パートタイム労働法の改正

Q.平成20年4月から施行された改正パートタイム労働法(短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律)のポイントについて教えてください。まず,なぜ改正されたのでしょうか。
A. パートタイム労働法は平成5年に施行されましたが,その間,少子高齢化が急速に進展し,産業構造が変化するなかで,パート社員の数が著しく増加して企業の貴重な戦力になったため,パート社員の労働環境を改善し,勤労意欲を高めるために,パートタイム労働法を改正することが必要となりました。
Q. 改正の概要を教えてください。
A. 事業主はパート社員を雇う際,昇給,退職金,賞与の有無を文書等で明示することが義務化されました(6条)。
 改正前は,契約期間,仕事の場所及び内容,始業・終業時刻,残業の有無,休憩,休日・休暇,退職・解雇についてパート社員に明示すればよかったのですが,今回の改正では右労働条件のほかに,さらに3つの項目を加え,文書等で明示しなければならなくなりました。 また,パート社員雇用後,事業主は,パート社員から求められたときは,待遇の決定に当たって考慮した事項を説明することが義務づけられています(13条)。
 説明義務が課されるのは,?労働条件の文書交付等,?就業規則の作成手続,?待遇の差別的取扱いの禁止,?賃金の決定方法,?教育訓練,?福利厚生施設,?正社員への転換を推進するための措置です。 通常の労働者と同視すべきパート社員については,パート社員であることを理由として,賃金の決定,教育訓練の実施,福利厚生施設の利用その他について差別的取扱いをしてはならないとされました(8条)。
 通常の労働者と同視すべきパート社員とは,?正社員と職務(仕事の内容や責任)が同じであること,?契約期間の定めがないこと(契約期間が定められていても反復して更新され,実質的に無期契約となっている場合も含む)?人材活用のしくみ(人事異動の有無や範囲)が全雇用期間を通じて同じであることを充たしているパート社員を言います。この要件を充たしていないパート社員については,賃金を決定する際は,正社員との均衡を考慮し,職務の内容,成果,意欲,能力,経験等を勘案することが努力義務化されています(9条1項)。さらに,正社員と職務内容及び一定期間の人材活用のしくみや運用が同じ場合は,賃金を正社員と同一の方法で決定することが努力義務化されています(9条2項)。 事業主は,正社員に実施している職務遂行に必要な教育訓練について,正社員と職務内容が同じパート社員に対しても実施しなければなりません(10条1項)。教育訓練とは,例えば,新入社員研修,パソコン研修,語学研修などです。事業主は,そのほか,正社員との均衡を考慮し,職務の内容,成果,意欲,能力,経験等に応じてパート労働者に対して教育訓練を実施するように努めなければなりません(10条2項)。 さらに,事業主は,正社員に対して利用の機会を与える福利厚生施設のうち,一定のものついては,パート社員にも利用する機会を与えるよう配慮しなければなりません(11条)。
 福利厚生施設とは,給食施設,休憩室,更衣室などです。このほか,事業主は,パート社員から正社員への転換を推進するための措置を講じなければなりません(12条1項)。具体的には,?正社員を募集する場合,業務内容,賃金,労働時間などその募集内容を既に雇っているパート社員に周知すること,?正社員の配置を新たに行う場合,既に雇っているパート社員にも応募する機会を与えること,?パート社員が正社員へ転換するための試験制度を設けるなど,転換制度を導入すること,のいずれかの措置をとることが義務づけられました。
 事業主は,パート労働者から苦情の申し出を受けたときは,事業所内で自主的な解決を図るよう努めなければなりません(19条)。また,紛争解決援助のしくみとして,都道府県労働局長による助言,指導,勧告,紛争調整委員会による調停が設けられました(21条,22条)。
 事業主は,改正法に沿った雇用管理となるようチェックされることをお勧めします。

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