ここでは,皆様からご相談をよく受ける法律問題について,ポイントを絞って解説しています。
<債権回収>
<債務>
<不動産取引>
<相続>
<交通事故>
<労働問題>
<民法改正>

<債権回収>

○ 売掛金の消滅時効について
2014.06.03
  商取引上の債権は,商法第522条により,原則として5年間で時効が完成することになっています。しかし,売掛金については,民法で,種類により,3年,2年,1年,などと短期消滅時効が定められおり,注意が必要です。主なものとしては,以下のとおりです。

  【3年の消滅時効】
   建設業者の工事請負代金,自動車修理代金,ホームページ作成代金,病院の診療代,薬剤費など。

  【2年の消滅時効】
   卸売業,小売業などの販売する物品の商品代金,理髪店の理容代金やクリーニング屋の代金, 学習塾や習い事の月謝など。

  【1年の消滅時効】
   運送業者の運送代金,レンタカー代金,ホテルや旅館の宿泊料, 飲食店の飲食代金(飲み屋のツケなど),損害保険や生命保険の保険料など。

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<債権回収>

○ 消滅時効の中断
2014.10.21
Q: 当社の売掛先で支払いが滞っているところがあります。めぼしい資産はなく,訴訟を起こしても費用倒れになってしまいます。とりあえず,売掛債権が消滅時効にかからないよう,時効中断の手続をとりたいのですが,簡単な方法はないでしょうか。

A: 消滅時効の中断の方法には,訴訟,支払督促,仮差押え,内容証明による催告などがありますが,もっとも簡単で確実な方法は債務者に債務を承認させることです。具体的には,債務承認書,債務残高確認書,債務弁済を約束する念書,支払猶予依頼書などを作成して,債務者に署名押印してもらいます。これらの書面が,債務を承認した証拠となります。これら書面に署名捺印を拒否された場合でも,売掛金の一部(1円でもいい!)の弁済をしてもらえば,一部弁済が「債務の承認」に該当しますから,消滅時効は中断します。この際には,売掛金の一部として受領したことを明記した領収書を交付し,こちらは控えを保管しておけば,これが証拠になります。

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<債権回収>

○ 動産売主の先取特権(さきどりとっけん)
2014.11.18
Q: 当社はA社に商品を売却しましたが,代金を受け取る前にA社は破産手続開始決定を受け,破産管財人がA社の財産を管理しています。当社が売却した商品はまだA社の倉庫に保管されています。当社は破産管財人に商品の返還を求めるなど何らかの方法で他の債権者に優先して債権の回収をすることはできないでしょうか。

A: 御社がA社に売却した商品は所有権留保などの特約がない限り,代金支払い前でも,A社の所有となりますので,商品の返還を求めることはできません。従って,売掛金を破産債権として届出して,配当を受けうるにとどまるのが原則です。しかし,売掛金を有する売主は,買主に売り渡した商品に対して先取特権を有しています。先取特権とは,相手方の財産から他の債権者に先だって弁済を受けられる権利であり,動産売買の売主は売り渡した商品について先取特権を有しています。商品がまだ破産管財人の管理下にある場合は,先取特権に基づいて裁判所に動産競売開始許可決定を求め,動産競売という手続によって,商品の売却金から配当を受けることができます。なお,もし破産開始決定前にA社が商品を売却し,引き渡してしまっていたとしたら,その売却先に対するA社の代金債権に対しても先取特権を行使することができますが,先取特権を行使するためには,その代金が破産管財人に支払われる前に御社が債権差押命令申立てをして差押えをしなければなりません。

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<債務>

○ 動産先取特権の効力
2014.12.10
Q: 当社(A社)の買掛先B社が破産申立をしましたが,B社の破産管財人から連絡が来て,破産管財人に買掛金を支払ってほしいと言われました。ところが,その直後,B社に売掛金を有する債権者C社から連絡が来て,B社の当社に対する売掛金を差し押さえるので,破産管財人への支払いを待ってほしいとの連絡を受けました。どうしたらよいのでしょうか。

A: 本件は,売主が買主に売り渡した商品を買主が第三者に転売した直後に買主が自己破産をしたケースです。売掛金を有する売主C社は,買主B社に売り渡した商品に対して先取特権を有しています。先取特権とは,相手方の財産から他の債権者に先だって弁済を受けられる権利です。商品がまだB社の下にある場合は,先取特権はこの商品に対して行使されることになりますが,転売された場合,その転売先A社に対するB社の代金債権に対しても先取特権を行使することができます。しかし,先取特権を行使するためには,その代金がB社に支払われる前にC社がB社の代金債権の差押えをしなければなりません。つまり,A社がB社に代金を支払ってしまったら,もはや先取特権を行使することはできません。C社が差押えをするためには,B社の代金債権について裁判所に債権差押命令の申立をしなければなりません。そして裁判所が債権差押命令を発令し,この命令がA社に送達されたら,それ以降,A社は代金をB社に支払うことが禁止されます。仮にA社がB社に代金を支払ったとしても,C社との関係では無効になり,A社はC社に対して二重弁済を強いられることになります。
 以上から,御社(A社)としては,C社から,破産管財人への支払いを待ってほしいと要請されても,債権差押命令の送達を受けるまではこれに応じる義務はなく,破産管財人に支払いしても問題はありません。

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<不動産取引>

○ 売主の瑕疵担保責任と仲介業者の説明義務違反
2015.01.16
Q: 先日,私は,仲介業者B社の仲介により,Aから中古住宅を購入しました。購入して引越した後,家の前に設置してあるプロパンガスボンベの裏の壁に穴が空いていることに気がつきました。私は売主Aと仲介業者Bに対し,修理費用を請求できるでしょうか。

A: まず,売主Aに対しては,瑕疵担保責任として修理費を損害賠償請求することが考えられます。瑕疵担保責任を追及するためには,壁に穴が空いているという瑕疵が「隠れた」ものであることが必要であり,契約時に「買主が瑕疵を知らずかつ知らないことに過失がないこと」が必要であるとされています。あなたが,プロパンガスボンベがあったために壁の穴に気付かなかったことが無理もない状況であれば,瑕疵が「隠れた」ものであるといえ,Aに対し,修理費を請求できるでしょう。仮に,あなたが壁の穴に気付かなかったことに過失があるとしても,仲介業者B者に責任追及できる可能性があります。仲介業者は,売主の提供する情報のみに頼ることなく,自ら通常の注意を尽くせば仲介物件の外観(建物内部を含む。)から認識することができる範囲で,物件の瑕疵の有無を調査して,その情報を買主に提供すべき契約上の義務を負うとされています。従って,仲介業者Bがこのような義務を怠って,あなたに中古住宅を仲介したとしたら,仲介業者Bに対して,修理費の請求をすることが可能です。

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<債権回収>

○ 破産した売主との売買契約
2015.04.06
Q: 当社がA社に注文した商品が,納期を過ぎても届かないので連絡したところ,破産手続が開始されたと聞きました。まだ代金を支払っていませんが,今後どうなるのでしょうか。

A: 御社とA社との間には当該商品の売買契約が成立していますが,A社は商品引渡義務を,御社は代金支払義務を,それぞれ履行していない状態です。このような場合,A社の破産管財人は,その売買契約を,@解除するか,または,A商品を引き渡した上,代金の支払い請求をするか,いずれかを選択することができます(破産法53T)。破産管財人が解除すれば,御社は代金の支払いをする必要はなくなりますが,履行の選択をしたら,御社は商品の入手はできるものの,代金の支払いをしなければなりません。破産管財人がなかなか上記の選択をしない場合は,破産管財人に対して,相当の期間を定めて,解除するのか,履行の選択をするのか,決めるように催告することができ,その期間を過ぎても破産管財人が選択しない場合は,解除したものとみなされます(破産法53U)。また,破産管財人が解除を選択した結果,御社に損害が生じた場合は,その損害賠償請求権は破産債権となり(破産法54T),届出すれば配当を受けられる可能性があります。もし,御社に損害が生じるというのが代金の一部を支払っていたことであれば,御社は財団債権者としてその返還を求めることができます(破産法54U)。その反面,御社が商品の一部の引渡を受けていて,破産管財人が解除を選択した場合は,御社は破産管財人にその返還をしなければなりません(民法545T本文)。

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<債権回収>

○ 破産した売主に対する商品の引渡請求
2015.05.08
Q: 当社はA社から商品を購入し,代金を支払いましたが,商品の引渡前にA社の破産手続が開始されました。A社の破産管財人に対して,商品の引渡しを求めることはできないでしょうか。

A: 特約がない限り,商品の所有権は御社とA社が売買契約をした時点で御社に移転しますが(民法176),御社が対抗要件(動産の場合は引渡し)を具えていない以上,破産管財人に対しては,取戻権(破産法62)を行使することはできません(民法178)。従って,御社は破産管財人に対して商品の引渡しを求めることはできず,商品の引渡請求権を破産債権として届出して(破産法103U@イ),配当を受けるしかありません。なお,届出する際には,売買代金などを基礎として,商品引渡請求権を破産手続開始時における評価額で届出しなければなりません。

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<相続>

○ 遺産分割協議と相続税
2016.02.22
Q: 半年前、私の母が亡くなったのですが(父はすでに死去しています。)、私の兄との間で遺産分割についての話合いがいまだにまとまらず、現在、母の名義になっている財産は兄が事実上管理している状態です。
 そんな状況の中、税務署から相続税の申告用紙が送られてきました。私は、手許にまとまった金銭がなく、とても相続税を支払うことはできません。兄が管理している母名義の預金から私の分の相続税を支払うことはできませんか。

A: 遺産分割についての話合いがまとまらない限り、母名義の預金から相続税を支払うことは極めて困難です。
 相続財産に関する費用は、相続財産の中から支出することになります(民法885条1項)が、相続税は相続財産の取得に対する課税として各相続人が負担するものなので、相続財産に関する費用には該当しません。したがって、兄に対し、母名義の預金の中からあなたの分の相続税を支払うよう求めることはできません。
 また、銀行から母名義の預金の払戻しを受けることも困難でしょう。遺産分割が済んでいない場合、相続財産は法定相続分に従って各相続人に帰属することになります。したがって、母名義の預金はあなたと兄に2分の1ずつ帰属することになり、本来であれば、あなたは銀行から母名義の預金のうち2分の1の金額の払戻しを受けることができるはずです。しかし、実際には、銀行では、相続人全員の同意書又は遺産分割協議書がなければ預金の払戻しに応じないという取扱いとなっています。
 以上のとおり、遺産分割についての話合いがまとまらない状態では、母名義の預金から相続税を支払うことはできないので、早急に遺産分割についての話合いをまとめる必要があります。

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<交通事故>

○ 交通事故の損害賠償額について
2016.04.01
Q: 数ヶ月前に交通事故にあい,足を骨折して1ヶ月の入院を余儀なくされました。その間,仕事も休まざるを得なくなったのですが,保険会社は150万程度の賠償金を提示してきています。後遺症もありそうですし,もっと増額してもらうことはできないのでしょうか。

A: 交通事故による慰謝料等の損害賠償を請求する際の基準としては,自賠責保険,任意保険会社の保険,弁護士会の基準の三つがあります。それぞれについて,簡単に説明してみましょう。
 自賠責保険は強制保険ですが,人身に対する損害のみが賠償の対象となっており,車両等の物損は対象外です。そして,被害者1名あたりの損害の上限は,傷害による損害ついては120万円,後遺障害による損害については4000万円となっています。
 任意保険会社の保険では,人損,物損両方を対象としています。賠償額の上限は契約によって様々ですが,傷害や後遺障害の慰謝料などは任意保険会社独自の基準で算出されます。次に説明する弁護士会の基準と比較して,低い金額となる場合が多いといえます。
 弁護士会の基準は,裁判所の考え方や判例を参考に東京三弁護士会の交通事故処理委員会が公表しているもので,多くの裁判所で裁判の基準としても運用されています。弁護士会の基準で損害を算定した場合,一般的に,自賠責保険や任意保険よりも高い賠償額となります。
 保険会社と交渉する際に,弁護士会の基準を主張した場合には,相談者に支払われる賠償金が増額される可能性があります。保険会社と示談する前に,弁護士に相談されてみてはいかがでしょうか。

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<相続>

 ○ 遺留分減殺請求
2016.04.26
Q: 先日,私の夫が亡くなったのですが,夫が亡くなった後,財産を全て息子に相続させる旨の遺言が出てきました。息子は,この遺言を根拠に,夫の財産は全て自分のものであると言い張っています。私は,夫の財産が全く手に入らないのでしょうか。

A: 遺留分減殺請求権を行使することにより,夫の財産の一部を取得することができます。
 被相続人(亡くなった方)の配偶者・子・直系尊属(親,祖父母,曽祖父母など)に該当する相続人については,遺留分という形で一定の相続分が保護されます。相続制度が,遺族の生活を保障するという機能や,相続人と被相続人がともに築いてきた財産を清算するという機能を有することを考慮して,一定の相続人について遺留分という保護が与えられています。
 遺留分の割合は,直系尊属のみが相続人となるときは被相続人の財産の3分の1,その他の場合は被相続人の財産の2分の1です(民法1028条)。遺留分の額及び遺留分の侵害額の算定にあたっては様々な考慮要素がありますが,被相続人の財産に前記の遺留分の割合と法定相続分の割合(民法900条)を乗じたものが遺留分の額となり,遺留分の額から遺留分権利者が相続によって得た財産の額を控除したものが遺留分の侵害額となるというのが基本的な考え方です。
  遺留分の額 = 被相続人の財産 × 遺留分の割合 × 法定相続分の割合
  遺留分の侵害額 = 遺留分の額 − 遺留分権利者が相続によって得た財産の額
 今回の事例では,相続人は妻と息子なので,遺留分の割合は2分の1です(民法1028条2号)。また,遺留分権利者である妻の法定相続分の割合は2分の1です(民法900条1号)。したがって,遺留分の額は,夫の財産に2分の1を乗じ,さらに2分の1を乗じたもの,つまり,夫の財産の額の4分の1ということになります。そして,妻が相続によって得た財産の額はゼロなので,遺留分の額がそのまま遺留分の侵害額となります。
 妻は,息子に対して遺留分減殺請求権を行使することにより,遺留分の侵害額に相当する財産を息子から取り戻すことができます。
 遺留分減殺請求権は裁判外で行使することが可能なので,まずは遺留分減殺請求権を行使する旨を息子に通知し,話合いをして夫の財産の返還を求めるのがよいでしょう。
 話合いがまとまらなかった場合,訴えを提起する前に,息子を相手方として家事調停の申立てをすることが必要となります(家事事件手続法257条1項)。家事調停では,調停委員という第三者を介して話合いが行われます。
 そして,調停が調わなかった場合,息子を被告として訴えを提起し,最終的には判決によって権利を実現することになります。

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<債権回収>

○ 破産手続における売掛債権
2016.07.12
Q: 取引先が裁判所に破産の申立てをしたという情報があり,当社はその会社に対し,売掛金を有しています。今後,破産手続において当社はどのように対応すればよいでしょうか。

A: 裁判所は,破産手続開始を決定すると,申立書の債権者一覧表に記載のある債権者に対し「破産手続開始通知書」を発送します。この通知書は次の二種類あります。
@ 債権届出期間の記載がある場合【債権調査型】
 配当の可能性が高い案件です。届出期間内に,裁判所に債権届が着くように送付してください。債権届出後,破産管財人から届出内容の確認や資料の追完を求める連絡が来る場合があります。その後,集会期日において債権調査が行われ,実際に配当があれば,破産管財人から御社あてに「配当についての通知書」と題する書面が届きますので,同封の「振込依頼書」に記入押印して返送すれば,配当を受けられます。なお,手形金債権で届け出た場合は,手形原本の提出を求められるため,手形原本の紛失にご注意ください。
A 債権届出期間期間の記載がない場合【留保型】
 「破産手続開始通知書」の下段注意書きに「…破産債権の届出期間と破産債権の調査をするための期間を当面定めないこととしました」等の記載があります)。配当の可能性が低い案件です。債権届をする必要はありません。ただし,数か月後「債権届出期間及び債権調査期日の通知」と題する書面が届く場合があり,これは,当初,配当可能性が低かったが,後日破産財団が増加し,配当の可能性が高くなった場合です。同通知が届いたら,届出期間内に,裁判所に債権届が着くよう送付してください。
 なお,破産手続が終了した旨の通知は,裁判所又は破産管財人から御社に届きません。税務処理で破産手続終了の書面が必要となれば,破産管財人事務所あてに「破産者○○の破産廃止又は破産終結決定書写しを送ってほしい」とのメモ,切手貼付済み返信用封筒を郵送すると返送されます。

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<債務>

○ 個人再生手続
2016.11.16
Q: 消費者金融やカード会社からの借金が500万円くらいあります。債務整理をしていただきたいのですが、小さい子供と年老いた両親が同居していることから、住宅だけは手放したくないです。住宅ローンがかなり残っているのですが、いい方法はありませんか。

A: 個人再生という手続を選択した上で、住宅資金貸付債権に関する特則という制度を使うことにより、住宅を手放さなくても債務を整理することが可能となります。
 個人再生手続を利用できるのは、将来において継続的に又は反復して収入を得る見込みのある個人の債務者で、債権の総額が5000万円を超えない場合です。おおまかにいうと、定期的な収入のある人で、住宅ローンの残額を除いて5000万円以下の借金の場合には、個人再生手続を利用できる可能性が高いといえます。
 個人再生手続には2タイプあり、その中でもよく利用される小規模個人再生手続を例にとって説明します。
 小規模個人再生は、将来継続的に得られる見込みの収入を原資として、債務者が破産した場合の配当額を上回り(清算価値保障原則といいます)、かつ、民事再生法に規定された最低弁済額の要件を満たした分割弁済を、3か月に1回以上の割合で、原則3年以内(特別な事情がある場合には最長5年まで延長可能)に行うことを内容とする再生計画案を作成し、債権者の同意と裁判所の認可を受けることにより、債務の減額を受ける制度です。難しい内容ですが、おおまかにいうと、500万円の借金がある場合には、その5分の1である100万円を3年間で弁済するという計画を、債権者の同意と裁判所の認可により、実施出来るということです。
 このような手続を利用することを前提に、債務者は住宅ローン債権者と協議の上、再生計画案において、10年以内かつ債務者が70歳以内の期限まで弁済期を延長したり、一定期間の元金支払を据え置くなどの内容の住宅資金特別条項を定め、これが裁判所に認可されれば、住宅ローン債権は特別条項の内容にしたがって変更されます。
 これらの知識をもとに弁護士等の専門家に相談してみてはいかがでしょうか。

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<債権回収>

○売掛金回収方法について(1)
2017.03.29
Q: 取引先に何らかの理由があり、支払う能力があるのにあえて支払わないといった場合、どのように売掛金を回収すればよいでしょうか。

A: まず、「支払わない」理由を聞き、妥協点を見出すなどして解決出来れば良いですが、そうでない場合、支払督促をします。支払督促する方法は、電話や面談、手紙などが考えられますが、交渉が決裂し裁判に移行する場合に備え、証拠が残る方法である内容証明郵便(配達証明付)で請求しておきます。内容証明郵便自体に法的効力が生ずるものではありませんが、弁済期を定めていない契約における遅延損害金の発生時期、消滅時効の進行を中断するための催告(民法第153条)等を立証するための有力な証拠となります。なお、商品等の売掛金債権は2年の短期消滅時効にかかります(民法第173条)。内容証明郵便による請求を受けた相手方は、こちらが裁判等の法的手段を採るかもしれないと考え、それを避けるために態度を軟化させ、支払に応じてくることもあり得ます。支払に応じない場合は、裁判などの法的手続に進みます。訴訟を提起し、裁判で勝訴すれば、判決に基づき強制執行を行えば相手方の財産から回収することが可能です。ただし、財産の有無や財産の所在が不明であれば、事実上、強制執行はできません。
 こちらが譲歩(減額や分割払い等)してでも解決したい場合には、簡易裁判所に調停手続を申し立てることにより、話合いによる解決を求めることができます。裁判所の調停委員が当事者双方の言い分を聞いて妥協点を見出そうとする手続です。分割払いなどの調停が成立すれば調停調書が作成され、その内容は判決と同様の効力が認められますので、相手方が履行しないときは強制執行が可能となります。
 調停が不成立になってしまった場合には、訴訟提起を検討します。訴訟提起前の法的手段として、仮差押えという強力な手続もあります。相手方の保有する財産に対して、裁判所に仮差押命令を発令してもらう手続です。相手方は、不動産であれば売却や担保設定ができなくなりますし、預金であれば引き出せなくなります。判決を得て強制執行するまでの間に相手方の財産が処分されてしまうのを防ぐための「仮」の保全処分に過ぎませんので、実際に相手方の財産から回収を受けるためには、改めて提訴し、判決を得る必要があります。ただ、相手方に金融機関からの借入れがある場合、仮差押えを受けることは借入金債務の期限の利益喪失事由とされていることが多く(期限の利益を喪失すると残債務を一括で支払う義務を負います)、そのことが金融機関に知られてしまうと、相手方の資金繰りを困難にさせるため、改めて提訴するまでもなく、相手方から任意の支払いを受けられることもあり得ます。ただし、こうした「強力」な仮差押命令を発令してもらうためには相応の担保金を裁判所に納める必要があり、もし提起した訴訟で敗訴した場合には、立てた担保金が、相手方が仮差押えによって被った損害に填補されてしまうリスクもあります。よって、訴訟での勝算があるときに適した方法です。  

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<債権回収>

○売掛金回収方法について(2)
2017.04.24
Q: 相手方が資金繰り等の問題で売掛金を「支払えない」場合,どのように売掛金を回収すればよいでしょうか。

A: 資金繰りが悪化するなどして相手方が「支払えない」場合は,相手方と交渉をしたところで任意での支払は困難といえるでしょう。内容証明郵便で督促する程度では,他の債権者からも内容証明郵便を受けているでしょうから,支払を期待できませんし,調停手続を行ったところで,双方が合意に至らなければ支払を強制することはできませんので,無意味になる可能性が高いです。したがって,自社商品がまだ相手方倉庫などにある場合はその返還を求めるか,ただちに仮差押え・仮処分という保全手続をとることをお勧めします。
 仮差押え・仮処分は,最終的に強制執行によって相手方の財産(預金・不動産・売掛金など)から回収を図る手続となりますので,相手方に財産がある場合が前提となります。しかし,預金を仮差押えしても,相手方がその金融機関から借入をしている場合は,約款により直ちにその債務と預金が相殺されてしまいます。不動産に抵当権が設定されていれば,仮差押えしてその後競売を申し立てても,抵当権者が優先して配当を受けてしまいます。売掛金に譲渡担保権などが設定されていれば,やはり,担保権者が優先してしまいます。したがって,日頃からこれらの情報を収集しておくことが重要になります。

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<債権回収>

○売掛金回収方法について(3)
2017.07.05
Q: 取引先が倒産した場合に、売掛金を回収する手段がありますか。

A: 取引先が倒産した場合の売掛金回収は困難を極めます。倒産の典型である破産手続の場合には、裁判所が選任する破産管財人が破産者の財産を換価して各債権者に平等に配当されますが、配当率は低く、配当ゼロの場合も少なくありません。しかし、次の努力をしてみましょう。
(1) 商品の引き上げ
 裁判所により破産手続開始決定や民事再生開始決定が出されていない段階では、まず、納品済みの商品が相手方にあるかどうかを確認し、あればその引き上げに努めます。ただ、相手方の倉庫等にある商品を相手方に無断での持ち出す行為は、建造物侵入罪(刑法第130条)や窃盗罪(刑法第235条)に該当しますので、ご注意ください。代金が未払いだからといって、引き上げが許される訳ではありません。商品の引き上げを違法とされないよう、相手方代表者、若しくは倉庫等を管理する相手方従業員の同意を得て引き上げてください。相手方の同意を可及的速やかに書面にて得ておくことがポイントです。急を要する場合は、きちんとした書式でなくとも、相手方が同意したことがわかる内容であれば構いません。しかし、後に、破産管財人から返還を求められる可能性がありますので、その場合には、弁護士に相談して対処方を検討しましょう。
(2) 動産売買の先取特権
 動産の売買代金が未払いの場合、売主は、売り渡した動産から優先的に代金を回収出来るという「先取特権」があります(民法第311条、第321条)。この動産売買の先取特権は、破産手続では別除権(破産手続に左右されずに担保物から優先的に弁済を受けることができる権利)として扱われます。売却した商品が破産管財人の管理下にあるときは、先取特権の行使が可能かどうか、弁護士に相談してください。
 また、売却した商品が、相手方から第三者に転売されているものの、その転売代金が相手方に支払われていないときは、先取特権の「物上代位」(民法第304条)によって転売代金を差し押さえ、優先的に回収することができる場合もあります。未払の売買代金の履行期が到来していることや、転売先が判明していることが前提となりますが、なるべく早く弁護士に相談し、委任することにより転売代金を回収することができる場合があります。

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<労働問題>

○労働時間とは
2018.04.26
Q: ニュースをみていたら,「ある使用者が,仕事中の従業員の待機時間を労働時間として取り扱わずにいたところ,従業員から,待機時間は労働時間に該当するとして待機時間の賃金の請求をして,使用者・従業員間で裁判している」との話題を聞きました。使用者は,労働時間を適切に管理する責務を有しているので,気になりました。そもそも労働時間とは何か教えてください。

A: 労働時間とは,「休憩時間を除いた労働者が実際に働いている時間」ではなく,「労働者が使用者の指揮監督下にある時間」のことです。
 例えば,次のような場合は,いずれも労働時間とみなされます。
      
  • 使用者からの指示があればいつでも対応できるように待機している時間(手待ち時間)
  •   
  • 昼休み休憩中に,かかってきた電話に対応するよう命じた場合,あるいは明確な指示はないが,事務所に従業員一人しかいないため,必然的に昼休み中も電話対応しなければならない場合の時間
  •   
  • 交代勤務における引継ぎや申し送りの時間
  •   
  • 企画書,広告,業務記録や報告書などの作成時間
  •   
  • 打合せや会議などの時間
  •   
  • 例えば,医療機関の施設行事などの時間とその準備時間
  •   
  • 研修時間(使用者の明示的な指示に基づいて行われる場合は,労働時間に該当しますが,明示的な指示がない場合でも,研修を受講しないことに対する制裁などの不利益な取扱いがある時や,研修内容と業務との関連性が強く,それに参加しないことにより本人の業務に具体的に支障が生ずるなど実質的に使用者から出席の強制があると認められるときなどは,労働時間に該当します。)
  •   
  • 作業前に行う準備や作業後の後始末などが使用者の黙示の指揮命令下で行われている場合の時間
  •   
  • 使用者の黙示の承認・指示と判断できる持ち帰り残業(例えば,客観的に見て所定労働時間内に処理できない業務量を指示し,残業がやりにくいなどの理由で持ち帰らなければ期日までに指示された業務を終えることができない場合)

  以上の例から,「労働者が使用者の指揮監督下にある時間」とは「労働者が使用者の明示又は黙示の指示により業務に従事する時間」ということになります。この時間分の賃金を支払っていなければ,賃金不払となり,労働基準法違反になります。

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<労働問題>

○セクシュアルハラスメント
2018.08.22
Q: 最近、セクハラがニュースなどでよく話題になっていますが,今まで職場で問題とされなかった言動がセクハラになると聞き,どこまでがセクハラになるのかわからず,職場でのコミュニケーションが取りづらくなりました。どんな点を注意しなければならないのでしょうか。

A:  セクハラは,一般的に「相手方の意に反する性的な言動」とされていますが,このうち,職場において行われるものが,裁判などで問題とされます。
 もっと詳しくセクハラを定義すると,本人が意図する,しないにかかわらず,相手が不快に思い,相手が自身の尊厳を傷つけられたと感じるような「意に反する」「性的発言」「性的行動」を指します。ですから,本人に悪意がない場合でも,相手方が不快に思えば,セクハラとなります。
 「意に反する」かどうかは,人によってその言動の受け止め方が違うので,まず,通常,嫌がられるような言動なのかという通常人を基準とし,一般的には問題とされない言動であっても,本人が嫌がっているのにその言動を繰り返すことは「意に反する」と判断することになります。
 「性的発言」の例としては,性的な冗談を言う,食事等に執拗に誘う,性的な噂を流す,個人的な性的体験談を話したり,聴いたりする,「性的行動」の例としては,肩を揉む等不必要に身体に接触する,ヌードポスターやヌード写真の出るスクリーンセイバーを使用するなどが挙げられます。
 「性的発言」では,身体や容姿,年齢のこと,私生活のこと,性差別,行き過ぎた冗談・アプローチその他が問題となりやすいです。事務所や歓送迎会などの席で「結婚しろ」,「子供を産め」,「早く結婚しないと産めなくなるよ」,「何カップ?」,「スリーサイズは?」,「イライラしてるねー。生理?」,「最近生理きてるの?」などと言ったり,接待でお酌をさせるなどもセクハラとなります。

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<民法改正>

○ 消滅時効
2019.08.22
 民法の一部を改正する法律(以下「改正民法」、改正前の民法を「現行法」といいます。)が2020年(令和2年)4月1日午前0時から施行されます。この法律は、現行法の契約を中心とした債権関係の部分が改正されたものです。改正された項目数は計200程度です。改正された項目のうち、原則的な債権の消滅時効期間については、職業別の短期消滅時効制度や商事時効をすべて廃止し、次のように統一しました。
 下記@とAのうちどちらか早い時期に時効が完成します。
 @  主観的起算点(債権者が権利を行使することができることを知った時)から5年間
 A  客観的起算点(権利を行使することができる時)から10年間

 では、具体的な事例を検討します。


Q1: 建設業者である当社Aは、Bからリフォームを依頼され、2020年3月に契約書を交わし、工事を完了した。工事代金の支払日は2020年5月末日となっているが、Bが工事代金を支払わない。消滅時効が完成する時期はいつか。
A1: 改正民法の施行日(2020年4月1日)前に生じた債権、施行日後に生じた債権であっても債権の発生原因である法律行為が施行日前に生じた債権については、その消滅時効期間は、現行法によるものとされています。そうすると、本件は現行法が適用されます。本件は商行為によって生じた債権(商事債権の時効期間は5年)ですが、職業別の短期消滅時効の定めがある時は、それに従うことになります。本件は設計や施工の報酬債権であり、その時効期間は3年なので、代金支払日の2020年5月末日から3年後に時効が完成します。

Q2: Q1の契約日が改正民法の施行日の後であれば、消滅時効が完成する時期はいつか。
A2: 改正民法の施行日の後の契約なので、改正民法が適用されます。 改正民法では、職業別の短期消滅時効制度や商事時効をすべて廃止し、客観的起算点(権利を行使することができる時)から10年あるいは主観的起算点(権利を行使することができることを知った時)から5年の、いずれかが早く満了した時点で時効が完成します。本件は、確定期限の定めのある債権ですから、客観的起算点・主観的起算点とも工事代金の支払日になりますので、工事代金の支払日から5年後に時効が完成します。

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