点検商法<

Q.先日、住宅リフォーム業者を名乗る営業員が来訪し、床下の点検後、「浴室の土台が腐っており、浴室に接した通し柱も腐っている。このまま放置すると家が傾き屋根が落ちる」と言われました。営業員から、家が傾けば大金がかかるが、今なら浴室のリフォーム工事代だけで済むので早めに工事をしたほうがいいとも言われ、浴室のリフォーム工事を、200万円のローンを組んで契約しました。着工日に浴室が撤去され、自分で現場をのぞいてみると、浴室の土台は腐っておらず、これなら浴室を工事する必要はないと思い、慌てて業者に電話をして工事の中止を求め、営業員に自宅に来るように頼みました。

  後日、上司と営業員が来訪し「土台が腐っている可能性があると言っただけでウソは言っていない」と言い張り、話し合った結果、「社員割引き」の100万円で契約する合意をしました。しかし、やはり納得できません。
A. 最近、リフォーム業者が突然来訪し、「屋根や床下の点検を無料でする」と言って点検し、「このままにしておくと大変なことになる」などと嘘や大げさなことを言って、必要もないリフォーム工事売り込む悪質商法が横行しています。最近では、認知症の高齢者が6年間で47件、総額約1570万円のリフォーム工事を18の業者と契約した事例が大きく報道されました。

 この手の業者は、突然家にやってきて、その家に住んでいる人の不安な気持ちを煽って、すぐ工事をしなければ危ないなどとその日のうちにも契約を迫ってきます。突然家に来てすぐ契約を迫ってくるような業者には警戒が必要でしょう。

 このような悪質商法の被害に遭わないために一番大事なことは工事を勧められても即決しないということです。必ず一人では決めず、他人に相談すること、もし工事をするにしても複数の業者に見積をしてもらい金額の妥当性を検討することが必要です。

ご相談のケースのように、悪質な業者に引っかかってしまい、契約を結んだあとの対処ですが、泣き寝入りすることはありません。

 クーリング・オフによる取消し、特定商取引法や消費者契約法の不実告知による取消しなどによって契約の効力を否定することが可能です。

 クーリング・オフとは、訪問販売などで契約してしまったが、頭を冷やして考えた結果、やはり必要ないと思った場合に、一定期間内であれば消費者が無条件で契約解除できる制度です。訪問販売で契約した場合、契約書を受け取って8日以内ならクーリング・オフができます。「書面を受領してから」8日間ですので、そもそも書面を受領していなければいつまでもクーリング・オフが可能ですし、書面を受領していても、書面に記載されている内容に嘘があったり、不備があった場合にも、やはり「法律の要件を満たした」書面を受け取ったことにはなりませんから、この場合も8日間は進行しません。

 さらに、業者がクーリング・オフを妨害するような行為をした場合もクーリング・オフは可能です。

 また、特定商取引法では、訪問販売業者が契約する必要があると思わせる重要事項について、事実と異なることを告げたり、重要な事実を故意に告げないことは禁止されており、違反すると刑事罰や行政処分の対象となります。これらの禁止行為があった場合、消費者は消費者契約法により、契約を取り消すことができます。この取消制度は取消期間が取消事由がやんでから6か月とされていますので、クーリング・オフ期間が経過した後でも契約を取り消すことができます。

もし、クレジットを組んで支払中の場合には、そのクレジット会社に対して、悪質業者に主張できる抗弁をそのまま主張して、クレジット代金の支払を拒むことができます(抗弁の接続といいます)。

 ご相談のケースでは、営業員が浴室の土台や通し柱が腐っていると言ったか否かが問題となり、事業者のように「可能性がある」と言ったのであってウソはついていないというように水掛け論になりがちです。営業員から点検結果についてメモでも書いておいてもらえば証拠になりますが、悪質業者はそんなお人好しではありません。あなたの方でメモを残すなど証拠を残しておく必要があるでしょう。

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