養育費の請求・取り立て

Q.私は33歳の主婦ですが,この度、夫と離婚することになりました。そこで子どもの養育費について,どのように決めたらよいのでしょうか。5歳の子どもが一人いて,サラリーマンの夫の月収は手取りで27万円程度,私には月10万円のパート収入があります。
A. 養育費とは未成熟児が社会人として独立自立できるまでに必要とされる費用をいいます。「養育費」という言葉は法律にはありませんが,親は子が親と同程度の生活ができるように費用を負担する義務を負うという生活保持義務があり,子を養育する一方の者が,他方の配偶者に対して請求することが認められます。離婚には協議離婚,調停離婚,審判離婚,裁判離婚がありますが,それぞれの手続のなかで養育費について定めます。協議離婚であれば,協議によって養育費を定めることになりますが,養育費の定めは「公正証書」を作成しておくべきで,これを作成しておくと相手が養育費を支払わない場合,裁判を起こさなくても相手の財産に対して強制執行することができます。公正証書は公証人役場で,おおむね3万円以下で作成してもらうことができます。養育費の内容としては,子どもの衣食住のための費用,医療費,教育費などを,親の収入,子の生活必要費,親の負担能力等様々な要素を考慮して算定します。最近では、家庭裁判所が作成した養育費算定表を参考にして養育費が決められています。あなた方夫婦のそれぞれの年収からすると、子ども一人あたりの養育費は4万円から6万円くらいになると思われます。支払方法は一括払い,毎月払い,半年払い,一年払いなど,期間は,成年に達するまで,もしくは大学卒業するまでなどとするのが一般です。また,一度決めた養育費であっても,離婚後の父親の収入の著しい低下,子どもが高校までしか行かない予定で養育費の額を決めたが子どもの要望で大学に進学することになった等の離婚後の事情変更で養育費の額の変更が必要となる場合があります。その場合,家庭裁判所に「子の監護に関する処分」の申し立てをしてください。
Q. 私は離婚して3年になり,子どもを引き取って育てていますが,最近夫が養育費を振り込んでくれません。電話しても「いま金がない」とごまかされてしまいます。どのようにして取り立てたらよいでしょうか。
A. 養育費を約束した日に約束した額をきちんと支払ってもらっている例は2割程度にすぎないと報告されており,あなたのような悩みを抱えておられる方が多数いらっしゃるのが現状のようです。ご相談内容からはどのような手続で離婚したのかはわかりませんが,公正証書を交わしていたり,裁判や調停,家事審判で離婚していれば,公正証書・判決書・調停調書・審判書・和解調書に基づいて相手の財産に対して強制執行することができます。これまでは,滞納分の養育費についてしか強制執行をすることができませんでしたが法律の改正により平成16年4月から,養育費が一回でも支払われなかった場合には,滞納分だけでなく,将来分の養育費まで強制執行することができるようになりました。差し押さえられるものは,相手の給料などに限られますが,一度強制執行すると,その後は強制執行の申し立てをする必要がなくなり,以後は会社に対して直接取り立てることができます。ただ,給料を天引きしてもらってあなたの口座に振り込んでもらうようにするためには,あなたと会社で交渉をする必要があります。また,相手が転職した場合には,再度強制執行の申立てをしなければなりません。このような強制執行で相手が会社に居づらくなってしまい,会社を辞めてしまうなどの問題があるので,養育費の支払いについて,調停を申し立てることも考えられます。また調停や審判で決定された養育費については,裁判所から相手に対して直接,支払いの勧告・命令などをしてもらう履行勧告・履行命令・寄託などの制度があります。 養育費については,このように様々な手続が法律上用意されています。泣き寝入りせずに,積極的に専門家へ相談してみましょう。

▲ ページTOPへ