作物の生育=あなたの作物は本当に病気ですか・・・・??? − 6  < いちご編 >

( 写 真 と 解 説 ) 
更新日:2009年5月7日  .

INDEX
1. 前 書 き 編 .
2. 理 論 編 (細胞分裂) .
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4. き う り 編 .
5. な す 編 .
6.< い ち ご 編 >
7. す い か 編 .
8. ピーマン編 .
 9. 大 根 編 
10. カーネーション編 .
11. 薔 薇 編 .
12. 菊 編 .
13. シクラメン編 .
14. ユ リ 編 .
15. ぶ ど う 編 .




写真−1 撮影:’07.4.3
栽培状況
  写真−2 撮影:’07.4.3
生育状況
高設ベッド栽培のいちご(紅ほっぺ)です。少し石灰の欠乏が目立ちますが、葉・花、共にほぼ直立の状態です。定植時に(単位Kg/m3)硝安:1.5、過燐酸石灰2.5、硫酸加里1、苦土石灰7.5、炭酸石灰5Kgを元肥として混合した。

微量要素は有機酸態としたものを6.5cc/1株/月を与えた。溶液の排水口の所でpHを計測し6.5の時点でそれ以上とならぬよう工夫したところ・・・

  <同左の近写。写真−1の続き>

このようにいつまでも葉に露を持つ事ができました。これが6.8近くなると露が付かなくなります。この方法で3月下旬まで水(pHは6.0〜場合によっては5.0に調整したもの)のみを灌水し、それ以後は独自調製の液肥を与えました。

また、灌水は従来のメーカー仕様では一箇所に集中して掛かるので、マルチを遮光ネット98%カットに交換してマルチの上から満遍なく掛かるよう工夫して与えました。 (この時のいちごの断面 写真−26)


写真−3
いちご『ひみこ』
写真−4
いちご『ひみこ』
品種はひみこです。20cm間隔の千鳥植えです。’77年2月下旬の撮影です。

この頃ですと、成り疲れが相当目立っても良い時期ですが、葉の繁り方を見る限りまだ余力ある感じです。土壌の分析を毎月一回行い、そして不足の成分を単肥で追肥します。

  写真−3の近写です。収量は6トン/10a。施肥量は9/4 〜 翌年1/30迄、以後は農家にて推定して追肥を行ったため不明。

硝安(110Kg)、過燐酸石灰(380Kg)、硫酸加里(310Kg)、炭酸カルシウム(650Kg)
全窒素量:37.4、リン酸:72.2、加里:155、石灰:431.4(Kg/10a当)
<<参考>>苺6トン採るための施肥データ


写真−5
Mo欠乏
  写真−6
Mo欠乏
葉に縮みが出ています。Moの欠乏の初期症状です。   新しく出た葉は黄化し、ほかの葉はカップ状になっているのがあります。萎黄病にも見えますが、実はMoの欠乏症状です。

写真−7
	k・Mo欠乏
  写真−8
Mo欠乏
葉の「縁」の部分が少し黄化しています、これはK欠乏です。また、葉に縮みも出ています、ここにも少しカップ状になりかかています。これもMoの欠乏です。   真ん中の若い葉にMo欠乏の初期症状が見られます。

写真−9
Mn・Mo欠乏
写真−10
アンモニアガス障害
中央の葉の縁が黄化し一見K欠乏のように見えますが、これは黄化の幅が広くこのような症状はMnが欠乏したものです。そのうえ、縮みも出来て少しカップ状になりかけています。このような症状はMo欠乏です。   ハウスに粒状のままの尿素を追肥しました、ハウスの水分と温度によって尿素は分解してアンモニアガスとなり、そのガス障害で真っ黒色となり枯れ上がってしまいました。

露地ならば粒状のままで追肥も可能ですが、ハウス内では必ず水で溶かして、更に0.1%程度に希釈して追肥をします。また、鶏糞などを腐熟させないでそのまま元肥にした場合もこのようなことが発生します。

但し、この場合一般には黒変した葉だけが枯れてしまい、新しく出てくる新芽には影響ありません。果菜類での窒素の追肥は、硝酸態窒素で与えるのがベストとされています。


写真−11
Mn欠乏
  写真−12
Mo・Ca欠乏
この写真はMn欠乏です。Mnはこのように葉の縁の部分から内部に向かって黄色くなっていきます。

このように微量要素が欠乏したものは、必ず日持ちが悪くなります。また、味も悪くなります。特に、この症状が出たものは酸っぱい苺になります。

  印の部分はMoの欠乏です。印の部分はCaの欠乏です。

写真−13
Fe欠乏
  写真−14
Mn・B欠乏
この写真はFe欠乏です。Fe欠乏は葉脈だけを残して全体が脱色したように黄色くなっていきます。

より鮮明に現れるキウリ(写真−8)を参照して下さい。

  右下の印の部分はMnの欠乏ですが、印の部分の葉脈は褐色になっています、このような症状はBの欠乏です。

写真−15
B欠乏
  写真−16
B欠乏
写真−14をわかり易いように裏から写しました。印の部分の葉脈は褐色になって、導管は機能していません。   この印の部分もBの欠乏です。Bは栽培期間中の全期間で供給し続けなければなりません。土壌にBが欠乏すれば、このように通導組織は壊死してしまいます。

写真−17
Mn欠乏
  写真−18
Cu
葉の周縁からの黄化はMnの欠乏です。葉柄も黄化している(印の部分)のがわかります。これは、Bの欠乏です。   少しわかり難いですが、小さな黄色の斑点(印の部分)が見えます。銅(Cu)欠乏の疑いがあります。

写真−19
ホウ素欠乏
  写真−20
ホウ素欠乏
これは、いちごの葉柄がホウ素欠乏になった症状の写真です。褐色部の斑点がそれを示しています。この斑点部分の横断面を顕微鏡で覗きますと、、、、   上方部にその褐色斑点が確認できます。表皮もなくなっています。また、その内部にも褐色の斑点が見られます。

写真−21
導管組織の顕微鏡写真
  写真−22
導管組織の顕微鏡写真
硼素が欠乏することによって、いちごの葉柄は通導組織が硬化します。この葉柄に特殊な染色液に浸しました。すると、このように硬化した部分だけが赤い色に発色しました。

植物の通導組織(導管)が硬化すれば水分は根から吸収できなくなり養分が全体にうまく供給できません。その結果、植物は萎凋し、最後には枯れてしまいうことになります。

  同左。栄養素が存在しても栄養が通る道がなければ如何にもなりません。硼素はそのような意味合いからしても非常に重要な養分だということを認識しなければいけません。

写真−23
リン酸過剰(葉の色がドス黒いのが特長
  写真−24
リン酸欠乏
これはリン酸(P)過剰の写真です。リン酸が過剰になった葉の色はどす黒くなります。   参考までに掲載します。これはミツバのP欠乏の写真です。Pが欠乏すると、全体的に葉の周縁から白っぽくなると共に、進行すれば黄色くなって、やがて枯れ死してしまいます。さらに、Pが欠乏するとエネルギーを生成することができませんから日持ちなども悪く、元気のない作物になります。P欠乏の症状(緑色がなくなる)は、Fe欠・Ca欠・Cl欠とよく似た症状ですから間違えないようにしてください。

写真−25
Ca欠乏
  写真−26
Caが満ち足りたいちご
これはCa欠乏の目立つ写真です。葉の緑色が抜けるような、斑な感じの葉です。このような葉になって来ると空洞果になり、果が大きくなりにくく撫で肩の果になります。   これはCaが満ち足りた、いちごの果です。空洞がありません。
果肉も密になって、肩もしっかり張っています。
収穫後5日目の写真です。

写真−27
石灰欠乏の葉
  写真−28

これはCa欠乏の症状をした葉の写真です。葉脈の間の緑色が抜けています。このような症状の果肉は必ず右のような果実(写真−28)になります。  このように空洞果になってしまいます。肩の部分も撫で肩になります。それと、注視すべきは石灰が満ち足りた果実は細胞組織を整列的に作っていきますからこのような奇形果にはなりません。逆三角形の形になります。

写真−29
Ca欠乏のいちごの果の写真
  写真−30
Ca欠乏のいちごの果の写真
これもCa欠乏のいちごの果の写真です。空洞があります。肩の部分は料理用に切断されていて判りにくいですが、どうやら撫で肩の感じです。   品種:あまおう。これもCaの欠乏です。空洞化があり、やはり撫で肩です。果肉の色付きも、組織も完全ではありません。この果の最大の問題点は、Ca欠乏のために細胞が密にできていません。そのための“軟果”です。

写真−31
いちごは先端部から着色するのが本当なのだろうか?
  写真−32
微量要素の過剰障害
品種:さちのか。
いちごは先端部から着色するのが本当なのだろうか?それとも、肩部から・・・??。その着色状況の写真です。

ほんのりと赤い色が肩のところに確認できます。健全ないちごは、初期の状態では先端部からではなく、このように肩部分から色着き始めます。だから、収穫時期には果実全体が赤くなります。

  微量要素の過剰障害の写真です。水耕栽培で再現しました。葉の緑色は全体的に抜け、特に新葉や生長点で症状が際立っています。


= 完 =




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