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無料カウンター  ” p H の 調 整 は 、 何 故 植 物 に と っ て  必 要 な の か ? ” 
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“ pHの調整は、何故植物にとって必要なのか? ”  

                                                                更新日: 2010 年 5 月 5 日(印部) .

       I n d e x
   前書き .
1. pH(酸度)とは .
2. 作物に適した土壌のpH値.
3. 菌類とその至適pH.
4. 土壌のpHと肥料要素の溶解と利用度.
5. 植物体に於ける硝酸のアンモニア還元.
6. 栽培期間中の培地又は培養液のpH変化.
7. 土壌pHを下げる手立て.
8. 土壌pHと硝酸・石灰の関係.


T. 前書き

   まず、いちご栽培の土壌pH6.186.537.07を見て戴きます。

  写真−@                    pH(Kcl)6.18
栽培状況の遠視。なり疲れも無く順調に生育。
  写真−A                       同左の近写
生育状況。この時期でも葉に露がついているのが判る。
単位 mg/乾土100g(≒kg/10a)
   pH
(KCl)
アンモニア
(NH4-N)
硝酸
(NO3-N)
全リン酸
(P2O5)
加里
(K2O)
石灰
(CaO)
苦土
(MgO)
可給態鉄
(Fe)
標 準 土 壌 約6.2 2〜3 30 50 50 320 30 2.7
T・K農園 6.18 0.97 3.40 224.51 41.26 241.31 28.22 0.25
 << 処方 >>
炭酸石灰80Kgと硝安75Kgを追肥する。特に、硝酸態窒素を多くする事が大事である。 この時、アンモニア態窒素が13Kgほど同時に入る事となるが、硝安の場合はすぐに硝酸態に変化していくので問題は起こらない。
即効性カルシウムの硝酸石灰を40Kg、4Kg/トン当りとして灌水の度に与える。


  写真−B                    pH(Kcl)6.53
栽培状況の遠視。pHは6.53、部分的に多少なり疲れが認められた。
  写真−C                       同左の近写
生育状況。6.5位までなら何とか栽培できている。
単位 mg/乾土100g(≒kg/10a)
   pH
(KCl)
アンモニア
(NH4-N)
硝酸
(NO3-N)
全リン酸
(P2O5)
加里
(K2O)
石灰
(CaO)
苦土
(MgO)
可給態鉄
(Fe)
標 準 土 壌 約6.2 2〜3 30 50 50 320 30 2.7
Y・M−@ 農園 6.53 1.13 7.20 224.51 63.57 312.86 25.2 0.14
 << 処方 >>
硝安64Kgを追肥して、硝酸態窒素を多くする事が大事である。 この時、アンモニア態窒素が11Kgほど同時に入る事となるが、硝安の場合はすぐに硝酸態に変化していくので問題は起こらない。 灌水のときの水のpHは6.0とし、土壌のpHを出来るだけ6.0に近くなるように勤める。


 写真−D                    pH(Kcl)7.07
栽培状況の遠視。pHが7.07では悪い。一面にアルカリ障害(成り疲れ)が認められる。
 写真−E                       同左の近写
生育状況。葉の周縁が枯れている。これはアルカリの障害、つまり根が傷んでいる。
単位 mg/乾土100g(≒kg/10a)
   pH
(KCl)
アンモニア
(NH4-N)
硝酸
(NO3-N)
全リン酸
(P2O5)
加里
(K2O)
石灰
(CaO)
苦土
(MgO)
可給態鉄
(Fe)
標 準 土 壌 約6.2 2〜3 30 50 50 320 30 2.7
Tub.農園 7.07 1.22 14.54 334.03 53.18 373.19 45.36
 << 処方 >>
施肥過多気味。鉄分で代表される微量要素が“0”。
灌水のときの水のpHは5.5とし、土壌のpHが出来るだけ弱酸性になるように勤める。


(5/5)
 次にトマト栽培の土壌分析の結果がpH6.2前後7.0の根の状態の写真を見て戴きます。

 写真−1 正常な根(同6.2前後)  撮影:’09年 3月11日
とまとの健全な根の状態。白く見える部分は炭酸カルシウムです。
   写真−2 土壌pH7.0の様子(根) 撮影:’10年 4月24日
とまとのアルカリによる根の障害。褐変して根毛が無い
健全な根の写真。根毛もある。’09年2月7日に土壌検査している。そのときpH6.0である。生育も良い。
白く見える部分は炭酸カルシウム。
  マルチを捲って、土を少し除けてみました。乾き気味だが、根は褐変して重要な毛根が見当たらない。場所によっては根こぶも発生していると言う。

 写真−3 土壌pH6.2前後の樹勢
健全な根の状態の樹勢
撮影:’09年 3月30日 .
   写真−4 土壌pH7.0の樹勢
アルカリによる根の障害の為、葉は萎れ垂れている
撮影:’10年 4月24日 .
根が健全なトマトの樹勢。生育も良い。
土壌を採取してから約1ヶ月後に撮影。
  根が傷むと、太陽が高くなるに連れ水分の供給が間に合わなくなり、このように萎れてしまう。夕方になると回復すると言う。

 上の写真−(1・3)と(2・4)の土壌分析の比較をすると・・・・
単位mg / 乾土100g ( ≒ Kg / 10a )
  酸度
(pH:Kcl)
アンモニア
(NH4-N)
硝酸
(NO3-N)
全リン酸
(P25
加里
(K2O)
石灰
(CaO)
苦土
(MgO)
可給態鉄
(Fe)
分析日
標準値 6.0〜6.2 2〜3 30 50 50 320 30 2.70   
写真(1・3) 6.0 3.5 9.3  96.5 33.5 125.9 78.2 0.06 ’09. 2.27
写真(2・4) 7.0 0.2 3.6 195.5 27.0 439.2 66.3 0.10 ’10. 4. 7
リン酸以外は分析値に大差はない。これを見るとpHが自然に上昇する原因は硝酸態窒素と石灰分の差であることが理解できる。
注) pHが6.0の時の石灰分は125.9となって欠乏状態であるが、ここは硝酸石灰と炭酸カルシウムを与えてその欠乏を回避している。


  次ぎの写真は、灌水の水がpH7.2をいつもかけていました。
  写真−F なたまめ        
なたまめ
  写真−G トルコキキョウ     
トルコキキョウ
 灌水の度にpH7.2の水を掛けていました。印のところが縮んでいるのが判る。
 左写真と同農家。同じ井戸の水を使用しています。このように先端の印のところがpHの影響を受けて萎縮し、 そして枯れています。

  写真−H いちご        
なたまめ
  写真−I アルストロメリア     
アルストロメリア
 灌水の度にpH7.2の水を掛けていました。葉が縮んでいるのが分かります。 この写真でも先端が枯れています。
 水路の水(7.1〜7.2)を使用しています。このように成長点がpHの影響を受けて萎縮して出てきています。

 作物を栽培するとき、どれだけの方たちが土壌や灌水の際の水のPHの事を考えて栽培をなさっているか、 そのようなことを考えて農業を行っている人たちは多分極少数の人たちだけだと思います。否、この二つの事柄を認識しながら農作業しているのは恐らく我々のグループだけかも知れません。 特に水のpHを気にしている人は皆無に等しいような気がします。

土壌のpHについては大体の人たちは分かっておられます。 それはそのpHが低いときなどには消石灰を用いたりして、土壌pHを上げておられるのを良く見かけますから、そのような事で感じます。 しかし、下げる事に関しては全く方法が無いという様に感じています。 それでは、その土壌pHが栽培の過程に於いて常に上下していると思っている人はおられるかどうか。これまた少数だと思います。

私たちはそのような事までを考えて、場合に応じて灌水のpHまでも調整をして掛けています。 “何!!、水のpHまで下げなくてはならないのか”このようなことを初めて耳にされた方は不思議に思い、また疑問を抱かれる事と思います。 何故、土壌のpHや灌水として与える水のpHまでも調整する必要があるのか?pHが高くなる、つまり7.0以上になると何故、病気になるのか?

 簡単に一言でいうと、
“pHが中性以上になると微量要素が効かなくなり酵素が作用しなくなる。その為に植物代謝が行われなくなるからです”
 という事になります。このページではその裏付けなどを含めて解説して見たいと思います。

 まず最初に、7.0以上の水を掛けていた農家の失敗の例や良かった例の過去の結果状況をお示します。その前にお断りしておく事は、 私たちは植物の栽培の基本は、水をたっぷりと作物にかけてやる事だと考えています。その様にしないと収量が増加しないのです。 また、これは根に酸素の供給を良くするため、光合成を早めるため、肥料の各要素を十分に溶かすため、などその理由は多々あります。 その様な事なので、水のpHが高いという事は致命的になると私たちは考えているのです(関係ないという研究者・指導者も数多くいらっしゃいますが・・・・)。

 まず、姫路のKo農園さん、S55年頃からです。メインは春菊の周年栽培です。出会った当初は畑というよりは砂地という感じの圃場でした。 従って、腐植も大変不足していました。近所の畜産農家から無発酵の牛糞堆肥を貰い、バックホーの中古を購入して堆肥作りから始めました。 次ぎは精密な土壌検査も月に一回必ず私が採取に通いました。そしてコンクリートで50トンのタンクも作りました。

これは灌水に使用する水が市内を流れる一級河川の市川から水路に取り入れたものを使っていました。 この市川の水のpHは年中7.2前後でした。これを6.0〜6.2として使いました。その結果、下のように見事な土壌となり安定した収穫が出来るようになりました。
  写真−J しろな菜の栽培        
しろな菜の栽培
  写真−K みぶ菜の栽培        
みぶ菜の栽培
   表−@  土壌分析結果表 (Ko農園の土作りはほぼこのような数値で推移しています)
単位 mg/乾土100g(≒kg/10a)
  酸度
(pH:Kcl)
アンモニア
(NH4-N)
硝酸
(NO3-N)
全リン酸
(P25
加里
(K2O)
石灰
(CaO)
苦土
(MgO)
可給態鉄
(Fe)
標準値 6.0〜6.2 2〜3 30 50 50 320 30 2.70
Ko農園 6.54 2.35 15.60 419.50 50.43 301.60 43.30
分析者 : 米澤農業研究所    .
★印は2.7Kg/10a/月を与えています    .

 奈良のTe農園さん、ここもS55年頃です。いちごの栽培です。この農家は何の問題も無い農家です。 栽培技術は申し分ありません、品評会では必ず何か賞を貰ってくる程の卓越した技術でした。そんな事で地元の出荷組合の役員でもありました。 しかし、萎黄病には泣いておられました。兎に角、萎黄病は病気では無いと私が言うと“嘘、そんな〜”という言葉が返ってきたのを鮮明に記憶しています。

そこで、その家に1週間ほど泊まる機会がありましたから、連夜栽培談義をした記憶があります。 結局、私は萎黄病の苺の株を貰って帰り、自宅で一ヶ月ほど養生(その当時使った液肥pH調整液)していました。その後、その回復した株を返しに行きました。 それをシゲシゲと見て“これなら、ええわ〜”という言葉が返ってきました。これでやっと、この事実をこのプロ中のプロ職人に認めて頂いた訳です。

それでは、その原因は何であったか、それは灌水に使っていた横の水路の水がpH7.2だったのです。 私はそれを議論していたときには既に知っていました。その話を信用するか、しないかの問題だったのです。 結局、話の通りにするということで、井戸を掘ることになりました。井戸水はpH6.5で安定している、しかも水位は高い(約20m位掘ったら出る)事など自圃場の状況を本人は良く知っていました。

それでも当初は直径にして2m位の土管を2個買ってきて、畑に自分で穴を掘って2トン位のタンクを造りましたからネ〜。この野郎〜と思いましたよ・・・、 そこでpH調整をやり始めたのですが、手間が掛ってとても間に合いません、とうとう削井をする事にしました。pH6.5の水が出ました。 それ以来、萎黄病は無縁の事となりました。何しろ、このような達人でも萎黄病には困リ果てて、その度にハウスの中で“何でかな〜”と考え込んでいたと言っていました。

 残念ながらその当時のいちごの写真はありませんが、下はその後作のとまとの写真です。
  写真−L トマト        
トマト
  写真−M トマト        
トマト
   表−A  その時の土壌分析結果表                                分析日 : 1986年   月   日
単位 mg/乾土100g(≒kg/10a)
  酸度
(pH:Kcl)
アンモニア
(NH4-N)
硝酸
(NO3-N)
全リン酸
(P25
加里
(K2O)
石灰
(CaO)
苦土
(MgO)
可給態鉄
(Fe)
標準値 6.0〜6.2 2〜3 30 50 50 320 30 2.70
Te農園 5.71 1.65 1.46 223.42 39.88 202.73 27.72 0.17
分析者 : 米澤農業研究所    .

  効果の出ない例もありました。それは、私がこの仕事を本格的に始めた頃です。支援状態としてはそれなりに収穫がありましたから、 失敗ではありませんが、仕事の達成度からすれば失敗でしょう。その理由は私たちは灌水をたっぷりと行います。 当時の状況として“水の調整をすべきである”という事をあまり認識していませんでした。それは、私たちの研究所の水がpH6.3〜6.5だったのです。 他府県での認識もそれと同程度でしか考えていませんでした。

当時、私たちはまだ全国的な展開も出来ていませんから全国の状況が把握できていません。その現地の灌水のpHが高いという情報が抜けていました。 勿論、場面に何回か出会えば、そのようなケースを比較検討して直ぐに解決できる理論は備わっていました。 それがはっきりと見えてきたのが、香川県でいちごの栽培支援に携わった時でした。

後日、振り返って考えてみて、愛媛県(K・T農園さん)のきうりの栽培そして福岡県(H農園)ではいちごの栽培、この2件は毎月、日を決めて土壌分析をしていました。 あれだけ緻密な施肥設計をしていたにもかかわらず、今ひとつ生育状態が良くなかったのです。最終的に愛媛は後で分かりましたが7.2、福岡は確認していませんが、 症状から察するには、このような高いpHの水が原因ではなかったか、と考えているのです。

また、和歌山(Ta農園さん)のトマトのロックウール栽培でも、今一効果が上がりませんでした。ご存知のように、 無機の培地に養液を流し込みながら栽培します。従って、培養液の分析は掛け流しですからする必要はありませんが、 ここではこの掛け流している培養液のpHと培地の中に存在するpHを監視していました。その2点のpHがいつも7.4あるのです。 これを6.2〜6.5まで下げるような工夫つまり改造をしなければならないのですが、それが出来ず、 結局アルカリ障害で主に硼素欠乏が止まりませんでした。奇形果が多く、秀品率の悪い作柄でした。

 このようにいくつかの例を比較してみて、この“植物とpHとの関係”を重要視しなければならないという事が良く理解出来たのでした。

実例 :その後、mine農園のロックウール栽培施設では根圏のpH調整・酸素供給を中心に管理法を変えた処、良質のトマトの収穫量が大幅に増えている) <2011/1月記>


1. pH(酸度)とは

  pHとはydrogen(水素)のower(力とか冪の意味)で、(べき)とは、ある数字又は式を何回か繰り返し合わせたものである。
  例えば10-3 = 1/10 × 1/10 × 1/10 などの事である。(pHは H の逆対数値である)
  つまり、10-3とは10倍に薄めることを3回繰り返すと言う意味である。


    pH “1” を (10倍にうすめる)→ pH “2” (10倍にうすめる)→ pH “3” (10倍にうすめる)〜〜 pH “7”
        ↓                            ↓                   ↓
       1/10 →→→→→→→→→→→→→→→→ 1/100 →→→→→→→→→ 1/1000 〜〜〜1/10000000
        ↓                            ↓                   ↓              ↓
      1×10−1                         1×10−2               1×10−3      1×10−7(中性)


2. 作物に適した土壌のpH値

作物の至適pHといいます。

 殆んどの作物で至適pHは弱酸性と考えても良い。 ナスの7.3、ダイコンの7.8キャベツの7.5は良いというよりは“そのpHでも何とか栽培ができる”と考えた方が良い。

  表−B
作  物 p H   作  物 p H
エンドウ 5.5〜6.1 ナ  ス 6.8〜7.3
ソラマメ スイカ 6.2〜6.9
カンショ 6.0〜6.5 ダイコン 6.1〜7.8
バレイショ タマネギ 6.2〜6.9
トマト 6.5 キャベツ 6.0〜7.5
キウリ 5.5〜7.0 ホウレンソウ 7.0
イチゴ 6.06.5    


3. 菌類とその至適pH

  表−C
菌  類 p H   菌  類 p H
硝酸菌 6.8〜7.3 根粒菌 6.5〜7.5
糸状菌 5.0〜6.0 亜硝酸菌 6.7〜7.9
細菌・放線菌 6.5〜7.5    


4.土壌のpHと肥料要素の溶解と利用度

  表−D Trougの表                        
         Trougの図  
幅の広いところで肥料効果が最大になる。
(平均的に効果があるのはpHが6.8です)   
 
 左はTrougの表です。
幅の広いところで肥料効果が最大になります。ここに表されている窒素うち、硝酸態窒素はpHに関係なく良く溶解します。

 多量要素は6.8以上のほぼ中性以上、アルカリ側で良く溶けています。一方、微量要素はモリブデンを除いて、 弱酸性側で良く溶けています。 (ここが大変重要なところです)

pHが6.0以下になるとCa・Mg・Moが溶解し難くなり、反対に7.0を超えると微量要素が不溶となります。平均して良く溶けるpHは6.8ですが、 養液栽培に於ける培養液は目まぐるしく変化をしますから、それを6.8に一定させる事は到底出来ません。(6.0〜6.2に下げて6.5を目標値とします)

また、土耕栽培でのpHは一圃場の平均値で表します。これを6.8に設定するという事は7.4の所もあれば6.4の所もあるという事です。 不作と良作が混在するという事になります。
ですから、6.2〜6.4前後が一番良いのです。


5.植物体に於ける硝酸のアンモニア還元

 人でも植物でも生物は全て、蛋白質が不足してくると病気がちになる。人は蛋白質を動物性蛋白質及び植物性蛋白質として、それを食して得ている。また動物では動物性だけを得れば代謝が行えるもの(肉食動物)、 植物性だけで行えるもの(草食動物)がある。植物は動物のように移動する事ができない。動けない植物はその場で栄養素を取り入れ必要な物質(蛋白質など)を自分の体内で作り出さなければならず、 そのため体外から窒素のような多量要素や微量要素を取り入れながら物質生産している。

『 植物体に於ける硝酸のアンモニア還元過程 』

  (HNO)       (HNO)      (NOH)        (NHOH)         (NH)      (NHR・COOH)
 硝酸態窒素→→→→亜硝酸→→→→次亜硝酸→→→→ヒドロキシルアミン→→→→アンモニア→→→→→アミノ酸→→→→蛋白質
           ↑          ↑            ↑                ↑            ↑    
 (酵素名)  モリブデン     亜硝酸       次亜硝酸           ヒドロキシル       各種酵素
         フラビン酵素   還元酵素      還元酵素         アミン還元酵素              
 必須金属    (Mo)      (Fe・Cu)       (Fe・Cu)            (Mn)                 

 アンモニア態窒素が土壌に存在した場合、それは硝酸化成菌によって硝酸態窒素に変えられる。 この時、大量の酸素と餌となる蛋白質つまり有機物が必要となる。硝酸態となった窒素は植物の体内に取り込まれて、 体内では上記のような過程で蛋白質となっていく。
この“植物体に於ける硝酸のアンモニア還元”という過程は植物が健全になるという植物健康とその品質の観点から見たとき、 この還元過程は極めて重要な理論となる。

 この還元過程に於いて、植物体内に取り込まれた硝酸態窒素はモリブデンフラビン酵素(硝酸還元酵素とも呼ぶ) の力を借りて亜硝酸に変化していく。この硝化作用で重要になるのがモリブデン(Mo)という金属の働きである。 圃場にこのMoが無い場合亜硝酸の形成は激減する。また、存在しても極度にpHが低い場合も同様に欠乏となる。

ところが、MoはpHが高いほうが効果があるはずである。しかし、実際にはpHの高い水を掛けた場合の方にMo欠乏が多く、 例えばいちご萎黄病、他の作物ではうどん粉病生長点の葉の先端が枯れたようになり萎縮する症状などが多く現れる。 この直接の原因は、硼素の仕業である。硼素(B)はpHが高いと不溶となる。このBはCaやMaと共に組織の壁である 中葉組織を作っている。

と同時にBは栄養の通り道の導管や師管を保護する重要な働きがあるとされている。そのためにBが欠乏したり、 pHが高かったりすると硼素が効かなくなり、導管・師管は壊され当然の事ながら栄養は上下せず、細胞組織は壊死してしまう。 そこにカビが生えてくる、そのような過程がうどん粉や灰色かびの正体である。Moについても同じような過程で欠乏となり萎黄病や萎縮症状となるのである。

 次に植物体内の亜硝酸はのイオンを受け、亜硝酸還元酵素が働いて、次亜硝酸に変わる。そこでもFeとCuが必要で、 アンモニアに変わるまでにはその他Mnの働きを必要とする。このように還元作用の全てが酵素作用と無機金属のイオンの力を必要とするわけでこの時、 上に示したTourgの表にもあるように、土壌と灌水の用水が弱酸性でないと上手く蛋白質を作ることができないのである。

 それ故、pHが高い場合を考えてみると、特に6.8位から病気モードに入り、7.0を超えると病気となっていくのである。 但し、ここでは病気と表現をするのであるが、正確には“アルカリ障害から2次的に病気を来たした現象”と表現したいのである。 そこで、その 『 病気の発生するpHつまり6.8〜7.0 』 と 『 Troug表の微量要素の効果が薄れてくる範囲のpH 』 を比べてみると、 その範囲がピタリと合致してくるのである。

 一般言う“作物の栽培は5.5 〜 6.5で栽培せよ”という根拠は、その言葉の裏を返せば、その範囲でpHを調整した方が“ 微量要素の効果を最大限に得られる”ということである。反対に、その範囲となる5.5 〜 6.5はCaやMg・P・Kにとっては効果がやや弱くなるpHの範囲でもある。


6.栽培期間中の培地又は培養液のpH変化

 土耕栽培をしている人たちはその圃場のpHが低いと消石灰などを使ってそのpHを上げようとする。 そして、土壌のpHの事を問うといつも言われる事は“うちの土はpHが低いから・・・”と、いとも簡単に片付けられる。 果たして、土壌のpHをそんなに簡単に片付けても良いものだろうか?その事について、追跡しやすい養液栽培のデータがあるのでその資料を見ながら解説をしてみたい。

  培養液の肥料成分中

   酸性肥料は       NO , P , SO
   アルカリ性肥料は    K , Ca , Mg   である。

  正しく調整された標準培養液(園芸試験場処方)のpHは、原水のpHにより若干違いはあるが、6.0 〜 6.2前後となる。

  下表、E表は福岡市M農園の分析の1例である。
  表−E PHの変化:ガラス温室200坪,水耕,作物は大葉,養液タンク10トン, 水耕ベット内20トン(培養液合計30トン)
 
分 析 月 日
pH
NO−N
Ca
Mg
標 準 養 液
 
 6.20
16.00
 4.00
 8.00
 8.00
 4.00
分 析 結 果

修 正 追 肥
S59.12.04  6.08
(残存率%)

(予想)6.40 .
 8.57
 (53.56%)
 4.50
13.07
 2.64
 (66.00%)
 1.40
 4.04
 4.90
 (61.25%)
 3.00
 7.90
 6.40
 (80.00%)
 1.50
 7.90
 3.50
 (87.50%)
 0.50
 4.00
分 析 結 果 S59.12.10  6.97  6.67  1.95  4.40  4.00  2.00
分 析 結 果 S59.12.18  7.42  5.52  1.49  3.40  3.80  1.90
                                                                  (分析:米沢農業研究所)

養液のpHは(−)イオンのNO−N・Pと(+)イオンのCa・ K・Mgの残ったイオン数の差にほぼ比例して決定する。生育の良い作物ほどNO−Nの要求度は高く、 その現象がPHを押し上げている原因である。 特にNO−NとCaはその決定主要因になっている。

 1) この資料は、その日の天気状態や気温そして栽培ステージが分からないのでデータとしては不備と言わざるを得ないが、それ
    でも、このデータは15日間に於けるpHの変化を良く表している。

 2) 12/4日に計測して6.08と確認されたものに追肥をして標準状態(pHは恐らく6.4位)に修正したのだが、pHは再び上昇して
    12/10日には6.97となっている。更に、一週間後の18日に計測したところ7.42と高いpHが確認されている。

 3) 分析結果中、NO−NとPの最低は12/18日であり、 酸性肥料のNO−N,Pが吸収された結果pHが7.42と上昇している。
    つまり、(−)イオンの硝酸態窒素とリン酸は約1/3に、(+)イオンの加里・石灰・苦土は約1/2である。この(+)イオンが
    養液中に多くなる事によって、培養液はアルカリ側になって行くのである。

 4) 但し、追肥をしないのにpHが次第に下降していく栽培設備を時々見受ける。このような設備の殆どは水耕の設備でだが、これは
    残根の処理が出来ていないなど、構造上の欠陥によるものが多い。

 この様に、栽培の全期間に於いてそのpHはいつも上下している。特に、土耕栽培では土壌コロイドという存在が緩衝材となり、 そのpHが緩やかな変化としてしか現れないため分かり難い。しかしながら、そこには養液栽培ほど急激な変化ではないが、 そのpHは次第に上昇をしているという事を認識すべきである。そして、そのpHが7.0付近なったとき成り疲れという現象を来たしているのである。


7.土壌pHを下げる手立て

 培地のpHを下げる場合、養液栽培の場合は水が相手なので手立ては簡単である。硫酸や硝酸そしてリン酸などを添加して下げればよい訳である。 他方、土壌などの培地を下げる場合はそのように簡単には出来ず、その手立ての答えを得るには、まず土壌のpHがどのような過程で上がっていくのか? という事柄を解明したら良いと考える。

 養液栽培でpHが次第に上昇していくという過程は6項−3)の通りであった。 それでは土壌のpHはどのような過程を経て上昇していくのかと言うと、これも全く同じ過程にある。唯、養液と土耕の違いが出てくるのは、 土耕ではそこに存在する有機物の量によって大きく影響される。 栽培中に土壌や養液のpHが上昇する大きな要因は硝酸態窒素などの(−)イオン と石灰などの(+)イオンの吸収差異が関係しているという事は6項−3)の検証結果から理解できる。つまり、それらの吸収差異が(−)イオン > (+)イオンとなるからである。

その様な土壌pH決定のメカニズムが分かって来ると、硝酸態窒素をいかにタイムリーに供給するかという理論に行き着く。
ここで考えなければならない理論がある。それは有機物と土壌のページから“V.土壌の物理的、化学的性質の改善”である。
特に、4.項の緩衝作用の増大(pHが急激に上昇しない)が重要となる。

 この4.項の緩衝作用の増大(pHが急激に上昇しない)では、堆肥を十分に投入する事とある。 それでは、そのようにすれば土壌がどのように変化をしていくのか?。まず、投入する量である。10a当りにして、乾燥堆肥で3.000Kg、 湿ったものなら6.000Kgを毎年入れる。唯、堆肥は自分ですき返したりしながら完熟にする必要がある。 この完熟が出来ていないと反ってアンモニアの害を及ぼす事となる。

この堆肥はタダで貰って来て、完全発酵堆肥を自家製造すれば安あがりだが、買うとなると結構高くつく。そこで同じ高くつくのなら、 そのまま使えて絶対間違いの無いピートモスをお勧めする。ピートモスは一番大きい物で6cf(pH調整していないもの、約35Kg)を30〜50袋、 投入すると良い。このピートモスの利点は肥料分がない為に栄養分の偏りを修正できる。例えば土壌分析をした場合、リン酸は大過剰のケースが殆んどである。

そこで、このピートモスを使って土壌がどのように変化をするのか、資料に基づいて検証する。


    表−F  1号ハウス−@を分析して土壌の変化を観察(チンゲン菜)                   分析者:米澤農業研究所
単位mg/乾土100g(≒Kg/10a)
 分 析 日 (PH) アンモニア
(NH4-N)
硝酸
(NO3-N)
全リン酸
(P25)
加里
(K2O)
石灰
(CaO)
苦土
(MgO)
可給態鉄
(Fe)
S 62.03.25 7.0 14.33  6.73 508.10 35.19 561.20 20.16 0.00
S 62.06.13 6.5  3.01  6.33 384.03 22.28 547.17 42.33 0.25
S 62.10.08 6.8  2.94 36.69 389.94 58.86 547.17 65.72 0.85


    表−G  1号ハウス−Aを分析して土壌の変化を観察(チンゲン菜)                   分析者:米澤農業研究所
単位mg/乾土100g(≒Kg/10a)
分 析 日 酸度
(PH)
アンモニア
(NH4-N)
硝酸
(NO3-N)
全リン酸
(P25)
加里
(K2O)
石灰
(CaO)
苦土
(MgO)
可給態鉄
(Fe)
S 62.03.25 7.0 14.33  6.73 508.10 35.19 561.20 20.16 0.00
S 62.06.13 6.7 2.94 18.34 460.83 17.59 541.55 14.11 0.20
S 62.10.08 6.8 2.57 13.67 354.49 30.49 392.84 50.40 0.92

土壌分析は2連棟のハウスを初回はハウス全体を一つとして分析した。2回目からは管理が別になるというので各棟ごとに分析をした。

1987年3月25日、初めて本人に会い、分析を行った。結果はアンモニア態窒素(14.33) > 硝酸態窒素(6.73)であった。 それもアンモニアの大過剰の状態である。N氏本人に聞いたところ、今までに有機物など入れた事がないという。理由は圃場が東大阪のど真ん中に位置し、 3方向にはアパートや民家があり、堆肥など持ち込めないという。至極当然の事とは言いながら農業をしていくのに有機物がないのでは良い作は望めない。 そこで、当時、ピートモスの輸入が盛んになってきていたのでその資材を使う事を思い立った。

同年6月13日、一作終わって分析した処、何とかアンモニア態窒素(3.01) < 硝酸態窒素(6.33) の状態であった。但し、このデータは栽培終了時点でのデータであるから、実情とすればかなりの改善された土壌となっていると言える。 ここで不足した養分の補給を行い修正する。

同年10月8日、2回目の栽培が終わり分析した。そのときは完全にアンモニア態窒素(2.94) < 硝酸態窒素(36.69) という構図になっており完璧といえる。この時の商品は品質に申し分なく、市場価格が@100〜120/株と聞いている。

表−Gでも同じようにアンモニア態窒素(2.94)(2.57) < 硝酸態窒素(18.34)(13.67)となり、これも理想形である。
終了時点でのpHに就いても6.5〜6.8(Kcl)であり、 栽培終了直後としては、断然落ち着いている。窒素配分もこのようになれば理想形である。この栽培では、石灰の過剰が気になるものの窒素だけを見るならば、 このような土作りをして農業をすれば毎日が楽しくなる筈である。

このように、有機物をたっぷり使った有機農業は病気が少ないというが、その最大の要因はこの硝酸態窒素の存在である。 この硝酸態窒素こそが土壌を安定させていると言う事がこのデータを検証すればお分かりであろう。但し、収量を上げ、その形を整える石灰をどのようにして補給するかと言ったところまで言及しないと、 本当のプロ農家とは言えないのである。

以上のようにして対処していけば、pHの高い圃場は必ず良い方向に向かう。 また、pHが高くない圃場であっても、この硝酸化成という過程は植物の耐病性という観点から見ても大変重要な要因であるので、 是非とも、この有機物の大量投入に勤めていただきたい。

尚、pHが高くなってしまった圃場の灌水方法は、
   1)  土壌のpH(Kcl)が 7.2 以上では → 灌水は 5.5 とし、
   2)      〃         7.2 以下では →   〃   6.0 として、栽培期間中は必ず(中和作業を兼ねながら)行う事。
       <<注意>> 灌水のpHは絶対に5.5以下にしない事、5.0以下になると石灰欠乏などの障害を来たす。


8.土壌pHと硝酸・石灰の関係

  土壌PHの矯正(上げる)をするのに石灰資材を施す、その石灰をどの位施すべきかを決定するのに緩衝曲線図を用いる方法がある。
  この図は一定量の土壌に種々の量のCa(炭酸カルシウム)を加え、その時のPHを計測して曲線図にしたものである。

『緩衝曲線図』

  その図によると炭酸カルシウムの場合pH6.5のとき、10gに対してその係数は0.005gである。従って、

     0.005g × 300,000,000/10 × 100/50 = 300,000g = 300kg という式が成り立つ

  つまり、30cmの表土に対してその仮比重が1.0とした場合の土の重量は300,000,000g(300トン)となり、そこに炭酸カルシウム
  か、または炭酸苦土石灰(100/50=成分50%)を300kg加えればpHが6.5となる。そこにpHを下げる要因の硝酸態窒素が加わ
  るのでPHは0.3〜0.5下降し6.0〜6.2になる。

  逆に上げる要因のアンモニア態窒素が加わればpHは上昇して6.7〜6.9位にはなるだろう。このようにして私たちが用いている分
  析表の石灰の標準量は300〜340kg/10a(≒乾土100g)としているのである。

  次に、畑作の土壌では各々の石灰量が同じであればその圃場に存在する硝酸態窒素の多少でその圃場のpHはほぼ決まるという
  関係が成り立つ。

                            表−H   土壌pHと硝酸・石灰の関係
単位mg/乾土100g(≒Kg/10a)
サンプルNo.
pH
(KCl)
硝酸
(NO3-N)
石灰
(CaO)
5.41
20.55
329.71
6.21
8.00
324.09
6.42
9.33
346.54
6.50
19.00
383.01
6.81
11.20
392.84
7.26
 3.80
397.04
標準土壌
6.0〜6.2
(20)〜30
320
                                            分析者:米澤農業研究所

 この表のように、石灰量がほぼ同じ量の時、硝酸の量が増えるとそのpHは下降している。 アルカリ性化した土壌へ窒素肥料を施す場合は必ず硝酸態窒素系の肥料を使用すべきで、 この時アンモニア態窒素系の肥料を施した場合には硝酸化成が遅れ、結果としてサンプルE・Fの比較でも判るように硝酸が欠乏となって、 pHは上昇し作物の生育を悪化させてしまう。そのような不都合を来たさないように、 窒素の硝酸化を速やかに行うために有機物を十分に使用することが大切である。

<< 最後に >>
 農家の皆さんたちは“窒素を入れたら害が出る”と良く言われます。しかしながら、私たちは果菜栽培に於いて、 一般の常識から言えばかなりの量の窒素を使用していると思うが、それでも害が有ったとの報告は一件もない。

その様な事からその言葉の意味を深く考えてみると、農家の皆さんたちは窒素を使う場合、 アンモニア態窒素を主成分にした液肥や配合肥料などを使う事が多い。そのためにアンモニアの害を出した経験がある。また、それで人が困ったのを見た経験がある。 つまり、ここの部分の本当の意味は、“アンモニア態窒素を入れたら・・・・”と表現すべきではないだろうか、と思うのである。

また、私たちが栽培条件の一要因としてこだわる、この水のpHについて私が感じる事は、各地の計測したpHの数値と“水を掛ける、掛けない”と言われることを比較したところ、 概略、pHが7.0以上の高いところでは“水は控えめに・・・”、pHが6.0〜6.5の地域では“あまり気にしていない、 むしろ多めに掛ける”といった違いが認められる。特に、pHの高い地方の灌水作業はかなり敏感になっているというのが私の感想であり、 私の“pHを下げてたっぷり灌水したら・・・”という提案に対しても拒否反応の割合が多い。


 = 完 =




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