任意整理

Q.私は,月収手取り20万円ほどの会社員ですが,消費者金融3社から合計250万円ほど借り入れがあり,毎月の返済総額は約10万円になります。家族は妻,3歳と1歳になる子供がおり,妻は子育てに忙しく,パートに出る余裕はありません。生活が苦しく,このままでは返済を続けることができません。何か方法は無いでしょうか。
A.あなたのように経済的破綻に陥っている人の救済方法として,自己破産,個人再生,特定調停などの手続も考えられますが,ここでは,任意整理についてご説明しましょう。

任意整理は,弁護士等が介入することにより,残債務総額を利息制限法に引き直した上,引き直した残債務総額,債務者の返済能力等を勘案して,債権者と債務者間で新たな分割弁済の合意等をする手続であり,他の手続と異なって,裁判所を利用しない私的な再建手続です。
自己破産する場合は,その後に免責決定を得ないと債務がなくならないのですが,過去7年以内に免責決定を受けたことがある場合,借り入れの原因が高額な買い物や飲食費などの浪費,ギャンブル,換金目的で商品をクレジット購入した場合など一定の場合は,原則として免責を受けることはできません。また,破産手続開始決定を受けると免責決定確定などにより復権するまでは警備員,保険外交員など一定の職業に就くことができません。そこで,免責が困難な場合や破産したくない場合に任意整理という方法が考えられます。また,債務総額と収入額からみて,3年以内の分割払いであれば,十分に返済していけるというケースであれば任意整理に適していると言えるでしょう。
任意整理の成否のポイントは債務総額を利息制限法に引き直した結果,どの程度の金額になるかです。利息制限法では,10万円未満の貸付では年20%,10万円以上100万円未満の貸付では年18%,100万円以上の貸付では年15%を,それぞれ越える利息の定めは無効とされており,超過利息を支払った場合は元金に充当されたという主張ができます。もっとも,貸金業法では「みなし弁済」という規定があり,貸金業者が一定の要件を充たした場合は利息制限法を超過する利息の領収も認められていましたが,この要件を充たすことは希です(なお,貸金業法の改正により,みなし弁済規定は廃止されました。)。
実際,消費者金融業者は改正前,出資法における高金利処罰の上限利率が29.2%であったことから,(現在は利息制限法と同じです)最近までこれに近い約定金利を設定していたところが多く,利息制限法を超過する利息を取っており,弁護士が介入して残債務総額に利息制限法を適用すると残債務が減少することがほとんどです。消費者金融業者との取引がかなり長く,返済した利息も相当多い場合は,超過利息を元金に充当すると,とっくに元金は無くなっているケースがあり,このような場合は業者に払いすぎた利息の返還を求めることもよくあります。このように利息制限法に引き直すことで相当負債が圧縮でき,これを3年程度の分割払いにすれば毎月の返済額は相当減額され,その金額を返済していければ任意整理は可能でしょう。

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