常 備 液 肥 の 調 製 法 

更新日:2010年 7月14日(印)

  INDEX
  前書き
1. 薬品
2. 資材
3. 肥料の成分
4. 調製法
5. 原液を溶く水の調製法とその必要性


前書き

 皆さんが生活をしている一般家庭には軽微な体調不良、例えば“腹痛・胃がもたれる”や “頭が少し痛い、風邪気味かな〜薬を飲んどこ〜”とか“けがをしてしまったので消毒して赤チン塗っとこ〜”と言うように、ちょっとした薬を備えていると思います。 所謂、常備薬です。作物を栽培している時にも“チョットだけ肥料を与えたいな〜”そのような経験がありませんか?

特に育苗床のように大量の肥料は要らないがチョットだけ掛けたい、そのような時に予め必要な要素を調合して用意しておくと、直ぐに間に合い大変便利だと思います。 そこで、このページではこの常備液肥の作り方を掲載しました。この液肥は、必要に応じて水に溶くだけですから、 例えば先に述べたように育苗床や家庭菜園のように大した量を必要としない時などに使うと手間がかからず大変便利です。

 ついでながら、私の自宅の室内の鉢花はこのpH調整液と液肥で管理しています。

 写真−1(シクラメン)
シクラメン
 写真−2(ポトス)
ポトス
 写真−3(ポトス)
ポトス
11月に買ってきたものが、3連続の開花です。翌年5月11日の撮影。3回目の花芽です。   各々の葉の先端に葉露がついています。   このように毎朝、葉露がつきます。


 写真−4(なす)
なす
 写真−5(なす) なす  写真−6(ピーマン)
ピーマン
 右が液肥を掛けた“なす”
 左は一般の水道水だけを
 かけた“なす”。
  同左。このように同じ管理して、液肥だけ
  でもこのように差が出てきます。
  ピーマンも同様。


写真−7(百日草)
なす
写真−8(百日草)
なす
写真−9(ゼラニウム)
ゼラニウム
自宅マンションの玄関プランターに植えた百日草。AとB液だけで追肥。
水はpHダウン液を散布するだけ。
 同左の近写。 これもA・B液とpH調整液だけを使用。


写真−10(ばら)
ばら
写真−11(ばら)
ばら
写真−12(ばら)
ばら
友人の家の玄関にある、アーチを型取った薔薇のトンネル入口。 同左。これもA・B液とpH調整散水。花一杯で葉が隠れて見えません。 同近写。この位の大菊を栽培して、コンテストに出品したいと言う。


1.薬品

 硝酸カルシウム   Ca(NO3)2・4H20
 硝酸カリウム   KNO3
 硫酸マグネシウム   MgSO4・7H2O
 リン酸1アンモニウム   NH4(H2PO4)
 有機酸微量要素(グリーンアップ)


2.資材

肥料か薬品に使った不用の20リットルのポリ缶(グレーか黒など光を透さない物が良い)を2〜3個。 (良く洗ってください。出来るならキャップがコック式になったのが便利です)


3.肥料の成分

この肥料は、養液栽培で使う液肥として考えられたものです。
園芸試験場が開発したとされ、ごく一般的に普及している液肥で『園試処方』とか『標準養液』といっています。

<< 1000gの必要量 >>
肥 料 名 硝酸
カルシウム
硝酸
カリウム
硫酸
マグネシウム
リン酸
1アンモニウム
微量要素
グリーンアップ
添 加 量 950g 810g 500g 155g 200cc

これで、生長に必要な多量要素と微量要素のすべての元素がバランス良く補給されたことになります。


また、多量要素の肥料成分量は以下のようになります。
肥料名 肥 料 成 分 率   肥料量
(g)
肥 料 成 分 量 (g)
NO3-N
(NH4-N)
P2O5 K2O CaO MgO NO3-N
(NH4-N)
2O5 K2O CaO MgO
硝酸加里
硝酸石灰
硫酸苦土
リン酸1アンモン
0.139
0.118

(0.122)



0.617
0.466




0.236




0.164

810
950
500
155
112
112

(18.9)



96
377




224




82

 
 
 
 
 
 
243
94
377
224
82

この液肥の浸透圧は0℃/1気圧の時、0.770気圧になります。(土や有機物を使った栽培の許容浸透圧は1.2気圧を厳守)

<< 計算式 >>
硝 酸 加 里 0.44気圧 (1Kg/1トン) × 0.810Kg    0.356 気圧
硝 酸 石 灰 0.28気圧 (  〃  ) × 0.950Kg    0.266 気圧
硫 酸 苦 土 0.18気圧 (  〃  ) × 0.500Kg    0.090 気圧
リン酸1アンモン 0.38気圧 (  〃  ) × 0.155Kg +) 0.058 気圧
          合 計 0.770 気圧


4.調製法

原液の作り方の注意点
 1)各々計量した薬品はそれを一度に混ぜて溶かないで下さい。薬品どうしが反応して固化し沈殿してしまいます。
 2)熱湯を用意して、必ずそれに1薬品を入れ、良く攪拌して溶けたのを確認した上で次に進んでください。


  << 50倍の濃縮液肥 >> A・B原液各20リットル、液肥にして1000リットルとなります。
注)土耕栽培に使う場合はグリーンアップは1000ccとして下さい。
肥 料 名 硝酸
カルシウム
硝酸
カリウム
硫酸
マグネシウム
リン酸
1アンモニウム
微量要素
グリーンアップ
A 液 −−− 810g 500g 155g −−−
B 液 950g −−− −−− −−− 200cc


  << 100倍の濃縮液肥 >> A・B原液各20リットル、液肥にして2000リットルとなります。
注)土耕栽培に使う場合はグリーンアップは2000ccとして下さい。
肥 料 名 硝酸
カルシウム
硝酸
カリウム
硫酸
マグネシウム
リン酸
1アンモニウム
微量要素
グリーンアップ
A 液 −−− 1620g 1000g 310g −−−
B 液 1900g −−− −−− −−− 400cc


  << 200倍の濃縮液肥 >> A・B原液各20リットル、液肥にして4000リットルとなります。
注)土耕栽培に使う場合はグリーンアップは4000ccとして下さい。
肥 料 名 硝酸
カルシウム
硝酸
カリウム
硫酸
マグネシウム
リン酸
1アンモニウム
微量要素
グリーンアップ
A 液 −−− 1620g 2000g 620g −−−
B 液 3800g 1620g −−− −−− 800cc


以上の濃縮原液を各々A液・B液として20リットルのタンクに作り置きしておいて、必要な灌水々量に応じて取り出すか、液肥混入器の倍率を調整して使用して下さい。


5.原液を溶く水の調製法とその必要性

 植物を栽培する大前提条件として、土壌そして植物に与える水分つまり灌水の水も弱酸性でなければ必ず病気が発生します。何故、こんな危険で面倒くさいことをしなければならないかという説明をすれば話が大変長くなりますので省略しますが、簡単に答えだけを言えば、pHが高いと微量要素が効かなくなって、病気になるからです。

そこで肥料や微量要素を入れるのが面倒だから嫌だという人も、いや俺は入れるという人も全てこの調整をして下さい。この調整をしただけで次の日から植物の状態が変わってきます。リトマス試験紙やpH計などで計測してみて“我が家の水はpHが6.8以上だ!!”という人は、特にその必要があります。出来るならば、それ以下の人でも6.0〜6.2に調整すれば、取りあえずは最高の状態となります。

また、上記の液肥A液とグリーンアップを入れない状態のB液を合わせたとします注)−1。この時のpHは6.2付近になります。これは使用する原水のpHが7.2だったとしても6.2付近には必ずなります。ですから、この2液を混合した時は、グリーンアップを添加してそのまま栽培物に掛けても問題は生じません。

しかしながら、栽培期間中に硝酸カルシウムだけを掛けたい時もあります、このような時は大いに問題があります。それは、硝酸カルシウムは中性の肥料ですから、それを多めに加えたとしてもpHは殆んど動きません。pHが7.2なら良く下がっても恐らく7.1〜7.0位です。このような場合、硝酸カルシウムにグリーンアップを入れて灌水してもアルカリ状態にある為、微量要素は効き難く、効果は半減します。“掛ける割には効かないな〜”と言うことになり兼ねません(ここが最大のポイントなのです)

 そこでこのような場合には、少し危険が伴いますがどうしてもやらなくてはなりません。劇薬であり危険物でもある工業用の硝酸か硫酸を使います。

注)−1
 グリ−ンアップを加えた場合、これには有機酸が含まれていますから強酸性となります。しかし、この強酸性の原因は植物たちが自己体内で合成している物質つまり光合成の産物の糖分ですから、むしろ植物はこの物質を要求する傾向にあります。従って、この有機酸が含まれることによって、強酸性になるから害になるという人がいますが、害になるどころか反って植物は元気になってきます。また、有機酸は多量要素とも反応して素早く植物体内に取り入れる働きがあります。

注)−2
“私は有機酸でpHを調整しています” という人を時々見かけます。これは、pHの調整法としては誤りです。この方法で調整をした場合、このpHは植物側からすると下がったことに成りません。これを見掛けのpHといいます。例えば、pH7.2の水を有機酸でそのpHを下げ、灌水をしようと試みたとします。

植物は有機酸を好んで良く吸収します。このような有機酸は植物自身が一生懸命に光合成をして、自ら作って体内に蓄えている物質(クエン酸回路の産物)なのです。有機酸を植物にかけると、これは都合の良いものが降ってきたと抵抗もなく猛烈なスピードで吸収するのです。そうすると、吸収し終わったあと結果的に土に残ったのは、pH7.2の水だけで、肥料成分はやっぱりそのpH7.2の影響を受けてしまいます。

つまり、有機酸が吸収されて無くなってしまえば、元のpH7.2の水を掛けたのと同じなのです。また、このような植物の好む有機酸はpHが低くても害はありません。寧ろ、有機酸を与えれば植物は光合成をしなくて良いのと同じになります(極端で実際はその様にはいきませんが・・・)、定植後の植え傷めや梅雨などの曇天の続く日は大変効果があり、灌水や葉面散布を行うと約2時間ぐらいの時間の経過と共に葉が立ってきます。これは成り疲れ解消のときも同じで、元気になります。

この“見掛けのpH” の影響は、Troug表のように原水のpHの溶解度(微量要素が効き難くなる)の通りになります。 従って、灌水のpHを下げる場合には、必ず硝酸(HNO3)・硫酸(H2SO4)・リン酸(H3PO4)などのH(+)、また上げる場合は苛性ソーダ(NaOH)・苛性加里(KOH)などのOH(-)のイオンで調整しなければなりません。この時のpHを “真のpH” と言います。

また、そのときのpHは必ず5.5〜6.5の間で調整します。このイオンでの下げ方を間違って下げ過ぎ、強い酸性側になった場合には害(特にCa欠乏)が発生します。特にひどい場合、作物は枯れ死してしまいますのでご注意下さい。


原水ダウン原液の作り方

  << pH7.0の水を6.0に下げる。 >>
使いたい倍率 加 え る pH6.0の水
pH7.0の水 硝酸(63%)
100倍にて使用する場合 20g 40cc 2000gを作ることが出来る
200倍にて使用する場合 20g 80cc 4000gを作ることが出来る
注)調製した後、吐出口からpH6.0付近で調合されて水が出ているかどうか、必ず確認をすること。




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