破産債権の届出

Q.当社が取引していたA社に対し,破産開始決定が出され,当社宛に裁判所から破産手続開始通知書と破産債権届出書の用紙が届きました。

当社はA社に対し,1千万円の売掛金があります。破産債権の届出について注意すべき点を教えてください。
A.裁判所によって会社に破産開始決定が出されると同時に破産管財人が選任され,破産管財人が破産会社の財産を換価してお金に換え,配当原資があれば債権者に配当することになります。債権者が配当を受けるためには,定められた期間内に破産債権を裁判所に届け出る必要があります。

  破産債権とは,破産者に対し,破産手続開始決定前の原因に基づいて生じた財産上の請求権であって,財団債権(一定の要件を充たした税金や従業員の賃金など)に該当しないものをいいます。御社のA社に対する売掛金は破産債権の典型でしょう。

破産手続開始通知書には破産債権届出期間,届出書の提出先,財産状況報告集会・債権調査期日の日時及び場所が明記されています。 通常は,一般債権調査期日が指定され,この期日に破産管財人が債権届出期間内に提出があった破産債権について認めるか認めないか,いわゆる認否を行います。

さて,破産債権届出書の書き方については,裁判所から説明書や記載例が同封されてきますので,それを参考にしてください。御社の場合は売掛金を有しているので,届出債権の種類は「売掛金」と記載することになります。ただし,A社が売掛金の支払いのために手形を振り出している場合は,「手形・小切手債権」として届けることも可能です。売掛金として届け出るのであれば,債権額のほか,いつからいつまでの取引なのか記載します。破産債権の届出には証拠書類も添付する必要がありますが,売掛金の場合であれば,請求書や納品書の控え,売掛台帳の写しなどを添付します。

手形・小切手債権として届け出るのであれば,債権額,手形番号,支払期日,支払場所,振出人などを記載し,証拠書類として手形の表と裏の写しを添付します。手形の場合は裏書が連続していないと適法な所持人と推定されないので,注意が必要です。例えば,受取手形を他社に裏書交付した後,A社の手形が不渡りになり,他社の請求に応じて御社が支払をし,手形の返却を受けた場合,そのままでは裏書が連続していないので,他社への裏書を抹消して御社が適法な所持人であるようにします。 また,御社が売掛金についてA社の財産に対し,抵当権,根抵当権,質権などを有している場合は別除権として記入します。

債権届出期間を経過してしまっても,一般調査期日までに間に合えば破産管財人に認否してもらえることもありますが,一般調査期日を過ぎてしまうと,特別な事情がない限り,届出をすることができなくなってしまうので注意が必要です。

届出事項の変更は債権届出期間内であれば自由に認められます。債権譲渡や代位弁済により債権者が変更になった場合は一般調査期日終了後でも届出名義を変更できます。

他方,一般調査期日終了後に破産債権の増額など他の破産債権者の利益を害する届出をする場合には,特別な事情がないと認められません。

債権調査において,破産管財人が認め,他の届出債権者の異議がなければ,その破産債権の内容は確定します。

破産管財人が認めず,あるいは異議が撤回されなかった破産債権については,調査期日から1か月以内に破産債権査定申立てを行うことができます。この査定の裁判で届出債権者の主張が認められない場合は,別に異議の訴えを提起することができ,その場合は裁判の結果に従って,破産債権の存否及び額が確定します。

配当原資があれば,こうして確定した破産債権について配当がなされます。

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