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ケルト文化について  
 


 ケルト文化は、ヨーロッパにおいて2500年以上の歴史のある古い文化である。古代ケルト人は文字をもたず、宗教は自然崇拝の多神教であり、神話は口承されていった。また、彼らの想い描く世界観は独特な造形を描き出し現代にも残されている。

 
ケルトの美術と神話

 言語学的・考古学的に証明されてきた、ケルト文化のおおもとにある「ケルト(人)」とは、紀元前600年ごろに古代ギリシア人が、西方ヨーロッパにいる異民族を「ケルトイ」と呼んだことに由来する名称で、それはケルト語を話す文化集団の意味であり、人種のことではない。「ケルト」とは言語・考古・神話・美術などから再建されうるヨーロッパのなかの不可解な「異質」ではなく、明らかにヨーロッパを形成した多くの文化要素のひとつであったことは確かである。
 「大陸のケルト」文化は紀元前数百年に遡る中央ヨーロッパの鉄器文化にルーツをもち、「島のケルト」文化も、古代・中世以来今日までアイルランド、スコットランド、ウェールズ、コーンウォール、マン島、フランスのブルターニュといったヨーロッパ西端の周辺部にそれを引き継いできた。このヨーロッパを時間的にも空間的にも横断して、今日にも続いてきた文化の性質がわかるなら、それは私たちの知るヨーロッパ像を、よりさまざまな視点から点検できる可能性を秘めているということになる。
 かつてどの社会にもあったように、耳で聴かれた「神話」、目で体験された「美術」は、生身の人間の五感に訴えかけて想像力をかきたてつつ、共同体を結束させる観念をいきいきと表象する役割を果たしてきた。彼らにとっての真理を語る神話(言葉/物語)と、彼らの世界観を繰り返し描き出す美術(造形/イメージ)は、ひとつの精神文化を読み解くために不可欠な要素だっただろう。神話に描かれた物語は単なる現実社会の対応物でなく、神話を伝えようとした人々の「心に想う真理」の表明であるし、美術に描かれた造形も単一的な意味に還元できる記号ではなく、人々の「想い描く世界観」の美的表現なのである。


ヨーロッパのなかのケルト

 ヨーロッパの文化はヘレニズム文化(古代ギリシア)とヘブライズム(ユダヤ・キリスト教)の世界観を二本の支柱として完成したと説明される。自然科学の論理学も市民社会も産業革命もこの二つから生まれてきた。私たち日本人もそうした欧米の思想や制度を享受してきた。しかしながら今日さまざまな角度から「ヨーロッパ」が見直され、ヨーロッパという地域の文化的要素はより厚く広く複雑で、これらの中心的な力に完全には吸収されない智恵が行き続けてきたことおも明らかにされている。
 ヨーロッパの文学や絵画の中で、中世諸国に流布したアーサー王伝説に満ちている「魔術」や、北方ルネサンスの画家デューラーが描いた全身緑色の「森の人」の姿や、19世紀の詩人ハイネが「流刑の神々」と呼んだ妖精(エルフェ)といった想像力の産物は、キリスト教とギリシア思想だけでは説明できない。「ケルト」文化はこの説明できない要素を多分に担っている。たとえばケルトの神話には、妖精や異界の存在の不思議な力によって、この世界がつねに「変化」にさらされているという驚異の物語が満載である。
 こうした神話からいえることは、ケルトの伝説には、世の初めに唯一絶対の神がいるという一神教の考えはないということである。ギリシアのロゴスのように不変の真理が想定されるわけでもなく、またインドの法(ダルマ)の宇宙観のように超越的な理法が世界を支配していると考えるのでもないといえる。
 ヘレニズムやヘブライズムによって鍛え上げられたヨーロッパが、「この世界は一個の」超越的な不変の法則に支配・決定されている」という観念を根底にもつ文化であるとすれば、ケルト的といわれる文化にはこのように強固な「不変」への確信はないことが予測される。前者の「不変の法則」への信念に対して「変化という不確かさ」への感覚がうごめいているようにみえる。そういった文化は、日本人の文化に相当するものがあるのではないだろうか。

 

ケルトの文様について

  古代のケルトには大地から生えたような「石」そのものへの信仰があった。アイルランドやスコットランドでは、古代ケルトの石への信仰とキリスト教の融合により十字架に円環を結合され文様が彫刻された独特の石造十字架がシンボルとして見られる。
ケルト文化はキリスト教に融合されることによって、ケルト修道院が存在するようになった。そこでは、福音書の写本にケルト文様が装飾されるようになり、キリスト教の布教とともに発展していった。「渦巻文様」「組紐文様」「動物文様」は、ケルト写本を飾る代表的な文様である。 それらは、抽象的な文様を表しており、日本の「三つ巴」や中国の「陰陽」二分割の文様と違い、無限の繰り返しを表現し、先の見えない無限の増殖の構造を持っている。また、ケルト文様の美術は、近代のアールヌーボの装飾美術にも影響を与え、「絶え間ない変化」の中で現代にも受け継がれている。


ケルトとアイヌの文化


  これらのケルトの文様には、日本のアイヌの文様に類似したものが見られるように思う。アイヌの文化も文字を持たない文化であるという論がある。これらの文化を文様から比較検討し、今後の研究にしていきたいと思う。



    

【参考文献/引用図版】
鶴岡真弓・松村一男 著「図説ケルトの歴史 文化・美術・神話をよむ」ふくろうの本 河出書房新社 1999.8
サイモン・ジェームズ著「図説ケルト」東京書籍 2000.6 
水引館 http://www.mizuhikiya.com/shopping/shugi-goshiki.html
【図1】鶴岡真弓・松村一男 著「図説ケルトの歴史 文化・美術・神話をよむ」ふくろうの本 河出書房新社 1999.8
【図2】鶴岡真弓・松村一男 著「図説ケルトの歴史 文化・美術・神話をよむ」ふくろうの本 河出書房新社 1999.8
【図3】鶴岡真弓・松村一男 著「図説ケルトの歴史 文化・美術・神話をよむ」ふくろうの本 河出書房新社 1999.8
【図4】水引館 http://www.mizuhikiya.com/shopping/shugi-goshiki.html
【図5】スピリチュアマガジンKAZUART http://www.kazuart.com/nazo/kodaibunmei/hayato/kiji/hayato/index.html
【図6】アイヌ文様 http://homepage3.nifty.com/field1/subk24.htm

 







    

 

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【図1】ケルト十字架

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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【図2】ケルト ケルズの書

 

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【図3】ケルト マルコ福音書扉絵

 

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【図4】日本の水引 

 

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【図5】アイヌ 渦巻き模様(モレウ)



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【図6】アイヌの刀下げ紐

 

 



                 
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