T 有機物の分解について
微生物で分解 土壌1g中には 細菌100万 〜 1,000万 (種類1万種以上)
放線菌100万、糸状菌100万、土壌藻類および原生動物100 〜 1,000
畑作では 年間3トン(乾燥物にて)が微生物の分解により消耗される。
U 植物栄養源としての有機物
2. 微量要素の供給源
1) 稲わら、麦わら、果菜類、花卉類の堆肥からは期待できない。
理由 :これらの母体となった作物が育った環境(圃場)そのものが既に欠乏状態にあった為
(その殆どは種子や果実に移動するために、外に持ち出されてしまう)
2) 木材(フライアッシュなど)・動物(魚カスなど)などの死骸に求めるべきである。
フライアッシュ :石炭を燃料とする火力発電所でできる業廃棄物としての残灰。石炭は古代の大木の化石で大量の微量要
素を含んでいる。その石炭を微粉にして燃料としたものである。
元素名 | PPM | 元素名 | PPM | 元素名 | PPM | 元素名 | PPM |
炭素 酸素 水素 窒素 石灰 加里 |
454,000 440,000 55,000 30,000 18,000 14,000 |
硫黄 苦土 リン 塩素 ナトリウム マンガン |
3,400 3,200 2,300 2,000 1,200 630 |
アルミニウム 珪素 亜鉛 鉄 硼素 銅 |
550 200 160 140 50 14 |
モリブデン コバルト バナジウム |
0,9 痕跡 痕跡 |
3.供給状態
1) 完全に腐熟していればすべて速効性
蛋白質 → アミノ酸 → アンモニア態窒素 → 硝酸態窒素
有機リン酸 → 無機リン酸
加里 → 植物分解と同時に遊離 → 水溶性 (石灰、苦土も同様)
2) 微量要素も加里と同じ状態をとる。
3) 未完熟であれば遅効性となる。
4.炭酸ガスの供給源
炭水化物 Cn(H2O)n
蛋白質 → アミノ酸NH2・R・COOH
炭素(C) + 酸素(O) → 炭酸ガス(CO2)
5.根の活性化
1.土壌の団粒化
孔隙分布(気相と液相が程よく交じり合う状態)
透水性
保水性
通気性
易耕性
耐食性
2.塩基性置換容量の増大〔 腐植は(−)荷電で帯びる → (+)イオンを保持しておく 〕
塩基と吸着量
石灰 > 苦土 > ナトリウム > 加里 > アンモニウム
活性アルミナの抑制
リン酸の有効化
(リン酸+微量金属) + 有機物 → リン酸 + (微量金属 + 有機物 ) → 肥料塩が活性化する
・ 有機物のない圃場でのFeとかCuのような微量金属はリン酸と結合し、作物に吸収されない。そのような圃場に堆肥などの
有機物を大量に投入すれば、微量金属はリン酸と分離して有機物と結合し、有機態となって肥料塩として作物に吸収される
ようになる。
4.緩衝作用の増大(PHが急激に上昇しない)
アンモニア態窒素から素早く硝酸態窒素へ変化する為に土壌PHが弱酸性で安定する。
・ 生育が旺盛になると土壌の硝酸態窒素はどんどん吸収されそのPHは急激に上昇していく(所謂、成り疲れの現象)。
しかしながら、有機物の大量投入をした圃場では硝酸態窒素がどんどん形成される為にPHは弱酸性で安定する、それ故
作柄は安定する。
W 間接的な効果
(土壌中の生物相とその活性の維持と増進的な作用)
1.小動物、微生物の増大
2.物質循環能の増加
3.生態系の緩衝能の増大(有害生物の突発的増殖防止)
4.有害物質の分解と除去
麦わら → トリコデルマ注−1) → 白絹病菌 注−2)に対抗、菌核抑制
キチン注−3) → キチン分解菌 → フザリウム抑制
注−1) 土や腐植した木や葉などに生息して有機物の分解に重要な役割をする菌で、強い抗生物質を出すことから植物の
病気に利用される。タバコの白絹病の予防に用いたりする。
注−2) 白絹病は作物の根部が腐朽し、地際の茎部に白い空中菌糸が現れて茶色で光沢のある小さい球形の菌核が患部
に付着するのを特徴とする。
注−3) 昆虫類や甲殻類に多く含まれ、その他菌類にも含まれるアミノ酸の一種。
5.生態系の改善
イ) 殺菌、殺虫、除草剤の使用による生態系の混乱防止
土壌中の生物相の活性増加
微生物の増加
ロ) 微生物の平均化
特定微生物の増減を停止させ菌類の共生化を進める