【神葬祭(神道の葬儀)】
●神葬祭とは
神道では人が亡くなることを帰幽(きゆう)と申します。幽世(かくりよ)の神々の世界に帰り、30~50年の時を経て、春秋や式年の折々の霊祭を奉仕することにより、やがて家の祖霊となるという考えに基づいています。故人の魂魄(こんぱく)の神霊は霊璽(れいじ)と、ご遺体(遺骨)に留まります。生前の御事績を讃え、遺家族始め関係者が在りし日の故人を偲び厳粛なる葬送の儀を行うと同時に、故人にはそうした様を直接的に語りかけ、故人にも現世(うつしよ)とのお分かれをして戴き、神霊の永遠の御安鎮を乞願うことを、我国の古俗としてのお弔いの精神に則って奉仕することが神葬祭の意義です。
葬儀の後の神霊は、家の御霊舎(みたまや)とお墓(奥都城/おくつき)に鎮まり、以後は双方での御霊祭が同時に続けられます。特に、50日間は亡くなった方の御霊は居住した家(または喪家)に留まるとされています。この間は故人を偲び、慎ましい生活が望まれます。亡くなった方の神霊は、短時間に遙か彼方に消えるのではなく、暫くは呼べば応える程の処に鎮まるとされます。故人の後ろ姿を見送るのではなく、常にこちらを向いている故人が、徐々に“あとずさり”されていく姿を見守るとお考え下さい。
●神葬祭前儀
- 家人・親類に不幸があれば、先ず神社へその旨を連絡し、病気平癒の祈願をしていれば当該神社の大前にその旨を奉告し、その祈願を解きます。特に葬儀日程については、葬儀社の助言をもとに神社と最初によく打ち合わせをして下さい。
- 葬儀社を決定し、直ちに喪家(故人の居宅または喪主の家)の適宜の一室に御遺体を安置し枕飾りを依頼します。御遺体安置の際は、部屋に向かって右側に頭部を向け、枕頭には御遺体に刃を向けぬようにして守刀を置きます。
- 葬儀社と葬儀の規模と内容(祭壇や玉串の数・賄いや手伝いの人等の総予算)等について打ち合わせを行います。
- 葬儀社と葬儀の規模と内容(祭壇や玉串の数・賄いや手伝いの人等の総予算)等について打ち合わせを行います。
- 神棚の供物を撤下して扉を閉め、その前面に白紙を五十日祭まで貼ります。家の御霊舎に喪主がその旨を奉告します。
- 神職に「枕直しの儀」を奉仕願い、葬祭の詳細な打ち合わせ(葬儀日程の確認・斎場・奉仕神職数等)を行います。
- 故人の経歴等の資料を作成し、なるべく早めに神社に届けるか、通夜祭の前に神職に手渡して下さい。
- 遠戚を始め、知人等関係者に日程・場所を含め連絡をします。
- 葬儀委員長を依頼し、葬儀役員を決定します。(密葬やご遺族だけでの葬儀の場合は委員長も役員も不要)
- 葬儀に献ずる饗饌(きょうせん/故人の嗜好品)の準備をします。(通夜祭と葬場祭の2回分×三方に載せ2台程度)
- 通夜祭の前に葬儀社の指導により「湯灌の儀」を行い、御遺体を棺にお納めします。(以後は「柩」となります)
・枕直しの儀(まくらなおしのぎ)
故人の死を憂い徳を偲びつつ、葬儀の準備を整える儀である。
●神葬祭本儀
- ・通夜祭(つやさい)
- 往古の殯斂(もがり)の遺風であり、葬場祭の前夜に行う重儀である。式中、故人の霊魂を霊璽に遷し留める「遷霊の儀」が行われる。
- ・葬場祭 並 発柩祭(そうじょうさい ならびに はっきゅうさい)
- 葬場祭は故人に対し、最後の訣別を告げる最大の重儀である。
- 発柩祭は葬送の儀を行うに当たり、まさに発柩せんとする時にその由を柩前に告げ奉る儀である。
- ・火葬祭(かそうさい)
- 御遺体を火葬に附する際に行う儀である。発柩祭の時に行っている。
- ・帰家祭(きかさい)
- 仮御霊舎の霊前において、葬儀が滞りなく終了した由を奉告する儀である。
●神葬祭後儀
- 火葬の後の最初の御霊祭を帰家祭と言います。これは本州などでは、葬儀を斎場ではなく主に自宅(喪家)で営む為です。尚、いわゆる五十日までの「繰り上げ祭」は致しません。神道の祭詞は、月日の経過の様子を言葉(ことのは=ことだま)として霊前に奏上するものですので、祀る側の勝手な都合を優先して奉仕は出来ません。こうしたことは、神霊に対して非礼と考えるからです。
- 葬儀後には、十日・二十日・三十日・四十日・五十日・百日の霊前祭があります。ご希望の場合は神社にご連絡下さい。当日に神職を招かない場合でも、故人の嗜好品などをお供えして家族でお参り下さい。
- 納骨祭は、五十日祭の前後に行うことが多いようです。お墓(奥都城)がない場合や、霊璽を祀る為の御霊舎(神棚とは別)がない場合などは、御相談に応じますので御遠慮なくお問い合わせ下さい。
- 亡くなってから五十日祭までの間が「第一期喪」、続いて百日祭までの間を「第二期喪」、一周年祭までの間が「第三期喪」となります。最初の一番強い「第一期喪」が明けたことを「忌明け」と称し、最後の「第三期喪」が終わると「喪明け」となります。
- 五十日祭を迎えたら、葬儀社が用意した仮祭壇を撤去し、忌明けのお祓いを行い、霊璽を家の御霊舎に合わせ祀る合祀祭(ごうしさい)を行います。同時に神棚の白紙を外して、通常通りの家庭の祭りを再開します。年末の御神札は五十日祭が終わっていたらお受け出来ます。五十日祭が終わるまでは、慎みの生活ですから華やいだ場所(慶事)や、神社の境内に入ることも遠慮します。
- 式年の御霊祭は周年(満)で行います。仏式の法要では一周忌(満)、二年目に三回忌(数え)と使い分けていますが、神道では周年祭で奉仕致します。
・毎十日祭(まいとうかさい)
帰幽の日から十日、二十日、三十日、四十日、五十日と十日毎に霊前にて行う儀である。五十日祭は最後の十日祭でもあり、これを以て仮御霊舎に祀れる霊璽を御霊舎に合祀することが多い重儀である。
※「玉串拝礼」
神葬祭での玉串拝礼では、亡くなられた方を偲び慎む心を表すという意味から、音を立てずに「忍手(しのびて)」二礼二拍手一礼をします。
※「霊前料の包み方」
神葬祭では、無地の金包みに麻もしくは、白黒か銀色の水引の物を使います。表書は、『玉串料』又は『御霊前』とします。同様に印刷された袋も使えます。また、哀悼の涙で墨も薄くなったという意味から墨は薄墨を使用します。
五十日祭以降、式年の霊祭には黄色の水引も使われます。