無料カウンター  << ご 報 告 >> 現地視察 (2010年 5月17〜27日 ・  6月 6〜10日)

<< 現 地 視 察 レ ポ ー ト >>

(2010年 5月17 〜 27日 ・ 6月 6 〜 10日 ・ 8月 3 〜 6日)
                                                           更新日:2011年 3月 4日(部)


今年は年明けから頭部が優れず医者に行って色々相談すると、どうも三半規管が良くないようだと言われた。 まずは血圧を測って、注射を1本しておきましょうと言うので、腕を出して “チクリ” 暫くすると、これが嘘のように頭の不具合が解消する。 今は薬で抑えているが、もう年だからこの症状は完全には直らないと言われた。どうやら部品の劣化らしい。代わりの部品も無いので我慢をしなさい、 体調によって薬の効きが悪い時もあるので、その時は注射に来なさいと言われた。 その様な事で2月予定の視察を遅らしてしまった。流石に5月ともなってきたら、 農家の苦悩状況が見えてきたので17日から10日間、九州方面へ出掛ける事となった。

いちごは殆どが終盤に入り、5月一杯で終了する。と同時に来年の育苗が始まっている。この育苗では、過去満足に出来たためしが無い。 今年こそはと各農家とも気が入っていた。この育苗で上手く行くと11・12月・1月と前半の収量が多くなり、6トンの収穫も夢ではなくなる。 また、高値の時の出荷増となるので収入も大幅に増える事となる。処が、この地区にはそれを妨げる色々な障害がある。その障害とは・・・・中文へ・・・・

また、とまと農家に於いては後ほど紹介するが、施肥のタイミングを逸している為、成り疲れが酷く青枯れ寸前の状態となっていた。 全般的には、この地区は今年もかなりの課題を残した年となった。

一方、信州地区は土壌分析をタイミング良く行っており、また管理も万全である故、全ての農家で良作となっていた。

いやいや、しかし、人間に使う薬は良く効きますね〜・・・???


以下、写真入のレポート

  T・Kat.農園

  写真−1                  撮影:’10. 5.18
出荷中のいちご(紅ほっぺ)
  写真−2                  撮影:’10. 5.18
出荷中のいちご(紅ほっぺ)
 いちご高設栽培。品種は紅ほっぺです。去年はこの地区で第二位(判定の基準はKg/反当りの出荷量)のT・Kat.農園です。 一位の農家は6月末まで、1ヶ月間も長く収穫しますから、どうしても一位にはなれません。過去3年間、何とかここまで栽培してきましたが、 毎年かなりの量の液肥を流し込んでいます。培地の養分バランスは大幅に悪くなっているはずです。今年は培地を半分入れ替えます。 その場合、水の抜けが良いよう“砂土”を入れる予定にしています。

  写真−3                  撮影:’10. 5.18
出荷中のいちご(紅ほっぺ)
  写真−4                  撮影:’10. 5.18
出荷中のいちご(紅ほっぺ)
 この時期まだ葉露が付いています。L玉以上も方々に付いています。ただ、色の着き方が芳しくありません。 マッ、仕方ないでしょう、この時期は殆ど手入れしていないようですから・・・。“下葉くらいは除けよ!!”と言いますが、カビも付かないのでズーッと付けたままです (印))。今までは、この下葉から発生したうどん粉が移るといけないからと言って、すぐ取り除いていたのですがね〜〜。

  写真−5                  撮影:’10. 5.18
さがほのか
  写真−6                  撮影:’10. 5.18
さがほのか
 こちらは土耕栽培です。土壌分析をして養分の管理をしていますから、この時期でも葉が青々しています。果の形も良いし、 割ってみても写真−7のように空洞果になっていません。逐次、硝酸石灰でカルシウム欠乏の対策をしています。 サイズ対比の硬貨は500玉です。ここでも下葉の掃除した様子が無いですね〜〜。

土耕栽培は高設と比べて、1株当りの培地の量が格段に多いですから管理が楽です。 それと比較べ高設は液肥だけで追肥していきます。培地の量も少ないですから養分のバランス変化が早く、手抜きが出来ません。

  写真−7                  撮影:’10. 5.18
さがほのか
  写真−8                  撮影:’10. 5.18
さがほのか
 半分に割ったところで落として、汚してしまいました。下に並んだ果は少し石灰欠乏による撫で肩です。 その分、空洞になっています。写真−8の苗は新芽の葉が薄く弱いし、緑色も浅い。灌水時のpHは6.2前後で調整していますから、 新芽は正常な形で出てきています。この写真は当初、石灰の欠乏が目立つのでA・B液(常備液肥)を何回か散布した処、このように緑が入ってきています。 しかし、まだ不足ですのでもっと強化する必要があります。


  T・Kur.農園

  今年は微量要素を節約して栽培してみた処、前半からうどん粉に悩まされたと言う。 越年の2月位から本格的な出荷となったが、今年度は
  約4.5トンぐらいでしょう、今年夏は育苗で失敗しないようにしたいと意気込んでいました。

  写真−9                  撮影:’10. 5.18
さがほのか
  写真−10                 撮影:’10. 5.18
さがほのか
 育苗に毎年失敗して12・1月と出荷が少なく、2月になってやっと本格的に出荷が始まる状態。 それ以後は毎月1トン位の出荷量と聞いている。ここでも5月なのに果に空洞果は見受けられない。

  写真−11                 撮影:’10. 5.24
さがほのか
  写真−12                 撮影:’10. 5.24
さがほのか
 上記の写真から1週間もしたら気温が高くなり、その上、手入れもしていないので組織が未完成のまま生育している新葉ではうどん粉が蔓延し出した。 微量要素を使いたいのだが “もう終わりだから・・・”との事でした。


  I・Hid.農園

         写真−13  撮影:’10. 2.12
とまと
  写真−14                  撮影:’10. 4.24
とまと
 2月にも一度、このような状態にしてしまいました。そして、今回またもや・・・・、原因は灌水量が全然足りないのです。 今年は暗渠を敷設した為に水の抜けが良すぎる、という概念が頭から抜けています。

  写真−15                  撮影:’10. 5.27
とまと
  写真−16                  撮影:’10. 5.27
とまと
 その結果、大量の廃棄とまと。
植物体内の水分が不足した為に果の先端まで養分が行き渡りません。先端が枯れ上がった状態です。 微量要素は効いていますから腐敗が進んでもカビが付きません(他農家の同じ例)。 このような廃棄前の果実の糖度を計測してみたら、7.5%前後の数値でした。食べて見ましたが香りが強く、 還元酵素が良く働いて窒素がアミノ酸に変化しているのが伺えます。トマト特有のコクを強く感じました。

  写真−17                 撮影:’10. 5.24
とまと
  写真−18                 撮影:’10. 5.24
とまと
 上記を養生した結果、このように回復しましたが、まだ後遺症は残っています。根の部分では水がかかっている部分にはチャント綺麗な根が来ています。 この状態を畝全体に広げる事が重要なポイントになるのです。これが出来ない場合、どんなに土作りをしても駄目なのです。

  写真−19                 撮影:’10. 5.24
とまと
  写真−20                 撮影:’10. 5.24
とまと
 このように水と養分さえあれば根は群生します。その上、車に踏まれてもたくましく生きています。


  T・Har.農園

  この人は極力、灌水をしない人でした。理由はカビ病が怖いと言う、この1点だけです。処が・・・・・。

  写真−21                 撮影:’10. 5.18
とまと
  写真−22                 撮影:’10. 5.18
とまと
 今年は灌水を心がけました(わたし的に言うと、まだ足りませんが・・・)このようにいい型の果となっています。 処が、それでも悩みがありました。12月訪問の時はその出来具合を見て“今年の作は良く採れるよ!”と褒めて、帰阪しました。 その期待通り、その直後は大分収穫したと言っていましたが・・・・・。やっぱり、その後の追肥管理が悪く玉が間が伸びない、 肌目がザラつくなどの相談がありました(2月末)。いわゆる、成り疲れです。1〜2月は最大、3〜4月は最悪、5月でまた盛り返し、 と言った事の繰り返しの様でした。

  写真−23                 撮影:’10. 5.18
とまと
  写真−24                 撮影:’10. 5.18
とまと
 終了時の地上部の写真です。今年からは畝全体に灌水が出来るよう、チューブは3本としました。しかも、畝の法面に良くかかるよう工夫されています。 また、その部分には主に窒素など養分の補給として完熟堆肥を綺麗に塗りつけ、過乾燥をも防止しています。その期待通り、重要な根が法面一杯に広がっていたのが分かります。

この地区を巡回して気づいた点を少し申し述べます。この地区の農家の皆さんの栽培管理面積は広すぎるし、限界を超えているのではないか、と言う事を真に感じました。 兎に角、いちごやとまとの栽培面積を除いても、ほぼ5〜10haの面積は普通です。 いちごのように細かい管理が必要で、特に出荷の際に手間のかかるパック詰めが手に負えない時はJAパックセンターに持って行けばその代行はやってくれるというものの、 その費用が意外と高いし、選別が集荷場の検査以上に厳しい。

そして、農家はその差引かれる経費を考えると手取りが無くなると言うのです。“そんなに費用を差引かれる事を考えるならば一層の事、栽培面積を狭めたら・・・、手元に残る金額は一緒じゃないの? ?”と助言したくなるくらいです。 何しろ、一家2〜3人でいちご30aを管理しようとしている訳ですから・・・・。例えば上出のT・Kur.さんは本人と70過ぎのおばーちゃんと2人で20aのいちご栽培です。 その隣は60前後2人で30aです。このような状況で、元々そこには相当無理があります。

いちごのシーズンが終わりにさしかかると、直ぐに水稲の準備をしなければなりません。これがいちご専業ですと、 この時期はその育苗の土作りとなります。当然、彼らには水稲の準備がありますからその作業はできません。 自ずと、培養土は業者から購入する事になります。困った事に、その購入した土がpH7.4と言う高pHの培養土を持って来ます。 おかげで、いちごの苗は毎年、アルカリ障害に見舞われる事となっています。

次に、水稲が終われば大豆が、そして小麦が順を待っています。それからまた、いちごに返る訳です。一年をこのローテーションで一回転するのですが、 その面積がはぼ5〜10haとなる訳ですから、端で見ていると年中息つく暇も無いと言うのが実感です。 各々の品目の栽培は組合化はされていますが、その作業はその組合に加入する各組合員が輪番でする事になっています。その当番が当ると嫌でも1週間はトラクターに乗る事になります。

私はここで一考、この部分を組合員にやらせず、植え付けから収穫までを行う管理会社を設立してこの会社でやってもらい、 農家には一番作業単価と収益性の高いいちごとかとまと栽培に集中させてあげたらどうだろうか、と言う感想を抱いたのでした。 その方が作物に手間隙をかけることが出来、それによる良品・収量増など農家の収益も上がり、 もっと家計も楽になるのではないかなと考えるのです。そして農家には出資金の変わりに圃場を貸与して株主になれないかと考えるのでした。

このような農家の皆さん方の働き振りを見ると大変関心させられるのです。それと同時に、こんなに働いているのに儲ける事ができない。 当面の必要な肥料類は代金強制引き落としのJAは出来るだけ避け、肥料屋さんに支払いを待って下さいと言って、ツケで当面の必要な肥料を調達している状況です。 その様な事を目の前にすると、何かもっと余剰の人員を雇用して効率的な生産は出来ないものかな〜、 特に今、国の失業率は高水準にあり、若い人が一杯都会で溢れているというのに・・・・と考んがえさせられるのでした。

ここらが一般の経済界と少し違うな〜、普通だったら問題点を抽出して、皆んなでこの解決に当る。 QC・TQC・かいぜん・かんばん方式・報連相と言うような活動が出来ないものかなと考えるのでした。但し、このような運動にも問題点がありました。 それは、“書類ばっかり書かされて、肝心な仕事が出けへんやんか〜〜”と言った問題点。 また、それに付随して“書類を見て決済するのが遅すぎる、返事が遅いと相手が怒っている〜!!” と言った窓口担当者の悲鳴もありました。(これ経験談、やるなら程々に・・・・)

・・・と、このレポートを書いている時に偶々たまたま読んだ経済誌“週間ダイヤモンド<2010年6月26日号>”と言う雑誌。
特集として『コンビニ農業<フランチャイズ方式と貸し農園で進む改革>』の記事がありました。 ここには、西部開発農産(岩手県)のように、近隣の農家から預かった田畑を耕作し、組織化した農業法人の成功例もありますので、ご参考に・・・。


<< 信州方面にて >>

  Y・Nag.農園

去年は石灰・加里分と微量要素を中心に強化した処、春先から9月の終了時まで長期に亘って、しっかり取れたとの事でした。 本年度からは土壌分析をして土壌改良に注力します。

  写真−25                 撮影:’10. 6. 7
パセリ
  写真−26                 撮影:’10. 6. 7
パセリ
 今年は既に12月には土壌分析をしました。春には直ぐに元肥ができるよう肥料類も手配していました。 雪が溶けると早速定植しました、更に出荷も始まりました。今現在は節間が短く、軸も太く大変良い出来です。 試食もしました、歯応えそして香りも良く、茎の部分も美味しく全部食べてしました。7月には2回目の土壌分析をします。

  写真−27                 撮影:’10. 6. 7
パセリ
  写真−28                 撮影:’10. 6. 7
パセリ
 この2枚の写真は他の圃場のパセリです。(分析していません。何を施肥したかも分かりません)
また、写真−25・26及び27・28の2圃場共に生育は初期段階であり、対比してもそんなに差が有るようには見えません。 しかし良く見ると、この2枚の写真(27・28)は前者と比べると節間が多少長く、何んとなく弱い感じがします。

  M・Huj.農園

  写真−29                 撮影:’10. 5.18
ぶどう
  写真−30                 撮影:’10. 5.18
ぶどう
 土壌分析をして熱心に土作りをしています。 写真−30のように『葉の色合い』と『厚み』は申し分ありませんが、何故か元気が無いのです。 まず考えたのは“、肥料の入れ過ぎかな?”と思って、木の上から下まで見ていくと、原因が分かりました。ネズミの仕業です。 土が肥沃に成るとミミズが多くなります。今度はそのミミズをモグラが食べに来ます。

そこへネズミがやって来てモグラの穴(印)を利用して土中に潜り込み、 根をかじり、そして噛み切ってしまうのです。それも土壌が乾燥気味になると特に被害が多くなるとの事でした。 確かに、土壌が湿り気味の場所は被害が無い(現地で確認)。写真−29のように大きい根でも噛み切られていました。 そう言えば、北信方面でもアスパラで、そのような話しがあったな〜〜。

  K・Aka.農園

  写真−31                 撮影:’10. 6. 6
とまと
  写真−32                 撮影:’10. 6. 6
きゅうり
 今年は12月に早々と土壌分析し、春の定植準備をしていました。 この1〜2年は不作でした。原因はわたし的に言えば“肥料を闇雲に使い過ぎ”。この事は本人には重々言って、注意を促して来たのですが・・・、 結果は分析表をご覧の通り加里が大過剰となっています。 本人曰く、“今までは良く出来ていたのですが、ここに来て急に元気がなくなって来た”との事。

その原因は写真−31を見ての通り、果の成りが多くなってくるとその分、樹の負担が増して来ます。今の土では加里成分が多い為、 拮抗作用が生じ、更に逆浸透の状態にもなる為に養分の吸収が間に合わなくなります。従って、どうしても日中は萎れるような現象になります。 つまり、良いだろうと思ってやって来た事が、こうやって分析をして見るとやっぱり問題点を抱えた土壌になっていると言う事が分かります。 (対策は葉面散布するのみ)キウリも同様に負担の少ない今の時点では良いが、今後が問題となります。

注目)ここではマルチに寒冷紗(98%カット)を使っています。液肥はこのマルチの上から通路も含めて全面散布しています。

  H・Koi.農園

  写真−33                 撮影:’10. 6. 8
ぶどう
  写真−34                 撮影:’10. 6. 8
ぶどう
 二年生樹です。去年は9月に土壌分析をしました。 根が動き出す春には不足分を直ぐに施肥できるよう再び分析しました。 順調に成長しています。また、6月には3回目の分析をしました(結果は下表)。 写真撮影後7日目に土壌採取しました。

単位mg / 乾土100g ( ≒ Kg / 10a )
分 析 日
肥料投入量
酸度
(PH:Kcl)
アンモニア
(NH4-N)
硝酸
(NO3-N)
全リン酸
(P25
加里
(K2O)
石灰
(CaO)
苦土
(MgO)
可給態鉄
(Fe)
追 肥
標準値 6.0〜6.2 2〜3 30 50 50 320 30 2.70   
'09. 9.19 6.2 3.1  8.7  70.0 42.1 397.3 29.8 0.30 CL:3.7
'10. 3.30 6.3 0.0  3.7 115.0 54.2 288.2 56.3 0.20 CL:0.0
'10. 6.30 6.6 0.2 23.1 105.0 60.2 380.5 39.7 0.45 CL:6.2


  M・Yos.農園

  写真−35                 撮影:’10. 6. 8
ぶどう
  写真−36                 撮影:’10. 6. 8
ぶどう
 ここも二年生樹です。去年は9月には土壌分析をして、不足分の秋肥を施肥しました。 根が動き出す春には不足分を直ぐに施肥できるよう再び分析しました。 順調に成長しています。また、6月には3回目の分析をしました(下の分析表)。写真ー33〜36は同じグループで連携をとりながら栽培をしています。 分析をしながら施肥量を決めていきますから生育具合も殆ど同じようになります。

写真撮影後7日目に土壌採取しました。
(この圃場は30aですが3枚に分割されています。分析値が近似して来たとき、1点に統合する予定)

単位mg / 乾土100g ( ≒ Kg / 10a )
分 析 日
肥料投入量
酸度
(PH:Kcl)
アンモニア
(NH4-N)
硝酸
(NO3-N)
全リン酸
(P25
加里
(K2O)
石灰
(CaO)
苦土
(MgO)
可給態鉄
(Fe)
追 肥
標準値 6.0〜6.2 2〜3 30 50 50 320 30 2.70   
No.1 6.2 0.3 10.0 85.0 60.2 355.3 56.3 0.70 CL:5.0
No.2 6.0 1.5 13.7 75.0 66.2 402.9 39.7 0.80 CL:6.2
No.3 5.7 0.6 10.6 55.0 36.1 366.5 33.1 1.20 CL:7.5


 2ヵ月後(8月3〜5日)の様子

  写真−37                 撮影:’10. 8. 5
ぶどう
  写真−38                 撮影:’10. 8. 5
ぶどう
今年の梅雨はこの地域でも激しかったようです。園地を出来るだけ多く見て廻りました。

  写真−39                 撮影:’10. 8. 5
ぶどう
  写真−40                 撮影:’10. 8. 3
ぶどう
 そこには、このような状態の葉(ベト病)が随所に見受けられました。 そして、このようにベト病が発生している園地は必ずと言ってよい程排水が悪く、大量の降雨があれば3日も4日も水が溜まったままと言う園地に多く見受けられました。

この園地は全般的には排水は良いと聞いています。しかし、所々にベト病が見受けられます。 その場所は写真−43のようにスピードスプレーヤー(SS)が通った後、土壌が固く締まった所でした。 それでもこの園地は良い方でした。このように痛んだ葉の部分を除いて考えた場合、かなりの速さで回復基調にあると言えます。

  写真−41                 撮影:’10. 8. 5
ぶどう
  写真−42                 撮影:’10. 8. 3
ぶどう
この写真のブドウは二年生樹の接木の部分です。ベト病が発生するような園地で一番困るのは、このように接木の部分に癌種が発生している事です。 この症状はトマトやキュウリの栽培(根こぶ)でも多く見受けられる症状です。要素が欠乏しながら(特にホウ素欠乏)成長すると、 植物はこのように不具合部分を修復しながら生きながらえようとし、組織を維持形成しようとするのでしょう。 この癌種はそのような修復跡だと思えてしょうがないのですが・・・・。細菌の所為だとしたら、注)へ・・・

そして、このコルク状になった部分は厳寒期になると、雨や雪などの水分を含み凍結してしまいます。やがて、春になりこの症状が解凍されると腐敗と言う過程を進んで行きます。 これを皆さんは『クランクオール』(この腫瘍は“クラウンゴール”が学会用語と思いますが・・・)と言う病気で表現しているようです。

注) クラウンゴールとは
(アグロバクテリウム)が細胞に入り込んだ為、オーキシン・サイトカイニン合成酵素の働きが盛んになって、 そのホルモンが過剰生産されて異常増殖した痕、つまり腫瘍化したものである。放送大学講座:植物の生理(植物の防御と共生)から

  写真−43                 撮影:’10. 8. 5
ぶどう
  写真−44              撮影:’10. 8. 3
農文協発行『果樹栽培の基礎』
このようにSSの通った所には車輪の跡があり、いつも水溜りになっています。私は“新植の園地では1年くらい遊ばす気持ちで少なくとも50cm以上は深耕し、その中には有機物をたっぷり入れる。 そして、出来れば暗渠を敷設する。出来なくても、少なくとも不要な雨水は明渠を施して園地外に排出すべきである”と口うるさく言いますが・・・。 私の蔵書本(農文協発行『果樹栽培の基礎』)を読み直してみると、同じような内容の事が記してありました。

さて、このベト病、傾斜地の園地ではその発生が少ないようです。全然見当たらない園地も有りました。それではその原因ですが、 これを上手く説明するのに“ピッタリ”の園地がありました。水が溜まったブドウ園地で健全にブドウが育っている園地が有ったのです。 この園地は雨の後、数日も経っているにも関わらず、何日も土壌に水が溜まった箇所があります。この箇所のブドウは他のどの部分よりも成長が良いのです。 そこで、その土壌を良く観察すると、そこに溜まっていた水は伏流水だったのです。つまり、ここの水は常に入れ替わっているのです。 ですから、そこには酸素が供給されています。このように水溜まりの2通りの事柄を考えた時、 ベト病は土壌中の酸素不足による根腐れが原因ではないのか?と考えるのでした。 その伏流水の現場は水が溜まっているのにも関わらず、ベト病が発生していませんでした。

  写真−45
  写真−46
この写真は私が鉢物に水をかけ続けたために根腐れを来たしたようです。これ、ベト病に似てませんか?

  写真−47
ぶどう
  写真−48
ぶどう
そして、この写真のようにベト病を止める時、皆さん方が取る方法はこのようなボルドー液散布による防除です。 そして、その葉を触わった時“パサパサ”と言う感触があります。“おッ!!これはイチゴのうどん粉病の防除と同じ手法ではないか!!” このボルドー法は、観葉植物の温室栽培時に夏場日差しが強い時、温室の内側のガラスなどの被覆剤に石灰剤を塗布して遮光するように、 葉の表面に石灰剤を塗って葉を遮光すると同時に、カラカラに乾燥させる事で気孔を閉めた上、蒸散を和らげる。 そのようにして、植物体のエネルギーの蓄積を待って体力を整える、と言った算段のようです。つまり、成長を止め、内からの体力を整える。 これではベト病の進行も止まりますが、光合成も成長も一時的に止まってしまい、限られた出荷までの日数を考えると不利です。

  写真−49            撮影:’10. 8. 4(16:30pm)
ぶどう
  写真−50            撮影:’10. 8. 4(16:30pm)
ぶどう
 そこで、私たちが取った体力回復の手段は皆さん方と違います。まずクエン酸をブドウに含ませる事から始めました。クエン酸を午前のうち葉面散布しました。 16:30分園地に行くと、葉は夕陽を迎え西側を向いて整列しています。(バックの山は南になります)。

因みに、隣もブドウ園でしたが、暑さのため葉は俯いていました。(許可を得ていない為、撮影しませんでした)

  写真−51            撮影:’10. 8. 5(7:30am)
ぶどう
  写真−52            撮影:’10. 8. 5(7:30am)
ぶどう
翌朝はどんな状態か?再び、7:30分に観察に行きました。ブドウの葉は朝日を向かえ東を向いています。

  写真−53                 撮影:’10. 8. 7
ぶどう
  写真−54                 撮影:’10. 8. 7
ぶどう
 次に取った手段は石灰の強化です。梅雨が明けて、暫く対応を放置していた為、カンフル注入です。 グループ員で急遽バックアップ液を調製し、根を中心にして幅3.0Mの範囲をSSで散布しました。その所為で新葉は立ち上がり、 緑色も入って来て、欠乏は回復基調となっています。(地面の雑草の状態も色も、大変良い状態です。写真−54)


 = 完 = 




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