( 写 真 と 解 説 )
INDEX
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13. シクラメン編 . 14. ユ リ 編 . 15. ぶ ど う 編 . |
写真−1 撮影:’06. 9.13 |
写真−2 撮影:’06. 9.13 |
甲斐乙女の無核栽培です。 | 写真−1の近写。 |
写真−3 撮影:’06. 9.12 |
写真−4 撮影:’06. 9.12 |
品種は巨峰です。使った袋の枚数は9.375枚(房)との事でしたから、約7.5トン/10aの収穫量です。 | 写真−3の袋を除けての近写です。500gの大きさに房作りしたつもりでしたが、石灰などを主に調整して土作りをして、更に定期的に硝酸石灰の追肥も行った処、 800g位の房になってしまいました。 |
写真−5 撮影:’08. 9.14 |
写真−6 撮影:’08. 9.14 |
この症状は出荷の準備に入った仕上げ期に突然現れます。房作りをしてしまっていますから、今更補充が効かず大変困ります。石灰とホウ素の欠乏が原因のようです。 仕上げの段階で石灰が不足して来ますと細胞膜がしっかり成長しません。ホウ素はその細胞膜をしっかり固定する役目です。 栽培後期もしっかり追肥、特に即効性の肥料(硝酸石灰)でバックアップしてやる事が重要です。 | ぶどうの玉にある茶色い傷はホウ素の欠乏です。Bはこのような果肌の仕上がりにも影響を与えています。 |
写真−7 撮影:’07. 6.23 |
写真−8 撮影:’07.12.21 |
果房に繋がる穂柄の部分で裂開が見えます。ホウ素の欠乏です。 | 左写真同様、穂柄裂開です。(これは俗に蔓割れと言いますが、この裂開した部分の正式名称は穂柄と言います) |
写真−9 撮影:’07.12.21 |
写真−10 撮影:’07.12.21 |
木のチップを幹の周りに撒いてマルチ代わりにしました。チップはやがて発酵し、訪問した時には大きなキノコが発生していました。 このぶどうはこのまま色付く事も無く、固くなったままでした。アンモニアの障害からホウ素欠乏を来し、導管も師管も痛め、栄養が全く移動できなくなったのでしょう。(写真−10へ続く) | 写真−9の葉の部分です。葉は濃い緑色をして葉脈の間は脱色しています。アンモニアの障害は亜鉛やマンガンなど微量要素の大欠乏となります。これをブドウ農家ではマグネシウムの欠乏だと言っているようです。 Mgは葉緑素の形成の核になる重要な元素です。Mgが欠乏すれば葉緑素の形成がなされないと言う事ですから、葉は全面が黄色くなる筈です。 トマトやキュウリ農家では、Mg欠乏は下葉の部分から脱色が始まる、と言うのが一般的です。 |
写真−11 撮影:’09. 9.14 |
写真−12 撮影:’09.11.23 |
根の周りにはしっかりと保温の為でしょうか、藁が敷いてありました。除けてみると、このように根際の部分は湿気の為か腐植していました。 | そこで、試しに栄養を含ませた土を根巻きするように盛って1年間様子を見ました。すると、写真はありませんがそこには細いひげ根が発生して、その幹は見違えるような木肌になっていました。 |
写真−13 撮影:’10.12.10 |
写真−14 撮影:’10.12.10 |
主にホウ素が欠乏。クラウンゴール(癌腫病)と言われているそうです。処がこの部分は完全に鬆(ス)となり、コルク状になっています。 そして、組織は簡単に壊して行く事が出来ます。すると、写真−14のように芯の部分(髄)だけになってしまいました。 この症状はすべて接ぎ木をした部分から上の部分です。台木の部分ではありません。 | つまり、これは接ぎ木が完全でない(導管・師管が完全につながっていない)のに房数を多く生らして栽培したため、その房及び生長点に与えるだけの養分が土から貰えず、 その房及び生長点は接ぎ木から上の部分(本樹)の幹の先端部分の養分を奪いながら成長して行ったものと思われます。丁度、トマト・きゅうりなどで下葉が枯れるのと同じ現象ではないかと考えられます。 特に、潅水のpHを調整しない等、根を傷めた場合、余計に症状は酷いようです。 |
写真−15 撮影:’08. 4.21 |
写真−16 撮影:’08. 9.14 |
枝の部分に壊死した跡が見えます。ホウ素欠乏です。最初はこの位の症状ですが、その後この壊死した部分はスポンジ状になり、 雨や湿度などの水分を含んでしまいます。そこに冬の寒さなどが加わり凍結します。最後には枝全体を枯らしてしまいます。 | 葉の先端部分は枯れています。マンガンの欠乏です |
写真−17 撮影:’10. 8. 3 |
写真−18 撮影:’10. 8. 5 |
梅雨が終わると全体的にこのような状態になります。ホウ素やマンガンなど微量要素のほか、加里や石灰なども欠乏しています。
このような状態を一般には“べと病”と言っています。 しかし、現状を良く分析してみると・・、傾斜地や水が良く抜けている所では発生率が低い。 また、水が溜まっている所でも逆に生育が良い所もありました。その水は湧水であり、酸素が十分の水でした。 |
写真−17のような“べと病”の多い圃場を見て回りますと、このような動噴車の走った跡が残ったままです。問題は車が走る事で地面が締り、 水が溜まったままで放置されていると言う事です。3日もこのような状態が続くと酸欠となり、根を傷めてしまいます。これが各々の農家の梅雨後の病気の現状です。 対策は、入梅までには耕起して土を柔らかくして置き、明渠を施し排水を良くしておく事が大事です。 |
写真−19 撮影:’10. 8. 6 |
写真−20 撮影:’10. 6. 6 |
べと病の対策は、このようにボルドー液を散布します。困ったことに、ボルドー液に限らず薬剤の撒布を施すと葉はカサカサの乾燥状態になります。 この場合も、この乾燥状態で確かに症状は抑止できます。しかし、同時に、植物は成長までもが止まってしまうようです。植物はその回復するまでの間、その成長エネルギーは体内に向けて閉じ込められる。 その体内の蓄積したエネルギーで病状も回復すると言うのがその過程のようです。しかし、それではその回復の時間がもったいないように思います。まずは、写真−18のようなことのないよう、是非排水対策をとって頂きたいと思います。 |
この葉は薄く、色も黄緑色です。石灰欠乏です。先端も黄色く加里欠乏の様子です。このような葉の状態の時には、硝酸石灰と微量要素を規定量加えて散布します。すると半日もすれば・・・・(写真−21へ) 注) ▲色の矢印(4ヶ所)部は太陽光です。葉の異常状態ではありません。 |
写真−21 撮影:’10. 8. 7 |
写真−22 撮影:’07. 6.23 |
バックアップ液を作り、根の周りに潅水をして廻りました。ほんのりと葉脈間の組織部が緑色を帯びて来ているのが確認できます。 これを一日おきに3度程、散布して下さい。そうすれば、もっとしっかりした緑色になって来ます。 | 加里欠乏です。葉の先端に枯れが見えます。 |