微 量 要 素




植物が成長するには、窒素(N)・燐酸(P)・加里(K)・石灰(Ca)・苦土(Mg)・の5大要素以外に、鉄(Fe)・銅(Cu)・亜鉛(Zn)・マンガン(Mn)・モリブデン(Mo)・硼素(B)・コバルト(Co)・塩素(Cl)などが必要とされています。これらは微量ですが、生物が代謝を行う上で大変重要な働きをする無機の金属です。これは微量要素と呼ばれ、生命に不可欠の金属です。

炭酸ガスを体内に取り入れて糖を作ったり、また、それを分解するのにもこの微量要素が大きく関与しています。そして、皆さんたちが一番興味のある果菜の風味、その基となっている窒素を還元しながら蛋白質やアミノ酸をつくるのもこの微量要素の働きです。つまり、窒素の還元にはその体内に存在する酵素といわれるタンパク質が関与するわけですが、その酵素が活発に作用するようになるためには、この微量要素なる金属がその触媒として大変重要な働きをしているのです。

これらの微量要素は土壌中に無限に近く存在するという人もいます。戦後、私達は化学肥料を主とした施肥に頼った結果、この植物が吸収できる土壌中の可給態の金属は極く少量しか存在しなくなりました。このような条件下で栽培された緑餌を食している牛や豚の糞尿を分析しても、この可給態の金属は僅かの数値も検出されないというのが現状です。

また、これら糞尿を基とした堆肥を使った土壌においても、微量要素成分として全く検出されないという超欠乏状態にあるのが今の土壌環境であり、これらの堆肥によって微量要素の回復は期待出来ません。

この微量要素としての金属は、無機金属と有機金属とに大別され、その特長は

1)土壌が酸性のときは ・・・・ 土壌中の燐酸と化合して水には難溶、または不溶の燐酸鉄・燐酸銅・燐酸亜鉛・燐酸マンガンとなり肥効は殆ど期待できません。
2)土壌がアルカリのときは ・・・・ 土壌中の燐酸とは化合せず、アルカリ性となる原因の水酸基と化合し、水には難溶または不溶の水酸化鉄・水酸化銅・水酸化亜鉛・水酸化マンガンとなり、肥効は殆ど期待できません。
3)モリブデンは酸性側では燐モリブデンとなり、アルカリ側では水酸化モリブデンとなりますが、いずれも水には可溶となります。
4)硼素はアルカリ側では硼酸石灰となって、水には難溶となります。

このように、無機の金属では土壌に施しても水には難溶か、不溶になり肥効は殆ど期待できず、土壌中の燐酸や水酸基と化合をしない金属が要求されます。燐酸や水酸基と化合しないという事は、土壌に施す前に他の物質と化合していなければならないという事であり、これが有機酸微量要素の基となる有機金属と呼ばれるものです。


= 完 =




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