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日本の砂絵 海外の砂絵  
    一般的によく知られているものの中に、チベット密教の砂絵マンダラなどがあります。これは、儀式の中で修行の一環として現在も行われています。儀式は地をならすところから始まり、何日もかけて僧侶達が精巧なマンダラ図を砂で描いていきます。儀式が終わるとマンダラ図は掃き消され、泉に流されます。
ネイティブ・アメリカン(インディアン)のナバホ族でも、儀式の中で砂絵が用いられてきました。ナバホの砂絵は、メディスンマンという医師の役割を果たす祈祷師が、病気を治療する儀式の中で描かれます。患者の病気によって、そのトーテム(守り神)にちなんだ意匠を使い分けます。この儀式は、現在もナバホの人たちの間で行われています。オーストラリア・アボリジニ人の文化の中にも、同じような儀式が存在します。また、インドのタミールという地方では、女性によるコーラムという伝統芸術があり、日常的に住居や寺院の入り口に、砂でシンボルやデザインを描いていく砂絵があります。美しいコーラムで一日が始まり、風に吹かれ足で踏まれて少しずつ崩されて消えていきます。
  日本における砂絵の伝統は、現在ほぼ途絶えています。かつて、江戸時代から大正時代初期にかけての時代に、大道芸としての砂絵が存在していました。砂絵師は、庶民がにぎわう寺院の門前などで縁起のよい絵を描き、銭を貰うことを職業としていました。また様式が違った砂絵として「盆絵(盆石)」という、盆の上に砂で絵を描き、湯気で蒸して盆に定着させ額として飾る絵画がありました。砂絵師は、身分的には底辺の人の職業として存在し、一方「盆絵」は、茶道に結びついて上品な手習いとして存在していました。日本の砂絵は、いずれにしても、他の国と違って宗教的な儀式に用いるものではなく、庶民の生活の中に根付いたものだったようです。

 

【参考文献/引用図版】
文殊師利大乗仏教会 HPサイト http://www.mmba.jp/index.html
フランク・J・ニューカム画「ナバホ『射弓の歌』の砂絵」美術出版社1998.11
小山修三ら編「オーストラリア・アボリジニ――狩人と精霊の5万年」産経新聞大阪本社 1992.4
(「オーストラリア・アボリジニ――狩人と精霊の5万年」展 1992.9.10〜12.8)
久武哲也著『砂絵の文化誌−その機能とイメージの比較−』「イメージと文化」甲南大学総合研究科1991.12
色川大吉編「チベット・曼荼羅の世界――その芸術・宗教・生活」小学館 1989.3

チベット密教の砂絵マンダラ
チベット密教の砂絵マンダラ


ナバホの砂絵
ナバホの砂絵


アボリジニの砂絵
アボリジニの砂絵

砂絵師
砂絵師(近世末頃)

                 
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