いちご栽培の肥培管理記録(Ta・K農園)




 Ta・K農園 が昭和55年9月から翌年6月まで間、 記録してきたイチゴ栽培の肥培管理手法とそのデータを公開します。

この記録によると、毎月大量の肥料を投入しています。2月以降の管理が本人不在の為出来ていません。この期間が完全に出来ていれば、更に良い結果になっていたと予想されます。

また、このように大量の肥料投入は完全な土壌分析(公定法と毎月一回3ヶ所の分析機関での誤差比較)の元で行える業であり、最近普及してきた簡易分析などの資料を元にしたものでは、過大施肥の恐れがありますから絶対に行わないでください。
その比較@) (その比較A

1.栽培場所  香川県内の東部地区に位置する某農協にて
   農家名   : T・K農園
   栽培品種  : 宝交早生

2.生産量  期間12月中旬 〜 6月上旬

氏  名
合計出荷量(Kg)
内加工向け出荷量(Kg)
栽培面積u
10a当の収量
その他
To・N農園
7.271
1.625
1.948
3.733
写真−B・C
Ta・K農園
12.196
1.624
2.345
5.200
写真−@・A
Sa・O農園
10.776
1.165
1.950
5.526
写真−J・K
Yo・M農園
7.446
1.794
1.430
5.206
写真−F・G
To・Y農園
8.848
1.267
1.600
5.530
   
Yu・M農園
8.474
2.262
1.550
5.467
   
総合計
55.011Kg
9.737Kg
10.823u
5.082Kg
  

3.肥培管理
 『土壌分析(公定分析法)により減肥成分を追肥』して管理する。

   分析日とその回数は:@S55年9月2日  A10月25日  B11月11日  C12月12日  DS56年1月13日  E3月9日 の計6回である。

4.肥培管理表

@ 昭和55年 9月 2日 << 分析者:米澤農業研究所 >>
単位mg/乾土100g(≒Kg/10a)
 分 析 日
肥料投入量
酸度
(PH)
アンモニア
(NH4-N)
硝酸
(NO3-N)
全リン酸
(P25)
加里
(K2O)
石灰
(CaO)
苦土
(MgO)
可給態鉄
(Fe)
追 肥
S.55.09.02
5.95
  1.25
  0.20
189.71
 15.64
204.84
 26.21
 0.00
  
180Kg
 55Kg
270Kg
 70Kg
 20g
  
 
 
 
 
12.60




  
 
 
 
 
12.60




12.60
27.50





135.00





14.00





2.70
イチゴ配合
硫酸加里
炭酸石灰
塩化苦土
グリーンアップ
修正値
  
13.85
0.20
202.31
55.74
339.84
40.21
2.70
  
標準
6.0〜6.2
2〜3
30
50
50
320
30
2.7
  

       
 昭和55年 9月21日
定植
         

    
 昭和55年 9月28日 << 分析者:米澤農業研究所 >>
   
  
アンモニア
(NH4-N)
硝酸
(NO3-N)
全リン酸
(P25)
加里
(K2O)
石灰
(CaO)
苦土
(MgO)
可給態鉄
(Fe)
追 肥
潅水
  
0.85
0.85
  
  
  
  
  
硝安5Kg


A 昭和55年10月25日 << 分析者:米澤農業研究所 >>
単位mg/乾土100g(≒Kg/10a)
 分 析 日
肥料投入量
酸度
(PH)
アンモニア
(NH4-N)
硝酸
(NO3-N)
全リン酸
(P25)
加里
(K2O)
石灰
(CaO)
苦土
(MgO)
可給態鉄
(Fe)
追 肥
S.55.10.25
5.77
3.60
1.40
99.29
32.19
211.85
32.26
0.00
  
 40Kg
 10Kg
 53Kg
 25Kg
185Kg
 30g
  
 
 
 
 
 
2.80
1.70
0.42




1.70
7.79



2.80





2.80


12.50




14.04

92.50



0.30








4.05
イチゴ配合
硝安
硝酸石灰
硫酸加里
炭酸石灰
グリーンアップ
修正値
  
8.10
10.89
102.09
47.49
318.39
32.56
4.05
  
標準
6.0〜6.2
2〜3
30
50
50
320
30
2.7
  

    
B 昭和55年11月11日 << 分析者:米澤農業研究所 >>
単位mg/乾土100g(≒Kg/10a)
 分 析 日
肥料投入量
酸度
(PH)
アンモニア
(NH4-N)
硝酸
(NO3-N)
全リン酸
(P25)
加里
(K2O)
石灰
(CaO)
苦土
(MgO)
可給態鉄
(Fe)
追 肥
S.55.11.11
6.38
1.58
2.66
184.39
30.23
241.31
28.08
0.09
  
 20Kg
 40Kg
 40Kg
 40Kg
200Kg
 30g
  
 
 
 
 
 
3.40
0.32




3.40
5.88











20.00




 10.60

 20.00
100.00


0.20

4.00







4.05
硝安
硝酸石灰
硫酸加里
苦土石灰
炭酸石灰
グリーンアップ
修正値
  
5.30
11.94
184.39
50.23
371.91
32.28
4.14
  
標準
6.0〜6.2
2〜3
30
50
50
320
30
2.7
  


C 昭和55年12月12日 << 分析者:米澤農業研究所 >>
単位mg/乾土100g(≒Kg/10a)
 分 析 日
肥料投入量
酸度
(PH)
アンモニア
(NH4-N)
硝酸
(NO3-N)
全リン酸
(P25)
加里
(K2O)
石灰
(CaO)
苦土
(MgO)
可給態鉄
(Fe)
追 肥
S.55.12.12
6.55
2.01
 1.46
160.75
45.62
244.12
32.25
0.00
  
 15Kg
 80Kg
 20Kg
100Kg
 20g




2.55
0.64



 2.55
11.76
 2.78









 9.32



21.2

50.0


0.4







2.7
硝安
硝酸石灰
硝酸加里
炭酸石灰
グリーンアップ
修正値
  
5.20
18.55
160.75
54.94
270.32
32.65
2.70
  
標準
6.0〜6.2
2〜3
30
50
50
320
30
2.7
  


D 昭和56年 1月13日 << 分析者:米澤農業研究所 >>
単位mg/乾土100g(≒Kg/10a)
 分 析 日
肥料投入量
酸度
(PH)
アンモニア
(NH4-N)
硝酸
(NO3-N)
全リン酸
(P25)
加里
(K2O)
石灰
(CaO)
苦土
(MgO)
可給態鉄
(Fe)
追 肥
S.56. 1.13
6.63
3.24
 4.00
184.39
40.16
256.74
37.29
0.00
  
 10Kg
 50Kg
 30Kg


1.70
0.44

 1.70
 8.08
 4.17




13.98

 14.57


 0.27



硝安
硝酸石灰
硝酸加里
修正値
  
5.38
17.95
184.39
54.14
272.31
37.56
  
  
標準
6.0〜6.2
2〜3
30
50
50
320
30
2.7
  


E 昭和56年 3月 9日 << 分析者:米澤農業研究所 >>
単位mg/乾土100g(≒Kg/10a)
 分 析 日
肥料投入量
酸度
(PH)
アンモニア
(NH4-N)
硝酸
(NO3-N)
全リン酸
(P25)
加里
(K2O)
石灰
(CaO)
苦土
(MgO)
可給態鉄
(Fe)
追 肥
S.56. 3. 9
5.72
2.23
4.20
198.28
25.82
228.68
31.24
0.11
  
 10Kg
 50Kg
 30Kg
100Kg
 30g




1.70
0.40



1.70
7.35
4.17









13.98



 13.25

 50.00


 0.25







4.05
硝安
硝酸石灰
硝酸加里
炭酸石灰
グリーンアップ
修正値
  
4.33
17.42
198.28
39.80
291.93
31.49
4.16
  
標準
6.0〜6.2
2〜3
30
50
50
320
30
2.7
  


5.追肥に使かった肥料とその成分量

使用肥料名
投入量
 月  日 
アンモニア
(NH4-N)
硝酸
(NO3-N)
全リン酸
(P25)
加里
(K2O)
石灰
(CaO)
苦土
(MgO)
グリーンアップ
(微量要素)
その他
いちご配合
180Kg
 40Kg

S.55.09.02
S.55.10.25
(7%)
12.60
 2.80
  
(7%)
12.60
 2.80
(7%)
12.60
 2.80
  
  
 
農協指定のいちご配合肥料
  
硝  安
 5kg
10Kg
20Kg
15Kg
10Kg
10Kg

S.55.09.28
S.55.10.25
S.55.11.11
S.55.12.12
S.56.01.13
S.56.03.09
(17%)
0.85
1.70
3.40
2.55
1.70
1.70
(17%)
0.85
1.70
3.40
2.55
1.70
1.70
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
  
 
硝酸石灰
53kg
40Kg
80Kg
55Kg
50Kg

S.55.10.25
S.55.11.11
S.55.12.12
S.56.01.13
S.56.03.09
(0.8%)
0.42
0.32
0.64
0.44
0.40
(14.7%)
 7.79
 5.88
11.76
 8.08
 7.35
 
 
 
 
 
 
  
 
 
 
 
 
(26.5%)
14.04
10.60
21.20
14.57
13.25
(0.5%)
0.30
0.20
0.40
0.27
0.25
 
 
 
 
 
 
  
 
 
 
 
 
硝酸加里
20kg
30Kg
30Kg

S.55.12.12
S.56.01.13
S.56.03.09
 
 
 
 
(13.9%)
2.78
4.17
4.17
 
 
 
 
(46.6%)
 9.23
13.98
13.98
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
  
 
 
 
硫酸加里
55kg
25Kg
40Kg

S.55.09.02
S.55.10.25
S.55.11.11
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
(50.0%)
27.50
12.50
20.00
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
  
 
 
 
炭酸石灰
270kg
185Kg
200Kg
100Kg
100Kg

S.55.09.02
S.55.10.25
S.55.11.11
S.55.12.12
S.56.03.09
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
(50%)
135.00
 92.50
100.00
 50.00
 50.00
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
  
 
 
 
 
苦土石灰
 40Kg

S.55.11.11
 
 
 
 
 
 
 
 
(50%)
20.00
(10%)
4.00
 
 
 
 
塩化苦土
 70Kg

S.55.09.02
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
(19.9%)
14.00
 
 
 
 
施肥成分計
  
29.52Kg
63.88Kg
15.40Kg
112.59Kg
521.16Kg
19.42Kg
130g
  
使用肥料名
投入量
 月  日 
 
アンモニア
(NH4-N)
硝酸
(NO3-N)
全リン酸
(P25)
加里
(K2O)
石灰
(CaO)
苦土
(MgO)
可給態鉄
(Fe)
 


 『 考 察 』
 9月2日の土壌分析後、元肥を行い9月21日に定植。9月28日には、潅水の時初めて硝安の追肥を開始し、 9月、10月〜1月13日まで作業は順調に行われてきた。 ところが1月13日に本人が入院、そのため今までのように細部に至る管理が行われていない。 特に、この後のCaOの追肥が行われなかった事は出荷量の大幅減と秀品率の減少、加工用の増大などを察することが出来る。

尚、この栽培期間の糖度については12%でしたが、微量要素が程よく効いており、非常に香りの強い申し分のない商品でした。

 この施した成分量を各々代表的な肥料にして換算してみると、何と!!
     窒素分 : 硝安(T/N:34%)を施肥したとして      29.52 + 63.88 = 93.40 ÷ 34% = 274.70 Kg
     りん酸 : 過剰であり本来は施肥しないのだが配合肥料を使った事による結果である。
     加里  : 硫酸加里(K2O:50%)を施肥したとして    112.59 ÷ 50% = 225.18 Kg
     石灰  : 炭酸石灰(CaO:50%)を施肥したとして    521.16 ÷ 50% = 1042.32 Kg
     苦土  : 硫酸苦土(MgO:16.4%)を施肥したとして   19.42 ÷ 16.4% = 118.41 Kg
                                  となるが、これには2・4・5月に分析と追肥が行われていない。

ここ何年か収量減少傾向にある人や有機栽培に疑問を持たれている方、 また元肥や追肥の考え方がどうも纏まらないなど、そのような人は上記データを参考にして下さい。意外とヒントが潜んでいる筈です。 また、ハウスみかん栽培の追肥量の追跡調査データもありますから参照対比して下さい。


 = 完 = 




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