個人再生手続(3)〜給与所得者等再生

Q. 私は手取り年収400万円のサラリーマンですが,サラ金,信販会社などから1000万円くらいの借入れがあります。給与所得者等再生手続が利用できるでしょうか。
A. 給与所得者等再生を利用する場合,小規模個人再生を利用する場合の要件に加えて,サラリーマンなど給与又はこれに類する定期的な収入を得る見込みがある者であって,かつ,その額の変動の幅が小さいと見込まれるものであることが必要です。

 あなたのようなサラリーマンはもちろん,歩合制のタクシー運転手,アルバイトであっても,収入の変動幅が小さければこの要件を満たすと考えられます。

 ここに「変動の幅が小さい」とは,年収の変動幅が概ね20%以内に収まることと考えられています。

 あなたの給与の変動幅がこの程度であれば,給与所得者等再生を利用可能と思われます。
Q. 私の場合,給与所得者等再生では最低いくら弁済しなければならないでしょうか。
A. 仮に,債権者一覧表の負債総額が1000万円であり,債権調査の結果,確定した基準債権が900万円になったとすると,まず,その5分の1の180万円が最低弁済額になります。給与所得者等再生では,この要件に加えて,所得税等を控除した手取り年収から最低限度の生活を維持するのに必要な額を控除した額(可処分所得)の2年分を原則3年間で支払わなければならないという要件もあります(金額の多い方をとる)。

 ここでいう収入は,
@計画案提出前2年間の税込み収入の合計から所得税,住民税,社会保険料を控除した額の2分の1(1年分)が原則ですが,もし,
A過去2年間に収入が20%以上変動した場合は,変動後の収入からこれに対する所得税等を控除した残額を1年分に換算した額を基礎とし,
B過去2年間に給与所得者となった場合は,その給与所得者としての収入からこれに対する所得税等を控除した残額を1年分に換算した額を基礎とします。

 ここで収入から控除される費用の額は再生債務者及びその扶養をうける者の年齢及び居住地域,当該扶養を受けるべき者の数,物価の状況等を勘案して政令で定められます。

現在の政令では,最低生活費の額は
@個人別生活費,
A世帯別生活費,
B冬期特別生活費,
C住居費,
D勤労必要経費,の合計額とされています。


 仮に,あなたが33歳,同居の妻29歳,子4歳の3人世帯であり,旭川市の家賃6万円のアパートに居住しているとすると,
@が夫45万4000円,妻45万4000円,子31万1000円, Aが58万8000円, Bが17万3000円, Cが41万9000円, Dが50万5000円と算出されます。 この@〜Dの合計額290万400円が手取り収入から控除されるべき最低生活費になりますので,2年分の可処分所得は
(4,000,000-2,904,000)×2=2,192,000(円)となります。

 したがって,180万円(小規模個人再生の最低弁済額)<219万2000円(2年分の可処分所得)から,あなたの最低弁済額は219万2000円(月約6万900円を3年間支払う)ということになります。
Q. そうすると,私の場合,給与所得者等再生を利用すると小規模個人再生を利用するより多く弁済しなければならなくなり,不利になるんではないでしょうか。
A. 確かに,あなたの場合,最低弁済額は給与所得者等再生を利用した方が多くなります。しかし,給与所得者等再生では,小規模個人再生と異なり,再生債権者の決議の制度がなく,再生計画が債権者によって否決されることがありません。

 したがって,小規模個人再生では再生計画が債権者によって否決されることが予想される場合は,給与所得者等再生を利用した方が有利と言えるのです。

▲ ページTOPへ