堆  肥 

更新日:2010年 3月25日 (部) .

 INDEX
T. 前書き .
U. 未発酵堆肥・有機物を使用した圃場の障害写真
V. 堆肥や有機物の誤った使い方・考え方 .
W. 堆肥はどのようにして完熟化していくのか .
 1. 炭素対窒素率 .
 2. 土壌微生物による分解 .
X. 有機物を使った土壌の硝酸化成 .
Y. 完熟堆肥の自家製造 .


T. 前書き

堆肥とは国語辞典によると“積み肥”のこととある。更に、積み肥とは“藁、草、大小便など、廃棄物を積み重ねて、腐らせて作った肥料”と記してある。有機質肥料と混同されるようであるが、厳密には異なる。有機質肥料とは菜種の搾りかす(油かす)や魚かす(魚粉)・家畜の骨(骨粉)や内臓粉や血粉、最近では貝殻粉やかに殻があるが、基本的にこれらは発酵していない。

これらの有機質肥料は現代のように化学肥料が普及していなかった時代、堆肥だけでは果菜の成長に必要な栄養素は不足するので、N・P・Kのバランス調整などに広く用いられてきたようである。戦後は化学肥料が安価で簡単に調達出来るようになり、便利さと共に有機質肥料に代わって使われるようになって来たが、近年では環境にやさしいとか、食の安全性などを掲げた有機栽培と共に、この有機質肥料が見直されているようである。

土壌の養分吸収(着)力を考えるとき、例えば硝安を肥料として施した場合、その一部は植物の根に触れると、そこに生息している植物に吸収される。そして、その残りの成分は土壌に吸着され、一部は流出する。これらの土壌は特に陽イオンを吸着する性質を持っている。これは土壌が主として無機質のほか動・植物の死骸や排泄物などを含んだ物質で構成されているからである。つまり、土壌は有機物を含んだ物質で構成されているのである。

そして、この有機物は主に陰イオンで成り立っているのである。それ故、この陰イオンと硝安の中に含まれるアンモニアの陽イオンが吸着(イオン結合:電着)しているのである。また、陽イオンを吸着するのは有機物の他、無機物も吸着する。その吸着量を比較すると圧倒的に有機物の方が多い。有機物はもともと腐植であり、その吸着量は非常に大きい。従って、腐植の多い土壌ほど陽イオンの吸着力が大きくなる。

そこで、植物の死骸と動物の排泄物の両方を含んだ安価で栄養価の高い有機物、つまり、堆肥と称される藁や草、大小便などの廃棄物を積み重ねて、腐らせて作った肥料を用いた土作りが望まれる訳である。処が、良いからと言って、その使い方を間違うと大変な事態になるということも含んでおかなければならない。先ずは写真から・・・


U. 未発酵堆肥・有機物を使用した圃場の障害写真

 写真−@ いちご園にて (撮影:’08年 2月 7日)
いちご園にて
   写真−A いちご園にて (撮影:’08年 2月 7日)
いちご園にて
通路にバークを敷いた写真。
バークを入れてもキノコが立たないという農家の圃場で見られた。臭いこそしなかったがキノコが発生している。
  同左、場所を変えて撮影。初期の段階だが、キノコはより湿っている処の方が早く発生していた。(バークはキノコが立たないのではなく、立つまでに時間がかかるから何時たったか気が付いていないのではないか)

写真−B ブドウの木 (撮影:’08年 9月14日)
ブドウの木
写真−C びわハウスにて (撮影:’08年 6月17日)
びわハウスにて
圃場の手入れが上手くできていません。敷き藁や落ち葉などの影響で加湿になったうえ、アンモニアの害も重なり根の周りの腐敗が進んでいる。 キノコがリグニンを食べて丸々と育っている。一番良くないことは、農家がこの生藁や落ち葉がキノコの栄養になっているということを意識していないことである。

写真−D みかんハウスにて(撮影:’09年 3月26日)
みかんハウスにて
写真−E トマトハウスにて(撮影:’07年 4月26日)
トマトハウスにて
園地には灌水量を測定するための検量メーターがあります。ここは公立の試験研究機関です。そして、生藁や落ち葉も一面に敷いてあります。ところが、ここにも大きなキノコが発生しています。 キノコが立っています。カビも生えています。ここにはバークが混ざった有機物が入れありました。

写真−F 生姜ハウスにて(撮影:’09年 3月28日
生姜ハウスにて
写真−G 生姜ハウスにて(撮影:’09年 3月28日)
生姜ハウスにて
有機物をたっぷり入れたとのことでした。いけないのは、それが“生か?、完熟か?”と意識していないことです。そこにはキノコが立っています。生姜のハウスですから温度も湿度も高くします。発酵には絶好の条件です。
いくつもあるハウスは全てのハウスで、このような写真の状況でした。これはアンモニアの障害です。多分、発酵途中にあるのでしょう。


下の写真4枚は、有機物あり(H・I)と有機物なし(J・K)を比較をして見て下さい。

写真−H トマト
有機物にカビが生えています
写真−I トマト
アンモニアの害が発生
臭いのする有機物を追肥として投入しました。1週間後の写真です。カビが生えています。
このように影響を受け易い生長部に害が認められます。アンモニアの害です。

写真−J トマト
有機物を入れていません
写真−K トマト
正常に生長しています
有機物は入れていません。 この様に石灰の欠乏は少し目立っていますが、害は出ていません。


V.堆肥や有機物の誤った使い方・考え方

堆肥や有機物ならどのようなものでも使って良いとは限らない。未熟な物そしてとりわけ、その中に含まれる成分についてはしっかりと把握しておく必要がある。

1.未熟堆肥の見分け方
・キノコが発生している。
・カビが発生している。
・悪臭がする。
・完全に乾燥していても、褐色である。
・ダイコンなどの種子を蒔くと発根しない。また、発根しても成長せずにそのまま枯れ死する。
 (種子は取りあえずは発根する。子葉の段階までは種子に含まれる栄養で育つが、それ以後は土の栄養に頼ることと成る)

2.市販の有機物肥料や有機物(堆肥)を使う場合の注意点(乾燥状態の物も含む)
市販の有機物には1次発酵さえもできていない物が販売されているので注意をすること。
・施肥するとカビが発生する。
・開袋すると悪臭がする。
・施肥するとキノコが立つ。

対策(検証)
ハウスの片隅にて袋を開封し、水と容積比にして1/19の無消毒の土を混ぜて良く攪拌し、更に一週間ごとに攪拌して空気を十分に混入させる。その作業を約2〜3ヶ月間繰り返す(グリーンアップを混ぜると更に発酵が早くなる)。発酵の最終段階で必ずキノコが立つので立たなくなったら完了とする。

3.おが屑を使用した堆肥を使う場合の注意点
おが屑を使用した堆肥やバーク堆肥の類は、そのままの状態では3年が経過しても未発酵のままである。また、外材のおが屑は港湾の貯木場に長期間浸水しているので海水の塩分を含んでいる可能性があり、塩(NaCl)害の恐れがある。

 表−@ 牛糞・豚糞使用上の注意と塩害
単位mg/乾土100g(≒Kg/10a)
分 析 日 pH
(KCl)
アンモニア
(NH4-N)
硝酸
(NO3-N)
全リン酸
(P25)
加里
(K2O)
石灰
(CaO)
苦土
(MgO)
可給態鉄
(Fe)
塩素
(Cl)
52.01.19 @ 5.52 8.09 1.87 39.60 23.62 312.87 37.30 0.526  
52.02.16 A 5.72 4.41 0.67 106.38 65.69 340.93 61.49 0.194 33.32
53.10.01 B 5.63 6.62 8.61 285.45 68.71 395.65 94.75 0.064 113.45
53.01.15 C 6.97 3.46 0.67 36.64 44.57 766.04 134.06 0.338 203.45
標準 6.0〜6.2 2〜3 30 50 50 320 30 2.7 10

分析者:米澤農業研究所 .

(注)
@ 人吉市  前作終了後の分析
A  〃   @に生豚糞8トン/10a施肥後に分析 キウリ(塩素の害)→→ @と比較すると、堆肥中のリン酸、加里、苦土が異常に増加している
B 島原市  生牛糞8トン/10a  トマト枯れ死寸前(塩素の害) →→ Aと同じ状況、リン酸、加里、苦土が異常に多い
C 福岡市  ラワン材の堆肥   ラワン・・・港湾に貯木 →→ 苦土、特に塩素が異常に多い


4.牛糞堆肥や尿が混入した堆肥は、そのまま使用すると塩害が発生する恐れがある。

糞尿には塩(NaCl)分が含まれているので屋外にて1年間、雨にさらしておく。とくに梅雨のような大量の雨は塩分を流してくれる。

5.堆肥などを使用した“有機栽培”は栄養素に偏りがあり、万能とは言えない。
牛糞は昔のような牛糞の栄養効果を期待できない。
現在の飼育法・・・ストールで飼育 → 飼料の栄養制限(必要以上の栄養を与えない) → 栄養分の少ない排泄物
昔ながらの飼育法・・・・屋外で開放飼育 → 野草を食す(富栄養、特に微量要素を摂取) → 栄養バランスの良い排泄物
 特に、貧血(Fe欠乏)状態にある牛の微量要素摂取の問題(塩の与え方)
 ストール飼育・・・・精製塩のみを与える → 鉄柵などを舐める(鉄欠乏の予兆) → 塩分は岩塩や鉱塩を与える
油かすは昔のような栄養効果を期待できない。
 油かすの絞り工程変化・・・手絞り → 機械絞り(機械的な高圧搾り) → 完全に搾り切るために残留栄養分が減少

(重要)精製塩と岩塩・鉱塩の違い

    キノコ栽培後の廃棄大鋸屑を圃場に使用した場合の是非

 表−A 土壌分析から見る廃大鋸屑の使用例(作物:アスパラガス・ブドウ)     
分析者:中隈水質土壌分析室 .
単位mg/乾土100g(≒Kg/10a)
分 析 日 酸度
(pH)
アンモニア
(NH4-N)
硝酸
(NO3-N)
全リン酸
(P2O5
加里
(K2O)
石灰
(CaO)
苦土
(MgO)
可給態鉄
(Fe)
塩素
(Cl)
標準値 6.0〜6.2 2〜3 30 50 50 320 30 2.7  
’09. 4. 2
長野県Sib.農園
5.5 5.8
(過剰)
13.3
(適)
165.5
(大過剰)
155.3
(大過剰)
78.3
(大欠乏)
103.4
(大過剰)
0.14
(欠乏)
2.7
’09. 4. 2
長野県Sim.農園
5.8 2.5
(適)
17.8
(適)
318.0
(大過剰)
131.2
(大過剰)
72.7
(大欠乏)
108.4
(大過剰)
0.10
(欠乏)
0.9
廃大鋸屑・きゅう肥を長年に至って大量に使用すれば、このように養分のアンバランスを来たすケースが多い。
ケース@ の土壌分析 :表−@
ケースA の土壌分析 :表−K


6.未熟堆肥の害について

@キノコの発生
 ・キノコの菌糸は植物の繊維質のみならず作物の根のリグニンまでも侵食してしまう。
A一時期に、しかも一斉にアンモニア化した場合のアンモニア及びアンモニアガスの害
 ・時期的には様々な環境条件にもよるが、未熟堆肥を施肥して約2〜3ヶ月後に発生するケースが多い。
B害の回避法
 ・未熟堆肥を施肥した後、50cm以上の深耕すればその害を少なくすることができる。


W.堆肥はどのようにして完熟化していくのか

1. 炭素対窒素率(C/N率分解 )

炭素(C)/窒素(N)比のことであり、この比率は表−@に示す通りである。
微生物は炭素率の高い有機物を分解する際、セルロースなどの炭水化物を分解して炭酸ガスを放出する。このときのエネルギー源が窒素とあると考えられている。また、この窒素とセルロースを分解して生ずる有機酸から、たんぱく質を合成して菌体をつくり増殖している。

 表−B (佐藤ら)
種  類 炭素率 全炭素 % 全窒素 %
杉オガクズ 636 50.9 0.08
ラワンオガクズ 4,366 48.0 0.11
檜オガクズ 1,296 51.6 0.04
米マツオガクズ 1,666 50.0 0.03
米マツバーク 728 51.6 0.07
イナワラ 74 42.3 0.57
籾殻 72 39.8 0.55
堆肥イナワラ 19.4 6.2 0.32
麦ワラ 18.5 6.1 0.33
落葉 21.4 7.5 0.34
平均堆厩肥 20.3 7.9 0.39
注)炭素(C)/窒素(N)率は10以下が理想とされている。
牛   糞 23 41.4 1.8
豚   糞 11 41.5 3.9
鶏   糞 9 42.2 4.6


■ 炭素率調整の計算法

@ 杉オガクズ1Kgでは、窒素を何g加えるとC/N率は10となるか?
 杉オガクズ1Kg中には、
 全炭素(C)・・・509g
 全窒素・・・0.8g
が含まれている。

   509  .
0.8 + χ
10


10 χ = 509 − 8
 χ = 50.1g

∴ 硝安(34%)なら、50.1 ÷ 0.34 = 147.35gとなる。
つまり、147.4gの硝安を加えれば分解が始まる。


A 杉オガクズ1Kgに対し、鶏糞は何KgでC/N率は10となるか?
 鶏糞1Kg中には、
 全炭素(C)・・・422g
 全窒素(N)・・・46g
が含まれている。

必要鶏糞を χ とすれば、

 509+422 χ .
0.8+46 χ
10


509 + 422 χ = 10 ( 0.8 + 46 χ )
509 + 422 χ = 8 + 460 χ
460 χ − 422 χ = 509 − 8
38 χ = 501
 χ = 13.1842 gとなる。


B 杉オガクズ3Kgに対して鶏糞1Kgを混合すると、Nは何g補給しなければならないか?

  3 × 509 + 422 .
3 × 0.8 + 46 + χ
10

1949 / ( 48.4 + χ ) = 10
484 + 10 χ = 1949
10 χ = 1949−484
 χ = 146.5g

∴ 硝安(34%)なら、146.5 ÷ 0.34 = 430.88gとなる。

つまり、杉オガクズ3Kgと鶏糞1Kgの合計4Kgの混合堆肥を発酵させるには窒素成分が0.1465Kgが必要となる。それでは、この堆肥を現場で見据えた堆肥使用の最少量3000Kgとして考えた場合、3000Kg/4Kg×0.1465Kgの109.88Kgの窒素肥料量となり、これでは窒素分が大過剰となる。従って、この窒素肥料を用いた発酵法は到底導入できないこととなる。

因って、有機物の分解は土壌の細菌、糸状菌、放線菌などによるものを利用すべきで、窒素を分解補助材として使用するのは不適当と結論付けることが出来る。

上記の杉オガクズ鶏糞の分解発酵には → 無償毒土壌(川または池の土壌) → 堆積して時々耕転(天地返し)する → きのこが発生 → 枯れる → 黒色化してボロボロになった状態で完了 → 有機物として使える


メモ 米ぬかを使った菌の培養
@ 米ぬか1Kgに対して容積比で30〜40%の水を加え、肥料袋に入れ、若干の空気を入れて密封する。

A 温室内に放置すると2〜3ヵ月で完熟し黒変するので、これに無消毒の土壌を約500g(米ぬか1Kgに対して)を加え、良くかき混ぜて温室内の一隅に積み重ね、土壌微生物を培養する。時々、切り替えして2〜3ヵ月放置すればよい。(これが原種菌となる)。

B これを原種として、米ぬか1Kgに対し、原種約100gを加えて微生物の培養を行う。

C 牛糞・豚糞などの有機物に対し、Bで培養したの原種を約1%加えて発酵させる(鋤き返しは必ず行い、空気の流入を良くすること)。この時、グリーンアップを加えると更に発酵は早くなる。

D 温度が70〜80℃前後になり、きのこが発生し更にそれが枯れて、有機物が黒変したものを使用すればよい。尚、無償毒土壌は出来るなら、池や沼の水面レベルの上下10cmの範囲で採取すると良質の好気性菌(上部)と嫌気性菌(下部)が採取できる筈であるが、それが良質の菌かどうかは色々なところで取ってきて、試行錯誤しないと分からない。

この分野は偶然性の出来事が多く、考えた通りには出来ない。


窒素の飢餓現象

分解していない稲わらや籾穀などのような炭素率の大きい有機物を土に施すと一時的に窒素の飢餓状態を来たす。

例えば、稲わらの炭素率は74、籾穀は72であり、その分解の理想とされる10になるには大量の窒素注 )-1が必要となる。その土の中での窒素は発酵分解過程で必要なものと植物の生育過程に必要なものとの双方で必要となる。この双方の過程は大量の窒素を必要とするために 土の中に存在する窒素では一時的に不足する、つまり飢餓状態が生じることとなる。この状態を窒素の飢餓現象という。

従って、未発酵の有機物は、この飢餓状態と発酵の最終工程であるアンモニアの発生という、植物栽培時における2重の不具合を迎える事となるので、元肥としての有機物には必ず完熟したものを使用することが大事である。

注 )-1
炭素率が74の稲わら1000Kgの炭素は423Kg、窒素の成分は約5.7Kgである、発酵に必要な炭素率10にするには36.6Kg(硝安なら107.6Kg)を追加する必要があり、そのほかにも生育のために20Kgほどが必要で、この量の窒素を一度に追肥した場合には大過剰となる。つまり、稲わら単独のすき込みは有益になるとは言えず、むしろ害となる公算のほうが大きい。従って、稲わらのような炭素率の大きいものは牛糞などにすき込んで、圃場以外の場所で充分に発酵させたものを使う必要がある。

■ 鶏糞の分解

鶏糞は炭素比率が9であり、酸素さえ供給すればそのままの状態でも自然分解する。

 表−C 分解の状況記録 <<分析: 米沢農業研究所 >>
*試験法:乾燥鶏糞10g+純水500ml 室温(温度調節なし)にて
月  日 pH値 状   況   確   認 予想される症状
キュウリでは
予想される症状
トマトでは
昭和49年11月 3日 8.83   根傷み開始 根傷み開始
  〃    4日 8.30        
  〃   20日 6.74 発 臭 ・ 根 に 障 害 を 確 認 元気なく葉カビ発生 元気なく葉カビ発生
  〃   23日 6.55   〃        〃   改善方法の手立てなし 改善方法の手立てなし
  〃   27日 6.57   〃        〃   葉カビ・べと病蔓延 葉カビ蔓延
  〃 12月17日 6.88 悪 臭 ・ 根 に 障 害 を 確 認
昭和50年 2月16日 8.32 アンモニア臭がひどい
 → キノコ発生、病気(アンモニア害)多発
先細い・元太り果が大発生
(アンモニア過剰による加里欠乏)
かび病・ボト病大発生
  〃  3月25日 8.79 臭気消えて完全分解する 元太り自然消滅 同上自然消滅

2.土壌微生物による分解

1) 植物質

 表−D ムギワラの分解と微生物 (渡辺)
注−@ 土壌ひとかけらを加えた
注−A・B ワラのはじめの乾物量、セルロース量をそれぞれ100とする。
微    生    物    名 乾 物 量 注−A セルロース注−B
 アスペルギルス、フラビプス(糸状菌)
 トリコデルマ(糸状菌)
 ホーマ(糸状菌)
 アスペルギルス、ニーガー(糸状菌、黒、コウジカビ)
 アクチノミセス(放線菌)
 混合微生物 注−@
71
73
74
87
89
49
47
62
55
79
77
27

表−Dは微生物が有機物(ムギワラ)を分解する際、各々の微生物別にその分解度を示したものである。例えば、アスペルギルス、フラビプス(糸状菌)はムギワラの乾物量を100とした場合、それを71に分解している。つまり、29(%)を分解した事となる。また、その時のセルロースは100から47まで分解が進んでいる。しかしながら、その分解度を考えた場合、僅かの土を混ぜた混合微生物の方が遥かに良く分解が進んでいることが分かる。これは、土壌には色々な菌が混在し、共生しながらその分解を早めていると考えらている。

つまり、堆肥舎で畜糞などの有機物を有効に分解するには、その有機物の容積比にして約1/10の無消毒土壌を加え、良く攪拌する。更に、酸素の補給の為に1週間ごとに攪拌を繰り返すことが大事である。(キノコは何回も立つのでその度ごとに切り返し、キノコが立たなくなったら完了とする)

<< 微生物の活動 >>
植物の分解はまず最初に、栄養素の多いタンパク質や糖類(澱粉やブドウ糖)が分解される。そこに働くのは細菌とカビ(糸状菌)である。また、これらの菌は熱に弱く自分達の活動熱で自滅する。次に現れるのはセルロースを分解する分解菌である。これらの菌は比較的高温に強く、また嫌気的細菌でもある。セルロースの分解後には、今度は放線菌(好低温)が活動し始める。

そして、最終段階ではキノコ類のような菌により最も分解されにくいリグニンの分解となる。更に、リグニンが分解されるとその植物遺体は柔らかくなり、そこに再び糖類分解菌・セルロース分解菌が住み着き、更に分解(完熟度)は進んでいくこととなる。そのような事を考えると、この表のようにひとかけらの土壌を加えて混合微生物をつくり、有機物に混ぜ、結果その状態の方が一番分解が進んだと言うことには合点がいく。

つまり、微生物の働きを借りて早く有機物を分解するためには、 お金のかからない自圃場の無消毒土壌を1/10だけ加えてやることが断然有利なのである。またこの時、有機酸微量要素(糖類<クエン酸>を多く含んでいる)を加えれば更に分解は加速する。

特記)
植物組織にうどん粉などのカビ類が蔓延はびこるのはその栄養状態が悪く、形成された組織は未完成で弱々しくなり、水浸状態に近づいている時である。特に、その組織が石灰やホウ素の欠乏状態の時、湿度が高かったり、水を多く含んだ場合、組織の水膨れは助長され、分解の第一歩となるには十分すぎるくらい、絶好の条件となる。そのようなことを考えると、これは病気とは言い難く、所謂“土に返る第一段階の始まり”であり、タンパク質や糖類分解の第一歩である。つまり、病気ではない。


2)動物質

                  
 表−E 四訂日本食品標準分析表から(科技庁資調会編)
(可食部100g中)
生魚や生野菜のように十分に水分を含んだものは早く腐敗し分解するが、干し魚や大豆・小豆などのように乾燥したものは長期間腐敗しないし、分解も進まない。
  水分 蛋白質 脂質 炭水化物 灰分 石灰 リン
糖質 繊維質
( 単位 ) ( g ) ( mg )
 カタクチ鰯(生) 74.4 16.7 6.0 0.3 0 2.6 220 180 2.0
 いわし(生) 54.5 18.6 21.9 0.4 0 4.6 220 240 3.1
 いわし(煮干) 16.5 69.0 2.9 0.3 0 11.3 3,200 1,500 18.0
 かつお(生) 70.4 25.8 2.0 0.4 0 1.4 10 270 1.9
 かつお(節) 15.2 77.1 2.9 0.8 0 4.0 28 790 5.5
 えだまめ(生) 69.8 11.5 6.6 8.5 1.9 1.7 90 170 1.7
 だいず(乾) 12.7 35.3 19.0 23.7 4.5 5.0 240 580 9.4


3) 動物質堆肥と植物質堆肥の違い

動物質堆肥は堆肥として考えた場合、すべて乾燥したものを前提として考えられている。また、動物質には植物質のように繊維質とリグニンがないので腐敗は早い。従って、このような動物質肥料に十分な水を与えてやると直ちに腐敗し、そして分解が始まる。また、動物質は生の場合、これらには既に水を含んでいるのですぐに酵素による分解が始まる。しかし、乾燥したものには水が含まれていないので酵素による分解は殆ど進まない。


@ 糖質・脂質・蛋白質の分解(動物質と植物質)
一般細菌や糸状菌によって分解が始まる。初期段階ではまずカビが発生して、次に急速に菌が増殖する。そのとき発する熱は一次発酵熱としてとして約40℃前後まで上昇する。

A ヘミ・セルロースの分解(植物質のみ)
ヘミ・セミロースはセルロースと共に植物細胞の主成分である。それは主として放線菌である。

B セルロースの分解(植物質のみ)
@ セルロース分解菌類による。主として高温菌で60〜70℃前後まで発熱する。(二次発酵)
(例)
綿毛・・・・昔は綿屑を温床の材料として使った。綿毛は98%がセルロースである為に分解期間が長く、その為に発熱期間も長い。また、発酵時に比較的高い温度が得られる。

コウジカビ、アオカビ、フザリウム属、ケトミウム属、ミロテシウム属、ペニシリン属、トリコデルマ属
木材腐朽菌・・・・ハイイロカビ科、ツキヨタケ科、マイタケ科、ウスバタケ科、サルノコシカケ科(リグニンも分解する)

A セルロース分解細菌による
好気性(グラム陰性、陽性細菌)、嫌気性胞子形成菌、バチルスなどの細菌、放線菌などの高温菌。

C リグニンの分解(植物質のみ)
リグニン・・・・木質素とも言い、植物の成熟した木質細胞壁に多量存在する。化学的処理や細菌の分解作用に対しても抵抗性が強い。

その作用
@ 細胞壁のセルロース中に浸透して強度を与えている。
A 細胞と細胞の接着剤の役割
B 導管や貯蔵組織に沈着して細胞液が流失するのを防止し、微生物の侵害に強く抵抗している。
  以上のような作用があるために植物質中でも一番分解が遅い物質である。

その分解者は
@ コウヤクタケ科、サルノコシカケ科、スエヒロタケ科、シメジタケ科などの白色腐朽菌。
A 細菌類(ピシュドモナス)
B 放線菌(ストレプトマイシンなど、褐・青・緑・橙・黄などの色素が出る菌類)
C 不完全菌(フザリウム)


4) 菌類の駆除と生育温度

表−F
病原体及び他の植物加害生物駆除に要する温度表
(ベーク&ロイスタッシャ両氏)
湿潤状態で30分間処理の温度です。


微生物の生育適温

1.超高温菌
80〜90℃以上で生育するもの。

2.高温菌
生育適温が55℃以上のもの。但し、37℃以下で生育できないものや生育できるものもある。

3.中温菌
37℃付近に生育適温を持つもの。

4.低温菌
0℃の温度にて1週間経過したとき、目に見えるコロニーを作るもの。


X. 有機物を使った土壌の硝酸化成

一般に市販されている配合肥料や尿素・硫安そして配合液肥などに含まれる窒素成分は、アンモニア態窒素を主構成々分としている。この窒素成分は、一部の作物を除き畑作ではアンモニア態窒素のままでは作物には吸収されず、一旦、吸収できる硝酸態窒素に変化をさせなければならない。そして、これには硝酸化成菌という菌の働きが必要であり、その硝酸化成菌を盛んに活動させるためには堆肥などの有機物の力を借りなければならない。

そのようなことを検証すべく、今までにほとんど堆肥(有機物)を使用せず栽培していた圃場に、当時輸入され始めたカナダ産ピートモスを使って栽培を試みた。そして不定期的ではあるが土壌分析をして、その変化を観察した。さて、観察した窒素の変化は・・・・。

結果は期待した通り、アンモニア態窒素が硝酸態窒素に速やかに変化をしている様子が見られる。そして、作物はこの硝酸態窒素を体内に取り込むこととなる。

 表−G-1 土壌分析と追肥から見る窒素還元の例(作物:チンゲン菜)
分析者:米澤農業研究所 .
単位mg/乾土100g(≒Kg/10a)
分 析 日
肥料投入量
酸度
(pH)
アンモニア
(NH4-N)
硝酸
(NO3-N)
全リン酸
(P2O5
加里
(K2O)
石灰
(CaO)
苦土
(MgO)
可給態鉄
(Fe)
追 肥
標準値 6.0〜6.2 2〜3 30 50 50 320 30 2.7
’87.03.25 7.0 14.33 6.73 508.1 35.19 561.2 20.16 0.00
30 Kg
60 〃
20 g
16.23
9.84


2.70
硫酸加里
硫酸苦土
微量要素
修正値 14.33 6.73 508.1 51.42 561.2 30.00 2.70
(解説)
この表(G-1)は、ピートモスを投入前の分析。有機物のない土壌は、この分析値で見られるように、窒素成分は必ず アンモニア>硝酸 となっている。このように有機物の無い土壌は硝酸化成菌が活性せず硝酸化成が出来ない。これに有機物を投入すると、下表(G-2)のように硝酸化成菌は活性化して アンモニア<硝酸 となる。


 表−G-2 土壌分析と追肥から見る窒素還元の例(作物:チンゲン菜)
分析者:米澤農業研究所 .
単位mg/乾土100g(≒Kg/10a)
分 析 日
肥料投入量
酸度
(pH)
アンモニア
(NH4-N)
硝酸
(NO3-N)
全リン酸
(P2O5
加里
(K2O)
石灰
(CaO)
苦土
(MgO)
可給態鉄
(Fe)
追 肥
標準値 6.0〜6.2 2〜3 30 50 50 320 30 2.7
’87.06.14 6.5 3.01 6.33 384.03 22.28 547.17 42.33 0.25
40 Kg
50 〃
20 g
6.80 6.80
27.05


2.70
硝 安
硫酸加里
微量要素
修正値 9.81 13.13 384.03 49.33 547.17 42.33 2.70
(解説)
このように僅かながら硝酸化成が進んでいるのが分かる。


 表−G-3 土壌分析と追肥から見る窒素還元の例(作物:チンゲン菜)
分析者:米澤農業研究所 .
単位mg/乾土100g(≒Kg/10a)
分 析 日
肥料投入量
酸度
(pH)
アンモニア
(NH4-N)
硝酸
(NO3-N)
全リン酸
(P2O5
加里
(K2O)
石灰
(CaO)
苦土
(MgO)
可給態鉄
(Fe)
追 肥
標準値 6.0〜6.2 2〜3 30 50 50 320 30 2.7
’87.10.08 6.8 2.94 36.69 389.94 58.86 547.17 65.72 0.85
20 g 2.70 微量要素
修正値   2.94 36.69 389.94 58.86 547.17 65.72 2.70
(解説)
@ ここまで来ると完全に硝酸化成が出来上がっている。
A また、最初の段階から石灰が561.2Kgと大過剰になっていたが、石灰は必ず320Kg/10aに調整しておくべきである。他の成分でもいえることだが、このように成分が大過剰になると作物は吸収しなくなり、その量は中々減らない。


Y. 完熟堆肥の自家製造

1. 必ず、無消毒の土壌(容積比にして約10%の量)を混入する。

土壌には嫌気性菌や好気性菌などの有益菌が多く生存している。また、害になるといわれる菌も生存するが、これらの菌もお互いに牽制し合いながら生態系を守もっている。こ従って、これらの菌を共生させることが土作りの最大のポイントである。
(消毒をすることで特定の菌だけを駆除し、生態系を乱すことの方が不安は大である)

2. 土間や畑地または山林地のように水分が地下に抜けやすい場所に積み上げる。(コンクリートの土間などは不向き)

水分が抜ける構造にした場合、それが抜けるとき養分までも抜けるのではないかという意見がある。抜けた養分は後で補給すれば良い。ここで重要なことは外材のおが屑や家畜などの排尿などからもたらされる塩分(NaCl)を取り除く必要がある。また、コンクリートの土間では水分が抜けないだけでなく、その原材料のセメントに含まれる高いアルカリ分が、作ろうとする堆肥に悪影響を及ぼす可能性があり、不向きである。
 (高いアルカリは除菌の消毒剤として使用する ⇒ (例)畜舎の敷地は消石灰を散布して病害の侵入を防御している。)

3. 常に大量の酸素を供給する工夫。

菌類の増殖には大量の酸素が必要である。従って、週に一回ないし10日に一回は堆肥を切り返す作業をする必要がある。また、それを2〜3ヵ月続ける必要がある。最終的には切り返しの度にきのこが立ち、その後立たなくなるので、その時点で発酵は完了となる。また、大量の堆肥を作る際のこの切り返しの作業には大変な労力が必要となるので、高圧の送風機を利用したエアーレーション(塩ビのパイプなどに穴を開け、その穴から空気を圧送するの設備のこと)を導入するなど機械的な作業の検討をする必要がある。

4. 牛糞などのような大鋸屑や尿を含んだ堆肥には被覆をしないこと。必ず、雨にさらした状態にしておく。

2.項でも説明の通り脱塩処理をする必要がある。出来るなら一梅雨の期間の大量の雨にさらしておくこと。

5. 水分はいつも十分に含ませておく。

最適水分量は60〜75%。40%以下では乾きすぎとなる。季節的には、日照りの続く期間でも堆肥には十分な水分を含ませることが重要な要件である。また、水をかけた場合その水分が下部に浸み落ちて行くこと。その時、空気はその浸み落ちる水の後ろから連なって行き、堆肥に浸み渡ることとなる。(水の抜けないコンクリートの土間は不向き)

6. きのこの発生中はまだ分解途中、立たなくなって完了となる。


7. 豆知識

@ 堆肥を湿物で3000Kg投入した場合、その圃場のN:P:Kは下のようになる。
 参考資料:(有機物の成分表 牛糞−@から)

投入する堆肥量3000Kg(約6m3),水分率70.3%
実堆肥量(乾物堆肥量) = 3000Kg × ( 1 − 0.703 ) = 891Kg
注)施用量の計算する場合、堆肥による代替成分率及び肥料効率を考慮して計算するが、このケースではその考慮をしていない。
成 分 乾物堆肥量 成分量(%) 成分投入量(Kg)
窒 素 891 × 1.70 15.1
リン酸 × 2.66 23.7
加 里 × 2.96 26.4
石 灰 × 2.22
19.8
苦 土 × 1.20 10.7


A 堆肥で元肥を作る際に必ず不足となる成分として石灰分がある。この成分は予め元肥として混ぜておかなければならない肥料である。この石灰分は堆肥のような有機物に含まれる量はごく少量である(上記7-@の通り)。この石灰分は組織をしっかり密に作るので作物の日持ちが良くなり、その重量も増す。収量・品質、共に向上させる働きがあるのでしっかり与えるようにする。

 表−H 投入する石灰肥料とその目安の量は
*成分量
炭酸カルシウム (CaO:50%として換算 )
炭酸苦土石灰 (CaO:50% MgO:10% として換算 )


今まで使ったことが(ある○ ない×) 入 れ る 肥 料 名 と そ の 量 入れた成分量(Kg/10a)
  石  灰 苦  土 炭酸カルシウム(Kg/10a) 炭酸苦土石灰(Kg/10a) CaOとして MgOとして
1) × × 200 200 200 20
2) × −−− 200 100 20
3) 200 −−− 100 −−−
4) × 400 −−− 200 −−−
 B-1 <<良い例>>
仮に、一般に見られる欠乏気味の圃場に@とAの処理をした場合、このように標準に近い土壌に修正されたこととなる。
 表−I
単位 mg/乾土100g(≒kg/10a)
pH
(KCl)
アンモニア
(NH4-N)
硝酸
(NO3-N)
全リン酸
(P2O5)
加里
(K2O)
石灰
(CaO)
苦土
(MgO)
可給態鉄
(Fe)
標 準 土 壌 約6.2 2〜3 30 50 50 320 30 2.7
分析例(いちご) 5.0 4.7 2.0 97.0 4.2 72.4 8.6 0.14
@堆肥成分投入量   15.1 23.7 26.4 19.8 10.7 −−−
A-1)のケースで修正 −−− −−− −−− 200 20 −−−
修 正 土 壌 21.8 120.7 30.6 292.2 39.3 0.14
分析例(いちご)は2008年8月にいちごの栽培圃場を土壌分析の例として参考にした。
上記の分析例に基づいて、牛糞3000Kgの堆肥を使い圃場に有機物を投入。更に、石灰と苦土を補給するために炭酸カルと苦土石灰を用いた。これでも理想とする堆肥投入量の乾物3トンには足りないので、その場合、更に養分がないといわれるピートモス(規格6qbf)を20袋ほど併用すると良い。
問題点:堆きゅう肥を満足に使用した場合、どうしても加里・リン酸が過多になる。


B-2 <<悪い例>
仮に、一般に見られる加里と苦土分の多い圃場に@とAの処理をした場合にはこのように加里と苦土分が大過剰となり写真のように作物が萎れる。
 表−J
単位 mg/乾土100g(≒kg/10a)
pH
(KCl)
アンモニア
(NH4-N)
硝酸
(NO3-N)
全リン酸
(P2O5)
加里
(K2O)
石灰
(CaO)
苦土
(MgO)
可給態鉄
(Fe)
標 準 土 壌 約6.2 2〜3 30 50 50 320 30 2.7
分析例(ぶどう) 5.8 2.5 17.8 318.0 131.2 72.7 108.4 0.10
@堆肥成分投入量 15.1 23.7 26.4 19.8 10.7 −−−
A-4)のケースで修正 −−− −−− −−− 200 −−− −−−
修 正 土 壌 35.4 ★341.7 ★157.6 292.5 ★119.1 0.14
分析例(ぶどう)は2009年4月にぶどうの栽培予定圃場を土壌分析の例として参考にした。
牛糞3000Kgの堆肥を使って圃場に有機物投入し更に、石灰と苦土を補給するために炭酸石灰と苦土石灰を用いた。


 写真−L トマトの施肥過多による萎れ (撮影:’09年 5月 9日)
施肥過多による萎れ現象
項目 mg/乾土100g 特  記
pH(KCl) 6.5
NH4-N 5.50
NO3-N 24.30 最適
P2O5 272.50 大過剰
K2O 167.30 大過剰
CaO 123.1 + 200 200Kgは追肥
MgO 68.90 大過剰
Fe 0.09 欠乏

★)此処までは難なく成長してきたが、着果数が多くなったのと日照りが強くなったため、トマトはその負担に耐えられなくなり、昼間萎れる。そして日没と同時に回復する。このような事を繰り返しながら次第に枯れて行く。これには分析表の通り、加里と苦土の大過剰が大きく影響している。(このように大過剰になったのは、多量の堆肥の長年使用が原因)



■ ついでながら、その後のレポート・・・・

 写真−M 施肥過多による萎れの回避手当て後 (撮影:’09年 5月18日)
施肥過多による萎れ現象を回避

<< 対策 >>
このような時の回避手当ては蒸散を抑えて、体内の水分を体外に出さないようにすることが最大のポイント(灰色カビ病が怖いなどと考えない)。つまり、、、、

@葉面散布を、朝10時位(クエン酸の1000倍液を3日毎に含ます)・昼14時・夕方17時に葉の両面にたっぷりかかるよう毎日励行する。これは葉面から植物体内に水分を補給する働きも兼ねている。灌水は日没後少量与える。

A2重カーテンで日光を遮るようにする。
(出来るなら遮光ネットか不織布の方が望ましい)
換気が出来るよう、空気の抜ける道を幅にして1m程度開けておくこと、全閉にしない。

B樹勢が回服してきたため、玉の伸びが始まり(写真−B)石灰欠乏が目立つようになってきた(写真−A)ので塩化カルシウム330倍(1トン当り3Kg)を週2回(14時の分に含ます)、灌水時に硝酸カルシウムトン当り2Kgを週2回追肥する。(この時点でカーテンは開け、光合成を促進させる)


 写真−N トマトの石灰欠乏 (撮影:’09年 5月28日)
石灰欠乏の葉
玉の伸びが良くなってきて、このような症状が目立つようになってきた。カルシウムの欠乏症状。
 写真−O トマトの玉伸び具合 (撮影:’09年 5月18日)
トマトの玉伸び具合
樹勢が回復してきて、玉も順調に伸びて来ている。
  (二本仕立ての栽培方法でやっています)


 写真−P トマトの生育状況
トマトの生育状況 施肥過多の症状は殆ど解消して、成長も良くなりました。
 写真−Q トマトの玉伸び具合撮影:’09年 5月28日
トマトの玉伸びと着色具合
樹勢も回復して玉も順調に伸び、着色して来た。形状も問題ありません。


この後の処置は、、、、
@ 葉面散布は毎日散布。塩化カルシウム3Kg/トン当たりとグリーンアップ1000倍を2日に1回。クエン酸1Kg/トン当たりを1回/週で混入し与える。
A 灌注は毎日励行。液肥の追肥は石灰分のみとする。硝酸石灰2Kg/トン当たりとグリーンアップ1000倍を2日に1回行う。

  葉面散布の効果
葉面散布の効果

Creder氏(米国)は葉面散布を行った場合の養分の吸収効果を、根を100とした時、その各部位を各々の割合で示している。この図では、要素欠乏の解消対策や水分の補給としての葉面散布の効果は非常に大きいということを示しています。


= 完 =




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