名義貸し
Q.友人から「テレビを買いたいのだが、自分は破産したことがあるのでクレジットを組めない。代金は必ず私が払うからあなたの名義を貸して欲しい」と頼まれ、名義を貸しました。1年くらいしてから、信販会社から連絡があり、「立替金の返済が滞っているので、支払ってください」と請求されました。私は支払わなければならないのでしょうか。
A.一般に、他人が自分の名義を使用することを許諾することを名義貸しと言いますが、本件では、名義借人である友人が名義貸人であるあなたの名義で販売店とテレビの売買契約を締結するとともに、信販会社との間でも名義貸人の名義でクレジット契約(立替払契約)を締結しています。 これによって、信販会社がテレビの代金を販売店に支払い、信販会社は購入者から分割払で代金の立替金と利息ないし手数料の支払いを受けることになります。 ところが、本件では、友人がその支払いを途中で怠ったため、信販会社からその督促が名義貸人に対してなされたものです。 名義貸人が支払責任を負うかどうか検討するにあたって、売買契約とクレジット契約の契約上の当事者は名義貸人になるのか名義借人になるのかが問題になります。 この点は、当事者がどのような意思で契約をしたかがポイントになります。 名義借人は、代金の支払は自分で行う意思があるものの、自分の名義では契約できないからこそ、他人の名義で契約しているのですから、自分は契約当事者ではないという意思であると言えます。 他方、名義貸人は、クレジット契約書に自ら署名しているわけではなく、代金の支払も名義借人が行うという約束ですから、自分が契約当事者であるという意識は希薄であるかもしれません。しかし、名義貸人は名義借人に対し、自己の名義で売買契約やクレジット契約を行うことを許諾しているのですから、少なくとも契約上は、販売店に対する支払義務や信販会社に対する立替金等の支払義務はあるとの認識はあり、ただ、その義務の履行は名義借人が約束どおりやってくれるだろうという意思を持っているにすぎないと言えます。 さらに、信販会社は、クレジット契約書には立替金支払委託者として名義貸人の名前が記載されている以上、名義貸人がクレジット契約の当事者であると認識しています。 このように考えると、契約当事者は、名義貸人が売買契約やクレジット契約の当事者であるという意思ですから、名義貸人がクレジット契約の当事者となり、信販会社に立替金支払義務を負うことになります。 従って、あなたは信販会社の請求を拒むことはできず、支払をしなければなりません。
Q.私が信販会社に対して支払をしなければならないことは解りました。しかし、名義を貸した友人に対し、何らかの責任追及ができないでしょうか。
A.名義借人はあなたに対し、代金は自分が支払うと約束したのですから、あなたは名義借人に対し、あなたが信販会社に対して負う立替金支払義務につき、あなたに代わって支払うよう請求することができます。名義借人がこれを怠って支払わない結果、あなたが立替金を支払えば、名義借人があなたに対し契約不履行をしたことになり、あなたが信販会社に支払った立替金相当額を損害として損害賠償請求をすることが可能です。 もし、その友人が最初から代金を支払う意思がなく、あなたを騙して名義を借り、立替金を支払わなかったとすれば、詐欺罪となります。しかし、名義借人が1年近く立替金を約束どおり支払っていたならば、名義借人に最初からあなたを騙して名義を借りた意思があったと認めるのは困難であり、詐欺罪が成立することは難しいでしょう。
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