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 ”土作りと栽培 ” 講座 《 作物の生育環境に適した土作り 》 

 “ 土 作 り と 栽 培 ” 講 座 

《 作物の生育環境に適した土作り 》
やらねばならぬ事、やってはいけない事
                                                              更新日:2010年 4 月 29 日

       I n d e x
T. 前書き.
U. まとめ表.
V. 解説
 1) 土壌.
 2) 有機物(堆肥).
 3) 定植.
 4) マルチング.
 5) 灌水.
 6) 用水の調整.
 7) 肥 料(窒素).
 8)  〃 (燐酸).
 9)  〃 (加里).
10)  〃 (石灰).
11)  〃 (苦土).
12) 微量要素.
13) 栽培環境.
14) 全体的な管理.


T. 前書き

 このページは2007年3月24日、豊穣会の設立総会の時、 貴重な時間を頂戴して講演した内容であります。当日、説明が足りなかった部分や項目を調べ直し、追加・整理・加筆して書したものです。 日頃の農作業に役立て戴ければ幸いに存じます。

 全国各地を巡回して農家の人たちと植物栽培を通して語り合う機会が多いのですが、 その際、皆さんは病気が止まらないとか、生産物が高く売れないなどと言う営農的な悩みを相当お持ちであるということも良く理解できました。 そして、最大の問題点は今まで知識として学んだり、聞いてきたことに多くの誤った認識があるという感じがしたのでした。

そこで、今回はその対話の中で感じ取ったことを纏めて見ました。 特に栽培の基本的な考え方は各地の地理的・気象的な環境条件などによっても大きく違うような気がします。 つまり、地理的な条件で言えば、いま営農をしている圃場の位置関係のことです。 日本の地殻は石灰岩が多いようです、また塩分が出湧する地区もあります。 そのような事実の把握ができていないのではないかと言うことがあります。

 例えば、佐賀県で分かったことは、特産のいちごの“さがほのか”に病気が多く農家は大変困っているという情報がありました。 現地に行って周りの環境を調査した処、佐賀県の南部地区つまり有明海沿岸側は太古の時代はその殆どが海であり、現在の広大なその地区の農地は干拓地であります。 農家はそのような地で営農をしている訳です。そして、そこにはクリークという灌漑用水路があり、現状はその水路水を利用して営農をしています。

また、その水路の水は市内を流れる一級河川の嘉瀬川が流れ込んで水源となっているのですが、困ったことに、その嘉瀬川を流れる水のpHが7.2(HO)という数値であります。 また、安定した用水を確保する為に井戸を持った農家もあります。処が、この井戸水でさえPHが7.2とか7.4と言うような数値が現状であり、中には塩水が出るような場所もあったり、これでは削井しても使えないといった話もあります。

或る苺農家に行くと、その用水路から揚げている水のPHが9.4あると言うので詳しく調べて見ました。 話を聞けば、クリークの法面の護岸強化に消石灰を使って固めているということなので、 そのアルカリ分が影響しているのではないかとその原因を推測している訳です。このように現地で色々な話を聞いて見るとその土地の条件によってその苦悩があるわけで、その現状を分析して見るとその解決方法も見出せるものと思います。

 現在では、そのように水のpHが高い状況(塩水は使用できないが)に対しての処方は、その用水のpHを6.0まで下げて使うと言う方法でアルカリ障害を回避し、 うどん粉病や萎黄病といった病魔からの苦難を取り除いていますが、 それでは、そのような病気を取り除くのに何故このように手間を掛けて用水のpHを調整しなければならないのか

このようなことを初めてお聞きの方は疑問を抱かれる事と思いますが、その裏付けなどを含めて解説して見たいと思います。


U. まとめ表


  表−@
 
項目
関連事項
掲載ページ
やるべき事
やってはいけない事
又は、好ましくない事
特   記
土 壌
  (2)
 (14)
・土壌とは元々岩石が風化した電子のない無機物である。 ・土壌は根を支えているだけ。
(生育は肥料の養分で管理する)
・水はけの良い圃場つくり。
・暗渠設備の導入。
・水はけ具合は畝高低で加減。
・土壌が硬くならない資材を使
 用。 (例えば、×消石灰)
・水はけが良いと根に多くの酸
 素を供給できる。
有機物
 (13)
 (14)
 (15)
 (16)
 (17)
・有機物投入は必須。
・乾物重量3トン、湿物は6トン。
   (出来るだけ深耕する)
  *必ず、完熟物を使用*
(時々、乾燥物を完熟物と言って
 いる業者がいるので注意)
 <未発酵の堆肥>
・匂いがする・カビが生える・キノ
 コが立つ物は絶対使わない。
 <外材を使用のバーク堆肥>
・塩(NaCl)害の危険性がある。
・有機物は
 アンモニア態窒素を硝酸態窒
 素へ素早く変える。
    (土が安定する)
定 植
  ・良い苗(しっかりした苗)を定植
   (良い苗は活着も早い)
・定植後の灌水には必ずクエン
 酸を用いる。
・弱々しく色のあせた苗。
“花芽が早い”などと言う理由で
 肥料分を与えない傾向にある
 が、それは間違い!。
・“苗半作本圃半作”の意味。
 “多収量には最良の苗と土作
 りの出来た最良の圃場から”。
マルチング
  ・黒又はシルバー。
・寒冷紗(98%カット)。
・透明の(廃)農ビ・(廃)農ポリ。
  (雑草の原因に)
・特に、農ビ。
(可塑剤が溶出し重金属の害の
 恐れ)
・雑草対策を優先に考える。
・地温を保つ為などと考ない。
灌 水
 (24)
 (32)
 (43)
・たっぷり畝全体から通路に溢
 れる位、掛かるようにする。
・配管の方法はループ配管とす
 る
・寒冷紗(98%カット)の上に灌
 水パイプを置く。
・マルチの中にチューブを置いた
 場合はマルチが持ち上がるよ
 う工夫する。
・水は絶対に切らない。
 <灌水チューブ(パイプ)>
・点滴仕様は使わない。
・少水量の物は使わない。
・根元だけに集中して掛ない。
 (マルチの上にチューブを置い
  てはいけない)
・植物は水と炭酸ガスで糖を作
 り、その糖で呼吸をしている。
・点滴は同じ処ばかりに液肥が
 掛かり、その所が濃度障害。
・その根元の周りが濃度障害。
用水の調整
  (9)
 (33)
 (43)
 (45)
 <潅水に使う用水>
・必ずpH5.5 〜 6.5の範囲
 に調整して使用する。
・5.5以下では石灰欠乏、
 7.0以上ではアルカリ障害
 が多発する。
・至適pHで酵素の活性化と
 肥料の溶解度を良くする。
・コンクリート製のタンクはその
 アルカリ分が溶出し、pHを押
 し上げるので、新設の場合は
 特に気をつける。
肥 料
(窒素)
 (13)
 (15)
・硝酸態窒素を主体にして使う。(果菜類の殆どは好硝酸性窒素
 作物である)
・アンモニア・尿素は使わない。
 (アンモニア害が多発する)
窒素のアンモニア還元
・蛋白質は健康体を作る。
・アミノ酸は美味しさの源。
           の基となる。
肥 料
(燐酸)
  ・(間違い)*燐酸を入れると・・・
  1.味が良くなる
  2.花では色が良くなる
      と言う誤った認識。
・左記の理由で燐酸を多く入れ
 る。その結果、
燐酸の過剰は他の金属と結合
 して難溶の金属となる。
・光合成のエネルギー源となる。
   ADP ⇔ ATP
・Pの出入でエネルギーが発
 生。
肥 料
(加里)
  ・塩化加里
・硝酸加里
・硫酸加里 の使い分け。   
   ・根から吸った養分を送る為の
 水分の調整をする。
10
肥 料
(石灰)
  (4)
 (27)
 (29)
 (30)
・硝酸石灰
  (N:11.8% Ca:23.6%)
・炭酸石灰
  (Ca:53.0%)
・炭酸苦土石灰
  ( Ca:53.0 Mg:10%)
・塩化石灰
  (Ca:38.3%)
・過燐酸石灰
  ( P:17% Ca:28.0%)
             などを使う
×消石灰
 (高いpH、圃場固化)
×生石灰
 (高pH、熱を発する)
△硫酸石灰
 (石膏=難溶。水を含むと固く
 なる。ギブス・ブロンズ像を作る
 時に使用)
△有機石灰(難溶)
 
・ペクチンと反応し、果肉の基と
 なる中層を形成する。
・実がしっかりとして重たくなる。
 * 有機石灰とは
   牡蠣・貝殻(炭酸石灰分)。
 * 炭酸石灰とは
  太古の貝殻・サンゴの化石。
11
肥 料
(苦土)
  (4) ・炭酸苦土石灰
・塩化マグネシウム
・硫酸マグネシウム
         の使い分け
(間違い)
1.味が良くなる。
 と言う事で多肥する。結果、
 重たい土壌となり過剰障害
 が発生する → 脱塩に苦労
葉緑体の核となる葉緑素を作
 る。
・炭水化物代謝や蛋白質の合
 成などの生理作用を促す酵素
 に深く関与している。
12
微量要素
  (5)   (39)
 (37)  (40)
 (38)  (42)
・有機酸微量要素を使う。 EDTAは使わない。
  (呼吸回路が阻害される)
酵素を活性化し植物代謝を良く
 する。
13
栽培環境
  (2)   <湿度>
・栽培環境湿度80%以上。
  <風速>
・風の流れ0.5 〜 1.5m/s
  <光条件>
・光飽和点までの光の量を確保
 する。
・過乾燥にしない。
  (病気多発)

・植物に風を直接当てない。
 (過乾燥の原因)

・湿度の上昇は作物の最適温
 度を押し上げる。
・光合成速度が速くなる。

・光量不足は節間が徒長して
 病弱となる。

14
全体的
な管理
  (2) ・土壌分析による管理。
・要素の欠乏を出さない。
  (相助効果)
・肥料を入れすぎない。
   ・浸透圧に悪影響
   ・拮抗作用の懸念
トベネックの樽の法則


V. 解説

 1) 土壌

 
項目
関連事項
掲載ページ
やるべき事
やってはいけない事
又は、好ましくない事
特   記
土 壌
  (2)
  (14)
・土壌とは元々岩石が風化した電子のない無機物である。 ・土壌は根を支えているだけ。
(生育は肥料の養分で管理する)
・水はけの良い圃場つくり。
・暗渠設備の導入。
・水はけ具合は畝高低で加減。
・土壌が硬くならない資材を使
 う。 (例えば、消石灰)
・水はけが良いと根に多くの酸
 素を供給できる。

 地球誕生時の地質は岩石と考えられている。その地質はまだ電子のない砂の状態の無機物であった。 土壌とはそのような状態の砂岩などが風化し、後ほど誕生する植物や動物などの生物が死骸となり、有機物に変化したものを含んだ物質である。 勿論、その中には栄養分としての多量要素や微量要素などの肥料要素は含まれている。

そこで、この土壌に栄養があるなどと考えるから、そこに間違いが生じるわけである。 我々は此処での土壌は“ただ単に植物の根を支えているだけ”と考えたい。 つまり、土壌に含まれる有機物の栄養分は、植物が本当に良い状態で成長した場合には、ほんの一ヶ月の肥料分としても満たないのである。

 圃場は常に水はけを良くしておく必要がある。水はけの良い土壌は根に酸素を良く供給できる状態にあると言うことである。 このOの働きは根圏微生物が必要とする酸素、根の新生に必要とする酸素、それと根の新生と生活のために必要とする酸素である。 特に根圏微生物の必要とする酸素の割合が多い。場合によっては、この水はけを良くするために暗渠を敷設する必要がある。 また、畝の高低についてもその圃場の水位などの特性を考慮しながら決定することが大事である。

 土壌を柔らかく作る場合、肥料として不適な物がある。石灰分としての消石灰と生石灰である。 消石灰は昔から漆喰を作るのに使われてきた。 その作り方は、消石灰とふ海苔と粘土を足で踏み混ぜてつくり、それで壁を仕上げる。それが漆喰壁である。 つまり、圃場で消石灰+わら(有機物)+土(粘土)を機械で混ぜている。 この事を毎年繰り返した為に圃場の地下50cm位の処には固い岩盤層が出来ていることが多い。

生石灰はこれに水を加えると激しく温度を発して消石灰となる。 本来、農業用肥料としての消石灰は硫酸アンモニアと併用して使われてきた。 これは硫酸と石灰分が反応して硫酸石灰(石膏=これも水を含むと固くなる。 その性質を利用してブロンズ像を作る時の型材に使われたり、ギブスなどに使われたりする。)になり、 アンモニアが残って窒素成分となるとしたものだが、実際には上記の工程変化となり漆喰の状態になっているようだ。

最後に、圃場の土壌肥料の成分量は常に標準土壌にしておく必要がある。 この項は最終項(14)で解説する。


 2) 有機物(堆肥)

 
項目
関連事項
掲載ページ
やるべき事
やってはいけない事
又は、好ましくない事
特   記
有機物
 (13)
 (14)
 (15)
 (16)
 (17)
・有機物投入は必須。
・乾物重量3トン、湿物は6トン。
   (出来るだけ深耕する)
  *必ず、完熟物を使用*
(時々、乾燥物を完熟物と言って
 いる業者がいるので注意)
 <未発酵の堆肥>
・匂いがする・カビが生える・キノ
 コが立つ物は絶対使わない。
 <外材を使用のバーク堆肥>
・塩(NaCl)害の危険性がある。
・有機物の重要な作用は
 アンモニア態窒素を硝酸態窒
 素へ素早く変える。
    (土が安定する)

 持久力のある土壌をつくろうと思えば有機物の投入は必須である。勿論、有機物の無い栽培方法も可能である。 この場合、素早く溶かして効果の早い高額な工業薬品を肥料として用いる必要がある。例えば窒素分ならアンモニア態は使えない、 硝酸態窒素を使う。石灰なら即効性の硝酸カルシウムを主体として使う。然も、効果の早い成分を使うだけに要素が欠乏するのも早い、 つまり管理が大変となる。

そこで有機物の利用となるわけだが、その利点はそれを使う事で土壌中の硝酸化成菌が活性化して大繁殖し、 土壌のアンモニア態窒素を硝酸態窒素に素早く変化させていく事となる。 この有機物の投入という作業は植物にとっては害となる窒素分を益となる窒素に変えてしまうという離れ業をいとも簡単にやってのける。 更に、この窒素の変化が土壌の酸度にも微妙に影響を与える。

アンモニア態窒素は土壌のPHを上昇させる。つまり、土壌をアルカリ側にするため、その土壌は不安定になる。 俗にいう“成り疲れ”とか“株疲れ”といった現象がその症状である。 逆に、硝酸態窒素は(−)の電子を含んでいるため土壌のPHを酸性側にしてくれる。この事が土壌を安定させる要因となるのである。 そして、その硝酸態窒素は植物体内に取り込まれ、そこで微量要素の力を借りた酵素が盛んに作用してアミノ酸や蛋白質に変化(還元)していく。

ここが植物の代謝という植物栽培の根幹と成るところである。この植物の代謝は窒素の働きの項の説明となるが、 有機物はその最も重要な部分の入り口になるため、この有機物の投入と言う作業を無視する訳にはいかない。

 次に、それでは有機物なら何でも良いのか、と聞かれると答えは“NO”である。この有機物に未熟な物を使った場合、必ず発酵最終時期にカビが生え、 悪臭が立ち込め、茸が目立つ様になってくる。このときアンモニアが猛烈に害を及ぼし始める。所謂、アンモニアの害となる。 最近は木の皮のマルチなど行う農家が増加傾向にあるので注意をすること。

 有機物の分解は炭素Cと窒素Nの比で表される。C/N比という用語で表されてるのがそれである。この比が10/1に近づくほど分解は進む。 従って、尿や糞(N)とおが屑(C)の混合物は早く(常温で約3ヶ月間位)分解し、バークなどの木の皮は分解が進まない。しかし、 何れは土の中の窒素分と反応してアンモニアの害を及ぼす事となる。

この事実を、バークを使用している農家に尋ねて見るが、その殆どの人は“茸は立たない”と言われる。 しかし、それはその発生の時期が遅い為、多分お気づきないのではないかと推察できる。何故なら、生命を絶たれた生物は必ずカビ(菌)が宿り、 分解されて土に帰る。これが自然の節理なのである。

下の写真の@・Aは臭いのする有機物を追肥として入れた圃場とB・Cは入れない圃場。同一農家の2箇所の圃場の写真です。
比較をして下さい。
  写真−@ トマト          撮影日:’08年 2月 3日
未発酵堆肥を追肥
  写真−A トマト          撮影日:’08年 2月 3日
アンモニアの害
 臭いのする有機物を追肥として投入しました。1週間後の写真です。カビが生えています。
 このように影響を受け易い生長部に害が認められます。アンモニアの害です。

  写真−B トマト          撮影日:’08年 2月 3日
未発酵堆肥を入れてない
  写真−C トマト          撮影日:’08年 2月 3日
無害のトマト
 有機物は入れていません。
 この様に石灰の欠乏は少し目立っていますが、害は出ていません。

  写真−@ 生姜          撮影日:’09年 3月22日
未発酵堆肥を使った為、きのこが発生
  写真−A 生姜          撮影日:’09年 3月22日
ハウス生姜のアンモニアの害
 薦められるまま、未発酵堆肥を使いました。“毎年このようなキノコが発生します”との事でした。
 このように成長点に近いところで障害が出ています。毎年このような状態に成るから、これが正常だと思っていたと言う事でした。

私はピートモス(PH調整していないもの)を良く使用する。この利点は完全に発酵を終えており、 未熟と言った不安から解放されること。その上、肥料成分を少しでも和らげてくれる、つまり、土壌に含まれる余分な成分を薄めてくれることにある。肥料分は少なければ入れればよい。 多いのは脱塩(肥料塩)処理に困るし、大変手間もかかる。

下は、いちご園にて。通路にバークを敷いた写真。
  写真−D いちご園にて     撮影日:’08年 2月 7日
生バークを使用してきのこが発生
  写真−E いちご園にて     撮影日:’08年 2月 7日
生バークを使用してきのこが発生
バークを入れてもキノコが立たないと言う農家の圃場で見られた。臭いこそしなかったがきのこが発生している。
同左、場所を変えて撮影。初期の段階だが、より湿っている処の方が早く発生していた。


 3) 定植

 
項目
関連事項
掲載ページ
やるべき事
やってはいけない事
又は、好ましくない事
特   記
定 植
  ・良い苗(しっかりした苗)を定
 植。
   (良い苗は活着も早い)
・定植後の灌水には必ずクエン
 酸を用いる。
・弱々しく色のあせた苗。

 “花芽が早い”などと言う理由
 で肥料分を与えない傾向にあ
 るが、それは間違い!。
 “苗半作本圃半作”の意味。
 “多収量には最良の苗と、土
 作りの出来た最良の圃場か
 ら”。

 定植について考えるとき私が各地を巡回して感じることは、皆さん達が今から定植をしようとする苗が弱々しく悪い事が気になる。 特に苺の農家に行くと、その事を強く感じる。これは、作物に窒素を与えなかったり、 他の肥料を与えなかったら花芽の分化が早くなると言う説が根拠になっているらしい。

 “苗半作、本圃半作”と言う事が昔から言われている。これは、しっかりした苗作りをしてその苗を本圃に植える。つまり、 野菜作りを苗床から本圃へしっかり引き続き、最後に最良の収穫を迎えると言う意味だと思う。 処が最近では“弱々しい苗を本圃に植えると、その弱々しい苗は今までの反動で本圃の肥料分をガツガツ吸収しはじめるからいいのだ”と言う人もいる、 本当にそうなるのだろうか。

肥料を与えなかったら本当に花芽は早く来るのだろうかと考えさせられる。私はもっと自然に考えるべきではないかと思う。 例えば、植物に肥料を与えなかったら、その分植物は早く駄目になってしまう。その場合、植物は子孫を残す為に、その花を早くしかも大きく目立つように咲こうとする。これは虫を早く呼び寄せ次の世代に受け継ぐべく、 他より早く結実しようとするためではないのか。花が大きく咲くのは、より早く虫に見つけてもらうためではないのか。

また、このようにして出来た果実は熟すのが早くなる、大きくなる前に熟してしまうのは早く熟して落ちたり鳥に食べてもらって、より早く子孫を残したいからではないのか。 出来損ないの実が美味しく出来るのは、他の果実より優先的に鳥に食べてもらい、 糞の中に混じった子孫(種子)を方々へ撒き散らして欲しいからではないか。 だから出来損ないというか、出来の悪い果実は美味しいのだろう、などと考える。(だから、美味しく出来た作物には迷惑なくらい鳥や昆虫が良く寄って来るでしょう・・・)

 つまり苺を例にすると、花芽を早くする為に肥料を与えない。その為に栄養分は不足し、萎黄病は蔓延、炭素病も出ている。 この不都合な事態は回復することもなく結局は、植え替えと言う作業で解決しようとしている。が養分の無いところに何回植え替えても結果は・・・??と思うのだが、以下は2例のクラウン部をカッターで切って見た。 苗は要素の欠乏を来たして、栄養の通る導管・師管を傷めてしまっているのが判る。
    写真−@ いちご        
いちご炭素病
    写真−A いちご        
いちご炭素病
 いちごの茎部の写真です。これは俗に言う炭素病と言われる症状を来たした茎の写真です、通導部が半分以上壊死して木質化(部)しています。これでは養分の移動ができません。
 いちごの茎と根部の写真です。成長が止まったままと言う事で、根を抜いて断面を見る事にしました。組織が壊死して茶褐色(部)になっています。通導部の組織は壊死しています、根の部分は木質化して細根も殆どありませんでした。

  写真−B いちご         撮影日:’08年 2月20日
いちご
  写真−C いちご         撮影日:’08年 2月20日
いちご
 いちごの茎部の写真です。これは俗に言う萎黄病の症状でした。導管は壊死寸前。木質化しています。
 左の写真のクラウン部です。柔組織部の木質化が進んでいます。

  写真−D いちご         撮影日:’08年 3月 3日
いちご
  写真−E いちご         撮影日:’07年10月25日
いちご
 萎黄病で困っていると言う農家にて撮影。良く出来た苗を養分の少い培地に定植したが、うまく育たず木質化しています。
 萎黄病の茎の写真です。

  写真−F いちご         撮影日:’07年11月28日
いちご
  写真−G いちご         撮影日:’07年11月28日
いちご
 花芽を進ませるために肥料を与えなかったいちごの出来上がりの果実の写真です。折角、果が実り出荷の手はずでしたがこれでは出荷が出来ません。
 組織がうまく分裂しませんから、どうしてもこのような奇形果になります。 花芽を早く作ってもこのような実では意味がありません。11月から12月のスーパーのいちご売り場では、これ程ではなくても、 軽度の奇形の果実を結構多く見かけます。一方、このような症状は受粉が上手く行かなかったからと言う説もありますが、 通期間の発生率を観察してみてその症状が初期段階に多数見受けられるのは一概にそうとも言えないようです。

   写真−H 茎の断面模式図
茎の断面模式図

茎の断面模式図
  写真−I いちごの葉柄部        
いちごの葉柄部(ホウ素欠乏)
 
 いちごの葉柄部の顕微鏡写真です。
特殊な試薬で赤く染まっている部分が導管・師管です。

 『 定植というテーマのまとめ 』
@ 苗は深い緑色で艶があり、しっかりした太い茎でつくる。
A 有機物が入って、しっかり土づくりの出来た圃場に植える。
  できれば正確な土壌分析をして、不足分のみを肥料一覧表から選定して与える。多い分は自然減を待つ。
  肥料成分の過不足はしっかり把握しておく。
A 生育過程での生育停滞時期を無くすることが多収量の重要な鍵となる。
  (栽培に失敗して植物を傷めると、それを回復させようとする時間および日数は傷めた期間の3倍かかる。)
B 定植時の植え痛みに対しての防衛策
     ・・・・定植後は必ずクエン酸溶液を使用した灌水を行う。使い方は“クエン酸回路 (クレブス回路・TCA回路)”の1.項を参考。
           (約2時間後には元気な姿になります)
C 灌水の際の水は必ずPH6.0前後で使う。PH7.0(HOにて)を超えるとアルカリ障害が発生する。
     (アルカリ障害の写真


 4) マルチング

 
項目
関連事項
掲載ページ
やるべき事
やってはいけない事
又は、好ましくない事
特   記
マルチング
  ・黒又はシルバー。
・寒冷紗(98%カット)。
  (状況写真@・A
・透明の(廃)農ビ・(廃)農ポリ。
  (雑草の原因に)
・特に、農ビ。
 (可塑剤が溶出し重金属の害
 の恐れ)
・雑草対策を優先に考える。
・地温を保つ為などと考ない。   

 定植とマルチングは前後するかもしれない。その作業が終わった後マルチを敷いていくことになるが、 マルチに透明な然も廃農ビを敷く農家がある。この事柄は少なくとも2つの問題点があるように思う。

 1番目は農ビ、即ち農業用ビニールには可塑剤が使ってある。この可塑剤はビニールに粘りを持たせて、 ビニールを展張し易いようにする添加薬剤である。農ビが農ポリと違って良く伸びるのはこのような可塑剤を使用しているからである。 ところがこの可塑剤には生物にとって有害となる重金属が含まれており、この 重金属が溶出して植物に害を及ぼすことが十分に考えられる。

 2番目として、透明の農ビ・農ポリは太陽の光線が射し延べ、雑草が生い茂る。 やがてその草は枯れ、腐敗する過程でアンモニアが発生しその成分が土に滲み込む可能性がある。茸が立つなどアンモニアの害が懸念される。 元々、この発想は根の活性化のために根圏の土を暖めたいがためらしい。 しかし、私が思うには植物は地熱温度(約13℃)に対応出来ているので、しっかり土作りさえすればこの限りではない。 13℃でも根は十分に動く、透明の農ビ・農ポリのマルチングは寧ろマイナス要因の方が大きい。

 上記のように、マルチには黒、若しくはシルバーで光線を透さない物が良い。 更に一番いいのは寒冷紗のような藁を織った形状の物である。これは灌水の際に肥料分の溶けた水を圃場全面に散布できるようにしたいからである。 この事は収穫の中盤から終盤の追肥の過程で重要な意味を持ってくる。

  写真−@                   寒冷紗のマルチ
寒冷紗98%カットのマルチイング
  写真−A                   寒冷紗のマルチ
寒冷紗98%カットのマルチイング
 栽培(トルコキキョウ)終了後の写真。
98%カットの寒冷紗をマルチに使用した。今まではマルチが無かったので除草が大変だった。草とりをすれば作物の根を傷める事もあった。 これで雑草対策は解決した。
 ここはトマト栽培のハウス、終了後の写真。
通路までマルチにした。マルチの使用状況は3年目。
写真−@・Aいずれも、この上に灌水チューブまたはパイプを置くようにしている。 この方法だと自分で調整した液肥を畝や通路まで全体的にたっぷりと掛ける事が出来る。


 5) 灌水

 
項目
関連事項
掲載ページ
やるべき事
やってはいけない事
又は、好ましくない事
特   記
灌 水
 (24)
 (32)
 (43)
・たっぷり畝全体から通路に溢
 れる位、掛かるようにする。
・配管の方法はループ配管とす
 る
・寒冷紗(98%カット)の上に灌
 水パイプを置く。
・マルチの中にチューブを置いた
 場合はマルチが持ち上がるよ
 う工夫する。
・水は絶対に切らない。
 <灌水チューブ(パイプ)>
・点滴仕様は使わない。
・少水量の物は使わない。
・根元だけに集中して掛ない。
 (マルチの上にチューブを置い
  てはいけない)
・植物は水と炭酸ガスで糖を作
 り、その糖で呼吸をしている。
・点滴は同じ処ばかりに液肥が
 掛かり、その所が濃度障害。
・その根元の周りが濃度障害。


 日本の農業における灌水の考え方は、私にとっては少し理解が出来ない点が多い。

例えば、水を多くかけると根が腐れるとか、水をかけると水っぽくなる、などといろんな事を言う人がいる。 例えば養液栽培では確かにトマトなどは水っぽくなるようだ(何故かは窒素の項)。土耕栽培では水をかけすぎると根腐れを起こすときもある。このような会話は結果だけを論議しているのに過ぎない。 このようなとき、その圃場の水の捌け具合はどうだろうかとか、水を与えたらいつまでも水が溜まってないかとか、 掛けた水のPHはどの位あるか、などとその原因と思われる要因の議論から始めた方が良いと思う。 そこで、水を多くかけて生育が悪くなる要因を考えてみた。

 まず、水を多くかけて根腐れを起こすのなら、水耕や礫耕などの養液栽培はすべて行えないはず。 しかし現実には土耕栽培よりは養液栽培の方が実績を上げているケースが多い。そのような設備での根の部分は100%水に漬かったままである。 だけど、根が腐れることはない。それではその根が腐らないのは何故か、それはその根が漬かっている養液の肥培管理は当然のことながらやっているものの、 その他に重要なことはその養液には常に酸素を強制的に供給するようになっていると言うことである。つまり根には大量の酸素がいつも行き渡るようになっている。

その事が養液栽培で根が腐らない最大の要因なのである。 だから、水捌けの良い土壌で酸素の供給が良く出来ているならば、根腐れを来たすことはまず無いのである。 逆に、3日も圃場に水が溜まったままだと酸欠で根腐れを来たしてしまう。 また例外的に、水稲や蓮根は何時も水に浸かったままでも成長しているが、このような作物は葉の部分から空気を導き入れる構造になっている。 稲ならば茎の部分が空洞に、また蓮根などでは葉の付け根の所に小さな穴があり、茎から根にかけて空洞になっているなどが確認できる。つまり、空気の通り道がある。

次に、根腐れの原因には石灰の欠乏がある。また、肥料成分が過少でも過多の場合でもやはり根腐れとなる。 更に、水のPHが低くても良くないし、高くても良くない。そのPHは5.5〜6.5とする必要がある。 特に、7.0以上となるとアルカリ障害も酷くなるので注意すべきである。と言うように、 このような不都合の原因を議論せずに事態だけで判断するから、その結論として“水をかけたら根腐れを来たす” だから水は少量にしておいた方が良いという論理になるのである。

 水は何故大事なのであろうか。生物の75〜90%は水分であり、人間でも水が無ければ脱水状態となる。 農家では、最近は炭酸ガス発生器という機械を導入することが多くなった。しかしこのような機械を導入しようとする農家でさえ、 水を控えて栽培しようとする。植物はCOとHOを体内に取り入れて光のエネルギーで光合成をし、 糖をつくりそれを消耗しながら呼吸をし生命を維持している。

それなのに何故、水を切ってしまうのだろうか?片方では水を切りながら、 他方では炭酸ガス発生機を導入してCOを供給するという生物学の上では考え難い全くあい反する作業を行っているのが現状である。 水は通路も含めて圃場つまりハウス全体に広くかかるようにする。当然、肥料も畑全体に散布しておく必要がある。 この事は、畑全体が大きな栽培ポットと考えたらよい。300坪のハウスなら300坪のポットと考えるくらいのほうが丁度良い。

野菜の根は大きければ大きいほど良い、それは根が存分に肥料を吸収できるからである。その方が木に勢いが出てくるし、 実が大量についた時にも持久力も出来てくる。従って、点滴チューブのように少水量のものは避けたほうが良い。少水量のものは一点にだけ集中して水がかかる。 水だけなら仕方が無いとしても、肥料成分が入った液肥となると話は少しややこしくなる。 肥料分の(+)電子が土壌コロイドの(−)電子と磁石のように強固に引き合うからである。

そのため集中してかかった個所はやがて肥料過多になり、浸透圧は上昇し、それが要因となって根腐れという不都合な事態が懸念されるからである。 また、過去私が教示した農家で、マルチの上に塩ビのパイプを並べて、そのマルチの上から植物の根元に向かって水を供給する例があった。 当然のことながら肥料、特に微量要素が入っていくからその部分だけに成分が偏り、根の周りは成分過多となっていく。

暫くして、枯れる寸前という事態になっていたので慌てて水だけにしてもらったことがあった。 このような昔ながらの塩ビ管の配管は大量の水が瞬時にかかり大変良いと思うが、 このマルチを寒冷紗のようにどこからでも水分が土壌に落ち込むようになっていたらベストであったと思う。 丁度、昔のように藁のマルチを敷き並べるようにするのである。

更に、この場合の配管方法は周りを太いパイプで一周するループ式といわれる方法で施工することがポイント。 灌水パイプの両端から水が入って来るのでパイプ内の圧力を一定に保つことが出来、各々ノズルから均等量の散水をすることが出来る。

奈良先端科学技術大学院大学バイオサイエンス研究科教授の横田明穂博士の研究によると 『畑の作物生産物に必要な水の量の実測では、1キロの作物生産に500〜600キロの水が必要である』と書してある。(日本農業新聞から)

そこで、いちごを9月定植〜5月迄の栽培期間約8ヶ月間、6トン(6000kg)/10a当を出荷した場合の必要灌水量を計算してみると、
栽培期間の必要灌水量は 6×500=3,000トン
1ヶ月の平均必要水量は 3,000 ÷8ヶ月=375トン
1日の必要水量は 375÷30日=12.5トン となる。

更に、トマト栽培で収穫量20トン、栽培期間(9月定植〜7月初旬終了)は10ヶ月間(8ヶ月収穫)とした場合では、
栽培期間の必要灌水量は 20×500=10,000トン
1ヶ月の平均必要水量は 10,000 ÷10ヶ月=1,000トン
1日の必要水量は 1,000÷30日=33.33トン となる。

それでは、土耕のように地面からの蒸発がなく、地中に用水が奪われる事も無い、 タンク設置の養液循環式の礫耕栽培装置に於けるトマトの栽培試験データが手元にあるので比較してみると・・・・

トマト20段栽培。期間は9月定植〜7月初旬終了の10ヶ月間(収穫は8ヶ月間)。その時、1株当りの収量は13.1675Kg、
その期間に要した水量は406.20g(Kg)/1株 となっているが、纏めると下表のようになる。

                                                                 < 米澤農業研究所 >
  栽培10ヶ月間の用水量 栽培1ヶ月間の用水量 1日の用水量
 トマトの収量が13.1675 Kg      406.20 Kg     40.62 Kg     1.35 Kg 
 トマトの収量を1 Kgに換算すると      30.85 Kg       3.09 Kg       0.1028 Kg 
 20,000 Kg (20トン)に換算すると 616,973.60 Kg 61,697.36 Kg 2,056.57 Kg

このように、葉面からの蒸散だけが唯一減水の要因となる養液栽培と比較した場合、この500倍という数値の用水量はかなり多めの灌水量になるが、 これは地中に吸われていく水分、または暗渠などを通って失われる水の量や地面から蒸発する量等がそれほど多いと考えても良いのではないか。 また、我々は苺の栽培で3〜5月ともなれば5〜7トンは常に灌水している状態であるから、 この500倍と言う数値は苺の生育が本当に旺盛ならこの量に近い用水は必要ではないだろうかと考えられる。

但し、灌水の場合には下記の6)項を参考にし、必ずpH調整をした上で行う事を念のために申し添える。


 6) 用水の調整

 
項目
関連事項
掲載ページ
やるべき事
やってはいけない事
又は、好ましくない事
特   記
用水の調整
  (9)
 (33)
 (43)
 (45)
  <潅水に使う用水>
・必ずpH5.5 〜 6.5の範囲
 に調整して使用する。
・5.5以下では石灰欠乏、
 7.0以上ではアルカリ障害
           が多発する。
・至適pHで酵素の活性化と
 肥料の溶解度を良くする。
・コンクリート製のタンクはその
 アルカリ分が溶出し、pHを押
 し上げるので、新設の場合は
 特に気をつける。


この項で灌水に使用する用水のpH調整がなぜ必要なのか、過去どのような経験でこの結論に辿り着いたかを前置きとして少し述べる。

昭和56・57年の2期間を香川県と岡山県の3農協のいちごを我が研究所が指導していた経緯がある。この重大さを最初に気が付いたのは56年である。 いちごの栽培も中期に入り株疲れの目立つ時期だった。現地で指導巡回していた時、10軒の農家すべてが“どうも今までの状態と違い、 生育がおかしいのです”と言う。見ると葉の周縁が枯れ上がっており、明らかにアルカリ障害の症状を呈している。 葉露も今までは着いていたものが近頃は着かないと言う。

ここの地区は裏山から湧き出た水がハウス横のコンクリート製の側溝を流れ伝ってくる。灌水にはその水をくみ上げていた。 そのpHはほぼ通年6.8(HOにて)前後であり、イチゴに与える水としては“少し高いかな”と思うくらいで、 然程の懸念は抱いていなかった。その場で念のためにという事で、持参していた簡易pH計(比色式)で水路の水に試薬を注ぎ覗いて見ると、 そのpHは7.2〜7.4を示していた。そこで、私達は研究所から指示を受けた通り用水をタンクに汲み、 硝酸を用いてpHを6.2まで下げて灌水をするようにしたのである。

後日、現地から連絡が入り、生育の状態が回復基調にあると言うので一安心した次第である。 私はそのとき単なる水なのにpHの高い・低いという事でこんなにも生育状態が変わるのかということを強く感じたのを記憶している。 更に、このpH上昇が前年度の渇水の影響であるということに起因していると言う、情報分析力の大事さ。 このような事を感じ取ったのだった。
   ( 注ーこの地区の地殻構造は塩水が湧き出る和泉砂岩帯で、雨の少ない年は塩分が濃縮されて湧き出てくるらしい )

他にも、今まで相談を受けて来た農家には、これだけの精密な土壌分析をして、完璧なくらいの施肥管理をやっていたにも拘らず、思ったより結果の出ない農家もあった。 今考えれば、このようなpHの状況を察知できなかったのだ、と改めて想いを巡らすわけである。 然しながら、この上に記したような状況例を克服してからは殆どの農家に於いて成果を挙げる事ができるようになったのである。

 日本には唯一100%自給できる工業製品としてセメントがある。その原料は石灰岩を砕いでつくる。日本にはその石灰岩が全国の至る所で産出できる。 日本の河川や温泉を調べていくと、このような地殻の構造の影響で石灰質の水が至るところで湧き出る。塩分を含んだ水も湧き出る。 これは大陸誕生のその昔、日本陸地は海底にあったとされており、地殻変動と共に隆起して現在の日本は出来たというのが通説である。

そこにはあたかも石油が海底に埋蔵されているのと同じように、海水も化石水として地殻に埋もれているのである。 温泉でナトリウム炭酸泉と表示してあり、成分でNa と Cl **** ppmとかmg/L と表示されているのがそうである。その埋蔵水をくみ上げているのが温泉で、湧き出て流れ出したのがPHの高い塩分を含んだ水であり河川である。 (参考資料:日本の河川のpH集)

また日本には酸性を示す湧水のある所も多い。日本各地の火山帯には硫黄の成分を多く含んだ地質があり強酸性を示す。 例えば、群馬県には強酸性の泉質そして林羅山の日本の三名泉として有名な草津温泉がある。 この温泉から出る水質のpHは2.1〜2.4である。この温泉水は湯川を通り利根川水系の吾妻川に流れ込む。 この湯川は昔は“死の川”とも呼ばれる通り強酸性の河川で生物は生息できなかった。 ここに国交省は石灰粉を加え河川水を中和する国営事業を行っている。

ついでながら、この河川水について非常に幸運な農家もある。場所は長野県の小布施町。此処は上記にある草津温泉の西側に位置し丁度、 白根山・万座山を跨いだように位置する。従って、硫黄分を多く含む地層で、昔は山頂に硫黄鉱山があったとされる。この付近の農家が使う水は、 pHの高い千曲川(pH7.0〜7.2=夏計測)へpHの低い松川(pHは携帯式比色計では計測不能だった、多分2.0前後であろうと思われる)が流れ込んで混ざり合い圃場横の水路に流れ込んでいるが、 その水のpHが6.4位となっている。また、地下水もその水脈が有るらしく、井戸水においてもpH6.0という幸運な農家もある。

 このように全国各地、様々なpHで栽培をしていることになるが全体的に観察してみると、 やはりpHの高いところの出来合いは苦労が多いような気がする。このような農家の意見は一同に“水を掛けると悪くなる”という声が圧倒的に多いことが特筆できる。 またpHが6.0〜6.6位の範囲の農家は水をかける傾向にあることも判った。

私がお世話になっている長野県のりんごやぶどう、その他の主に果樹関連の栽培研究している熱心な肥料業者があるが、 そのオーナーにその情報を教示した。早速、彼は水のpH調査に奔走した。その結論は“今まで、どうしてかな〜” と不思議に考えていた事柄が、そのpHの理論で一辺に解決できたと喜こんでいただいた事は記憶に新しい。現在では、 取引先の農家全域にpH調整を促して実績をあげている。それが勉強会の発足とそのメンバー連の集い、つまり豊穣会設立へと発展するのである。

 では何故pHを調整しなくてはならないのか?それは生物生理学上大きな理由がある。植物にしろ動物にしろ営み、 つまり代謝には酵素が欠かせないものである。その酵素の作用に無機の金属は更に欠かせないものである。 CaやMgはアルカリ側でよく溶けるが、FeやCuは酸性側でよく溶ける。 特に酸性側で重要な意味を持っているのが硼素(B)の働きである。

Wikipediaの硼素の生物への影響とそのページの京都大学農学部植物栄養学研究室の研究結果や 独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構中央農業総合研究センター:土壌作物分析診断手法高度化研究チーム を参考にしていただくとその重要性が良く判る。“細胞壁の合成や細胞膜の完全性の維持 ”という意味では、Bは常に与え続けなければならない。 Bはちょっと他の部位から持ってくる事は出来ない、つまり移動しないのである。 “Bは欠乏した時点からその症状に不具合が生じる”と私は言い続けている。

だから、硼素が欠乏したり、その効果を阻害する条件となれば細胞壁は破壊される。結果、症状として茎割れや裂果(Ca欠乏ではない裂果)、硬果などが現れる。 これらの不具合な部位は細胞壁や細胞膜が木質化したものと考えて良い。また、Bは導管の保護という重要な機能がある。 導管が傷んでしまえば養分の通り路はなくなってしまい、細胞の先端まで届けることは出来ない。その上、葉などで合成された物質の移動路である師管までも傷んでしまう。

うどん粉の発生に至っては壊死した細胞にカビが寄生して分解し、そして大地に帰っている姿である。つまり、この病気の元々の原因はBの欠乏に起因するところであると断定しても良い。 この事を“かび病だ”“うどん粉病だ”とすぐ病気にしたがるのがこの業界の常だが、これは病気でも何んでもない。私たちにとっては、ただ単にホウ素欠乏である。

植物が順調に成長するのに必要な各々肥料成分は土壌の反応(pH)と肥料要素の溶解・利用度( Troug表 )を見ると全体的にはpH6.8が良い。 しかし、蛋白質やアミノ酸の形成過程にはFeやCuやMnが作用し、成長に対してはZnが大きく影響する。 Moもあるがこの要素はアルカリ側でよく溶けている。このモリブデンを除けば微量要素の部分は殆どが酸性側でよく溶けて、 利用されているということで、この事が“植物は弱酸性で栽培することが基本である”という最大の理由であり、裏付けとなるものである。

つまり、pHが高いと微量要素が溶解・利用されないため酵素は活性化せず、 そこでの代謝は極端に悪くなる。更には、窒素に於いても微量要素が効かないため還元できず、アミノ酸を経て蛋白質に変化しないが故、 植物は病気になりがちとなる。という論理を理解して頂きたいのである。

反対にpHが低い場合にはCaやK、Mgなどの欠乏を来たす。特にCaは極度の欠乏を来たし、葉が黄化してしまう。 土壌のpHは必ず5.5〜6.5の範囲で調整することを希望する。 また、ここで特筆しておきたいのは、生育の良い状態が暫く続くと、次に来るのが株疲れというか成り疲れの現象である。このような時期の土壌pHは必ず上昇している。 この場合、出来るだけ土壌のpHを下げる必要があるので、灌水のpHは5.5まで下げて散水し、少しでも土壌の弱酸性化を心がける必要がある。

最後に、以上のようなことでpH調製と液肥調製の為のタンクを備えたいという人のために注意点を一筆。樹脂やステンレスなどでは問題ないが、 コンクリート製のタンクではセメント分のアルカリが強烈に溶出して、pH6.0の水でも日が経つと9.0以上を示すことが多々ある。 新設の際の初期処理として、燐酸をトン当たり1kg入れてよく攪拌し、1週間ぐらい放置し捨てる。 その作業を3回位繰り返す。燐酸と石灰を反応させて処理するのであるが出来れば防水シートのような物や防水塗料を塗って、 水がセメントの影響を受けないようにした方がベストである。

例−1. セメントの側溝やU字溝で造られた水路・・・・pH9.4(奈良県:ぶどう栽培) <日照りの続く日は水が流れず、停滞したまま>
  −2. コンクリート製のタンク(50トン)使用・・・・pH4.4の雨水がpH9.6へ(長崎県:びわ)
  −3.. コンクリート護岸のクリーク(新設直後計測)・・・・pH11(佐賀県:いちご)<参考:大量の雨でpH7.0に降下するが再び上昇>

pHの調整法については 『 原水のpHの調整法とその必要性 』 を参照のこと。

    灌水時の用水のpHは、土壌のpH(KCl)が
    7.5〜8.0では希硫酸か硝酸を用いて約5.5とし、
    7.0〜7.5では      〃       約6.0として使用する。(灌水が5.0以下では酸性の障害を来たすことになるので注意)
    また、 @ リン酸系にて下げる場合は土壌成分にリン酸が過剰か欠乏かどうかで判断し、過剰の場合は使用できない。
        A 灌水の際に液肥(特に窒素成分がアンモニアを主体とした肥料)を加えた場合、その用水のPHが上昇するので要注意。
        B pHの測定値について ・・・・ KCl と HOの差は通常では0.2 〜 0.3位の差となるが、その差が1.0などの差で表
                              示される場合には機器を再度調整・校正して測定する。


7) 肥料(窒素)

 
項目
関連事項
掲載ページ
やるべき事
やってはいけない事
又は、好ましくない事
特   記
肥 料
(窒素)
 (13)
 (15)
硝酸態窒素を主体にして使う。(果菜類の殆どは好硝酸性窒素作物である) アンモニア・尿素は使わない。
 (アンモニア害が多発する)
(窒素のアンモニア還元)
蛋白質は健康体を作る。
アミノ酸は美味しさの源。
     の基となる。


 最近のこの業界の窒素に対する位置づけは非常に残念に思うことが多い。 それは注−3窒素をアミノ酸や蛋白質にうまく変化させる技術がない為に、減窒素を指導している機関があることである。これは窒素成分の大変な認識不足と軽視である

 窒素は炭素、酸素、水素、硫黄と共に蛋白質やアミノ酸そのほか生理上の重要な化合物の構成要素となっている(窒素のアンモニア還元)。 その窒素にはアンモニア態窒素と硝酸態窒素がある。その適量は硝酸態窒素が20〜30Kg/10aである。 アンモニア態窒素は土中に多く存在すると害が出やすく、その量は0〜3Kg/10a迄とすべきである。

果菜類は硝酸態窒素を要求し、アンモニア態窒素が過剰に存在すれば害を及ぼす。これがアンモニアの障害である。 つまり、多くの農家の人たちや農業関連に従事する人はこのアンモニア障害のことを、総して窒素の害と言い表しているようである。


注−3

蛋白質は含有アミノ酸の種類と結合の仕方により、 それぞれ固有の香や味を形成して、そのコクや風味を作っている。植物体では次のような形で形成される。

『 植物体に於ける硝酸のアンモニア還元 』

  (HNO)       (HNO)      (NOH)        (NHOH)          (NH)    (NH2R・COOH)
 硝酸態窒素→→→→亜硝酸→→→→次亜硝酸→→→→ヒドロキシルアミン→→→→アンモニア→→→→アミノ酸
           ↑          ↑           ↑                 ↑            ↑     ↓
        モリブデン      亜硝酸      次亜硝酸            ヒドロキシル      各種酵素    ↓
        フラビン酵素    還元酵素      還元酵素           アミン還元酵素              ↓
 必須金属   (Mo)       (Fe・Cu)      (Fe・Cu)              (Mn)                   ↓
                                                                      蛋白質
植物が吸収した硝酸態窒素はモリブデンフラビン酵素の働きによって酸素を1個取られて亜硝酸となり順次蛋白質になっていく。
   (必須金属により酵素が活性化する)

 モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、のいずれが欠乏しても蛋白質は植物体内では形成されない。 特に、最入り口のMoが欠乏した場合、窒素として吸収された硝酸は植物の体内にそのまま残留する事となる。 この場合、そのような植物を食したら苦く、ひどい場合、翌朝目を覚ますと目ヤニが出るようになる。

つまり、適量の窒素を投与して上記のような微量要素を使いアンモニア還元さえしておれば、 各種のミネラルやたんぱく質・アミノ酸を多分に含んだ安全で美味しい栄養価の高い食べ物となるのである。


  <大変重要>
 香り、そして味、つまりその源となっているアミノ酸と糖度・酸度の3物質の絡み具合はその作物の風味を決する。 そして細胞分裂が密になり、その中にその風味がびっしりと詰め込まれる。それがカルシウムとホウ素の働きである。 またカルシウムは果肉組織の姿を整え、更に収穫量にも大きく影響してくる。つまり、高品質の作物を最高の姿で最高量収穫出来るのは、カルシウムの働きに起因するところが多い。

そのような夢を実現するために私たちが考えて来たことは、 以上に示す『植物体に於ける硝酸のアンモニア還元』なのである。ここは果菜栽培の最重要なポイントとなる。 そこで、現在のこの農産物を取り巻く業界のように“残留窒素が多いから窒素の施肥量を減じよう、”などと考えたら研究は進まない、 私たちは植物の生理を少し理学的に捉えて来たのである。

窒素を如何にうまく蛋白質に変え、光合成を良くし、代謝を進めて丈夫な作物として育てる事が出来るかどうか、ここが果菜栽培の最大のポイントだと思う。 私たちはこの部分はミネラル、特に微量要素と言われる元素が重要な働きをしていると考えてきた。

つい先日まで新聞や雑誌で“海水を汲み上げて圃場に撒いて栽培を試みたら、意外と美味しく上手に出来た”といったような記事を目にした。 またこれを実践している農家もあると聞いている。この話には海水が良いのではなく海水に含まれるミネラル分が良いと言う論理が抜けている。 このような事を続ければ圃場にナトリウム(Na)は蓄積され、何れその害は出てくる。

そして、植物を栽培するに当って、このような海水の微量なミネラル量では到底追いつかないというのが私たちの答えである。

 私たちはこの『植物体に於ける硝酸のアンモニア還元』を目指す為に
@pHの事を常に考え、土壌のpH・灌水時の用水のpHの影響
A微量要素はEDTAで良いのか、また最良の生育状態で微量要素はどれ位必要なのか
B硼素の重要性
C酵素のはたらき
 等、その他様々な事柄を学んで来た。その中には後述しているような項目すべてが微妙に絡んでくるのでよく理解をして頂きたい。

窒素の(土の中での変化と植物体内での)変化

石灰窒素 → シアナミド → 尿素 →→ アンモニア → 硝酸 → 植物が吸収(『植物体に於ける硝酸のアンモニア還元』へ進み)して、* 
CaCN     CNNH  HNCONH   NH     HNO

*(植物体内で)→亜硝酸 → 次亜硝酸 →  ヒドロキシルアミン → アンモニア → アミノ酸 → 蛋白質 と変化する。

 この分解過程でも分かるように、アンモニアや尿素は使用しないようにすること。

栽培期間中の植物はこの窒素成分を素早く要求している。従って、窒素分は直ぐ吸収できる硝酸態窒素で与える事。 尿素やアンモニアでは吸収するまでの過程に時間がかかり過ぎて間に合わないし、根を傷めて必ず障害が出る。 尿素やアンモニア態の窒素は元肥として与え、時間を掛けた分解を待てるときに使用する。

特に尿素はアンモニアガスが発生するのでハウスでは絶対使用しない。
(最近は尿素を栽培期間中に使用しているケースを多く見かける。この処方は出来上がりの果菜が苦くなる、その他負の要因が多いので絶対使わないこと。)

 皆さんが窒素を論ずるとき、“窒素を施用すると害がある”という論議の窒素はこのアンモニアのことを指していると言って良い。 また、硝酸態窒素が人体に害を及ぼすという考え方も多くなって来ている。 その野菜の窒素成分を少なくする対策として窒素の施用を控えようとする農家や研究者もあると聞く。特に研究者があるというのには驚きである。 このような残留硝酸態窒素の危険性についてはフランスの医学者J.リロンデル & J-L.リロンデルの共著書で“硝酸塩は本当に危険か(崩れた有害仮説と真実)” という本も越野正義訳農文協出版から発刊されているので、この本参考にして議論をして戴きたい。

 このようなことを取り上げて、現在のこの日本の台所を守るべく日本農業界は減窒素の方向に進んでいる訳である。 更に、聞くところによると、最近では硝酸態窒素を補給する硝酸アンモン(通称:硝安)が10袋(20Kg入り)以上は購入規制があるという。 危険物だからと言う理由らしい。つまり、その為に農家はわざわざ9袋の注文を日を変えて注文していると言う。日本農業の窒素に対する位置付けはこの程度の考えであると言う事実の証明だと思う。関係者にはより一層の研究をして頂きたいと念ずるのである。

 そこで、我々は昨年から水稲の栽培において硝酸態窒素を施用した実験栽培を開始した。水稲は昔から好アンモニア態窒素作物だといわれているものの、我々は この育苗の肥料成分に養液栽培に使用する園試処方の標準養液を使用した。根の張りも良く葉の大きさ、艶といい申し分のない良い状態である。 本田の窒素分としての元肥には硝安(30Kg/10a)を使用しているが状態は大変良い。

窒素肥料はそれを施さなかった場合の減収度と他の肥料を施さなかった場合の減収度を比較した場合、窒素の方に遥かにはっきりと表れる。 反面、入れすぎて過剰になった場合の減収度が多くなるのも窒素である。植物は窒素をどの要素よりも早く吸収する。 従って、その多少は生育に大きな変化を来たす、その事が他のどのような要素よりも施肥法が難しいとされる所以である。

窒素の飢餓現象

分解していない稲わらや籾穀などのような炭素率の大きい有機物を土に施すと一時的に窒素の飢餓状態を来たす。

例えば稲わらの炭素率は74、籾穀は72であり、その分解の理想とされる10になるには大量の窒素注 )−4が必要となる。 その土の中での窒素は発酵分解過程で必要なものと植物の生育過程に必要なものとの双方で必要となる。この双方の過程は大量の窒素を必要とするために 土の中に存在する窒素では一時的に不足する、つまり飢餓状態が生じることとなる。この状態を窒素の飢餓現象という。

従って、未発酵の有機物は、この飢餓状態と発酵の最終工程であるアンモニアの発生という、 植物栽培時における2重の不具合を迎える事となる。元肥としての有機物には必ず完熟したものを使用することが大事である。

注 )−4
炭素率が74の稲わら1000Kgの炭素は423Kg、窒素の成分は約5.7Kgである、 発酵に必要な炭素率10にするには36.6Kg(硝安なら107.6Kg)を追加する必要があり、そのほかにも生育のために20Kgほどが必要で、 この量の窒素を一度に追肥した場合には大過剰となる。つまり、稲わら単独のすき込みは有益になるとは言えず、 むしろ害となる公算のほうが大きい。従って、稲わらのような炭素率の大きいものは牛糞などにすき込んで、 圃場以外の場所で充分に発酵させたものを使う必要がある。


8) 肥料(燐酸)

 
項目
関連事項
掲載ページ
やるべき事
やってはいけない事
又は、好ましくない事
特   記
肥 料
(燐酸)
  (間違い)*燐酸を入れると・・・
  1.味が良くなる
  2.花では色が良くなる
      と言う誤った認識。
・左記の理由で燐酸を多く入れ
 る。その結果、
燐酸の過剰は他の金属と結合
 して難溶の金属となる。
・光合成のエネルギー源となる。
  ADP ⇔ ATP
・Pの出入でエネルギーが発
 生。


 土壌の分析を行った時、このリン酸(全リン酸 注 )−5 として分析)の項目はいつも異常なほど数値が高く表れる。
その標準値は50Kg/10aだが8倍以上の4〜500Kgは常に見かける。 リン酸の過剰は栽培している植物の葉を見るとその症状を見分けることができる。その姿は必ず暗緑色、俗に言う“ドス黒く”なっている。
  注 )−5 全リン酸=水溶性リン酸+く溶性リン酸

この異常に高く表れる数値の裏にはリン酸に対する誤った認識があることも農家との談話の中で察することができる。
その認識にはリン酸は味を良くする、また花では色合いが良くなるといったような認識である。 しかしながら、全く間違いであると完全否定するものでもない。 それはリン酸が不足すると植物代謝はうまく行われず弱々しい植物となるからである。

そのような意味から考えると正しいということになる。しかしながら、ここではもっと理学的に証明された、 つまり私たちが高校生物で学習したもので理解をしていただきたい。

リン酸の働き

 植物は代謝つまり生きていく為には様々な物質の生産をしたり、分解をしなければならない。 この時、その作用を行うにはエネルギーが必要となる。そのエネルギーの源になるのがリン酸であり、その主な働きである。

 植物体は養分を根や葉面から吸収して体内で化合物を合成し分解する。また成長の段階では様々な代謝を行っている。 その代謝は酵素の反応によって行われているのは言うまでもない。 植物のこのエネルギーはある種のリン酸化合物に一旦貯蔵されて必要なところに運ばれて利用される。 このとき特に重要な働きをする化合物がアデノシンと呼ばれる誘導体である。この誘導体にリン酸が結合する数により、
   アデノシン一リン酸(AMP=denosin ono hosphate)
   アデノシン二リン酸(ADP=denosin ouble hosphate)
   アデノシン三リン酸(ATP=denosin ri hosphate)    と呼ばれている。

植物体内に於けるブドウ糖から澱粉を合成する過程を考えてみると、まず糖は呼吸によって分解されて炭酸ガスと水になる。 このとき放出されるエネルギーの一部はリン酸2個を持つADPと無機のリン酸(1個)とから、リン酸3個を持ったATPが合成され、 このATPに一旦貯蔵されることとなる。他方、ATPはブドウ糖が複雑な過程を経て澱粉を合成する際エネルギーを放出する。 その時、リン酸1個を放出しADPとなる。

このように、リン酸(P)が出たり入ったりしてエネルギーは発せられているのである。 このようなリン酸とエネルギーの関係は人体の筋肉運動などのエネルギーにも同じことが言える。

以上述べたように、リン酸が花の色を良くしたり、果実の味を良くしたりと言う表現は理学書には1行たりとも出て来ない。 だけど何故か、皆さんはこの高価なリン酸肥料を下表で示したように、大変多く用いているのが良く分かる。

リン酸塩は1年間で50Kg/10aで充分である。

リン酸の過剰

土壌中の過剰のリン酸は不効率な吸収となる。 下の表は全リン酸の量に対して吸収が可能となる水溶性のリン酸がどの位の割合で存在するのか、 カーネーション栽培の土壌分析データーを示す

         表−1                                          分析者:米澤農業研究所
 
 p H 
NH−N
NO−N
CaO
MgO
KCl
Total
  唐 津
7.70
7.36
2.43
14.08
709.20
13.59
1.91
47.74
636.96
120.96
滋賀ー@
5.88
5.78
9.41
47.36
721.02
10.05
1.39
63.58
462.99
 49.39
滋賀ーA
4.50
4.13
6.69
31.35
487.58
15.96
3.27
39.06
260.96
 43.34
滋賀ーB
6.08
5.41
4.19
 5.45
341.59
18.91
5.53
 7.88
310.06
 46.37
   注) Pの項のTotalは全リン酸、 HOは水溶性リン酸、%は水溶性/全リン酸を示す。

ここで注目すべきは、分析値に表れる全リン酸の値は多ければ多いほど、 吸収される水溶性リン酸の値が少なくなるという現象をしっかり見て理解して頂きたい。

過剰のリン酸はどのような形で存在するのか?

リン酸過剰の拮抗現象として
加里・銅・亜鉛・マンガンの吸収率が激減する。

リン酸は
銅と化合して・・・・・・・・リン酸銅 Cu(PO
亜鉛と 〃  ・・・・・・・・リン酸亜鉛 Zn(PO ・・・・・水に不溶
鉄と   〃  ・・・・・・・・リン酸第二鉄 FePO   ・・・・・  〃
マンガン 〃 ・・・・・・・リン酸マンガン MnPO ・・・・・難溶
アルミニウム 〃 ・・・・リン酸アルミニウム AlPO ・・・水に不溶
石灰  〃  ・・・・・・・・リン酸三石灰 CaPO ・・・・・難溶

湛水中におけるリン酸の存在は
     (乾土では)             (湛水すると)
    リン酸第二鉄        →   リン酸第一鉄    +   遊離リン酸(水溶)
 FePO(難溶=無効態P)      Fe(PO(易溶)
   となってリン酸が遊離するため土壌は酸性化となり、吸収し易くなる。

有機物を使用した場合におけるリン酸の存在は
     (乾土では)                     (有機物投与で)
    リン酸第二鉄    +   有機物    →   有機酸Fe   +   PO
 FePO(難溶=無効態P)                          (遊離→有効態P)
   となり、リン酸が遊離するため土壌は酸性化となり、吸収し易くなる。
注)土壌に無機の金属のまま施肥しても、土壌中のリン酸と化合して無効態となる。


 9) 肥料(加里)

 
項目
関連事項
掲載ページ
やるべき事
やってはいけない事
又は、好ましくない事
特   記
肥 料
(加里)
  塩化加里
硝酸加里
硫酸加里 の使い分け。   
    根から吸った養分を送る為の水分の調整をする。

 加里(カリウム)は植物組織の構成要素とならず、細胞液中で単独のイオンとして作用している。つまり、窒素は蛋白質やアミノ酸の、 マグネシウムは葉緑素の構成因子となり、石灰はペクチンと結合して果肉となったり、細胞と細胞を結合させている。 加里が他の要素と大きく相違する点はそのような事柄である。それにも拘らず加里は肥料の3要素といわれ、重要な要素として扱われている。

加里は細胞内で水分調節の働きをしてその膨圧を調整し維持している。細胞の新陳代謝を良くするためにはこの膨圧を適度に保つ必要があり、 その為には加里濃度を充分に保つ必要がある。

加里は水分の調節をして細胞の膨圧を調整しているので、それが欠乏した場合には先端まで圧力が伝わらず、 その症状は細胞の先端が壊死した状態つまり先端が枯れ死した症状が見られる。


加里欠乏の写真
  写真−@ きうり        
きうりの加里欠乏
  写真−A きうり        
きうりの加里欠乏
 先端が枯れた部分( 印 )です。  葉の周縁の枯れと先細りの果。

  写真−B ねぎ        
ねぎの加里欠乏
  写真−C なす        
なすの加里欠乏
 先端が枯れた部分です。  葉の先端( 印 )の黄化。 また、先端部の縁( 印 )にも黄化が確認できる。これも加里欠乏の特長である。

  写真−D ぶどう         撮影日:’07年 7月23日
ぶどうの加里欠乏
  写真−E カーネーション    撮影日:’08年 3月18日
カーネーションの加里欠乏
 先端が黄色く枯れた部分が加里欠乏。  葉の先端の黄化。

 加里成分は通常N:P:Kの配合肥料で施肥することが多い。出来るなら単肥で与えるよう心がけて欲しい。 この問題点を配合肥料の常用したケースで検証してみると、 殆どの場合でリン酸が大過剰(全リン酸の分析値を参照)となっている事が理解できる。
単肥としての加里肥料には塩化加里、硝酸加里、硫酸加里がある。


   塩化加里(KCl)の使用ポイント

 塩素(Cl)は必須元素である。概ね15Kg/10a以上になると過剰障害となる。

灌水の際、井戸水や河川水だけを常用していると塩素が欠乏することがある。 その場合は塩化加里にて塩素を補給する必要がある。但し、水道水を使用した場合、塩素は殺菌(滅菌)剤として使われているから必然的に含有する。従って、欠乏を来たすことはない。 寧ろ過剰障害に配慮すべきである。

 過剰症状・・・葉の周縁が白化する。
         リン酸の欠乏症状。(拮抗作用による)
 欠乏症状・・・花などの首曲がり

また、水道水を使用した時、葉が薄く、巾の広い栽培物は葉が萎れることがある。これは障害ではないが、 その消毒に使用する次亜塩素酸カルシウム<CaCl(ClO)・HO>=通称カルキ又はさらし粉が水・養分の吸収を妨げている現象なので、このような場合は水道水をタンクに一夜貯め置きして塩素分を蒸散させると解決できる。


   硝酸加里(KNO)の使用ポイント

 硝酸根(NO)のNはアミノ酸や蛋白質の重要な部分を占める元素であり、 健全で美味しい作物を作る為には不可欠の要素である。それ故に肥料の3大要素として最重要視されているのは周知の通りである。
 私達は土耕栽培において有機物を取り入れる為、堆肥を使用することが多い。その必要量は大体3トン(乾物)〜6トン(湿物)である。

その際、例えば牛糞堆肥(窒素分1.8%、水分84.3%)3.000 〜 6.000Kg を使った場合ならアンモニア態や硝酸態の全窒素として約8.5Kg〜16.9Kgが補給された事になる。 これで窒素分は元々圃場に存在する窒素と合わせると充分過ぎるくらい投与された訳で、この場合窒素分を新たに補給すれば反って危険となる。

従って、このケースで加里を入れたい場合には塩素か硫酸根、即ち塩化加里または硫酸加里で補給すべきである。 但し、堆肥には加里分を4%つまり18.8Kg〜37.6Kgの加里を含んでいるから十分考慮すること。

他方、堆肥を使用しなかったり、使用量が少なかった場合もある。このケースでは作物に直ぐに吸収される窒素分が必要であり、 アンモニア態窒素ではなく硝酸態窒素で与える必要がある。高価ではあるが硝酸加里を使う必要がある。


   硫酸加里(KSO)の使用ポイント

 硫酸根の硫黄(S)は必須元素である。Sは通常、硫酸苦土や硫酸加里を使用しておけば欠乏を来たすことはない。 それ故、双方の肥料を施した時に必然的に投入されるため、さほど論議をされない元素だがアミノ酸やビタミンを作る際の重要な元素である。

  • 加里分の補給には硫酸加里を使用するのが賢明である。(安価であり、硫酸根の補給が出来て、加里成分が54.1%と多い)
  • 塩化加里は塩素の補給が必要なとき使用する。
  • 硝酸加里は高価である。

    作物に欠乏が出易い硫黄(S)の限界値
     全硫黄として ・・・・・ 20mg/乾土100g=20Kg/10a
                  (土壌20gに純水50gを加えて2000回以上の振とうした後No.5−A濾紙で濾過し、 その濾過液に対し硫黄分の
                   定量分析を行う)
     有効態硫黄 ・・・・・・ 0.3mg/乾土100g=300g/10a
                  (酢酸ナトリウム液による抽出法により分析する)


    10) 肥料(石灰)

  •  
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    やるべき事
    やってはいけない事
    又は、好ましくない事
    特   記
    10
    肥 料
    (石灰)
      (4)
     (27)
     (29)
     (30)
    ・硝酸石灰
      (N:11.8% Ca:23.6%)
    ・炭酸石灰
      (Ca:53.0%)
    ・炭酸苦土石灰
      ( Ca:53.0 Mg:10%)
    ・塩化石灰
      (Ca:38.3%)
    ・過燐酸石灰
      ( P:17% Ca:28.0%)
                 などを使う
    ×消石灰
     (高いpH、圃場固化)
    ×生石灰
     (高pH、熱を発する)
    △硫酸石灰
     (石膏=難溶。水を含むと固なくる。ギブス・ブロンズ像を作る時に使用)
    △有機石灰(難溶)
     
    ペクチンと反応し、果肉の基となる中層を形成。する
    実がしっかりとして、重たくなる。
     * 有機石灰とは
       牡蠣・貝殻(炭酸石灰分)。
     * 炭酸石灰とは
      太古の貝殻・サンゴの化石。


     わが国に於いて、医学界ではカルシウムという要素については比較的重要視されて論議されていると思う。 例えば、Caが欠乏すると骨粗しょう症になって骨折し易くなるとか、人体の細胞の間はコラーゲンという物質で結れ、 Caの働きはこのコラーゲンを丈夫にして癌の細胞が入り込めないようにするとされている。

    ねずみの実験ではCaを充分に与えて、そのねずみに癌細胞を移植しても癌が発生しなかったという報告もある。 また、Caは出血時の血液を凝固させ、また、ちょっとした事でいらいらすると言ったような神経刺激の調整にも影響しているとしている。 特に我々の成長期にはCa成分の多い小魚や煮干を頭から食べなさいとか良く言われたものである。 現在は検査方法が発達しており、欠乏の症状を感じれば医療機関で検査をして、欠乏気味の場合には医者が薬を処方してくれる。

     一方、農業界における石灰は一応認識はされているものの、その重要性に対する認識度は薄い。 窒素・リン酸・加里は3大要素として配合肥料などで常に投与しているものの、このカルシウム(Ca)について本当に大切な要素として意識している農家は少なく、 仮に投与しても全く不足気味となっている。そのために高度の栽培技術を持ちながら収量が伸びないと悩んでいる農家は少なくない。 また、この収量減の原因には、このCaの不足が大きく起因していると考えている農家は少ないようだ。

    ここに最近分析をした資料があるので参考にされたい。殆んどの農家で石灰欠乏が目立つ、話を聞けば石灰など与えた事がないという。その結果、石灰の数値(印部)は・・・・
       表−@  分  析  結  果  表                                 分析日 : 2008年 8月14日
    単位 mg/乾土100g(≒kg/10a)
     
    酸 度
    (pH)
    アンモニア
    (NH4-N)
    硝酸
    (NO3-N)
    全リン酸
    (P2O5)
    加里
    (K2O)
    石灰
    (CaO)
    苦土
    (MgO)
    可給態鉄
    (Fe)
    苺−S・T@
    5.3
    5.1
     5.0
    234.5
    161.3
    106.3
    81.6
    0.07
    苺−S・TA
    5.1
    4.0
    10.1
    257.0
    173.4
    100.7
    82.6
    0.08
    苺−T・K@
    4.9
    5.5
     1.9
    176.0
     28.9
    148.2
    62.7
    0.15
    苺−K・K@
    5.0
    4.7
     2.0
     97.0
      4.2
     72.4
     8.6
    0.14
    トマト-I・H@
    5.2
    4.9
     3.4
    141.0
     27.1
    134.3
    37.6
    0.29
    標準
    6.0〜6.2
    2〜3
    30
    50
    50
    320
    30
    2.7

    分析者 : 中隈水質土壌分析室    .


     最近ではこの業界も土壌分析をして土壌の管理をする事が多くなった。しかしながら、このCaの数値については残念ながら公定分析法を採用しておらず、 簡易分析法で行っているために数値が不正確で、分析値としては到底採用することが出来ない。 また、Ca分を追肥したとしても、消石灰を使った為に土壌PHを高めたり注)−@、土壌を硬くするような事が多く見受けられる。 同じように、苦土分が不要な場合でも苦土石灰などのような肥料を使用し、結果的に苦土過剰を来たした重たい土壌となり、 病気の発生率を高めているケースが多い。

    注)−@  消石灰 3g + pH6.38の井戸水1g → pH12.43の水  となる。

       植物と石灰

     植物に於けるカルシウムの存在は葉や茎に多く、種子や果実には少ない。

    石灰はペクチン酸と化合してペクチン酸石灰となり細胞と細胞の間に存在して、その細胞を接合し、 細胞の中に存在する液(原形質液)が外に漏れ出るのを防止する役目をしている。このペクチン酸石灰の事を 中葉または中層と呼んでいる。また、ペクチン酸は果実の熟成過程で重要な役割をしており、果実生長の初期には不溶性で、 成熟が進むと共に可溶性に変じ柔軟になる。

    石灰が欠乏すると中葉の形成は不充分となって、細胞と細胞の接合は緩み細胞の分裂を鈍化させ、 遂には根や新芽の成長点は破壊されて黄化し、次第に褐変して壊死してしまう。

    また、石灰は動物なら骨格(主成分はリン酸カルシウム)に相当し、例えば人間にそれが欠乏すれば腰が曲がったり骨折し易くなる。 他方、植物の稲の場合なら石灰が欠乏すると倒伏すると言った状態を来たす。このように動物と同様に植物にとっても、 この石灰の欠乏は致命的な状態を来たす事となるのである。

     トマトやキュウリ、西瓜のような果菜類の生成過程では多量の石灰を必要とする。この欠乏を回避するために石灰の葉面散布をするが、 その散布剤を溶く際、その液が白濁してはいけない。白濁するとその状態で葉に付着し光合成を鈍化さすので注意をする。 このようなケースを避ける為に溶け易く、安価で、ベタ付いて付着率の良い水溶性の塩化カルシウムを使うのが賢明である。

    また、塩素が害になると言う人もいるが塩素は植物にとって必要な元素であり、過去の経験では害もなく問題は全く発生していない。 但し、ブドウなどのようにブルームが表面に付いていないと商品価値が下がるものは果実が汚れたようになるので避けるようにする。

    石灰について詳しくは、“植物と土壌に於ける石灰と苦土について”   のページへ
    石灰とアルカリ性の関係は、“アルカリ性の原因”   のページへ
    カルシウム欠乏と対策は、“カルシウム欠乏と対策”   のページを参照下さい。


    11) 肥料(苦土)

     
    項目
    関連事項
    掲載ページ
    やるべき事
    やってはいけない事
    又は、好ましくない事
    特   記
    11
    肥 料
    (苦土)
      (4) ・炭酸苦土石灰
    ・塩化マグネシウム
    ・硫酸マグネシウム
             の使い分け
    (間違い)
    味が良くなると言う事で多肥する。結果、重たい土壌となり過剰障害が発生する
          → 脱塩に苦労
    葉緑体の核となる葉緑素を作
     る。
    ・炭水化物代謝や蛋白質の合
     成などの生理作用を促す酵素
     に深く関与している。


     苦土肥料は使い方を誤ると大変厄介な要素成分である。

    苦土の必要標準量は30Kg/10a、欠乏を来たす量は20Kg以下、過剰の極限量は40Kgである。 つまり、下表−@(土壌中の肥料成分の欠乏・標準・過剰・極限量)で示すように、上限・下限の差20Kgで栽培する必要がある。 しかも、Mgは過剰となった時、大量の水によって流亡させようとしてもなかなか流亡しない。(表−A灌水と肥料流亡率 )

       表−@                   土壌中の肥料成分の欠乏・標準・過剰・極限量
    単位 mg/乾土100g(≒kg/10a)
     
    酸 度
    (PH)
    アンモニア
    (NH4-N)
    硝酸
    (NO3-N)
    全リン酸
    (P2O5)
    加里
    (K2O)
    石灰
    (CaO)
    苦土
    (MgO)
    可給態鉄
    (Fe)
    欠乏
     
    1.0
    30
    5.0
    280
    20
     
    標準
    6.0〜6.2
    2〜3
    30
    50
    50
    320
    30
    2.7
    過剰
       
    4.2
    35
    58.2
    75.1
    380.8
    36
     
    極限量
      
    2〜3
    40
    60
    80
    400
    40
     

    水はけの良いベンチで、坪当たり5トンの水を掛けても8.16%しか流亡していない。普通の圃場なら殆んど抜けないと考えた方が良い。 このように大量の灌水をしても殆んど期待が出来ないのである。序でながら、これは加里肥料にも言える。しかし加里は5 〜 80Kgとなっている。 だから加里は少ない目にやっておけば良いと言うことになる。これに対して、Mgは非常に微量な感覚で投与しないと直ぐ過剰障害を来たす事となる。

    表−A  灌水と肥料流亡率                              分析者:米澤農業研究所
    単位mg/乾土100g(≒Kg/10a)
     分 析 日 PH
    (KCl)
    アンモニア
    (NH4-N)
    硝酸
    (NO3-N)
    全リン酸
    (P25)
    加里
    (K2O)
    石灰
    (CaO)
    苦土
    (MgO)
    53.01.07 A 5.78   9.41  47.36 721.02  63.58 462.99 49.39
    53.02.23 B 5.14   8.09  20.55 531.90  57.66 329.71 45.36
    流亡率(%)    14.02  56.61  26.23   9.31  28.79  8.16

    私は良くJAが各農家に元肥の指針を出しているのを見かけることがある。これによると、石灰分を補給したいのに苦土石灰200Kgとある。 この量を見て感じることは元肥としての石灰の量なら“丁度良いかな”と思われる。 しかし、苦土(苦土石灰のうちMgの成分が10%とした場合)の量として見た場合それは20Kg投与されることになるので、 このケースでは残留Mgも考えるなら炭酸石灰100Kgと苦土石灰100Kgに分けて投与するのが無難ではないか、つまり10Kgの投与が良いと思われる。 但し、苦土石灰5%分を使え、とは指定していない。この点も問題である。

     1作ほぼ完璧に収穫したときの苦土分の量を予測する。作物によっても多少の差異はあると思うが、苺は概ね 20 〜 30Kg/10aとなっている(苺収穫の記録を参照)、 硫酸苦土に換算すると ( 20 〜 30 Kg ÷ 16.4 % = )121.9 〜 182.9 Kg 、10%成分の苦土石灰なら( 30 Kg ÷ 10 % =)300Kgである。

    いちごを6〜7トン収穫する農家、またトマトの栽培試験データーの結果を見ても大体、上記で示した数字20〜30Kgになる。 但し、収穫量に比例して施肥量を加減をしていかないと結果的に過剰になったり、欠乏になったりするので注意をすること。
    しかしながら現状はというと、土壌分析の結果を何件か見てみると、やはり過剰になっている圃場が多い。

     “電気伝導度(EC)と施肥”の第1表と第2表の苦土の分析項目を見て頂きたい。 32点の分析全てが過剰であることが良く分かる。
    如何してこのような現状になったか? 

     考えられることは・・・・
    @ 苦土として用いるべく肥料成分は硫酸苦土という認識である。
    A 石灰資材は炭酸石灰という単一石灰肥料があるのに、苦土石灰・消石灰・硫酸石灰だという認識しかない。その為、石灰分の補給を
      する場合の資材は炭酸石灰ではなく苦土分含有の苦土石灰を使い、結果的に苦土分が入る。
    B 苦土分を用いると果実が美味しくなる、といった誤った認識のために多投してしまう。
           多分、このようなことが原因と考えられる。

    つまり、多く見受けられるケースとして、苦土と石灰を元肥にする場合には苦土分は硫酸苦土を用い、石灰は苦土石灰で投与してしまう。 これでは苦土分がダブって入ることになる。然も、石灰は1回当りの量が100〜200Kgと大量になるので当然過剰になる。 このような事は私たちが炭酸石灰を欲しくて、農協や業者に注文しても在庫が無く、なかなか入手できない。 その背景には、“石灰は苦土分を含まない炭酸カルシウムを施肥すると言う習慣がない”このような事ではないかと推察する次第である。

    葉の緑と苦土の働きについて

    葉緑素は
     a 型(緑 色)   C5572Mg
     b 型(黄緑色)  C5570Mg
         の化学式で示される通り、炭素55、水素72、酸素5、窒素4個の中にMgが1個含まれ、そのMgが核となって構成されている。

    葉緑素( クロロフィル:chlorophyll )
     ・ 植物や藻類、細菌に含まれる不可欠の緑色の色素で光合成に於いて中心的な役割を持つ。
    葉緑体( クロロプラスト:chloroplast )
     ・ 葉緑素を含む色素体で、光合成の全過程が行われる細胞の光合成器官である。高等植物の葉緑体は直径5μm、 厚さ2〜3μmの円
       盤状で、 細胞当り数十個含まれている。

      ★ 苦土が欠乏すれば、植物の葉はどうして黄化するのか?

      T.葉緑素の模式図−@
    どうして葉は黄化するのか?@

     そのT.どうして葉は黄化するのか?

     葉緑素にはその分子式でも分かる通り、Mg原子が核となりその固体を形成している。 Mgが欠乏すれば、葉緑素の構造は成り立たなくなり、その緑色は淡くなり、やがて黄色くなる。


      U.葉緑素の模式図−A
    どうして葉は黄化するのか?A

     そのU.どうして葉は黄化するのか?

     @ (石灰+苦土)+ペクチン酸 → 中層を形成している 
       → 細胞と細胞は中層で密着している → 細胞内液の流出を防止

     A (石灰+苦土)が欠乏した場合 → 中層の消滅する
       → 細胞内液が流出する → 葉緑体流出 → 葉は黄化する
      


     12) 微量要素
      
     
    項目
    関連事項
    掲載ページ
    やるべき事
    やってはいけない事
    又は、好ましくない事
    特   記
    12
    微量要素
      (5)   (39)
     (37)  (40)
     (38)  (42)
    有機酸微量要素を使う。 EDTAは使わない。
     (呼吸回路が阻害される)
    酵素を活性化し植物代謝を良くする。

     微量要素には2通りの種類があることを認識して欲しい。

    1類目はエチレン・ジアミン四酢酸(thyleneiaminetracetate  キレート鉄の場合の分子式:C1012NaFe・3HO)と呼ばれ、 略してEDTAと言っている。

    2類目はクエン酸鉄と呼ぶもので、これには鉄・銅・亜鉛・マンガン・モリブデン・(コバルト)の金属のほかホウ素を加え、 更にクエン酸などの有機酸を加えてキレート化合させたものである。いわゆる、有機酸微量要素と呼ばれるもので、 グリーンアップはここに属する。皆さんが肥料に糖蜜を加えたとか木酢液を加えたと言うのは、 つまりは有機酸を加えたことになり知らずのまま有機酸態の肥料を作っていたことになる。

    その昔、キレートは大変高価でとても農業では使えず、クエン酸鉄が主流だった。 しかし戦後EDTAが大量に生産されるようになって安価になり、また養液の中で酸化することもなく安定した形で存在できるとされており、農業の分野にも多く導入されるようになった。

     今から約30年位前になるが突然、私の所に水耕栽培の装置メーカーから電話があった。 その担当者が言うには“当社の設備を導入している農家から紹介を受けたのだが、御社の製造する微量要素を使うと元気になって調子が良いと言っている。 分けてくれませんか”と言う。私は“この微量要素は有機酸態ですよ”と言うと彼は“有機酸は病気になるのでいらない”と言って電話を一方的に切られてしまったのを記憶している。

    この有機酸は病気になりやすいという言葉の裏を考えてみる。先ずは、下の写真を見ていただきたい。同様の管理をしているものだが両方の苗に成長の差があることがお判りであろう。

       写真−@ とまと << 葉面散布のテスト >> 
    とまとの苗。左はEDTAの葉面散布、右は有機酸微量要素の葉面散布。
       写真−A とまと << 液肥に入れる微量要素のテスト >> 
    微量要素の比較テスト。左側(黄色印)がEDTA、右側(赤色印)は有機酸微量要素(グリーンアップ)を使用した
     左側は市販のEDTA主体の微量要素の葉面散布、右側はグリーンアップを使って葉面散布した。
    液肥には自家製造した養液栽培液肥(理論計算出来ている)と微量要素としてEDATを使用した。
    右側の苗は少し徒長気味で良い苗とは言えないが、葉面散布をしただけでも明らかに成長が早いのが判る。
     7月中旬の 液肥テストの写真。
    印 は大塚A液・B液を使い標準養液とし、EDTAを使用。
    印は園試処方にグリーンアップ(トン当たり200cc)を使用して比較テストする。
    液肥を最初に使用したのは7月5日。
    この写真は9日後の7月14日の写真。
    かなりの差が確認できる。しかも、 印のこの苗は初期不良として廃棄したものをテストに使用したものである。

       写真−B とまと << Aの近視 >>   
    とまとの苗。上部(黄印)はEDTAを使う。下部(赤印)は有機酸微量要素(グリーンアップ)を使用した。
       写真−C とまと << Aの定植直後 >>       
    赤の境界から左がグリーンアップを使用。右はEDTAを使用したものを定植。
     7月14日の写真の拡大写真。
    印の盛り上がった部分がグリーンアップと園試処方注>−@
    印はEDTAと自家処方注>−Aの液肥である。
     7月17日の定植直後の写真(赤のナイロンテープが境界)。
    12日間でこれだけの差が生じる。

    注)− @ 硝酸石灰950g・硝酸加里810g・硫酸苦土500g・リン酸1アンモニウム155g・グリーンアップ200cc/1トン当たり
         A 大塚ハウスS1号1500g・ハウス2号1000g

     上記の写真を見ると、 印の部分の苗はたっぷりと時間をかけて育った感じのする苗である。他方、有機酸微量要素を使った方の苗は成長が早いのが判る。 しかし、成長が早いと喜んでは居れない。その理由は、肥培管理がその成長に対して十分ではなく、何れの写真を見ても石灰欠乏が目立ち徒長が進んでいる点である。

    つまり、管理者にはこの速度の早い成長に対して的確な肥培管理が出来るかどうかと言う微妙な技量を求められる訳で、 その栄養とくに窒素やカルシウムがこのように不足しているのに気がつかず放置した場合、このような徒長現象を来たすのである。 この重要なシグナルである成長点の黄化と緑色が抜けている症状を見極め、施肥を行えばこの欠乏(ここではNとCa)を回避出来るのである。

    反対に、植物からのこの重要なシグナルを見逃して栄養を与えるタイミングを逸した場合、その植物は欠乏症を来たしてしまう。 そして、更に放置した場合にはいよいよ重大事となる。見る人によっては、この過程と症状を病気として見てしまうのであろう。この写真−Bの 印の部分と 印の部分を比較して見ると 印の部分の成長点は極端なCaの欠乏を来たしている。

    このシグナルを察知して、タイミング良く即効性の硝酸石灰などを用い、この症状を止めなければならないのである。 反対に、このタイミングを見逃して放置した場合、窒素が不足する為に蛋白質は合成されず、 そのうえ石灰も欠乏するから中層も形成されない事となる。 つまり、このようなケースにおける植物の姿は水だけで成長したような柔軟で、徒長した、 日持ちのしない弱々しい作物となるのである。

    このようなまま栽培を続ければ、何れ病気と言う状況に突入してしまうのではなかろうか。 この有機酸微量要素の利点を知らない方々は、このような欠乏状態が進行してやがては2次的に病巣が宿るこの過程を “有機酸微量要素を使かったがために病気となった”というその緒言なのではなかろうか?と察するのである。

    微量要素の概略は  “微量要素”          のページへ
       〃   効果は  “グリーンアップの効果”  のページへ
    有機酸微量要素は  “有機酸微量要素(グリーンアップ)”  のページへ
    微量要素と植物について知りたい方は  “微量要素と植物”  のページを参照下さい。


     13) 栽培環境

     
    項目
    関連事項
    掲載ページ
    やるべき事
    やってはいけない事
    又は、好ましくない事
    特   記
    13
    栽培環境
      (2)  <湿度>
    栽培環境湿度80%以上。
     <風速>
    風の流れ0.5 〜 1.5m/s
     <光条件>
    光飽和点までの光の量を確保する。
    過乾燥にしない。
    (病気多発)

    植物に風を直接当てない。
    (過乾燥の原因)

    湿度の上昇は作物の最適温度を押し上げる。
    光合成速度が速くなる。

    光量不足は節間が細長くなり、病弱となる。


     地球温暖化の影響か、大変な猛暑が続く。その上、ここ3〜4年前から温室に防虫ネットを張り巡らせていることが多く、 必要以上に室内温度を上げて作物を疲れさせているのを多く見かけるようになった。

     この防虫ネットの目的は施設栽培に於いて減農薬の推進を図るために害虫の侵入を防ぎ、 できるだけ殺虫剤などの農薬の使用量を制限しようとするものである。その為、出入り口や天窓そして側窓などの従来なら開口して換気をしてきた場所、 そのような所にネットを施した施設が大変多くなってきている。その為にハウス内は40℃を越す乾燥炉の状態である。このネットによる防虫対策は効果があるのかどうか と言う事については私個人としては非常に疑問を抱いているのであるが、ここでは、その換気対策と湿度対策などどのようにしたら良いのか、取り上げて考えてみたい。

    そのような温室の換気効率は当然の事ながら悪くなり、室内温度は上昇して作物の栽培にまで悪影響を及ぼすほど温度上昇を来たし、 苦慮している農家が大変増加してきている。この防虫ネットという問題には、私は大いに疑問を持っている訳だが、 何かもっとうまく減農薬を推進できないか、また何とか温度上昇に対して解決法はないものかどうか、方法を模索してみる。

    < 防虫ネットと薫煙剤 >
    @ その方法に対する疑問。このネットは本当に機能しているのか?
      細かいネットを張っているにも関わらず、結構多くの害虫が侵入している事実。
      このような害虫の侵入に対して防御出来ていない現状であるにもかかわらず、ネットを張り巡らせて生産効率を犠牲にしている。

    A 仮に害虫が侵入した場合の駆除法。
      殺虫剤は従来の散布剤(乳剤)を使用するのでなく、薫煙剤または薫蒸剤を使用する。
      この薫煙(蒸)剤は害虫を殺虫するのでなく、温室に侵入しないようにする。つまり、忌避、予防のために薫煙剤を使用する。
      殺虫の為の薫煙剤(DDVP)の使用量は
        300m3・・・・100g(1袋)が必要。(農薬要覧から)
        10aの温室(約4000m3)なら100gの袋を約14袋必要である。 予防なら3袋で良いと思われる。
        利点・・・・薫煙であるために野菜を洗浄すれば、農薬は簡単に洗い落とすことができる。人体に大変やさしい。
              準備に手間が掛からず処理が簡単。

      害虫の駆除は、害虫を一度温室に入れると、卵を産みつけてしまい、その殺虫は卵が孵化するたびに行わなければならない。
      従って、それが孵化するたびに薫煙をすることになるので金額がかかる。しかも一度殺虫に失敗すると最初の段階からやり
      直す必要がある。

    < 換気扇 >
     換気扇を運転している間、空気は常に移動している。葉の気孔は開いていても空気が動かない場合には、 葉面境界という膜が葉と空気の間に出来て、植物体内に炭酸ガスを取り入れる事ができない。そのために光合成量は落ちてくる。 換気扇にはそれを解決する機能があり、例えばぶどうでは色つきが良い、花でも鮮明な色に仕上がるといった様な声が聞かれる所以である。

    この夏場の暑さ対策には、やはり換気扇が必要と思われるし、利点も多い。この換気扇と細霧システムを紹介する。

    換気扇は夏場を越えようとすれば
       換気扇は30坪に1台が必要。
            300坪なら10台(羽根径1mにて)が必要となる。
       その他、換気扇には冷気を吸入する吸気口(電動シャッター・吸気面積1u)が必要となる。
       吸気口は換気扇の1.5〜2.0倍を設置する。つまり少なくとも
            300坪なら15台が必要となる。
       また、この換気扇と吸気口を連携して作動するのに専用の制御盤が必要である。

    ここで注意することは、温室内が暑いといって扇風機や最近流行のボルナルドファン(山本産業扱い)やエアービーム(フルタ製)・ マザーファン(NAVEC製)といったような物を導入しようとする人がいる。この種のファンは攪拌扇といわれるもので換気をするものでない。 つまり、暖かい空気をぐるぐる廻しても暑さの対策には効果はないのである。必ず換気扇を使用する。

     写真−@ 換気扇  撮影日:’09年 5月 9日
    天窓の下に取り付けた換気扇

     天窓の直下に取り付けた換気扇。室温が低いときは天窓だけで自然換気をする。 室温が上昇してきたら換気扇のスイッチが自動的に入り、天窓の強制換気が始まる。吸気は側面を巻き上げて行う。

    このやり方だと側面全体から吸気できるようにして、吸気のバランスを調整でき、温度むらを少なくする事が出来る。 吸気に使う電動式の吸気口が不要に成りコストも下がる。


    < 湿度と光合成の関係 >
     冒頭で 『 ハウス内は40℃を越す(本来なら)“蒸し風呂”と表現するところを、敢えて“乾燥炉” 』 と表現した。それは夏場の温室としては湿度が不足しているという意味である。 夏場に何故、細霧システムが必要かその根拠を説明する。次ぎの表を見て頂きたい、

      表−1 キウリによる光合成速度の検証
    葉 温
    相対湿度
    光合成速度
    備  考
    15℃
    60%
    60%
     
    80%
    75%
     
    25℃
    60%
    75%
    湿度60%なら15℃より優るので、25℃の方が適温
    80%
    85%
     
    35℃
    60%
    78%
     
    80%
    86%
    35℃の時、湿度を80%にすれば光合成は更に進む
                                              『 風と光合成 』矢吹萬壽著 農文協 から


     光合成はその化学変化式の通り、炭酸ガスと水と光エネルギーの合成変化である。にも関わらず、 農家は果菜を美味しく作るため、その糖度だけを上昇さす事に懸命になっている。その為の手段として、その糖分を濃縮するために水を与えないか、 与えてもその量は最小限にとどめて栽培しようとしている。(実際に美味しくするには窒素を還元変化させてアミノ酸の量を増やす必要があるのだが・・・)。 また、その他与えない理由として湿度を高くした場合、病気の発生率が高くなるという間違った概念に基づいていることも大きな部分を占めている。

    光合成の化学変化式は、 炭酸ガス + 水  光 > 炭水化物である。
    化学反応式は 6CO12H  葉緑素 + 太陽エネルギー( 686Kcal)>12 + 6O↑ + 6H↑ と表す。

     この変化には水が大きく作用していることを忘れてはいけない。その為には根から十分に水分が取り込めるよう、 土壌には適度の湿度が必要である。また、この水分は炭酸ガスや酸素・水分の出入り口である気孔の開閉の調整も行っている。 植物体内に水分が十分にあればその膨圧は高まり、気孔の開閉部は外側に湾曲して気孔は開く。反対に体内に水分が不足してくると膨圧は低下し、気孔は閉じる。 植物はその動作を水分の調整で行っているのである。

     水分が不足した場合、植物は萎れる。萎れた植物は蒸散を止めるため気孔を閉じてしまう。結果、炭酸ガスも吸収できない。 ここで光合成速度は極端に減じていく、という悪循環に陥って行く。 表―1で特に注意すべきところは葉温度を15℃、25℃、35℃としている。植物の雰囲気温度ではないことを強調しておく。 重要な事は室温が40℃であってもこの葉温が低いことが重要なのである。

    その為に、その温室内などの雰囲気湿度は高く維持しておく必要がある。また、緊急時に葉面散布をするのは蒸散を抑えると同時に、 乾ききった植物体内に気孔から水を取り込ませ、更に濡れた葉表面の水滴がその蒸発時に熱を奪い去る現象で葉温が降下することを期待した作業である。

     この表ー1は温室の中の湿度を60%と80%に設定して、葉の表面温度を変化させた時(温室の温度が高くなった時)、 光合成速度つまり植物の疲れ具合はどのように変化するのか?という事を検証した画期的なデーターである。 この表を見る限り、例えば冬場なら室温を15℃に設定した上で、湿度を80%にしておけば70%の光合成速度を得られるということである。

    更に高いレベルの光合成速度を求めるなら設定温度を25℃にすれば良いということである。 これは、近年のようにオイルの単価が高いなど様々な要件を多面的に検討して最適温を決定すれば費用対効果も大きく期待できるのではないかと言うことである。 他方夏場なら、35℃・湿度60%では78%の光合成速度であるが、その湿度を80%まで加湿した場合、 適温25℃の時と同様に活性し出す。

    つまり、この表を参考にして四季折々の温度設定をするようにすれば大幅な省エネ効果が得られるということでもある。 同様な考え方は、外気温度が上昇してきた場合の処置として相対湿度を上昇さすことによって疲れを大幅に回避できるという事でもある。

       
    『 夏場の植物は高温のため蒸散作用も最大となる。 この時の植物の状態は根の水分供給だけでは不足し、大変な過乾燥状態にさらされる。 このような場合には、葉面散布を繰り返して、蒸散を抑えながら葉面からも植物に水分を与える必要がある。 』

    < 風と風速 >

     植物の葉面には気孔という、人間に例えれば口に相当するものがある。植物はこの気孔から水分を発(蒸散作用)する。 この蒸散作用で植物は体液(細胞液)の浸透圧を高め、 その力で根から水分とその水分に含まれる栄養素の補給をする(その浸透圧は1.2〜1.5気圧が最適と言われている)。

    同時に、この気孔は二酸化炭素を取入れたりする所でもある、植物は体内に取込んだ二酸化炭素と水と葉で受けた光エネルギーによって、 糖と言われる物質(炭水化物)の生産を行いながら酸素を放出している。そして、その糖を分解し合成を繰り返しながら呼吸をしている。

    これは“クエン酸回路”といわれる植物の代謝である。この代謝は光の強度や温度によっても変わるもので、 光の量が強なればそれに比例して二酸化炭素の量を増やしてやる必要がある。この気孔はうまい具合に出来ていて、 その光の強度に応じて気孔の開閉面積は調節され、その吸引量を調節するようになっている。

    ところが、人は自力で酸素を吸引する事が出来るが、植物は自力で吸引する事が出来ない、そこで風の力を借ることになる。 葉と空気の間には僅かだが風が吹くと摩擦抵抗が生じている(摩擦によって生じる空気の滞留層、この層が葉を包んでいる=葉面境界層という)、 無風の場合若しくは、無風に近い状態では気孔は開いていても、植物は二酸化炭素を取り入れることは出来ない、 人ならば手で口を塞がれ窒息の状態である。

    その問題点を解決する風速が0.2〜1.0m/秒という訳なのである。これ以上の風速になると植物は過乾燥になり、 反って生育不良に陥る。

    更に、詳しいことを知りたい人は『風と光合成』矢吹萬壽著 農文協出版などがあります。

    図−A『カーネーションハウス栽培における炭酸ガス濃度の変化』
    この表から察すれば、夜明け前から炭酸ガスをたっぷり蓄えて、
日の出と同時にその供給をを開始すれことがポイントのようです。
                                      (Kenneth)

    大気の炭酸ガスの濃度は350ppm前後といわれている。夜明けと同時に呼吸が盛んになっているのを示す。 このハウス内のCO2濃度はAM8時位から減少し始め、 PM2時で最低濃度120ppm位となっている。


    < 光条件 >

     ハウスなどの施設で作物を栽培している農家に行くとハウス内が暑いから、 また昼間作物が萎れるからなどとの理由で寒冷紗や石灰剤の塗布などで日覆をしているケースを良く見かける。 これは完全な光強度の無視であって、例えば、トマトを栽培しているのに光強度はみつばの栽培程度しか無いとする。これではトマトは徒長して病弱なものとなる。

    作物が萎れると言うのは根本的に土作りから見直しをすべきだが、暑いと言う理由で日覆をするのは良くない。 日覆をする場合は作物に影響しないようにして行う。それが『光の飽和点と補償点』という理論である。これは我々は高校生物の教科で習っている。

    日本の夏の光強度は10〜12万Luxとされている。また冬では1/10に弱まり1〜2月の高知・静岡で3〜5万Lux、 関東圏では1.5Lux位である。他方、作物の必要な光の強度は、トマトを例にとると7万Luxといわれている。 そこで、この夏場の(10〜12万)から7万を引くと3〜5万Luxが余分のエネルギーとなる。

    このエネルギーはただ単に熱を発しているだけの余分なエネルギーと考えても良く、遮光率を定めて日覆をしても良い。 ここでは30〜40%カットの寒冷紗を使用する。処が、曇天の具合や太陽の傾きによって強度は変化してくる訳であるから、 展張したままではなく、逐次その強度に合わせて調整をする必要がある。

      表−6   ハウス作物の光飽和点
    Klux 作   物   名
    80 西 瓜 さといも    
    70 とまと      
    55 か ぶ メロン きうり  
    45 かぼちゃ セルリー    
    35 はくさい かんらん な す えんどう
    30 ピーマン      
    25 いんげん      
    20 ふ き 茗 荷 みつば いちご
      表−7   ハウス作物の光補償点
    Klux 作   物    名  
    4.0 か ぶ 西 瓜 さといも  
    3.5        
    3.0 とまと      
    2.5        
    2.0 かんらん なす きうり えんどう
    セルリー ふき はくさい レタス
    1.5 かぼちゃ ピーマン いんげん  
    1.0 ふ き 茗 荷 みつば  


    < 光合成と環境条件 >

     光合成は、光エネルギーをとり入れて行う化学反応であるから、光の強弱、温度の高低、二酸化酸素の濃度によって影響される。

    光合成と光の強さ,
     常温(10〜30℃)のもとで、二酸化炭素が十分にあるとき、緑色植物に暗黒の状態から次第に光を強く当てていくと、 暗黒では二酸化炭素が放出されているが、光が強くなるに従って放出量は減少して、a点でゼロになってしまう。 それ以後は、吸収の方が比例的に多くなって行く。そのときの状態をグラフに表したのが図−Cの点線(A)の曲線である。

    緑色植物は光合成とともに、常に呼吸を行っている。直線の(B)は光の強さを示している。a点は光合成による二酸化炭素の呼吸量と、 呼吸による放出量が一致する点で、このときの光の強さを補償点という。 b点では光合成量が最大に達していて、それ以上の増加は見られない。このときの光の強さを光飽和点という。

     本来、この植物の光合成による二酸化炭素の吸収量のグラフは、曲線(C)になる筈である。 しかし、直線(B)の呼吸(暗黒の状態ではCOを放出)があるために結果としての曲線(A)つまり図−Bとなるのである。

          図−B 光合成速度と呼吸速度-1                    図−C 光合成速度と呼吸速度-2
    光合成速度と呼吸速度
    光合成速度と呼吸速度


     14) 全体的な管理   
     
    項目
    関連事項
    掲載ページ
    やるべき事
    やってはいけない事
    又は、好ましくない事
    特   記
    14
    全体的
    な管理
      (2)  土壌分析による管理
     要素の欠乏を出さない。
     (相助効果)
     肥料を入れすぎない。
       ・浸透圧に悪影響
       ・拮抗作用の懸念
     トベネックの樽の法則


     全体的な管理の中で先ず、優先的にすべき事は“土作りである”。これは経験に基づいてやろうと思っても中々やれるものではない。

    それを解決する方法が土壌分析である。これなら分析した数値のデーターに基づいて、不足した分だけを施肥していくわけだから間違いがない。 しかしながら、分析の方法土壌サンプルの採取法が間違っていれば、正確な数値は得られない。 このような不正確な方法をとれば反って危険な処置になってしまう。

     その失敗の1例を(非常に本意ではないが)参考の為にお披露目をする。そのときの土壌分析結果(サンプル@が対象物)は・・・・・

       表−@ 分  析  結  果  表                                  分析日 : 1989年 4月30日
    単位 mg/乾土100g(≒kg/10a)
     
    酸 度
    (PH)
    アンモニア
    (NH4-N)
    硝酸
    (NO3-N)
    全リン酸
    (P2O5)
    加里
    (K2O)
    石灰
    (CaO)
    苦土
    (MgO)
    可給態鉄
    (Fe)
    標準
    6.0〜6.2
    2〜3
    30
    50
    50
    320
    30
    2.7
    サンプル@
    Ca大欠乏
    6.7
    5.07
    12.0
    307.22
    42.23
    171.16
    22.17
    0.48
    @の不足量
    Caを追肥
    ---
    4.76
     4.76
     0.00
    8.1
    150.00
     8.00
    ---
    予備サンプル
    再分析値
    ---
    ---
    ---
    ---
    ---
    378.81
    50.40
    ---
    実際の修正値
    Ca大過剰
    ---
    9.83
    16.76
    307.22
    50.33
    528.81
    58.40
    ---

    分析者 : 米沢農業研究所    .

     石灰の極限量の400Kgを大きく超え、528.81Kgとなった途端に昼間萎凋するようになった例である。

    土壌分析の結果表では、石灰の分析値は171.16Kgであった。不足量は標準値の320Kgをマイナスすれば約150Kgとなる。 そこで、その量を追肥した訳だが、どうも生育がおかしいという事で調査し、失敗に気が付く。 予め保存しておいた予備サンプル注)−1で再分析した処378.81Kgと検出したのである。“しまった、追肥が多すぎた”つまり、石灰量が530Kgとなったわけである。昼間萎凋する筈である。
    注)−1 検体物としての土壌は、今回のように再分析する事があるので予め多く乾燥して二つに分け、一つを分析に、もう一つは一定期間保存をする。

      写真−@ 石灰過剰の為に昼間萎凋
    石灰過剰の為に昼間萎凋
      写真−A 石灰過剰の為に昼間萎凋
    石灰過剰の為に昼間萎凋

    この失敗の原因を実は私は少し予知していた。それは次の表に示す通りである。石灰と硝酸態窒素を特に見て頂きたい・・・

       表−A 分析結果表(pHから見た石灰量)                            分析日 : 1989年 4月30日他
    単位 mg/乾土100g(≒kg/10a)
     
    酸 度
    (PH)
    アンモニア
    (NH4-N)
    硝酸
    (NO3-N)
    全リン酸
    (P2O5)
    加里
    (K2O)
    石灰
    (CaO)
    苦土
    (MgO)
    可給態鉄
    (Fe)
    標準値
    6.20
    1
    20.00
    50.00
    50.00
    320.00
    30
    2.70
    サンプルB
    6.66
    7.79
    21.01
    277.77
    67.21
    373.20
    66.53
    0.36
    再分析C
    6.70
    5.07
    12.00
    307.22
    42.23
    378.81
    50.40
    0.48
    サンプル@
    6.70
    5.07
    12.00
    307.22
    42.23
    171.16
    22.17
    0.48
    サンプルD
    7.02
    1.29
     9.80
    451.77
    58.29
    371.79
    73.58
    0
    サンプルE
    7.07
    1.22
    14.54
    334.03
    56.18
    373.19
    45.36
    0
    サンプルA
    7.10
    4.41
    22.68
    159.52
    77.42
    179.58
    18.14
    0.60

    分析者 : 米沢農業研究所    .

     表−AはpHから検討した石灰の量である。この表によると、問題のサンプル@はpHに対し、石灰量の量が少なすぎる。 過去の分析表で類似参考にできるものを列記したが、これと対比するとpHが6.7なら350〜380Kgが妥当な所。サンプルAは同時に分析した土壌(この分も少ない値である)。

       表−B  分析結果表(石灰から見たpH)                            分析日 : 1989年 4月30日他
    単位 mg/乾土100g(≒kg/10a)
     
    酸 度
    (PH)
    アンモニア
    (NH4-N)
    硝酸
    (NO3-N)
    全リン酸
    (P2O5)
    加里
    (K2O)
    石灰
    (CaO)
    苦土
    (MgO)
    可給態鉄
    (Fe)
    標準値
    6.20
    1
    20.00
    50.00
    50.00
    320.00
    30
    2.70
    サンプルE
    4.28
    2.59
    1.13
    59.14
    15.24
    157.13
    44.35
    0.56
    サンプル@
    6.70
    5.07
    12.00
    307.22
    42.23
    171.16
    22.17
    0.48
    サンプルB
    5.51
    5.66
    6.54
    236.40
    41.86
    176.78
    42.34
    0.14
    サンプルA
    7.10
    4.41
    22.68
    159.52
    77.42
    179.58
    18.14
    0.60
    サンプルD
    5.95
    1.03
     3.20
    67.90
    38.70
    196.42
    26.20
    0.24
    C
    5.71
    1.65
    1.46
    223.42
    39.88
    202.73
    27.72
    0.17

    分析者 : 米沢農業研究所    .

    表−Bは石灰量から検討したpHである。問題のサンプル@は石灰量の割合に対し、pHが高すぎる。 過去の分析表で類似参考にできるものを列記したが、この資料と対比すると石灰量が171.16KgならpHは5.2前後が妥当な所。 サンプルAはpHをさげる硝酸が22.68Kgと多いからpH5.0位が妥当なPHだろう。

        参考) 土壌pHの矯正をする場合に、その石灰をどの位施用すべきかを決定するのに緩衝曲線図を用いる方法がある。
          この図は一定量の土壌に種々の量のCaを加え、その時のpHを計測して曲線図にしたものである。

    『緩衝曲線図』

          その図によると炭酸カルシウムの場合pH6.5のとき、10gに対してその係数は0.005である。従って、

           0.005g × 300,000,000/10 × 100/50 = 300,000g = 300kg という式が成り立つ

         つまり、30cmの表土に対してその仮比重を1.0とした場合の土の重量は300,000,000g(300トン)となり、そこに炭酸
         カルシウムか、または炭酸苦土石灰(100/50=成分50%)を300kg加えればpHが6.5となる。そこにpHを下げる要因
         の硝酸態窒素が加わるのでpHは0.3〜0.5下降し6.0〜6.2になる。
         逆に上げる要因のアンモニア態窒素が加わればpHは上昇して6.7〜6.9位にはなるだろう。
         このようにして私たちが用いている分析表の石灰の標準量は300〜340kg/10a(≒乾土100g)としているのである。

      上記の例のように、いかに正確に土壌サンプルを採取し、また分析法も簡易法ではなく、 公定分析法による精密検定が最重要課題になるといったことがお分かりと思う。

    下に、土壌中の肥料成分の欠乏・標準・過剰・極限量を示す。最近はイオン交換容量とか、 Ca/Mg比とかMg/K比とか是正する項目があるようだが、下記に示す分析項目で十分である。またECについては有機物の投入量によっても、 またNaCl等によっても大きく変化するので、参考程度に考えておけば良い。


    濃度障害と根と浸透圧

     上記のように、過度に肥料成分が入ってしまうと蒸散の多い昼間は写真−@、Aのように萎凋してしまう。 これは土壌の肥料濃度が高くなり、それに比例して根からの水分の吸収が悪くなるからだ。この症状だけを見ると水分不足で萎れていると思うだろう。 しかし違う、このような時に水を与えれば余計に肥料分は溶解し、さらに土壌の濃度は高くなる。

    このような場合の対処法は、10時と14時出来るなら15時くらいにもう一度、葉面散布をする。それで葉から蒸散で失われる水分を防止する。 そして同時に、葉面から水分を供給するわけである。そのようなことを繰り返しながら肥料分が順次減少して行くのを待つのである。 その時、作物は生長しているわけだから当然のこと養分も必要になる。

    特に、このようなケースではCaと微量要素が欠乏してくる。葉面散布の際、肥料を溶解して同時に散布すると良い。

             根と浸透圧

           肥料は浸透圧が2.2気圧以上となると必ず濃度障害を来し、0.5気圧以下となると肥料としての機能を果たさない。
           必ず、1.2気圧となるよう浸透圧の計算をしながら肥料は溶解する事。

    下に示す表は、我々が45年も前から標準土壌として使っているものである。このデーターで今も何ら問題がないので参考にされたい。

       表−C                   土壌中の肥料成分の欠乏・標準・過剰・極限量
    単位 mg/乾土100g(≒kg/10a)
     
    酸 度
    (PH)
    アンモニア
    (NH4-N)
    硝酸
    (NO3-N)
    全リン酸
    (P2O5)
    加里
    (K2O)
    石灰
    (CaO)
    苦土
    (MgO)
    可給態鉄
    (Fe)
    欠乏
     
    1.0
    30
    5.0
    280
    20
     
    標準
    6.0〜6.2
    2〜3
    30
    50
    50
    320
    30
    2.7
    過剰
       
    4.2
    35
    58.2
    75.1
    380.8
    36
     
    極限量
      
    2〜3
    40
    60
    80
    400
    40
     


    肥料成分の土壌中に於ける拮抗と相助現象について

    1)拮抗とは

     拮抗を辞書で引くと、力・勢力がほぼ等しく、互いに張り合っている事とある。農業の業界では、ニアンスが少し違うようである。
     私達の場合は、例えば圃場に石灰が過分に存在した場合、苦土や加里などの要素が著しく阻害されると解釈されている。しかしなが
     ら、現象がはっきりと症状として現れる場合と、それほど現れない場合があるのも注意すべきところである。

    拮抗性を示す要素
    カリウム(K) ・カルシウム(Ca) ・マグネシウム(Mg)      
    カルシウム(Ca) ・マグネシウム(Mg) ・カリウム(K) ・ホウ素(B) ・亜鉛(Zn) ・鉄(Fe)
    マグネシウム(Mg) ・カリウム(K) ・ホウ素(B)      
    アンモニウム(NH ・カルシウム(Ca) ・カリウム(K) ・モリブデン(Mo)    
    リン酸(P) ・カリウム(K) ・銅(Cu) ・亜鉛(Zn) ・鉄(Fe)  
    塩素(Cl) ・リン酸(P)        
    鉄(Fe) ・マンガン(Mn) ・アンモニウム(NH ・硫酸(SO    
    銅(Cu) ・鉄(Fe)        

    2)相助とは

     拮抗とは全く逆の現象で、相乗現象とも言う。このことは栽培期間中、もっとも歓迎すべき事柄であり、施肥方法もこの現象を最大限に
     利用できるよう努力し、また苦労もするわけである。

    相助性を示す要素
    カリウム(K) ・ホウ素(B) ・鉄(Fe)      
    カルシウム(Ca) ・カリウム(K)        
    マグネシウム(Mg) ・カルシウム(Ca) ・ケイ素(Si)      
    窒素(N) ・マグネシウム(Mg)        
    リン酸(P) ・モリブデン(Mo)        
    ケイ素(Si) ・マグネシウム(Mg)        

    近代の農芸化学の先駆者リービッヒが唱えた最少律の法則、その事柄を見事に桶を以って表現したのが、 トベーネックで“桶の法則”と呼ばれ、施肥技術の原点と言われる。

     図−B トベネックの最小律
          (桶の法則)
    この図は、高い収量を得るには、各栄養素が互いに均衡の取れた状態であるべきということをうまく表現している。

    水を収穫量にたとえ、桶の側板を各要素や栽培環境として、その高さが土壌に含まれる要素量や環境条件としている。 ここでは、苦土と窒素が欠乏した為に肥効を悪くして、特に少ない苦土のレベルの収量(減収)となったという状況を表している。


    以上、長い資料になってしまった。まだ、書き足りないところがかなりあるが、その部分は各ページにも詳しく掲載しているので、 その部分を参考にして頂きたい。以上列記した事柄に注意して普段の農作業に取り組めば必ず、豊穣が期待できるはずである。


     = 完 = 




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