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(2014年 9月 4〜17日)

イチゴの育苗について考える

                                                                     更新日:2014年10月 6日(部)


 2014年は9月、佐賀県のイチゴを中心に巡回指導を行った。2009年から、この地区の“本圃の栽培”については5年ほど指導をしてきた。
何とか実質A品の出荷量(注-@)が、ほぼ6トン/10aとなってきた。 この6トンの出荷に対して15%から20%は加工用のイチゴも当然あるはずだから、昔ながらの単純な計算をすると6×1.15=6.9トンは収穫したことになる。 栽培期間中は大阪と佐賀の間で時々連絡を取りながら相談を受けているわけだが、やっぱり目の届かないところで簡単なミスを犯している。ミスは単純なことだが、 収量には大きく響いてくる。そのミスとは例えば農協が扱う肥料類の使い方(注-A)である。

農協では、窒素はただ単にチッソと区分しており、 アンモニア態窒素と硝酸態窒素を区別していないようである。おかげで、昨年度(13年度)の12月・1月の果の成り具合はアンモニアの害で奇形果ばかり、 ほとんど出荷出来ていない。それでも5.5トンの出荷と言うから2〜5月を、どんな働き方をしたんだろうと察する。挙句の果て、 もっと収穫できたんだが5月の中ごろは、もう体が持たなくなったと言っていた。そらぁ〜、そうでしょうよ! そんなことで、今年は元肥に妙なものを入れるのを阻止すること!!それが第一目的!!

 第二の目的!!育苗を完全に仕上げること。これが完璧でないと、苗半作本圃半作の構図がうまく成り立たない!活着がうまく進まない。育苗用の培土は、 今でも購入して調達している。3年前は、この培土のpHが7.0を超えていた。その所為でアルカリ障害に悩んでいた。おかげで、育苗はさっぱりだった。 業者に伝えて、そのpH修正を行わせた。それで、アルカリ障害は出ないようになった。しかし、今年、私が見た限りでは、まだ物理性が良くない。 水が抜けすぎる。これをやりかえるのにはポットを全部動かす必要があるから、手間がかかりすぎる。これは来年の課題にする。 そのようなことで、今年は9月1日には九州に入る予定にしていたが、どうしても予定が抜けれず4日遅れとなった。それでも、幸い天気が味方してくれ、 毎日肌寒い日が続いたり、曇天が多かったりしたことで生育が鈍っていた。みなさんは天候不順だ!と言われるが、私は今年の気候をそのような捉え方をしている。

それでは、どのような育苗をするのか?元々、イチゴ育苗は季節に合わない真夏の環境条件のときに、アアでもないコウでもないといって無理矢理に生育させているような気がする。 冬につくる苗なら手っ取り早く油を炊けば良い。反対に、冷却するには設備費が高額だ。そこでこの数年、気象の変動も含めて、もう自然に逆らわず育ててみよう。 そのように感じるようになった。そのために、ここ2〜3年いろいろなことを試みて来た。トマトを露地で4月から10月までキチンと肥培管理しながら育ててみた。 鹿児島の離島からはユリの花の成長点付近の緑色が乗らない、つまりクロロシスのような状態になる。なんでだろう?高知からも同じようなことのメールがあった。 その他、モロヘイヤ、葉菜類などやって見た。

よく理解できた。比較的暑さに強いと言われるトマトでは、7月20日くらいまでは順調に成長する。8月に入ると花芽は着くがポロリと落ちる。結局、成長点や樹は細るし、ただ枯れて終わないだけ。 ユリでもやって見た。球根から順調に大きくなってきたものが6月に近づいてくると写真のように黄化してくる。 これを木漏れ日の桜の木の下の風通しの良いところに置いてやると写真のように緑色を帯びてくる。 つまり、光の量が多過ぎて阻害しているのである。光の飽和点以上は生育阻害要因になっている。ならば、寒冷紗を利用してその作物の適切な飽和点を作ってやる必要があるということである。

そこで、今年はイチゴの苗を早くから作ろうとしない。気温が下がり出す9月までは生長を制御しできるだけ小さく育て負担のないように育てる。 5月の中旬に親株を用意し、マゴマゴしながら育てる。この時期はランナーが良く出てくれる。6〜7月はランナーの数だけはしっかり確保する作業をする。 8月は暑さも最高になる。子株の生理は勿論のこと、親株の生理も止まり遮光をしたり葉面散布をしたり通風を良くしたりして、兎に角、株は最小限に作る。 そして、9月になれば一気に株つくりに邁進するというわけである。


(注−@)佐賀県では収穫量を1坪当たりのパック数で表している。1坪当たり65パックなら65×0.27Kg×300坪=5,265Kgと計算する。
(注−@)もともと、元肥は定植までに約1ヶ月以上の期間をおいて散布するものである。見ていると、慌ただしく7〜10日前に投入している。これでは苦
      土石灰を投入しても直ぐの効果は期待できない。特に窒素は、その中のアンモニア態窒素が硝酸態窒素に還元する時間が必要である。一般
      的にはそのような還元期間の時間的余裕をみるべきである。


以下、写真入のレポート

写真−1                    撮影:’14. 9. 8
JAの指示するいちご配合肥料
写真−2   撮影:’10.11.24
JAの指示するいちご配合肥料
 いちご配合肥料。NH−NかNO−Nか、分からない。このような物を定植の10日くらい前に元肥として漉き込んでいるようだ。 多分、NHーNが多いと思いうが、このようなものを元肥に使用した場合、一番果は奇形が多く目立つようになる。
次の写真−3〜10まではトマトだが、未発酵たい肥を使ったため、アンモニアの害を発し、このことが、収入源になる大事な果実に悪い影響を与える。トマトの写真で検証してみる。

写真−3                    撮影:’14. 3. 3
未熟たい肥に発したカビ
写真−4                    撮影:’14. 3. 3
未熟たい肥に発したキノコ
 未発酵たい肥の影響。10月に定植、JAが推奨するたい肥を投入した。買うときには一応、キノコが立たないか?と念を押したという。 それに対して、他所でも使っているが、キノコは立たないと回答があったため投入したという。結果、カビが生えてきた。そして、写真−4のようにキノコも立ってきた。

写真−5                    撮影:’14. 3. 3
未熟たい肥に発したキノコ
写真−6                    撮影:’14. 3. 3
未熟たい肥に発したキノコ
『アンモニアの害』 このように、あちこちにキノコが発生する。事情をよく聞いてみると・・・・
私たちは、ほかの農家に比べたら比べ物にならないくらい窒素を使う。しかも、潅水の量もはるかに多い。 そこへ、菌の発酵を促進する微量要素もびっくりするくらい使用する。反対に、ほかの農家の人たちは減窒素でしょう!潅水をすると水っぽくなるでしょう!! 水をかけたら、湿度が上がって病気になるでしょう!だから、水をかけない。これなら、シーズン中には発酵しないのかもわかりませんね!! これを、当の本人は考えていなかったようで、気にもせず購入したようです。

写真−7                    撮影:’14. 3. 3
未熟たい肥によるアンモニア障害(樹軸や果の奇形)
写真−8                    撮影:’14. 3. 3
未熟たい肥によるアンモニア障害料(樹軸や果の奇形)
『アンモニアの害』 発酵しているときの最大の問題点は、写真のような奇形果の不良品がほとんどで、とても売り物にならない。正規品がほとんど採れない。 このような不良品トマトを“のぞき果”と(地方によっては)言っているようです。

写真−9                    撮影:’14. 3. 9
未熟たい肥のアンモニア障害料(蔓割れ
写真−10                   撮影:’14. 3. 9
未熟たい肥によるアンモニア障害料(樹軸)
『アンモニアの害』 写真−9 蔓が割れています。そして、写真−10に見えるようにトマトの主枝などが真っ直ぐ伸びず、節のところ(木で言えば枝の所と言ったらよいのでしょうか)が右に左に折れ曲がったようになります。写真−7,9でもそのような状態が確認できます。 節間も短く不自然です。水分を適度に含みながら、しんなりと伸びているという感じがしません。

写真−11                    撮影:’14. 9.15
さがほのか
写真−12                    撮影:’14. 9.16
さがほのか苗の根部
 9月5日の初回訪問の時の写真は、写真ー13の状態。尻を叩きながら、その状態の苗にバックアップ液=BP液(養液栽培要液肥=標準園試処方+グリーンアップ)を使い散水。 10日後の15日の生育状況。新芽の緑色が良くなった。このトレーは、かけた養分や灌水の水がスリット(溝)を通って、すべて根元流れ込むようになっている。 だから、根の巻き方が抜群に良い。ところが今までは、水だけしか掛ける習慣がなかったから、根腐れが多発し、うどん粉病、それが進んで硫黄病、さらに進んで炭素病となっていた。

 元々、苗は直に地面に置いていた。それでは雨による泥のはね上げを被り、そのことが炭素病などの原因になるというのである。それを回避するために多額のお金をかけて、このような高設を導入したものである。 ところが、私に言わせてもらえば、従来からのみなさん方の一貫した考え方は、花芽の分化のときには窒素は与えない方が良い。そのような理由で窒素は勿論のこと、他の養分までも与えようとしなかったのである。本当でしょうか?? そのような理由で、水だけをセッセと掛けるだけなので、根腐れを来したのである。

このKKさんのこの効率的に考えられているシステムも、水が掛かりすぎて上手くいかない。もったいない事に、多くのスペースを残したまま遊ばせている。 今回のように合理的に考えてやれば、逆に設備を追加したくなる。さて、TK君は農協の花芽形成の顕微鏡検査に、これらの苗の中からよりしっかりした苗を5株持って検鏡したというが、 どうでしたでしょうか?答えは、すべて分化しているという結果であった。・・・・私は、温度が下がってくれば、花芽はのぞいて来るといつも言うんだけど・・・・・

写真−13                    撮影:’14. 9. 5
さがほのか
写真−14                撮影:’14. 9. 8
さがほのか苗の根部
 T・Kさんの育苗。9月5日に訪問するなり、いきなり写真を撮った。昨日、BP液を掛けたとのことで少し艶が出ている。今までの毎年に比べると、 艶といい、緑色といいウw〜〜ンと良い状態だ。しかしこれでは、まだ駄目で、新葉をもっと緑深くしなければならない(写真−5)。今日から、今まで以上にBPを強化する。 根も確認したが(写真−14)、液肥がかかった上部に白い根がやっと覗いている状態。

写真−15                    撮影:’14. 9.15
さがほのか
写真−16                撮影:’14. 9.15
さがほのか苗の根部
 10日後、帰阪する前に写した写真。艶といい、緑も深くなってきた。しかも、成長が早いので、かけてもかけてもいい色になりません。 この懸命な舞台裏を明かすと、BP液を毎日かけるか、それとも2日毎で良いか?。わたしも毎日立ち寄っては、過剰症にならぬよう監視した。 結果、やっと白い良い根がのぞいてきた(写真−16)。20日が定植と言う、もっと白根を増やしたい。さもないと、定植後、本圃の土壌に根が伸び移るのが遅れる。 定植と同時にグングン根を広げて、12月に出荷のピークを迎えたいと思っている。

写真−17                    撮影:’14. 9.15
育苗用のトレー
写真−18                    撮影:’14. 9.15
さがほのか育苗状況
 K・Kさんは、写真−18と同じ面積を写真の手前側で遊ばせている。こんなにりっぱなハウスで・・・勿論、頭上灌水の設備付である。
“もったいなぁ〜〜・・・”
この効率的に考えられたトレー!!
こんなに小さい根の部分の土にpH7.2の水をかけるんでしょう?その水が全部集中して、そこに集まるんでしょう??
そりゃ〜、根は傷みますよ!! 葉は薄く黄色い、根は茶色で巻いていない、白い生きの良い根は殆どない。
これでは、うどん粉もでますよ!硫黄病にもなりますよ!!炭素病で枯らしますよ!!!
今年は、その養分とpH管理をした水をかけている。調子いいじゃないですかぁ〜!!
何しろ、2万本からの苗に40本ほどの軽〜〜い、うどん粉ありですよ!


定植10日後の様子

 完全ではありませんが折角持ち直した育苗、KKさんとTKさんの二人に聞きました。
TK君!!“今年はうどん粉苗ある?”“今年は見当たりませんねぇ〜”。同じく、KKさんに・・・“ありますよ!”“何本?”“40本くらい・・” “30a分の苗にでしょう・・・???”二人合計で今年は35000本以上の苗、病気になったものはKKさんの40本くらいと言う。 “そんなの無いのと一緒じゃん!!”それほど肥培管理を徹底して来た。そんな中、最善の定植法を指示して、私は帰阪した。

10日後、TKさんから写真メールが送って来た。

写真−19                    撮影:’14. 9.29
さがほのか定植後全景
写真−20                    撮影:’14. 9.29
さがほのか定植後を近写
 全景としては、まずまずの出来で問題ないようにみる。しかし、近写した写真−20を良く見ると艶がなく、緑も減色している。 原因は、成長に対して養分量が足りていない。BP液の強化を指示する。

写真−21                    撮影:’14.10. 1
BP液強化後
写真−22                    撮影:’14.10. 1
BP液強化後
 30日の朝、BP液を20aに5トン散布した。丸1日だが、わずかに回復しているのが確認できる。 今日と明日、連続でたっぷり散布指示しました。


  不良と思われる苗を横に切ってみた、その導管は・・・???

写真−23                    撮影:’14. 9.15
不良苗
写真−24                    撮影:’14. 9.15
不良苗の根
 T・K君。“これは水がチャントかかってないのかな??”“水がかかっていないのなら萎れるよねぇ!”“土が良くないのかなぁ〜”。 ポットをはずして横から見ても、新しい根が張っていない。

写真−25                    撮影:’14. 9.15
さがほのか苗の根
写真−26                    撮影:’14. 9.15
不良苗の導管部
 折角だから、根を洗ってみた。そんなに問題はないように思えるが、念のためカッターで横方向に切って見た。この状態なら導管も問題ない感じである。 おそらく初期の状態だから、チャンと養生すれば回復すると思うが、生育は大幅に遅れると思う。原因は毎日観察していないからはっきりとは言えないが、 途中で水を切らし、その後、回復しているのかもしれない。根の形跡はそれなりに巻いている。


高設々備の改良について考える

 ポットの土壌の保水性
今の高設々備はエキスパンドメタルという格子になった鉄網を材料にして、写真−27のような架台を作っている。 これでは、水はけが良すぎるというのが私の結論である。この上にポットを並べて苗を育てるわけだが、それを普通の平鉄板にすると、そこに水が溜まり、 根がポットの底穴から伸びて行く、それを、みなさんは敬遠しているようである。網にしてあるのは水の抜けを良くするためであって、だから敢えて、 私はその水抜けが良すぎるという欠点を指摘する。その欠点というのは、苗に水をかけた場合、その水が上手い具合に葉の間を通ってポット内に入ったとしても、 余分な水は素早く底穴から抜けてしまう。更に、蒸散も手伝って土は乾燥する。生育が良ければ尚更のことである。それでは常に水不足が短時間で生じることとなり、 1日に何回も散水をしなくてはならくなる(現状で2時間ももたない)。特に、葉が生い茂ってきた場合、その水は葉を伝って外に落ち、殆どポットに入らないようになる。 だから、ことしは如雨露で部分的に手灌水し、それを補った。それでも目の届かないものがあり、何鉢も無駄にした。

 ベンチの改良
このエキスパンドメタルの部分には発泡板などを敷き、脚高の微調整を施して台の水平性を保つ。そこに厚手のポリシートを敷いて台そのものを浅いプール状にする。 そこに、散水したものが溜まるようにして、液肥や水の供給を底面からも行えるようにする。このようにすれば灌水作業も減るし、肥料・水についてもロスがなくなる。 写真ー36は、そのような状態を設定した場所<(肥料が溶けた水たまり)に置いた根の状態の写真である。

 光環境の改善
光環境条件についても指摘する。今は写真−28のようにパイプでアーチ屋根の部分をつくり、そこに寒冷紗で日覆をしている訳だが、 アーチパイプには雨よけのための被覆材が必要である。寒冷紗はその上に展張する。そのようなこと前提として現行では、その寒冷紗はほとんどが40%カットくらいを1枚張っただけである。 これは、ただ単に日光を40%くらいカットしたら良いだろうと言った動機であり、何故、40%カットなのかとか、その根拠がはっきりしない。 本当に光環境のことを考えるならば、日中に太陽が真上にあるとき屋根は50%カットに、そこに二重カーテンの30%カットくらいを施すべきで、 夕刻時の陽の傾きには、二重カーテンを全開するなどの対応をすべきと考える(本当は、曇りの日も光量が約2.0万Lux位だから、屋根の部分も全開すべき)。

そのようなことで、現地の設備はイチゴの光環境に全く対応できていないという結論に達する。そして、日中の照度を計測すると、 その針は11.3万Luxを示していた。そこに40%カットで覆うと約7.0(実測は8.3)万Luxとなっていた。 近年、ここを私は問題視している。各々の作物において、その光飽和点以上にある照度が生育の障害になっている。つまり、過剰の照度は生育の障害になるだけでなく、 余分のエネルギーとして、生育環境の温度までも上昇させているのである。

 通風について
今、写真−20では、寒冷紗は妻面を垂らすことなく、チャンと捲り上げて端をパッカーで止めて垂れないようにしてある。それは、私が捲り上げを指示したからである。 両妻とも、これを垂らすとフェーン現象が助長されてしまうこれで1〜2℃は変わるはずである。 イチゴの夏時期の育苗そのものが環境として適していないのは言うまでもない。だから、この毎日の1〜2℃は大変大きい。昔は山上げといって苗を涼しいところに移動させたものだ。 これはシンピジューム栽培でも行った。何キロもある鉢を何万鉢も車で大移動するわけで、大変な重労働であった。冷蔵庫も利用した。最近はクーラーを利用した育苗ハウスもある。

先人はこのようにして、なんとか涼しい場所を確保する努力をした。現行では、少し無神経ではないかと思う。それだけ思考のレベルが下がっているのかもしれない。 農協も普及センターも毎日このことに直面しているはずである。試験場の先生方も経験しているはずである。写真−28では妻面も、側面も、開放になっているが、 これも涼しくするからと言って開放したままではいけない。苗に直接風を当てては過乾燥になり傷んでしまう。開けるのなら必ず風下を開放する。妻面も同様である。

京都府の試験場だったか、京都府立大学の試験場だったか忘れたが、暖気が抜けやすいようにという事でハウスの屋根に傾斜をつけた、つまり、 風下側と思うが、その軒高を徐々に高くしたハウスを建てたらしい記事を見たことがある。自然の滞留を利用して換気を行おうというものだ。 発想が理解できるので、今でも記憶している。みかんハウスは山の傾斜地に建てることが多い、訪問して体験しているのでよく理解できる、この換気は何度も経験した。兎に角、濡らして、 そして、植物の周囲の湿度を上げることが大事なのである。

通風については資金的な余裕が出てきたら、羽根系80cmの送風機を20〜25Mごとに通り付け、気流を順送するようにする。 そうすれば施設内に空気の流れができ、室内の滞留した空気も動いて排気が出来るようになる。これを順送排気(換気)という。 また、ガラス温室などのような場合は天窓が付設されているので、換気扇をその下に取り付ける天窓下換気が効率的である。

 湿度を保つ

以上のように換気・通風を上手に行うと共に、頭上の潅水装置を利用する。これを利用して、葉面散布を励行する。細かい水が出なくても良い。 どうせ、開放型の施設だからその必要はない。濡らすだけで良い。水が乾くときに気化冷却し、植物体温度は下降する(植物の周りの温度は高くても良い。 問題は植物体の温度が低いことが重要なのである)。昼間は、植物は一生懸命に働きそして疲れる。夕方、その葉の様子をよく観察すると熱中症の状態である。 夕方、陽が落ちると丁寧に葉面散布をして十分に水分を与え、夜に回復してもらい、元気な朝を迎えてまた一日頑張って頂く。

写真−27                    撮影:’14. 9.15
さがほのか
写真−28                    撮影:’14. 9.16
さがほのか
写真−27はベンチに育苗ポットを置いている状態。その青いネットの意味が分からない。ここはポリシートを敷くべきだと思うが・・・・・。 写真−28では両サイドの寒冷紗を捲り上げているが、これは、無風の時は良いが、風が出てきた場合に困る。風が苗へ直にあたると過乾燥となり、うどん粉の発生原因になる。 できるなら防風ネット対策など、何か考えた方が良い(防風ネットの対策=その敷いた青い網が適と思うが・・それ元々は防風ネットの転用では??)。風は0.5〜1.0m/sくらいの微風に調整する。 開けるなら、必ず風下を開ける。

写真−29                撮影:’14. 9. 8
日射量計
写真−30                撮影:’14. 9. 8
さがほのか
写真ー29は快晴の日。室外11.3万Luxくらい。
写真−30は寒冷紗を通して計測。カット率は不明だが約25〜30%くらいのカットであろう。 8.3万Luxくらいを示していた。イチゴの光飽和点は2.0万Luxというから、光強度としては強すぎ、これでは害を及ぼすといって良いのではないか?

写真−31                撮影:’14. 9.15
日射量計
写真−32                撮影:’14. 9.15
日射量計
写真ー31 は曇天日。室外2.0万Luxくらい。
写真−32 は寒冷紗を通して計測。カット率は不明だが約1.0万Luxを指している。
この計測で理解できたことは、強い光の時は漏れが多くなるようで光の通過量が多く、弱くなれば通過量は減るようである。

11.2万Luxの場合は、8.5万Luxへ(25%カット)
 2.0万Luxの場合は、1.0万Luxへ(50%カット)となっている。

イチゴの遮光には、太陽が真上にあるとき65%〜70%カットくらいが良いようで、屋根部に50%カットをかけ(5.6万Luxとなる)、 さらに二重カーテン部には30%カット(4.0万Luxとなる)をかける。そのようにして陽の傾きによる光量不足を二重カーテンで調整する必要があると思われるのである。 (本当は曇りの日のことも考えると、屋根の遮光もオープンにする必要がある)


  強光を避ける対策と底面対策を行った場合の予想される効果

この高設々備の問題点は上の項『改良について考える』に述べた通りである。そこで、今、簡単にできることだけをやって見た。

ベンチにある苗を数株選択して取り出し、毎日の水や液肥の灌水で落ちた水が溜まり、しかも、底面給水と同じような状況がつくられ、かつ、午前中は 陽が当たるような場所(ベンチの下)に、それらを放置してその様子を観察した。 わずか7日間くらいだったが、新葉の展開や緑色に差が見えており、 もっと底面給水による栄養管理や寒冷紗による日射量調整、そして湿度、頭上灌水装置を使った葉面散布の回数などを綿密に計画すれば、 かなり優秀な育苗ができると考えられ、12月には第一回目の出荷最盛期を迎えらるのではないかと考える。

このことが、どれだけ実収入につながるか、考える意義は大きい。

写真−33                撮影:’14. 9.15
さがほのか
写真−34                撮影:’14. 9.15
さがほのか
写真ー33 では、新葉の展開に皺(シワ)が見られ、緑色も浅い。

『疑問』 これは、温度と光量が多いために成長が早まったものと考えられる。そのために栄養量が追いついていない。 それなら、養分を与えるだけで良いのか?それとも遮光をすれば良いのか?

写真−34 では、新葉の展開は平たく出てきている。緑色は浅い。

『考察』 栄養条件は良いとは言えない。土壌水分は丁度良いようだ。生育は33に比べると少し遅いような気がする。
優しく育っているように見受ける。尚、この水たまりでは、少々の溜まり水ではその水が蒸散ですぐ乾いてしまう。 実は、この水たまりは、ここにポットを置いたら根が傷むかもしれないと考えたほどの水たまりだった。しかし、実際には写真−36のように・・・

写真−35                撮影:’14. 9.08
さがほのか
写真−36                撮影:’14. 9.15
さがほのか
『根の状況の確認』

写真−35では、
液肥や水のかかり方が上からだけなので、上方部にだけ白い根が出始めているのが確認できる。
それでもまだ根の回り方が写真−36に比べると遅い。

写真−36 では、
養分が底面給水のような形で供給されるから、底面部に新鮮な白い根が、しかも勢い良くでている。 これが上からと下から発生してくれると、もっと良いはず。

たった7日間で、このような状態である。育苗をもっと良く管理すれば、どのようなことになるだろう?と考えると夢も膨らむ。


 = 完 = 




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