無料カウンター  << ご 報 告 >> 現地視察 (2009年11月23〜27日 ・ 12月6〜19日)

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  (2009年11月23〜27日 ・ 12月6〜19日)
                                                              更新日:2010年01月25日


11月は25〜27日の3日間、千葉県の幕張でアグロ・イノベーション 2009(農業生産・流通ほか大学・試験場・研究所等の総合展示会)がありました。 ここ数年見学していませんでしたが、今年は久々に見学して参りました。 会場には初日の昼過ぎに入りました。不景気の為か、この種の展示会には必ず出品する常連組みメーカーの顔ぶれが今回は無く、 また、外国組みの参加も少なく少し寂しい感じがしました。

そのような事で(私が見学したその日に限っては)少し盛り上がりに欠ける感じでした。 そして、気になる植物工場関連の設備は5社ほど出品がありましたが、栽培技術が伴っていないような感じで、導入するにはまだ早計かなという感想を抱きました。 また、大学・試験場などの研究機関の出品は、農家が儲かる為の実践と研究と言ったものが少ないようにも感じました。

今回のこの出張計画には、少し気になる信州地区の状況も把握しておく必要があるので長野を経由して視察し、大阪に帰る事にしました。 今年は全国的に雨の量が多く、当地でも収穫物の品質が上がらず、また価格の低迷も続くなど皆さん苦労をなさっている様子でした。 全般的には、りんご・ブドウでの果の割れ症状が目立つと言う報告が一番多かったようです。次に色づきの悪さも問題になりました。

  写真−1                  撮影:’09.11.26
出荷直前のりんご
  写真−2                  撮影:’09.11.26
出荷直前のりんご
 品種は無袋のふじです。養分の管理が良く出来ていますから、この時期でも葉が青々しています。鉄分等の微量要素を多く含むと、 写真のように茶色気味の赤色になります。このようなりんごは香りが強く、大変美味しいりんごと成ります。

下の写真は一番気になったM・Kaz.さんの’08年に借りた巨峰の園地です。 ’08.9.14の訪問の際は会員の皆さんから“良くこんな畑、借りたね〜”なんて冷やかされていましたが・・・・。 それもその筈、’08.9.14の訪問の際は前所有者(貸し主)の手入れが悪く、写真−3・4のように木は根痛みしていて、グラグラの状態でした。

そこで、’09年度は奮起して土作りをし、更に写真−5・6のように木の根元に養分を含んだ土を盛った処、見事に木は再生されていました。 木肌がツルツルで、まるでよその圃場の木のように見違えるようです。根元の痛んだ部分から根毛も出ていました。 収穫量は3.500Kg但し、色が着かなかったり、裂果したり、何とか出荷が出来たのは約1/3位との事でした。 それでも植替えの予定をしていて、既に苗木を植えた状態でしたから上々です。

  写真−3                  撮影:’08. 9.14
巨峰の木の状態
  写真−4                  撮影:’08. 9.14
巨峰の根元の腐敗
 巨峰の圃場を貸りました。手入れはチャントしたつもりです・・・・。養分を入れたつもりで、生の藁を置きました。 処が、写真−Aのように根元が腐敗し始めました。根張りは悪く、揺すってみると木はグラグラです。圃場に生ものは禁物です。アンモニアの害が出ます。

  写真−5                  撮影:’09.11.23
巨峰。根元の藁を除けて肥料分を含んだ土を盛りました。
  写真−6                  撮影:’09.11.23
巨峰。根元の藁を除けて肥料分を含んだ土を盛りました。
 そこで、園地一面に追肥をし、生藁などを取り除いて栄養素の入った土を盛ったらどのように変化するか、試みました。
すると、“ なッ、なッ、何と!! ” ツルツルの木肌になり、回復をしたようです。房も3500Kg成らせたと言っていました。 勿論、計画では植え替えるつもり、苗木も既に植えていました。(印がこの木の代わりに植替えた苗木)

12月は6〜19日までは九州地区に約2週間滞在して問題点の解明・指導を致しました。この地区では特にイチゴがそろそろ成り疲れになろうとする時期で、 何処の農家でもうどん粉が多くなってきたと言っていました。このイチゴのうどん粉病には硫黄を炊いたり農薬で防除する訳ですが、 その防除を何れかの方法で行った場合には、途端に葉が焼き海苔のようになってしまい、手で触るとパサパサなっています。

つまり、この2通りの防除法は魚の日干しと同じような原理であって、植物の組織を一端脱水にした上で乾燥状態にし、うどん粉の発生を防いでいる事が分かりました。 しかし、このような方法で防除しようとした場合、私は植物の成長を考えた時このように葉が乾燥した状態では、その気孔は開かず呼吸は出来ないのではないかと思いました。

また、うどん粉の発生する農家と発生しない農家の違いも考えてみました。イチゴ農家のT・Kat.さん(写真−7・8)は培地の分析をして不足分の栄養素を補い、 定植時から規定量の微量要素を使っています。途中、pH調整など間違って処方したりしたらしいですが今のところ大した問題はありませんでした。 特に皆さんが苦慮されている“うどん粉の発生は探しても無い”と言っていました。このT・Kat.さんを2年間じっくり観察して来た近所の仲良しのベテランY・Miz.さん、 今年から本格的に分析しながらの栽培です。T・Kat.さんを凌ぐ出来栄えでした。勿論、うどん粉は見当たりませんでした。

一方、うどん粉で苦労している農家もありました。イチゴ農家のT・Kur.さん(写真−9・10)と隣組みのK・Kur.(写真−11・12)さんです。 T・Kur.さんは当方で土壌分析をしました。当然、不足分の栄養素は補給しました。 K・Kur.さんはE社で分析をしたそうですが、残存量が多いと言う事で補給はしておりません。 微量要素は昨年残ったものだけを与えただけとの事でした。また、苗も良くなかったと言っていました。


  写真−7                  撮影:’09.12.12
紅ほっぺ
  写真−8                  撮影:’09.12.12
紅ほっぺ
 品種は紅っほっぺ。T・Kat.さんのイチゴの生育状況。このように安定した成り具合、 今年も6トンを予想して良さそうです。

  写真−9                  撮影:’09.12.19
さがほのか
  写真−10                 撮影:’09.12.19
さがほのか
 品種はさがほのか
T・Kur.さんのイチゴの生育状況、一応は良好ですが、栽培初期から微量要素を与えなかった為、 この様にホウ素欠乏印)となった果実。そこにはうどん粉が発生しており、 その防除をした処、翌日には今度は葉が乾燥海苔のようにパリパリした状態になり、更に生育を悪くしたようだ。 確かに、このように乾燥状態にすればカビは発生しないようになるかもしれない、 しかしどう考えてもそのような葉では光合成などの生理機能は激減すると思うのだが・・・。(乾燥した時の気孔の開閉状況)

  写真−11                  撮影:’09.12.29
さがほのか
  写真−12                 撮影:’09.12.29
さがほのか
 品種はさがほのか
K・Kur.さんのイチゴの生育状況。生育は良いようですが、ここも栽培初期から微量要素を与えなかった為、うどん粉が多いとの事でした。 その防除として硫黄のくん煙をするため準備をしましたが、急きょ微量要素の灌水と葉面散布を行う事にしました。 (印は準備したばかりの硫黄のくん煙装置)

また、今年は去年の教訓として、畝ごとに灌水チューブを3本入れる事にしました。これが1本ですと、灌水が同じ処ばかりにかかり畝全体に広がらない為です。 水だけなら1本でも良いと思うのですが、肥料を常時溶かし込んで灌水するとなると、かかる部分に成分が溜まり濃度障害になるという去年の教訓からです。 これで畝の法面(ノリメン=斜面の部分)にも液肥が垂れて来ます。(根を畝全体に広げようと言う目論みです)


長崎県ではびわを視察しました。土壌の大改革を始めて2年が経過しましたが、 今年は秋肥料から土壌分析をして思い切った元肥をしましたから、その勢いは大変良いようです。(写真−13・14) 初年度の昨年は品質の良いびわを収穫する事が出来ましたので、迷いはふっ切れたと語っていました。

  写真−13                 撮影:’09.12.08
びわ(長崎早生)
  写真−14                 撮影:’09.12.08
びわ(長崎早生)
 M・Yazさんのびわです。品種は長崎早生。このように土を手入れしてから2年目、 やっと安定した成り具合になりました。


T・Har.さんのハウストマトです(写真−15〜18)。今年は9月の植え付けに備え7月に土壌の分析を行いました。 その結果、石灰が大量に残っている事が判明しました(その時の分析)。過去、硫酸カルシウムを毎年使ってきたらしく、 その分が良く溶けないで蓄積したようです。T・Har.さんは従来から灌水量が少なすぎた為、弱々しいトマトでした。 今年からは一発奮起し、思い切って灌水をして行くとの決心でした。

  写真−15                 撮影:’09.12.12
とまと
  写真−16                 撮影:’09.12.12
とまと
  写真−17                 撮影:’10.01.19
とまと
  写真−18                 撮影:’10.01.19
とまと
 品種はマイロック
灌水チューブは畝の中央と法面の所に各1本づつの計3列としている。こうする事で畝全体にたっぷりと灌水できるようにしている。 写真−18のように肩の部分から通路に向かって流れるようにしたい。私はこれでもまだ少ないと言っている(通路にも1列必要)。


I・Hidさんのハウストマトです(写真−19〜23)。
今作は9月の植え付けに備え、7月に土壌の分析を行いました。 その結果、石灰が過剰で苦土が少し不足している程度でした。この圃場も灌水量が少なすぎ、弱々しいトマトでしたが、 去年から灌水チューブは3列として液肥による追肥を強化しています。

  写真−19                 撮影:’09.12.15
とまと
  写真−20                 撮影:’09.12.15
とまと
  写真−21                 撮影:’09.12.15
とまと
  写真−22                 撮影:’09.03.27
とまと
品種は****。この品種は写真−21のように先端が枯れる症状が良く現れる。

今年は、写真−12(イチゴ)・17・23(トマト)のように各農家共、畝に3本の灌水チューブを通しました(通路にも、もう1本入れるよう言っていますが・・・・)。 これが真ん中に1本ですと養分はそのノズルの付近だけにかかってしまいます。私たちは硝酸石灰や硝酸加里・硫酸苦土などを水で溶いて追肥していますから、 その部分に肥料分が集中することで濃度障害となるようです。3通りとしたのは去年のこの問題点を改善しようとしたものです。

その場合、浸透圧は計算をしながらその量を決めていますが、それでもそれを度々(2〜3日毎)行いますので、回数を重ねる度にそこの部分だけ濃度は濃くなって行くのです。 しかも、そのような状態でも作物には常に欠乏症が出ている状態です。そのような事で、この方法では2ヶ月しか続けることが出来ず、更に続けようとすると、そこの部分の根を傷めてしまうことが分りました。

そこで、今年はチューブを3本にして、与える養液を1/3の濃度にし、畝全体から通路まで広がってかかるように改善したのです。 こうすると6〜8ヶ月は大丈夫だと思うのです。このチューブ式は資材代は安上がりですが、ノズルから出る水の量が少ないので、かかった水がすぐに土中に吸われて水が広がらない。 つまり、収量を上げようと追肥を考えた場合、この点が最大の難点となります。

また、通り本数を増やすと今度はポンプの水量が少なくなり、配管の手前部と先端部では上手く水圧が伝わらず、均等に灌水できないなどの問題も出てきました。 水だけならこの吐出少水量方式でも良いと思うのですが、液肥となると昔ながらのパイプに広角タイプの散水ノズルのついた方式がベストだとつくづく考えさせられました。

これからは灌水に関わる設計をする場合には、まず最大水量を仮定し、ポンプの大きさを決め、配管を考える事が大変重要です。 実際の現圃場では一応は設計されていると思うのですが、灌水域を幾ブロックにも分割して灌水しないとチューブに圧が掛からないという問題点もありました。 (生育が良くなれば作物がこんなに水分の要求するとは今まで考えていなかったでしょうから・・・・・)

<< 重要 >>
作物に水だけを与える場合はドリップ式でも良いと思います。これが液肥を与える場合では考え方を異にしなければなりません。 それは土壌を形成しているコロイドは(−)イオンを帯びています。 つまり、ドリップで養分を流した場合には、その中に含まれる(+)イオンを持った肥料分がその落ちる部分の土壌コロイド(−)と強く引き合って結合してしまいます。 そして、その部分は(+)イオンの養分が広がらずに蓄積されたようになり、濃度障害を来たす事となります。これが水だけですと滲み広がって行きますから問題はありません。

(昔、雷が落ちた畑は生育が良くなるとか言ったものです。これは雷が落ちる事で何十万ボルトという電気的な刺激が伝わり、 その刺激で結合したイオンが電離し、作物吸収し易くなるのかも知れません。こんな事を考えると満更、 迷信だ!嘘だ!と言えないかも????・・・)


 = 完 = 




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