担保の基礎知識
Q.友人から300万円を貸して欲しいと頼まれています。恩義のある人なので、何とか用立てようと思っていますが、確実に返済してもらえるよう何か担保を差し入れてもらおうと思います。担保にはどのような種類があるのでしょうか。
A.ご相談のようにお金を貸す場合、万一返済されない場合に備えて担保を取ることがよくあります。お金を貸す側は借りる側に対して貸金債権を有していますが、返済期限までに相手が支払わない場合、何も担保を取っていなければ、判決などの債務名義をとった上、相手の財産に対して強制執行するほかありません。しかし、その人に資産がなければ何も回収できませんし、資産があったとしても、他にも債権者がいれば、結局、債権者全員でその財産を債権額に応じて分配することになり、十分満足を得ることはできません。まして、その人の財産に対して別の債権者が担保を取っていれば、この債権者が一般債権者に優先してその財産から債権回収してしまいます。そこで、貸付にあたり、相手から担保を取っておくことが極めて重要になります。
担保には、人的担保と物的担保の2種類があります。人的担保とは保証人のことで、実務では連帯保証人制度がよく利用されています。連帯保証人は債務者が債務を履行しない場合、債務者と同じ責任を負うというものであり、債務者に資力がない場合でも連帯保証人に資力があれば、連帯保証人から債権回収できます。ご相談のケースでは、貸付の際、借り受ける人に対して、連帯保証人を付けるように伝え、市販の連帯保証の条項を含んだ金銭消費貸借契約書を用意しておき、その連帯保証人に実印と印鑑証明を持参の上来てもらい、運転免許証などで本人確認をしてそのコピーをとり、連帯保証人欄に署名捺印してもらいます。万全を期すならば、その人が成年被後見人など制限行為能力者でないことの証明書を求めます。しかし、連帯保証人を付けたとしても、その人に資力がなければ債権回収はできませんので、必ずしも確実な方法とは言えません。
そこで、より確実な担保として物的担保があります。物的担保とは、債務者または第三者が提供する動産、不動産、債権などの財産に対して設定する担保権を言います。物的担保には法律に規定する要件を充足することで発生する法定担保と債権者と目的物所有者との契約により設定される約定担保に分けられます。民法に規定のある留置権や先取特権を呼ばれるものが法定担保物権であり、質権や抵当権が約定担保物権の代表例です。一般取引において債権回収手段として利用されているのは主に約定担保です。
約定担保の中で、もっとも利用されているのが抵当権です。抵当権は不動産を目的として利用されるのが一般ですが、特別法の規定により不動産を含めた一連の企業財産や特定の動産も目的とすることができます。抵当権は、債権者が目的物の占有を支配することなく担保とする権利です。担保設定者は、目的物の使用を続けることができます。抵当権の効力を主張するためには登記をすることが必要です。抵当権の実行は、債務が弁済されない場合に裁判所に抵当権の実行を申し立て、目的物を売却し、その代金から優先順位と債権額に応じて配当をするというのが基本です。
約定担保には、この他、質権、仮登記担保、譲渡担保などがありますが、別の機会に検討します。
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