) | 6.40 | 2.57 | 6.00 | 307.20 | 24.60 | 333.90 | 23.18 | --- | S62年3月7日 |
★@いちごハウス | 7.02 | 1.29 | 9.80 | 451.77 | 58.29 | 371.79 | 73.58 | 0 | 栽培状況 |
★Aいちごハウス | 7.07 | 1.22 | 14.54 | 334.03 | 56.18 | 373.19 | 45.36 | 0 | 栽培状況 |
みかんハウス | 7.17 | 8.24 | 5.54 | 101.65 | 35.75 | 415.99 | 17.64 | 0.06 | S54年3月4日 |
いちごハウス | 7.68 | 0.91 | 7.20 | 104.02 | 31.34 | 475.62 | 29.23 | 0 |
3.土壌のpHと肥料要素の溶解と利用度
4.植物の至適pH
作 物 | p H 値 | 作 物 | p H 値 |
エ ン ド ウ ソ ラ マ メ |
5.5〜6.1 | ナ ス | 6.8〜7.3 |
西 瓜 | 6.2〜6.9 | ||
カ ン シ ョ バ レ イ シ ョ |
6.0〜6.5 | 大 根 | 6.1〜7.8 |
玉 葱 | 6.2〜6.9 | ||
ト マ ト | 6.5 | キ ャ ベ ツ | 6.0〜7.5 |
キ ウ リ | 5.5〜7.0 | ホウレンソウ | 7.0 |
イチゴ | 6.0〜6.5 |
5.菌類とその至適pH 《参考》
菌 類 | p H | 菌 類 | p H |
硝 酸 菌 | 6.8〜7.3 | 根 粒 菌 | 6.5〜7.5 |
糸 状 菌 | 5.0〜6.0 | 亜硝酸菌 | 6.7〜7.9 |
細菌・放線菌 | 6.5〜7.5 |
NH4-N | NO3-N | P2O5 | K2O | ||
カーネーション | 0.50 | 2.66 | 2.47 | 4.46 | コーラル・フィッシャ・ペパーミントシムの混植 |
キ ク | 0.44 | 2.59 | 2.22 | 4.31 | 天ヶ原(黄・白) |
キウリ(久落H) | 3.11 | 24.25 | 10.77 | 42.21 | 12/17〜7/末 13トン |
トマト(福寿2) | 2.04 | 12.51 | 6.12 | 19.55 | 8/16〜1/中旬 |
■ 考 察 ■ 肥料塩の吸収量は窒素全量を10とした場合、
カーネーション = 10 : 7.8 : 14.1
キ ウ リ = 10 : 3.9 : 15.4 この結果は、園試処方の培養液の肥料成分量(特にキウリ)と一致するので、今後の肥料作りの参考となる。 |
1.土壌と石灰・苦土について
1) 酸度の矯正
Z. 土壌環境の 1.酸性土壌の表 及び 2.アルカリ性土壌の表 を参照。
この表では、石灰の標準量は320Kg/10aとしている。この時のpHは約6.5になるが(−)の電子を持つ硝酸態窒素やリン酸の多少によって、pHは下降する。また反対に、(+)の電子を持ったアンモニア態窒素や苦土・加里を多く含むとpHは上昇する。つまり、pHとは酸とアルカリの平衡度によって決定する。このZ−1・2表の石灰とpHを対比して見ると、石灰の量が増えていくと同時にpHが比例して上昇しているのが良くわかる。
2.植物と石灰・苦土について
1) 細胞の構造と石灰・苦土の役目(石灰と中層組織)
植物細胞組織の模式図 | これは細胞の模式図です。 真中の細胞は中層(水色で示した部分)と呼ぶ層で上下・左右の細胞とつながっています。 この中層はペクチン酸(ジャムの増量材等に使います)と結合した石灰と苦土が含まれている。 この石灰と苦土はセメントのような役目をして、上下・左右の細胞と真中の細胞とをしっかりとつなげています。 また、中層は細胞内の液(原形質液)が細胞膜の外に出ないような役目もしています。 |
植物細胞組織の顕微鏡写真−@ | 植物の葉の断面を顕微鏡写真で写したものです。 細胞膜が二重、三重になっているのが良く分かります。 |
植物細胞組織の顕微鏡写真−A |
同上。 |
2) 葉の緑と苦土について (NHK『高校講座』のページ |理科総合|〜光合成と地球環境〜)
葉緑素は (NHK『高校講座』のページ |生物|細胞小器官のはたらき 〜エネルギーを扱っているのはなに〜)
a 型(緑 色) C55H72O5N4Mg
b 型(黄緑色) C55H70O6N4Mg の化学式で示される通り、
炭素(C)55個、水素(H)72個、酸素(O)5個、窒素(N)4個の中に苦土(Mg)が1個含まれ、その苦土が核となって構成されている。
葉緑素( クロロフィル:chlorophyll )
植物や藻類、細菌に含まれる不可欠の緑色の色素で光合成に於いて中心的な役割を持つ。
葉緑体( クロロプラスト:chloroplast )
葉緑素を含む色素体で、光合成の全過程が行われる細胞の光合成器官である。高等植物の葉緑体は直径5μm、厚さ2〜3μmの円盤状で、 細胞当り数十個含まれている。
★ 苦土が欠乏すれば、植物の葉はどうして黄化するのか?
T.葉緑素の模式図−@ |
そのT.どうして葉は黄化するのか? 葉緑素にはその分子式でも分かる通り、Mg原子が核となりその固体を形成している。 Mgが欠乏すれば葉緑素の構造は成り立たなくなる。やがて、その緑色は淡くなり、やがて黄色くなる。 |
U.葉緑素の模式図−A |
そのU.どうして葉は黄化するのか? @(石灰+苦土)+ペクチン酸 → 中層を形成している → 細胞と細胞は中層で密着している → 細胞内液の流出を防止 A(石灰+苦土)が欠乏した場合 → 中層の消滅する → 細胞内液が流出する → 葉緑体流出 → 葉は黄化する
<< 細胞壁とホウ素の関係 >> |
石灰
石灰欠乏は生長点に顕著に見受けられる。
植物体内での移動が遅く、土壌に欠乏した時点から葉は黄化する。特に、石灰は体内移動が遅い分、生長点付近での欠乏症状が多く見られる。
更に、生長が旺盛になると土壌に石灰分が適当量の存在状態であっても生長点に欠乏が目立つようになる。これも、その移動性が遅いために起因する現象。
(灌水時には、硝酸カルシウムや塩化カルシウムなどの速効性肥料のを使用する)
@ 果の尻部が裂果したり、尻部が腐れたりするのは、この石灰分の移動速度の遅さが影響している。つまり、その植物の最先端部分が欠乏を来すのである。また、キウリなどのように曲がるのは細胞組織が歪に形成されるからである。このような場合には速効的効果のある葉面散布を行うと良い。
A 欠乏の対策として行う葉面散布は、塩化カルシウム(食添用)0.3%(=3Kg/1トン)溶液を作り、表・裏を万遍無く散布する。この時、ついでだから苦土分と微量要素を添加すれば尚良い。
B 塩化カルシウムは葉面散布に不向きという人がいるが、この程度の濃度では害は発生しない。寧ろ、少しベタベタするので展着作用があり都合がよい。(但し、果実が汚れるので袋かけしないブドウや花卉類は注意する事)
C石灰欠乏のページを参照にすること。(石灰欠乏の写真ある)
苦土
苦土は植物が代謝を行うときに必要な酵素に働きかける(触媒という)最っとも多い、つまり植物にとって大変重要な金属である。また、苦土は生長点に移動し易い養分でもある。その為、土壌に苦土が欠乏すると下葉から枯れ上る症状が顕著に現れる。然しながら、苦土は養分の中では比較的消費の少ない要素でもあるから、苦土欠乏を生じるケースは少ない。寧ろ、過剰な投与に注意をする。
4) 石灰・苦土肥料と追肥と注意点 (○印は肥料として適、 ×印は肥料として不適。)
@ ×生石灰(酸化カルシウム)
@.炭酸カルシウム(石灰岩)を焼いて製造する。水と反応して激しく発熱し消石灰となる。肥料として不向き。
A ×消石灰(水酸化カルシウム)
CaO + H20 → Ca ( OH )2 + 15.33 Kcal この反応を消和と言う。
@.井戸水(pH6.38)1g に消石灰3gを含ませて、そのpHを計測すると12.43を示した。⇒ pHが高すぎて、根を傷める。
A.消石灰は、昔から良質の石灰質肥料として多く使われてきたが、、、、
この使われる理由は、『硫安 + 消石灰 → 硫酸カルシウム + アンモニア』 の肥料効果を求めたものである。
反応式 :(NH4)2SO4 + Ca(OH)2 → CaSO4 + 2H2O + 2NH3↑ (ただし、Yahoo知恵袋では、アンモニアが発生するので有害だとの記述があります。)
処が、実際に圃場で起こっていることは、、、、
『消石灰 + 麩海苔 + 麻糸くず → 漆喰』 か又は、『消石灰 + 砂 + 空気中の CO2 → モルタル』の状態と思われ、圃場の地下50cm位のところには、石灰盤の層ができている可能性がある。この層があると水の抜けが悪くなる。
(実際に皆さんがやっていることは、消石灰と藁などの繊維質と土壌などの粘土質材料を入れて踏み混ぜ漆喰壁を作っていることになる。)
B その他の石灰質資材
○炭酸石灰(中効性)
○炭酸苦土石灰(中効性) 1g (pH6.38)の井戸水に3g含ませてpHを計測すると7.03の中性を示した。
×珪酸苦土石灰(遅効性)
○鋼滓苦土石灰(遅効性)
○硝酸カルシウム (速効性)
○塩化カルシウム (速効性) 葉面散布に最適 ( 0.3%溶液にて使用 ) ・・・ 一般の融雪剤でOK
○塩化マグネシウム(速効性) 葉面散布に最適 ( 0.3%溶液にて使用 )
○硫酸マグネシウム(速効性) 葉面散布に最適 ( 0.3%溶液にて使用 ) ・・・ 工業薬品(溶解度が高い)を調達する
C 苦土過剰の土壌
@.溶リン(P205:19%、CaO:30%、MgO:18%)や苦土石灰(CaO:53%、MgO:5〜15%)などのマグ入り肥料の多用による過剰となっているケースが多い。・・・・この時のMgOの分析値は120Kg/10aが検出され、殆ど青枯れの状態にあった。
A.このように通常の4倍近くも投与した理由を聞くと、“苦土を入れることによって味が良くなる”というので毎作、常に投与してきたということであった。
★ Mgは主に葉緑素の成分である。葉などに含まれるMgのうち、葉緑素の成分は約10%位ではないかといわれている。残りのMgは炭水化物代謝などの生理作用に関与し、蛋白質の合成など多くの酵素に関与するなど重要な働をしている。Mgがその条件を満たしていれば酵素の働きが良くなり、生理状態は活発化することであるから、そういう意味では“味が良くなる”というのは間違いではないが、味即ちその風味はアミノ酸であり、正確にはMgは葉緑素の主成分と酵素の働きを促進する触媒であると言うべきである。★ |
果菜栽培テキスト VOL.2 へ続く |