抵当権の基礎知識

Q.私は、この度、住宅ローンを組んでマイホームを購入することにしました。銀行から借入するにあたり、抵当権を設定することになりましたが、抵当権とはどういう権利なのでしょうか。
A.抵当権とは、債務者または第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した物件について、そのまま抵当権設定者に使用させておき、債務の弁済がなされないときは、その物件から他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受けることができる権利のことです。 つまり、あなたが抵当権を設定した土地や建物は、そのまま使用することができますが、もしローンの支払いが滞ってしまって、返せなくなった場合に、銀行は土地や建物を売却して、優先してお金を返済してもらえる権利をもちます。

  抵当権は設定後も、目的物が設定者のもとにありますから、外観からは抵当権が設定されているのかわかりません。そこで、登記、登録という公示する手段がある財産に限って抵当権を設定することができます。登記制度がある不動産について利用される場合がもっとも多いですが、自動車、建設機械、航空機、船舶などについて登録制度がありますので、抵当権を設定することができます。

抵当権は、当事者の抵当権設定契約によって生じますが、登記をしないと第三者に対抗できないので、契約時に登記申請に必要な書類を債権者に提出することになります。

登記に必要な登録免許税は債権額の1000分の4です。 以上により、抵当権が設定され、登記がなされ、返済を開始しますが、返済を怠った場合、債務者は分割払いするという利益を失い(期限の利益の喪失)、借入残金を一括して返済しなければなりません。支払うことができなければ、債権者は抵当権を実行できます。つまり、債権者は裁判所に競売の申立をし、物件を差押え、換価することができます。

手続の流れの概略は以下のとおりです。

まず、抵当権者は裁判所に競売申立書などを提出し、裁判所は競売開始決定をします。そうすると、競売される不動産の登記簿に差押えの登記が記載されます。

次に、裁判所は執行官に現況調査を命じて、不動産の形状、占有関係などを調査させます。執行官はその結果を現況調査報告書にして裁判所に提出します。

さらに、裁判所は不動産鑑定士を評価人として選任し、その不動産がどのくらいの価値があるのか評価してもらいます。評価人は評価書を作成して裁判所に提出します。裁判所は評価書に基づいて不動産の売却基準価額を定めます。 また、裁判所書記官は不動産の権利関係を記載した物件明細書を作成します。

以上の1.現況調査報告書、2.評価書、3.物件明細書は3点セットと呼ばれ、一般人が閲覧できます。インターネットで「不動産競売物件情報サイト」があり、3点セットなどの情報を見ることができます。

 次に、競売手続は換価手続の段階になり、1.売却実施方法が決定され、2.売却が実施され、3.代金納付がなされます。

 1.の売却実施方法は、通常、期間入札方式が取られ、入札期間内に希望者に入札させて開札期日を開き、開札します。

 2.の売却実施に当たっては、裁判所は入札で最高値を付けた買受人に売却不許可事由がないか調べ、問題なければ売却許可決定を出します。

 3.の代金納付は、売却許可決定を受けた買受人が代金を裁判所に納付するもので、この瞬間、不動産の所有権は買受人に移転します。

 買受人が代金を納付したのに不動産に債務者や不法占拠者がいる場合は、裁判所に引渡命令を発してもらい、強制執行することができます。

 納付された代金は競売を申し立てた債権者、配当要求した債権者に交付されます。

こうして、抵当権者は他の債権者に先立って、抵当物件から優先して弁済を受けることができるのです。

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