身に覚えのない請求を受けたら

Q.先日、債権取立代行業をしているという男から携帯電話に電話があり、出会い系サイトの利用料金2万7300円が未払いなので、至急支払えと言われました。しかし、利用した覚えは無く、無視していたところ、自宅に督促の電話や手紙がくるようになって困っています。
A. 最近、あなたのような相談が増えており、料金の請求名目は、出会い系サイト利用料、ダイヤルQ2 利用料、ツーショットダイヤル利用料等様々です。悪質業者が何らかの名簿を元に、手当たり次第、根拠の無い請求をしていると思われます。もちろん、あなたには支払義務はないので、支払わない旨強く主張することが第一です。自宅住所・電話番号、勤務先は決して教えてはいけません。悪質業者は自宅や勤務先まで電話してくるので、あなたの周りの人たちにまで迷惑がおよびます。

  残念ながら、あなたの自宅住所・電話番号は既に業者に知られてしまっているので、強い意志をもって支払を拒絶するか、電話には一切出ず、無視してください。根負けして支払ってしまいますと、あなたは悪質業者の間で回っている「優良なお客さま」のリストに載ってしまい、他の業者からも架空請求が来るかもしれません。

  督促の電話や手紙の内容によっては、恐喝罪が成立しますので警察に相談するとよいでしょう。また民事上は、支払義務の無い者に対し、故意に、執拗に請求する行為は不法行為に該当し、あなたは精神的苦痛を受けたとして、その業者に対し、慰謝料を請求することができます。ただし、相手の氏名、住所の特定は困難であり、実際の請求は難しいと思われます。
Q. 私は、出会い系サイトの登録料、利用料15万円を支払えと請求されています。実は、半年ほど前、××倶楽部という出会い系サイトの会員登録をし、1、2度利用したことがありました。そのときの広告メールでは会員登録、利用料とも無料とのことでした。ところが、そのサイトの規約をよく見たら、無料なのは女性のみで男性は登録料が3000円、利用料が1回500円でした。請求額が15万円となったのは、延滞金が1日500円、調査料が6万円かかっているためだと言っています。
A. まず、××倶楽部に登録料、利用料の支払義務があるか検討します。
  ご相談では、会員登録、利用が有料であるところ、無料であると誤信して登録、利用したというのですから、料金という契約の重要な部分に錯誤があり、契約は無効となるのが原則です(民法95条)。民法では錯誤に陥った者に重過失があれば無効主張はできませんが、消費者と事業者が行うネット上での契約には電子消費者契約法という特例の適用があり、利用者がネット上で申し込み、または承諾の意思表示を行う前に、画面を通じて意思の有無を確認する措置が講じられていない場合には、たとえ利用者に重過失があっても契約の無効を主張できます(同法3条)。

  ご相談のケースでは、会員登録をする過程で有料であるとの確認画面がなければ、あなたは契約の無効を主張して登録料、利用料の支払義務を免れます。 また、確認画面があったとしても、記載内容、表示方法、レイアウト等によっては、消費者に重要事項について虚偽の情報を提示していると言える場合があり、その場合は消費者契約法により契約を取り消すことができます(同法4条1項1号)。

  仮に、あなたが重過失により確認画面を見落として会員登録、利用をしていたら登録料、利用料の支払義務は免れませんが、延滞金、調査料を業者の言うとおりに支払う義務はありません。

  延滞金については、契約時に規約等で説明がなければ法定利率の6%までしか請求できませんし、規約で説明されていたとしても、消費者契約法では年14.6%を超える延滞金を請求することはできません(9条2号)。

また、調査料6万円とのことですが、それが債権取立に要した費用等何であれ、支払う義務はありません。これらは債権者の側で負担するべきものです。

  これら架空請求、過大請求は、得体の知れない業者に対する消費者の恐怖心や知識不足につけ込んで横行しています。面倒だから支払ってしまおう、などと安易に考えず、毅然とした対応が必要だと思います。

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